昼休みの食事
昼休み
俺とマリアはいつも通り屋上に来ていた。
マリアにたまたま知り合った友人が一緒に食事をしてもいいかと聞くと全然いいわよとOKしてくれた。
ただ、アスリアの顔を見た瞬間マリアが固まった。
こんな表情をするのは初めて見る。
なにか二人にはあるのかと思ったが、
「あっ…えっ…そのアスリアさん…ってもしかしてあの…。」
とマリアが何かを言いかけた時、アスリアが
「今はプライベートな時間ですので、気軽にアスリアと呼び捨てにしてください。」
そう言って笑顔でマリアに手を差し出した。マリアは何かを察したかのように、
「…アスリアさん初めまして、私はマリアって言います。よろしくお願いします。」
と握手を交わした。
知り合いかと思ったがどうやら初対面だったらしい。
「それじゃあみんなでお弁当食べるか。」
俺たちは3人仲良くベンチに座りお弁当の蓋を開ける。
俺のお弁当はお母さんが作ってくれたおにぎりに簡単なオークの生姜焼きだった。
オークの生姜焼きは時間がたっても肉が固くならず意外と美味しい。
アスリアのお弁当は…
なんだあれ。重箱がでてきた。
「あの…これみなさんも一緒に食べてもらってもいいですか?朝母に友達と食事をするって連絡をしたら急遽持ってきてくれて。」
今少し不穏なことを聞いてしまった気がする。
学校が始まってだいぶ日にちがたっているのに、友達と食事をするのが初めてという事だろうか。
「…アスリアさんいいんですか?私が頂いても。」
「もちろんですわ。ご飯はみんなで食べた方が美味しいに決まっていますから。」
アスリアさんのお弁当には見た事がないような食材がいっぱいつまっていた。
マリアが一つ食べてみると、
「美味しい!!こんなの食べたことがない。」
と大はしゃぎしていた。
俺も一つ頂くと、確かにものすごく美味しい。
昼ごはんでこれだけ豪華なものを作ってくるなんて、普通はなかなか出来る物ではない。
アスリアさんは
「今日は特別です。アルスさんへのお礼も兼ねているので。」
と言われ、マリアにどういう経緯で仲良くなったのかを問い詰められた。
話を聞いたら、私も一緒に朝訓練をしたいと話の流れが変わり、結局アスリアさんがMP切れをおこしても良い様に明日の朝から3人で訓練をする事になった。
小声でマリアが
「計画通り。」
とガッツポーズをしていたが深く追求はしない。
マリアのお弁当は小さいながらも彩り豊かに作られていた。
マリアは性格が若干…な時もあるが、基本的に家事全般をこなす。
将来絶対にいいお嫁さんになると思うのだが、今のところ良い相手はいない様だ。
それと、流れでなぜ朝MP切れを起こすまで訓練をしているのかを聞いてみた。
アスリアさんは少し困った様な顔をして
「私…せっかくだから従魔に守られるだけの女性じゃなくて、自分で自分を守れるような強い女性になりたいので。」
とだけ言っていた。
ちなみに、アスリアさんの従魔はクイーンウルフという上位魔獣で従魔待機室に預けてあるそうだ。
定期的にまだミルクを飲ませないといけないらしく、手がかかることが可愛いと言っていた。
俺のクラウドも本来ならばそこに預けるのだが、未熟児で生まれて魔力が安定しないという理由と、体格が小さいので他の従魔と一緒にいられると食べられてしまう可能性があるという理由でずっと一緒にいられる。
そのうち預けられるくらい大きくなってくれればいいが。
アスリアさんから、
「その…明日も一緒にご飯食べてもいいですか?」
と言われたが、俺たちは断る理由がないので快諾しこれからもみんなで食べることになった。
ただ、重箱でもってくるのは悪いから普通のお弁当にしてもらうことにした。
俺たちはなんだかんだ楽しくおしゃべりをしながら食事をすることができた。
最初表情が硬かったマリアも今は冗談を言ったりしている。
友達と何でもない時間を過ごせるこういう時間は非常に大事だ。
★
サイド アスリア
「あれ…っ私…」
気が付いたら大きな背中におぶられている。
なんかとても温かくていい匂いがする。
このままここで眠ってしまいたくなるほど気持ちいい。
小さな頃におんぶしてもらったお父さんの背中みたいだ。
もう少しだけ…このまま。
ウトウトとしてくる。
「ピギゥー」
白いトカゲが私の方を見ながら心配そうに首をかしげている。
あっまたアルスくんに助けてもらったのか。
段々意識がはっきりしてきた。
非常に申し訳ない気持ちになる。
男の人に今まで触れることなんてなかったのに。
心臓がすごいドキドキする。
この音がアルスくんに聞こえてしまったらどうしようかと心配になるくらい。
なにもしていないのに呼吸も…。
どうしたらいいんだろう。
思い切って声をかけてみたが、もう救護室の近くで結局最後までおんぶしてもらっていた。
うっ…恥ずかしくて目をあわせられないよ。
でも、ちゃんとお礼を言わないと。
そう思って私の口からでた言葉はなぜかお昼の誘いだった。
何言ってるの!顔がドンドン赤くなるのがわかる。
私なんかとご飯食べてもきっと楽しくないに決まっている。
でも言ってしまったのは仕方がない。
ダメかと思ったけどアルス君は普通にOKしてくれた。
家に連絡して美味しいご飯を作って持ってきてもらわないと。
今のクラスで私は浮いている。
私の立場はこの国の第3王女。
その肩書が私のまわりに誰も寄せ付けないようにしている。
私だって年頃の友達が欲しいのに。
恋バナだってしてみたい。
異世界勇者の話とかを友達としたい。
でも、それは貴族階級では許されない。
まわりでは遠巻きにひそひそと噂はしても近づいて来てくれる人はいない。
第3王女では仲良くなった時のメリットよりも、何か問題を起こして害になるデメリットのほうが多いのだ。
今のところ何か問題を起こすならば触らない方がいいというのがまわりの判断だろうけど。
だから、私を王女としてではなく普通に話しかけてくれるアルス君が嬉しかった。
きっと私が王女だってわかったら壊れてしまう関係。
それはまるで触ったら壊れてしまうガラス細工のよう。
いつかは壊れてしまうとわかっていても。
1分…1秒でもあなたに私のことがバレるのが遅くなればいいのに。
お昼を約束してアルスくんと幼馴染のマリアさんに会った。
マリアさんは多分私のことに気が付いている。
だけど、何も言わないでくれた。
もしできるならばマリアさんともいいお友達になりたい。
正直第3王女なんて何の権限も権利もないのよ。
籠の中の鳥でしかない私。
見た目や外交手段としてしか使われることはない。
もし、生まれが違っていたら、私にももっと違う人生があったかも知れない。
だけど、今できることを今やるしかない。
どうかこのままアルスくんと友達でいられますように。
そう願いを思いながらアスリアは久しぶりに楽しい食事をした。
こんな時間が永遠に続けばいいのにと思いながら。
変熊
「ねぇアルス君、私そろそろこの物語のヒロインとして学校にも登場したいんだけど。」
「うん。多分無理かな。」
「いや、だって私メインヒロインでしょ?」
アルス遠い目。
レノバが一生懸命ウィンクをしてブックマークと評価をお願いしている。
評価とブックマークをしますか?
あれ…評価数が急にすくな…( ゜Д゜)




