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コボルト10勇士の誕生

 コボルトの少年に案内させて街の中を歩いていく。

 段々と人が住んでいる地区から外れ、亜人たちが多い貧民街へと進んで行く。


 貧民街でもし俺が襲われてしまっても、骨すら残らずに消されるだろう。

 それほどここは街の中でも治安がいい場所ではない。


 彼の家はその貧民街でもさらに外れにあり、もはや家とは言えないような建物だった。

 かろうじて屋根があるが、壁が崩れほぼどこからでも自由に出入りができるようになっている。


 その中には9人の子供たちがいた。

 コボルトはもとから小さい種族だがその中でもあきらかに栄養が足りず発育障害をおこしている。


 彼らの中でかろうじて動けるのは俺に捕まったコボルトの少年をいれて3人だった。

 残りの7人はもう目の焦点があっていない。

 長くても1週間。早ければ明日にでも消えてしまいそうな命だった。


「クラウド全員に回復魔法かけて。」


「ピギゥー」


 クラウドが一人一人に回復魔法をかけていく。

 回復魔法と言っても万能ではない。

 空腹は治らないがそれでも体力や怪我などは治すことができる。


 目がうつろだった少年、少女たちに目に光が戻ってくる。

 ただ、これだけでは十分とは言えない。

 今は一時的に体力が回復しているだけで栄養失調には結局食べさせるしかないのだ。


 さて、どうするか。

 コボルトが小柄だと言ってもさすがに10匹を家で面倒をみることはできない。

 でも、このまま放置するという選択肢もない。


 見てしまった以上俺の手で救える命は救ってやるしかない。

 コボルトたちは、はじめて回復魔法をかけてもらったのか。


「すごい目が見える。」

「お兄ちゃんが神様連れて来てくれたの?」

「身体に力が入る。」

「わぉーーーん。」

「もう痛くない。」


 口々に感想を言っている。でもやっぱり空腹は隠せないのかお腹空いたと小さな声で言っている子たちもいる。今彼らを助けることができるのは俺だけだ。


 今回のゴブリン討伐でしばらくお金に心配することはない。

 もちろん、ここの貧民街の全員を助けることはできないがそれでも彼らを助けることくらいはできる。


「君たちに親は?」

 俺がそう言うと一人のコボルトの少年が、

「俺たちのために食べ物を探しに行ったっきりもう1ヶ月くらい帰ってきていない。」

 そう言ってうつむいてしまった。


「君たちには何ができる?もし何かできることがあるならば助けてあげることもできる。でも、何もできないのであれば君たちはまた明日から同じ生活だ。」


 この世界で生きて行く上で、すべて無料で手に入るということはない。

 何かしらのリスクを支払うしかないのだ。

 何のリスクもなく得られるものなんてたかが知れている。

 そしてそうやって得た物はすぐに失っていく。


 大切なのは今日のご飯を食べることよりも、ご飯を毎日食べられるようになるための技術を得る事。


 最初に口を開いたのは先ほど俺に捕まったコボルトだった。

「弟たちを助けてくださってありがとうございます。私はあなたにこの身を捧げます。どんな命令でも従います。だから俺の分を弟にあげてやってください。」


「いや、兄貴はずっと俺の為に働いてきてくれました。でも俺は何もできませんでした。そんな兄貴のお荷物だけなんて嫌なんです。だからお願いします。俺が一生あなたの為に働きますので兄貴を助けてあげてください。」


 そこからコボルトたちは一生働くとか、奴隷になりますとか、忠犬になりますとか、なんか結構重い感じになった。別にそこまでは求めてないんだけど。


 ただ働く意欲はあるようなので今後簡単な雑用などを俺の元で働いてもらうことにする。

 身体が動けば元が魔物だから街の外での薬草採取などで日銭を稼ぐことができる。

 お金の稼ぎ方を知ることができれば、後は彼らだけでもなんとかやっていくことはできるはずだ。

 やり方を知らないまま絶望していても世界は変わらないのだ。


 その後俺は土魔法で彼らの住みかの壁を直し、結局また冒険者ギルドに戻ってお金をおろして彼らに食事をふるまってやった。


 温かい食事を食べてコボルトたちは泣きながら今生きている瞬間を喜んでいた。

 彼らはずっと絶望の中をさ迷っていた。

 元魔物だが、下手に知識があるがために城の外で生活することもできず、人間からは差別を受け、そして毎日命が消える怖さに怯えながら過ごす日々。弱い種族に生まれたがためにまともに生きて行くことすらできなかったのだ。

 彼らにとってこの世界に希望なんてものはなかった。


 その中であらわれたアルスは彼らにとっての希望であり、夢であり神にも等しい存在になった。


 アルスはその日からできる限り毎日コボルトたちにいろいろなことを教えた。

 クラウドも自分の弟や妹ができたみたいで嬉しそうに何かを教えている。

 それがどれほど理解したかはわからないが。


 この世界を生き抜くためには自分に力をつける必要がある。


 その中で、自分の得意分野を伸ばすことの大切さ。

 そして、自分で考えることの重要性を話した。


 命を救われたコボルトたちはその後道を外れるということはなかった。

 コボルトたちの中で一つの共通の考えがあった。

「俺たちの行動がアルス様の評価に繋がるという事。」

 すべてはアルス様のために。


 この時のコボルト10匹がのちのコボルト10勇士と呼ばれるアルス直属の諜報機関へと成長していく。

 コボルトたちが最初の活躍を見せるのはそれから3日後だった。

コボルト

「ねぇそこのお兄さんとお姉さんブックマークと評価してくれない?」


「無理にそんなお願いするもんじゃないよ。」


「じゃあブックマークと評価してくれたらレノバさんが忘れられないくらいのキスしてくれるって」


「うん。それってトラウマって奴だね。」

あっまたしても評価者の人数が…。


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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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