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魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
嘲弄編

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37 そして魔女はわらう(6)

昨日、一昨日はうっかりの積み重ねが原因で投稿できませんでしたすみません。

なんとかデータは取り戻せたので、ちょっと短いですが更新します(ここで切らないと切りどころがなくてズルズル続いちゃうから)。

 ……。

 ……、……。


 ……あの、ですね。


 こちとらただでさえ、身に覚えのない視線に困惑していたところなんですよ。

 もうわけがわからないよ! ってなっていたのに、そこへ追い打ちをかけるようにトンデモ発言するの、やめてもらっていいですか。……本当にやめてもらっていいですか(大事なことなので以下略)。



(いや本当、今この子なんて言った……?)



 発言を理解できないと言うより、脳が理解を拒んでいる感じ、だろうか。

 驚きやら困惑やら、色々な感情がまぜこぜのぐちゃぐちゃになって、完全に私の許容量を超えたキャパオーバーになったんだろう。


 思考の回転に強制ブレーキがかかり、発言の裏を読むこともままならなくて。

 ただ、なんと言ったらいいのか、ゴムの塊のように噛み砕くことも飲み込むこともできない発言の表面を舐めるのが……言葉通りの意味を捉えようとするのが精一杯、というか。わかりますこの感じ? わかって。わかれ(必死)。



「ぼくはね、ウィロウのことが父上よりも母上よりもアレクよりも、――この国よりもずっとずっと大好きだよ」



 どうしてかわかる? 現実逃避しないよう必死に思考を繋ぎ止める私をよそに、王太子はうっとりと恍惚の表情を……基、ねっとりと粘着質な執着をあらわに問いを投げかけてきた。


 知らねーよ(知りません)、と反射的な返答を取り繕えたのは我ながら奇跡だと思う。

 だって王太子って、本当に気持ち悪いくらいあの子のこと大好きだから……。


 何故か私にそれと同等の好意を向けられているこの現状、混乱しても取り乱さずにいるだけで十分に偉くないですか。


 もちろん、ぞぞぞっと背筋が震えたし、全身に鳥肌が立っているけれど。

 両手を掴まれたままじゃなければ、自分の腕をさすってたと思うけれど。


 もうさ、本当にさ、知らない人から一方的に好意を持たれるのも十分すぎるくらい気持ち悪いんだけど、蛇蝎の如く嫌っている相手から好意を持たれることの拒絶感? 忌避感? もまたすさまじいよね……。



「さすがの君にもわからないか」

「そうですね。ところで手を離してもらえますか」

「じゃあ教えてあげるね」

「いえ結構です。とりあえず手を離して欲しいんですが」

「それはね、ウィロウだけが()()()()()()()()()()からなんだ」

「人の話ちゃんと聞いてくれません?」



 心の中でひとしきり騒いだからか、ちょっとだけ頭が思考力を取り戻した。

 すると改めて、両手をがっしりと掴まれていることが気になってきたもので、どうにか剥がせないかと抵抗を試みたり、言葉で訴えかけてみたり。……まあ、悲しいかなどちらも望む結果にはならなかったんですけども。


 ……え? 『話を聞いてないのはお互い様だろ』って?


 いやいや。いやいやいや。

 考えてもみてほしいんだけど、私が両手を拘束されているってことは、王太子に抵抗する手段を奪われていることに等しいわけ。


 そりゃあ魔法っていう便利な力はあるけど、あれ、意外に扱いが難しいんだよ。


 実際に自分で使ってみれば、なるほど確かに万能な力ではあった。

 想像(イメージ)したことを現実に落とし込むことができる、夢のような摩訶不思議パワー。

 一般的にはRPGに出てくるような、規格の決まりきった事象しか起こせないけれど。ウィロウの持つたっぷりな魔力と卓越したセンスのおかげで、魔力を使って髪を染めたり、四次元ポーチを作ったり、かなり好き勝手させてもらっている。


 ……ただし、平静を保っている時であれば、という注釈がつくけれど。


 要するに、魔法という摩訶不思議パワーは想像力……ひいては精神力に依存するからこそ、冷静さを欠いていると効果が安定しなくなりがちなのだ。

 ちょっと火をつけるだけのつもりが建物ひとつ消し炭にしてしまうほど大きな炎になってしまったり、少し風を吹かせて洗濯物を乾かすつもりが竜巻になってしまったり。特に魔力の制御がきちんと身についていない小さな子どもが起こしがちなトラブルで、もちろんウィロウにも、私自身にも身に覚えのある話だったりする。


 そういうわけで、王太子に両手を拘束された現状はまずい。とてもまずい。

 単純に両手を使った抵抗だけではなく、魔法での抵抗も封じられているに等しい状況に、危機感をおぼえてじたばた足掻くのは当然の権利だって主張したい。


 ……そりゃあ、この辺り一帯を更地にしてもいいなら、なりふり構わず魔法をぶっぱなすんだけどさ。この建物がどこにあるかわからない以上、周囲に被害が出るような方法はなるべく取りたくないんだよね。


 ただでさえ、今の王都は年の瀬のマーケットで人が溢れているから。

 いくらウィロウを守るためだからって、ウィロウが大切にいつくしみたいと願うものを傷つけるのは、本末転倒だよなぁと思うわけで。



(……本当、難しいんだよなぁ)


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