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魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
遠征編

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06 ぎすぎすクエスト(1)


 さて、そんなこんなで初の遠征である。


 今までEランク冒険者だった私は基本的にギルドのある町周辺のクエストしか受けられなかったし、ノラさんとの共同クエストもこの辺りに出てくる特殊なオークの討伐が目的だったので、やっぱり別の町や領地に赴くような機会はなかった。

 となれば同行者が異性であっても多少の興奮はあるもので、パトリシアさんの説明を一通り聞いて解散したあとは、わくわくしながら遠征の準備にとりかかった。


 とはいえ、さすがに今日の今日に出発……というのは難しく(突発的に決まったクエストなので私もフォンさんも準備なんてからきしだった)、出発は明日の朝という話でまとまった。

 なるべく早く向かった方がいいのは当然だが、慌てて向かって準備不足でした! なんて事態ことになったら目も当てられない。

 急ぐ必要はあるが慌てたり焦ったりしてはいけない、急がば回れということで、今日は準備の日になったのである。


 たまたま話が終わったタイミングで戻ってきたノラさんを捕まえ、これこれこういうわけで……と手短に経緯を話し、遠征に必要なものを尋ねると、まだ明るい時間だからと一緒に見繕いに出かけてくれた。

 そうして町中の冒険者御用達のお店で火打石とか、携帯食料とか、ノラさんの経験上必要なものやあった方が便利なものを現物を見ながら説明を受け、買い込んでいく。


 今回は目的地が(隣の領地とはいえ)町なので、そこへ向かうまでの備えをしていけば十分だし、帰ってくるときは向こうの町で足りないものを買い足して戻ってくればいい。

 でも、いつでもどこでもそれができるわけではないし、時には張り込みが必要になるクエストもあるから、そういう時はもっとしっかり準備をしていかなくちゃいけないよとアドバイスも受けた。


 今回の遠征から戻ってきたら、遠征が長期になる時はどれくらいしっかり備えて行かなくちゃいけないのか、時間がある時にノラさんから教えてもらおうと思う。

 遠征中に忘れたりしないよう、日記にメモしておかないと。


 買い込んだ荷物はその気になれば四次元ポーチに入る量だったが、今回の同行者は信頼関係も何も構築されていない風さんだし、そもそもモノによってはポーチの口よりもサイズが大きいものがあったので、少し大きめの鞄にまとめて入れることにした。


 とはいえその鞄もただの鞄ではなく、違和感を持たれない程度の容量の拡張と軽量化の魔法をかけてある特別な一品。

 これなら多少荷物が増えても問題ないし、移動距離が長くなっても持ち運びは楽ちん。デザインも機能性もばっちりというわけで、今後も鞄を重宝することが決定した瞬間である。


 それから――荷物の準備が一通り済んだあとは、泣く泣くノラさんと別れて食堂で同士を捕まえた。

 何故ってそりゃあ、今回のクエストが風さんと一緒だからに決まっている。


 女嫌いと噂の彼だけど、どういうことをしたらアウトなのかとか、事前にそう言った情報を仕入れて気を付けられるならそれがベスト。

 私だって同じギルドの、それも一番(ウィロウと)年が近い人相手にトラブルなんて起こしたくないし、関係が悪くなるなんてもってのほかなので、風さんと一番付き合いが長い……と言ってもせいぜい二、三カ月くらいの付き合いらしいけど、同士に話を聞いておこうと思ったわけだ。


 ……『本人がいないところでそういう話をするのはどうかと思う』って?

 知らんな、私と意見が相容れないぶんにはいいけど、そこについてとやかく言われる筋合いはないね。


 私は私なりに人付き合いを円滑に進めるため、かつ相手に不要な不快感を与えないための方法を考えて実行しているだけであって、別に悪いことをしているわけでもない。

 そりゃあ話を聞くために同士を脅したりとか、無理強いすれば『悪いこと』になるんだろうが、私はあくまでも『同士が知っている範囲で、なおかつ同士が話しても大丈夫だと判断できること』と前置きをちゃんとするから問題ないでしょ。


 と、いうわけで。



「風さん相手に気を付けたほうが良いことってある?」

「風ねぇ……。まあ、ヴィル殿なら特に気にしなくても大丈夫では?」

「うーん、この上なく投げやりで役に立たないアドバイス。もうちょっとカワイイ後輩のためになるアドバイスをしようって気はないんです??」

「カワイイ……? どこが……?? 小憎たらしい後輩の間違いだろ常識的に考えて」

「はァ??? この顔が可愛くなくてどの顔が……あっそうか、どっちかって言えばカワイイ系よりキレイ系の顔だった。ごめんごめん、今のは私が悪かったわ」

「そういうこっちゃねーんだよ」



 同士とはファーストコンタクトの時にちょっと揉めたこともあるので、会話のノリはだいたいこんなものである。


 ……良くも悪くもお互いに気安く、より身も蓋もな言い方をするなら雑なので、同士は私の中である種の特別枠と言っても過言ではないのかも。

 ノラさん推しの同士かつノラさんガチ恋勢だから、ウィロウに王太子的な意味での害が及ぶこともないしね。


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