表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
新人編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/134

20 晩酌は背徳の味とともに(1)


 最初の一体を片付けてから、時間の許す限り、私たちは町に近づこうとするオークを狩り続けた。

 途中から数えるのが面倒くさてやめてしまったので、ざっくりとしたおおよその数になるが、恐らく二十から三十匹くらいは燃やしたり凍らせたりしたかなと思う。


 袋に詰まった討伐証明を見て、まあまあオークの群れを削れたんじゃない? と私は考えたけれど、ノラさん曰く一割も減らせていればよい方だ、とのことで。

 ギルドの資料でオークは繁殖力がえげつないことは知っていたけど、そうか、そんなに多かったのか……と遠い目をしてしまった。


 私がギルドに期待をかけられる理由の一端を垣間見て、思わず宇宙猫を背負ってしまったのも仕方ないと思う。


 でもまあ、この辺りのオークたちが魔法攻撃の特訓にちょうどいいとわかったのは良い収穫だった。


 あれこれ試してみた結果、火属性だけに弱いのではなく、魔法攻撃全般に弱いこともわかったし。

 連中は頭が良くないので、隠れた場所からゆっくり試行錯誤しつつ、色々な魔法攻撃の練習ができるから本当に助かる。


 おかげでどの魔法属性と私の相性が良いのか調べることもでき、かつ、相性が身体うつわに左右されるのではなく精神なかみに左右されるようだという新発見もあったため、本当にオーク様様だ。

 ノラさんの都合さえ良ければ、ぜひまたオーク討伐に同行させてもらおう。


「次はノラさんの武器に魔法付与して、それが効くか試してみるのはどうかな?」

「魔法付与した攻撃が効くようなら、アタシもオーク連中に勝てるようになるってことか。いいね、試してみよう。手段が多いに越したことはないし、駄目なら駄目で考えなくちゃいけないこともあるからね」

「わーい!」


 今日の反省と次回の方針について話し合いながら、ゆったりした足取りで帰路を歩く。

 オークの襲撃は雪が降り始める頃まで続く上、私もノラさんもやる気満々ということで、この様子ならあまり期間を空けずに二回目のオーク討伐に来る運びとなりそうだ。


 今まで散々煮え湯を飲まされたぶん、ノラさんもいい加減やり返したい気持ちがあるのだろう。

 この辺りのオークの特徴や弱点を調べるのが主な目的とはいえ、ぎらりと目を光らせた彼女の殺意の高さに苦笑が漏れる。


 二回目の開催にあたり、多忙なノラさんのスケジュールが空くかどうかが何よりも心配な点と言えるのだが、よほどのことがない限り、今の時期はオーク討伐が何よりも優先されているそうで。

 急ぎのAランククエストさえ発注されなければ大丈夫だろう、とノラさんは話していた。

 ……ふむ。

 となると私は、いつでも行けるよう、なるべく万全の状態を整えておくようにしないといけない。


 魔法の練習や体力づくりは無理をしない程度──コンディションを整えるくらいにとどめることにして、あとは今日の成果を細々とレポートにまとめておくようにしよう。

 レポートは様子を見てギルドに提出するなり、ほかの冒険者おなかまたちに共有するなり、色々とできることはあるが……まあ、今のところは私自身ウィロウのためのおぼえがき、くらいのつもりでいる。


 ギルドには提出を求められたら提出すればいいか、くらいの本当に軽い気持ちだ。






 町に戻る頃にはとっぷりと日が暮れており、人通りもかなり少なくなっていた。


 草木も眠る丑三つ時にはまだずいぶん早いが、まあ、それでも遅い時間に変わりはない。 ギルドの食堂もだいぶ少なくなっていて、二、三人ほどが晩酌を楽しんでいるくらいのものだ。


 ヴィルちゃんおかえりー、とわずかに赤らんだ顔で手を振ってきた同僚たちにただいま戻りました、と手を振り返せば、彼らはワッと盛り上がった。

 ……私はどこぞのアイドルか何かか? と、はしゃぐ面々を横目に乾いた笑いが口をつく。


 私とノラさんはひとまずクエストの完了報告を済ませ、職員たちからの歓声を浴びたのち、身を清めて夕食にでもしようという話になった。

 なお、今回のクエストの報酬は出来高制という話で、明日以降の受け取りになるそう。正確な金額が出たところで、ノラさんとの分け前を話し合う手筈となっている……が、ノラさん曰く『初の快挙だし、もしかしたら金貨がもらえるかもしれないね』とのこと。


 本当にそんな事態になったら、そろそろ商業ギルドに預金用の口座を作るべき?

 いやでも、肌身離さず身につけている四次元ポーチに突っ込んでおいた方が、資産を把握しているのが自分だけになるのでむしろ安全なのでは……?


 うーん、このあたりも早いうちに方針を決めておかなければならない。

 私の財産はウィロウの財産に直結するので、保管はなるべくセキュリティが高いところにしたいし、取り出す時も私たちにしかできない状態がベスト。


 ……いっそ魔改造ポーチに本人認証をつけようか?

 個人の魔力による個別認証ができるなら、それが一番確かで安全なように思う。


 いっそう扱いに注意する必要が出てくるが、上手く行けば逆に注意の必要が限りなく減るかもしれない。

 レポート作成と並行してこちらにもチャレンジしてみよう、と頭の中のやることリストに追加しておくことにした。


昨日の投稿分で通算50話だったみたいです。びっくり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ