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スリにあったのでその理由を聞いてみたら…

日間11位にまであがってきてビックリしています。

あなたの応援のおかげです。本当にありがとうございますm(__)m

 放課後、冒険者ギルドに寄り報酬を受け取る。

 受付のリズさんにゴブリンの事を聞いたが、結局あの後特別なゴブリンは発見できなかったらしいのでひとまず安心だ。


 ただ、それよりも待機中にクラウドと戦った冒険者たちが急にやる気をだして今訓練場でみんな訓練をしているので、たまに来て一緒に訓練をして欲しいと言われた。


 俺としてはクラウドの訓練にもなるので願ってもないことだ。

 ただ、昨日の今日なので今日は家に帰らせてもらうことにする。


 報酬のほとんどをそのままギルド貯金に回してもらい、少しだけ財布にいれて市場に買い物に行く。

 臨時収入があったので家族へお土産でも買って行こう。


 そう思い、甘いものを物色しているとコボルトと呼ばれている犬族の少年とぶつかった。

 コボルトは体格が小さいので街中ではちょくちょくぶつかってしまう。


 そのまま走り去っていくコボルトの少年。

 よっぽど急いでいたのだろう。

 そう思いながら財布のあった場所を確認する。


(おっふ…やられたよ…)

 見事に財布をすられてしまった。


 冒険者ギルドでは俺は昨日のことがあり少し有名になっていた。

 だから、きっとそれなりのお金があると思われてしまったのだろう。

 このまま家族へのお土産代を諦めるわけにはいかない。


 よし、ついでだからクラウドの訓練に使おう。

「クラウド、さっき俺にぶつかっていったコボルトの少年の魔力を覚えている?」


 クラウドは頷きながら、

「ピギゥー」

 と元気に返事をする。


「よし、それじゃあ彼と追いかけっこだ。追い付いたらクラウドに美味しいお肉を食べさせてあげる。」


 そう言うとクラウドは嬉しそうにシッポで進むべき方向を指し示す。

 本当に頭がいい子だ。

 正直財布をとられても普通に財布をあけることはできない。

 俺の財布は魔道具になっていて魔力認証がついている。


 むしろ無理に開けようとすると…。


『ボッフッ!』


 クラウドが見つけるより先に破裂音と白煙があがりだす。

 この煙は別に火事になったりはしないが財布を壊そうとした者を拘束する力がある。

 俺がその場所にかけつけると煙で拘束されたコボルトの少年がいた。

 どうやら人通りの少ない道で財布をあけようとしたらしい。まわりには人が少ない。


「いやー財布を窃盗とかやっちゃダメだよ。このまま兵士に渡されたらば君は死刑だろうね。」


 この国の差別は厳しい。

 お金や食べ物を盗んだだけで亜人は死刑か、良くて犯罪奴隷もしくは強制労働になってしまう。

 犯罪奴隷も強制労働も名前が変わっただけでほとんど社会に戻ってくることはできない。


 コボルトは一生懸命暴れているが抜け出せる力はない。

 ただただ少年の目には恐怖が宿っている。

 今後自分がどういう運命をたどっていくのか想像したのだろう。


 俺の後ろから音と煙を見た兵士がやってきた。

 巡回中だったのだろう、異常に到着が早い。


「この騒ぎは何だ!」

 俺が振り向くと先日の門番の兵士の人だった。


「あれこないだの…。」


「あっ盗賊捕まえてくれたアルスさんですね。今回はどうしたんですか?そこのコボルト…もしかして盗人を捕まえてくれたんですか。」

 煙で拘束されているコボルトを見ながら兵士の人が言った。


「あっいや、彼は俺の財布を拾ってくれたんですけど、間違って俺の護身用の魔法が発動してしまったようなんですよ。お騒がせしてすみません。」


 そう言って俺が頭を下げると兵士の人たちは、レノバさんの親友のアルスさんなら仕方がないと言いながら帰っていってくれた。なんだろう。地味に精神系の攻撃を受けた気がするのだが。

 いつから俺が親友になった。


 さて、それよりもこのコボルトの少年をどうするか。

 最低限逃げられないようにしてから魔法を少しずつ解除していく。


 コボルトの少年は異世界冒険譚にでてくるジャパニーズ土下座の格好で震えている。

「一応聞いておくけど、この国でスリは死刑か犯罪奴隷って言うのは知っているよね?」


 少年は震えながらゆっくりと顔をあげ小さくうなずく。

 少年の身体はやせ細り、食事をとっていないのは明白だ。


「はぁ…どうしてスリを?」

 どう考えても食事のためなのはわかっている。

 でも、情状酌量の余地があれば助けてあげたくなってしまうのは人情だ。

 ちなみにこの人情も異世界勇者の冒険譚から学んだ。


「おっ…弟が!もう何日も食事をしてなくて。今日に…なって段々と動かなくなって…。」

 そこまで言うと完全に泣き出してしまっている。

 テイマーとしても人としても困っている亜人を放置しておくことはできない。


 ただ、全部を救えるかと言われればもちろんできはしない。

 俺は無力だ。

 でもその時の選択肢の中にこのまま放置というのはなかった。


 ただ、

「君がここでもし死刑になったらその弟も死んでしまうというのはわかっていたんだよね?」

 厳しくても現実を突きつけることが必要な時もある。

 彼は消え入りそうな声で「…はい」と一言だけ言った。


 何よりも現状を見て見ないことにはわからないので、

「まずは弟くんのところまで案内して。」

 そう言うと少年の目にさらに恐怖が見える。


「弟だけは勘弁してください。この世に生まれてきてずっと苦労ばかりしてきたんです。俺はどうなってもかまいません。もうすぐ弟は…お願いします。お願いします。お願いし…。」

 何度も地面に頭をこすりつけるように少年は俺に訴えてくる。

 最後の方は泣きながらだったので声になっていなかった。


「いや、君をどうにかするつもりならさっきの兵士に渡しているでしょ。とりあえずまずは現状を把握しないと次の行動もできないから。」


 そう言ってなんとか少年を弟のところまで案内させる。

 今日もすぐには家に帰れそうにない。


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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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