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亜人との共生とコボルトたちの準備

 アスリアを助けてから数日後。

 コボルトたちには貧民街で何か不穏な噂がないかなどを調査してもらっていた。オークたちがアスリアを襲った理由を知りたかったのだ。


 コボルトたちは持ち前の身体能力の高さとその愛くるしさを使っていろいろなところから情報を集めてきてくれた。誰からでも愛されるのはもはや天性の才能と言ってもいい。彼らは子供が入れないような場所の情報までも上手く聞きだしてきてくれた。


 彼らが集めた情報の中にはもちろん関係ないものもあったが、その中で一つ不穏な噂があった。

 魔王の復活を望んでいる者たちがいるというものだ。

 元魔物の亜人たちは人権があってないようなものだった。

 同じゴブリンでも、言葉を話せるかどうかで討伐対象になり、オークにあっては亜人と認められているのにも関わらず野生のオークは食用にされている。


 ただそれも最初からそのような理不尽な扱いだったわけではない。

 魔王が討伐されたのち、ゴブリンやオークたちの亜人の中で、人間の言葉を覚え人間と共存を目指す亜人たちがいた。彼らは人間と共存していくことができると思い輝かしい未来を夢見た。


 でもそれは長くは続かなかった。言葉を理解できる亜人の中でも人間との共存を受け入れられないものたちがでてきたのだ。街の中での生活は彼らにストレスを与え、差別は彼らの憎しみをあおった。彼らはやがて街を離れ今まで通り森の中で生活することを選んだ。幸いにも森も山も広さは十分にあり、人間たちと生活圏をわけることが可能だった。人間たちも自分たちが襲われないのであればとそれを了承し、お互いに尊重し平和に過ごす時代となる。


 だが、街からでた亜人たちは無計画に増え続け、そのうち育児放棄により子供たちは言葉を覚える機会を失った。彼らは分けたはずの生活圏を無視し欲望のまま行動をするものが増えていった。そして増えすぎた彼らはスタンピードをおこす。理性をもたないゴブリンやオークたちが街を襲い、街の中で平和に暮らしていた亜人までも手にかけていったのだ。


 もちろんそれでも亜人の権利を確立するために戦ったものもいたが、結局すべての亜人をまとめることはできず、最大の譲歩として届け出をださずに森の中に住む亜人は討伐対象になった。


 森の中で生き、繁殖力が強く無尽蔵に増えてしまうゴブリンやオークたちは、街の中に住み人間と共存を目指す亜人にとっても、もはや迷惑な存在でしかなかった。


 こうして亜人たちの2極化が進む中、街の中で生活する亜人からも、自由を求める声があがるようになっていった。同じオークでも街の外で暮らす理性を持たないオークと一緒にされることを嫌がり、亜人たちの人権確立や街の中での困窮した生活から脱却したいと考えるようになったのだ。


 ただそれには優秀な指導者が必要だった。誰にも負けない力を持ち、人間たちからの差別にも屈することのない強大な力。それが魔王の復活を望む声へと繋がっていく。


 もちろん、魔王を復活させると言っても簡単なことではない。その為には強大な魔力を持った者の生贄が必要だというのだ。そのためにアスリアが狙われた可能性がある。


 ただ、わざわざ王女を狙う意味がわからない。強大な魔力を持っているというだけなら、他にいくらでもいる。王女を狙うだけのメリットがない。ましてやオークたちはあの場で自分の欲望を優先させようとしていた。そう考えると魔王の復活とオークたちの行動には接点がないようにも思える。


 魔王が復活となったとしてもさすがに俺にできることは限られている。ただ、そのためにアスリアが狙われるなら阻止しなければいけない。一応王宮に行ったらこの話もしてこよう。


「レオン、悪いがもう少し情報を集めてみてくれ」

「わかりました。すべてはマスターのために」

「そのあいさつやめない?恥ずかしいんだけど」

「却下です」

 俺マスターって呼ばれているのに……



 ★



 アスリアからコボルトたちを連れて夜家に来て欲しいと言われた。

 正式な招待ではないので普段着でいいと言われたが、さすがにコボルトたちを普段着で行かせるわけにはいかないのでコボルトたちに服を新しく買ってやることにする。


 コボルトたちは今までおさがりばかりの服だったので新しい服に興味深々だ。

「マスター本当に服を買ってもらっていいんですか?」

「いいよ。好きな服を買いな」

 ここは亜人の専門店で店主は牛の魔物だった。

 一見怖そうで目つきが悪かったが話してみると気さくで優しかった。

 10人分のコボルトの服を買うと言うと、おまけしてやると言われてそれぞれに帽子や腕輪などの装飾品を一つずつおまけでくれた。なんでも最近お試しで西の街から安く仕入れてきた物らしい。


 服の購入が終わったら次はお風呂だ。

 コボルトたちはお風呂にあまり入ったことがないらしい。


 街のお風呂屋に行くと店先で断られてしまった。

「兄ちゃん悪いな。せめて1回どこかで風呂に入って汚れを落としてからにしてくれるか」

 コボルトたちはこぎれいにはしていたが確かに汚れていた。

 あの小屋にも風呂があった覚えがない。


「風呂はどうしてる?」

「おもに月1で川で水浴びですね。冬は寒いので入らないです」


 予想外の解答だった。

 一瞬距離をとる。キレイそうに見えてもかなり汚れていたようだ。


 アスリアの家に行くまでにまだ時間があるので、コボルトの家に風呂を作ってやる。

 子供10人なのでそれ程大きく作らなくていいだろう。

 五右衛門風呂と呼ばれる異世界の風呂を参考に土魔法で形を作っていく。

 今回は時間がないのでクラウドの水魔法と火魔法で一気にお湯にするが、普段入るときは井戸水と薪で風呂を沸かせるようにしておく。


 お風呂のお湯の管理をクラウドに任せ俺は櫛を買いに行く。

 せっかくだからコボルトたちの毛並みもきれいにしてやろう。


 それから俺が買い物をして戻ると、クラウドが風魔法と火魔法を混ぜて温風にして、コボルト達の濡れた毛並みを乾かしていたりとちょっとした驚きもあったが、無事にアスリアの家に行く準備ができた。

 レノバは用事があるので別でくるらしい。友達の家とは言えさすがに王宮に入るのは緊張する。

「レオン、先に行っていいよ」

「マスター意外と小心者なんですか」

「いやそんなことはないが。王宮なんてくることないからな」

「はぁ。私たちのマスターなんですから堂々としてください」

 コボルトたちの方が堂々としていた。

 実はこういうかしこまった場所は苦手なんだが。

 兵士に声をかけるとそのまま王宮の中まで案内される。

 サクッと終わりにして帰ろう。

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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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