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魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
新人編

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15 ちぐはぐアバンチュール(1)


 ギルドに登録してからの二週間はあっという間に過ぎて行った。


 朝に受けたクエストを昼のうちにこなし、夕方に完了報告をして、それ以降は自由時間として近所の散策や物資の調達を行う。

 基本はこの日々の繰り返しだが、植物採集だけでなく、魔物討伐のような『いかにもファンタジー!』というクエストや、物資の配達といった地道なものまで、そこそこ色々なことを経験していると思う。


 しかし、やはり駆け出しのへっぽこEランク冒険者だからだろう、今の私が受けられるクエストはどれもこれもギルド近辺でこなせるもの──その日のうちに完結できるものばかりだった。


 パトリシアさんの話によると、冒険者としてのランクが上がれば近隣の町、領内、国内、国外と行動範囲クエストの幅が広がっていくらしいのだが、……悲しいかな紹介状を持ってギルドの門戸を叩いた人間の定め。

 私はランク上限がCに制限をかけられているため、領内をうろつくのが関の山なんだとか。


 まあ、BランクまたはAランク冒険者からの協力要請があれば、下位ランクの冒険者でも協力者として別の領地や外国に行くこともできる……といった抜け道があるのだが、私にその手の話は回ってこないと思われるので、さほど気にすることもあるまい。


 何せ私には初日のやらかしという悪い意味での実績があり、それはギルド内に広く知れ渡っている。


 あれだけの騒ぎを起こした私を連れ歩こうとする奇特な人はいないだろうし、そもそも最底辺(Eランク)の人間をAランクやBランクのクエストに同行させるメリットがない。

 そういうわけで、よほどの事情がなければ私にお鉢が回ってくることはまずないのである。


 ……そもそもの話、ギルドにA~Bランクの冒険者の層が薄い、というのも一理あるけれど。


「悪いね、ヴィル。待たせたかい?」

「ううん、全然。私もちょっと前に来たところだし、気にしないで」


 さて、話は変わって、今日はギルドの数少ないAランク冒険者であるノラさんとデートする日だ。


 ──なんて、ちょっと色気のある言い方をしてみたが、要は私がノラさんに取り付けたお茶の約束を果たす日が来た、というだけ話。

 それでも敢えて『デート』という言葉をチョイスしたのは、ノラさんとお茶できるのが楽しみすぎて、私が完全に浮かれきっているからだったりする。


 あれから二週間、チェスナットの実の採集をメインにお金はしっかり稼げているので、お茶をごちそうできる程度には貯えの余裕がある。


 朝と夜のどちらかはノラさんと食堂で一緒になることが多いため、そのタイミングで予定のすり合わせを行い、彼女の都合が良い日に私も合わせて日取りを決めたのが三日ほど前……だったか。


 ノラさんは実力も人望もあるAランク冒険者だから、クエストや同僚から引っ張りだこなのは日常茶飯事。

 であれば、時間に余裕のあるEランクの私が予定を合わせるのは当然だろう。


 ……元はと言えば、私の我儘に付き合ってもらうかたちで決まった約束だしね。

 それでも、『楽しみにしてるよ』とリップサービスと共に素敵な笑顔を大盤振る舞いしてくれるノラさんの優しさファンサは無限大。一生ついて行きたい。


「それで、今日はどこに?」

「私がいつもお世話になってるケーキ屋さんに行こうかな、と。ノラさん甘いのは平気だったよね?」

「もちろん! ヴィルがいつも納品に行ってる、広場の端のケーキ屋だろ? アタシもあの店に行くのはずいぶん久しぶりだなぁ」

「ノラさんも駆け出しのころはお世話になってたんでしょ? お店の人から教えてもらった。最近めっきり顔を見なくなったってぼやいてたから、行ったらきっと驚くよ」


 道すがら、町の人に挨拶を挟みつつ、気ままにおしゃべりして目的地を目指す。

 規模が小さい町なので大抵の人が顔見知りだし、ギルドの数少ない女冒険者として、私もノラさんも声をかけられることが多いからだ。


 とはいえ、声をかけられるといっても、世間話やちょっとした挨拶、あとは『今日は〇〇が安いよ』とか『いい肉が入ったから今夜飲みに来ない?』とか、お店への呼び込みが大半なのだが。

 珍しい女冒険者として顔がおぼえやすく、基本的には愛想よく対応するため声をかけやすい相手だと町民の皆々様に認識されているんだろう。


 ま、箱入り娘だったウィロウと同等の知識しかない私にとって世間話は新しい発見が多く、この町はごはんの美味しいお店ばかりなので、少なくとも損になった試しがないからいっこうに構わないのだけど。


「いらっしゃ……!?」

「おはようございます、オーナー」

「久しぶりに来たけど此処も変わらないね」


 お店に到着した直後、ノラさんの登場でオーナーは驚いて飛び上がっていた。


 ただでさえ彼女はAランク冒険者として町を空けることが多く、また、お店が開いている時間はクエストで出払っていることが常に等しい。

 そんなノラさんが朝早くから店を訪ねて来たことにオーナーが驚いても、それも仕方のないことなんだよということで、ここはひとつ。


お久しぶりの更新です。


ひとまず新人編の完結めどが立ったので、1日~2日に1度の更新ができそうです。

ざっと10話強くらいでしょうか? ヴィルとノラさんの日常にお付き合いのほどよろしくお願いします!


毎日更新がコンスタントにできる皆さんはやっぱりすごいなぁ……。

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