戦闘中に進化したブラックオークとの戦い。そして一番攻撃力が高かったのは…
「ブヒャヒャヒャ!!これが進化か!力があふれてくる。」
先ほどまでたるんでいた身体は引き締まり、全身に黒いオーラを身にまとっている。
「人間よ。見下して悪かった。お前のおかげで俺は高みにこれた。だがこれでさよならだ。」
ふぅ…。
大きく息を吐き出し呼吸を整える。
まさかこんなヤバイ奴に出会うとは。
俺も1段階スイッチを入れよう。
逃げたところで誰も助けてはくれない。
大丈夫。俺にはできる。
こんなのあの時に比べれば全然怖くない。
急に恐怖心がひいていく。
まずは冷静にやるべき順序を考えよう。
集中することでまわりの動きが段々とスローモーションに見えてくる。
レノバは…もうすぐ終わりそうだな。
クラウドの方もオーク3人相手でもしっかり反撃できているから問題ない。
それならば、俺はこいつに集中して大丈夫。
ブラックオークの1撃1撃はかすっただけでも肉をえぐられるくらい威力がある。
俺が避ける度に地面に小さなクレーターができあがる。
俺は少し距離をとり右手に力を集める。
風の龍よ。我の敵を薙ぎ払え!
風の龍の口が大きく開きブラックオークを飲み込んでいく。
これでも足止めぐらいにしか役には立たないだろうがそれで十分だ。
たかがオークが進化したくらいで苦戦しているように思われるのも腹立たしい。
足元に転がっていたオークの斧を拾い上げブラックオークの首にあてる。
これで終わりだ!
ブラックオークの首がなくなる。
コボルトのレオンが、
「…やった…んですか?すごいです!マスターさすがです!」
と騒いでいる。
ただ、それは言っちゃダメな奴だろ。
あとで異世界勇者冒険譚を読ませてやるしかない。
「ブヒャ。進化した俺に物理攻撃は効かないようだぜ。絶望するがいい人間が!」
消えたと思った首が普通に生えてくる。
あの感じは闇魔法の物理無効が発動しているようだ。
まぁだから何?
って感じだが。
種がわかればそれに対処して一つずつ潰していくだけだ。
1回ダメだったから絶望するとか諦めるのが早すぎるだろ。
物理攻撃で倒せないならば次は魔法だ。
焼き豚にできるかやってみよう。
「火の龍よ!焼き…」
その瞬間、俺の攻撃線上にクラウドがいるのを発見する。
ダメだ!これを放ったらクラウドが美味しい珍味になってしまう。
「クラウド!そんなところにいたら危な…い…ぞ?」
クラウドは嬉しそうにブラックオークから闇属性の魔力を吸収している。
確かに闇属性なんて使うテイマーはいないからね。
初めての魔力かもしれないけど。
「クラウドそんなの吸収したらばお腹壊すよ…。」
「ピギゥー」
クラウドはブラックオークの魔力を少しも残らずしぼりとったようだ。
エグイことをする。
急激に魔力を吸われたブラックオークが魔力欠乏で意識をなくす。
いったい何が起こったという顔をしている。
あっ…うん。なんかこんな終わり方でごめん。
あれ?でも、ここは普通ならば俺が異世界の勇者のように激しい戦いがあってカッコ良くブラックオークを倒す見せ場じゃないのだろうか。
やっぱり俺には勇者にはなれないらしい。
それよりもこの恥ずかしさ。なんだろう…これあれか。異世界勇者が言ってた中二病から卒業した時のような恥ずかしさって奴か。
なぜかレノバが俺の横にきて肩に手を置き、
「私にはその気持ちわかるよ。」
とでも言わんばかりに何度もうなずいてくる。
いや、いいよ。慰めるなよ。よけいに恥ずかしくなるわ!
結果を見ればクエスト達成したんだから。
俺とレノバで顔に袋をかぶらせられた女の子を助ける。
顔から袋をとるとそこにいたのはアスリアさんだった。
なぜアスリアさんがこんなところに?
「アスリアさんわかりますか?」
俺はアスリアさんにつけられた封魔の腕輪をはずしてやる。
「アッアルスさん…私夢でも見てるのかしら…夢ならば…」
アスリアさんの腕が俺の首の後ろへとまわる。
思いっきり抱き着かれてしまった。
『クンスカ、スーハ―』
いや、アスリアさんすごい勢いで匂いかぐのやめて恥ずかしいから。
ちなみに、レノバが顔の袋をとった侍女の方はレノバの顔を見て再度意識を失った。
「失礼しちゃうわね!」
と言っていたが、目覚めのレノバは俺でも勘弁してもらいたい。
★
ここは…記憶が混濁している。
確か私はオークに襲われたはずだ。
そしてそのまま…。
でも今はアルスくんが目の前にいる。
こんなところにいるはずがないのに。
あっきっとそういうことなのね。
私の初めてはオークに…。
そして…。
それ以上考えることはやめた。
なにも残らない一生だった。
王女に生まれたのに。
もしもう一度生まれ変わるならば私はもっと私ができることをしたい。
友達も作りたいし、学校ももっと楽しみたい。
アルス君とだって手を繋いで買い食いとかしてみたい。
その時は絶対アルス君に守ってもらうんだ。
王女じゃなくて一人の女の子として。
あぁ涙がでてくる。
ふがいない私でごめんなさい。
でも、最後の夢でアルスくんに会えた。
それだけでも神様ありがとう。
夢ならば抱きついてもいいわよね。
アッウン。匂いまでアルスくんだ。
せっかくの思い出だから匂いも堪能しておかないと。
思いっきり深呼吸して思う存分匂いを楽しむ。
顔が完全にニヤけてしまっているに違いない。
でもいいんだ。
最後だから。
「アスリアお嬢様!」
「アスリアお嬢様!」
ちょっと、ミルノせっかくの夢なんだから邪魔しないで。
私が第3王女だってばれたらばアルスくんとの楽しい学園生活が終わっちゃうじゃない。
私はもう一度うっすらと目をあける。
そこにはやっぱりアルスくんがいた。
もう一度思いっきり抱きしめる。
うん。この夢なら何度見てもいいな。
この背中もアルスくんの背中に似て…。
すごくしっかりとした背中の感触がある。
今度はもう少ししっかりと目をあける。
「大丈夫かアスリア?」
声まで聞こえる。
目の前にはアルスくんがいる。
アルスくんの顔をぺチぺチと叩いてみる。
実に触り心地までリアルな夢だ。
「あれ…えっと…私って…」
「アスリアお嬢様良かったです。」
横で泣いているのは侍女のミルノだ。
ミルノの服が破けている。
私の服も…。
破けていつもより露出が多い。
キャ――――!!
その瞬間、私はなぜか拳を握りアルス君の右の頬っぺたを思いっきり殴りつけていた。
えっ夢じゃないの!?
いろいろな意味で死ねる。
それからしばらく色々な意味で修羅場だった。
とある兵士の夢
「私、もうお嫁にいけない。」
「安心してください。ありのままのあなたを僕は受け入れます。」
「本当に?こんな私でもいいの?でもきっとあなたは後悔するわ…。」
「絶対に後悔しません。あなたを、あなただけを一生幸せにします。」
「わかった。それじゃあ私と幸せになりましょ。」
「えっ。」
「えっじゃないわよ。私レノバよ。アルス様に前にひどい格好させられたじゃない。そんな私でもいいんでしょ。」
「ギャー!!」
ブックマークと評価をしてくれるともれなくあなたの夢にもレノバがやってくるかも!?
えっ…いらない?




