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魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
嘲弄編

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15 さあさお立ち会い!(3)

「よ、ラッセル。風も。王都で会うなんて奇遇じゃないか」

「!!?!??!?!!?!?」

「驚き過ぎでは??」



 思うところは色々あるけれど、せっかくこのだだっ広い&普段以上に人でごった返している王都で馴染みの顔に会えたわけだしねってことで、ノラさんと連れ立って彼らに話しかける。

 ……もしも彼らが王都に着いたばかりで、なおかつ数日滞在の予定があるなら一緒に宿を探せばいいし、彼らの方が先に到着していてすでに宿も取ったあとであれば、同じ宿を紹介してもらえるかもしれない。

 そんな『あわよくば』の打算も込みだけど、マ、このあたりは同じギルドのよしみ、もしくは持ちつ持たれつって感じかな。

 不慣れな土地での助け合いの精神はとても大事だと思います、うん。


 事前にこちらに気付いていた風君はこれといって驚く様子もなく、けれども今回は慣れていない人(ノラさん)がいるからか、無言で小さく会釈を返してくるだけの挨拶で。……ああ、そういえば私も、風君と一緒に遠征に行く前はこんな感じの対応をされていたなぁとちょっぴり懐かしくなる。

 まあ、そうは言っても仲良くなったのはこの一ヵ月での話なんだけどさ。

 なんだろう、私がよく話す相手ってそんなにたくさんいるわけじゃないからかもしれないけど、まだ仲良くなって日が浅いってことをつい忘れがちになっちゃうんだよなぁ。


 何はともあれ、普通に挨拶を返してくれた風君はいったん横に置いといて――問題(?)なのは同士の方。

 どうやら同士は私たちが、というかノラさんが肩を叩いて声をかけるまでこちらにまったく気付いていなかったらしく、声をかけられた途端に文字通り飛び上がったのだ。

 ……もうさ、ほんとさ、びっくりしすぎて目を白黒させたガチムチのおっさん(げんかいおたくのすがた)がその場でのけ反るようにして飛び上がる絵面の強さね。

 ほんとね、笑えばいいのか引けばいいのかわからないね。はは。


 ……、……いやでも、うーん……?

 確かに、同士は私と同じくノラさん推しなわけだし、町中でいきなり推しに声をかけられたら驚くのもパニックになってしまうのもわからなくはないけど、いかんせんこれはリアクション大きすぎない? って気がしてしまうんだよな。

 風君にここまで連れてこられたというか、たぶん風君に頼まれてここまで連れて来てくれたんだろうし、同士だってある程度の話は聞いてから来てるはずでしょ?

 なのになんで、同士はこんなお笑い芸人さながらの特大リアクションでノラさんを見て驚いてるわけ……?



「私たちが王都に来ること、風君から聞いてたんじゃないの?」

「●×*λ▽※◆β◎□Γδ!!!!!」

「なんて??」

「ちょっと人間の言語で喋ってもらっていいですかね??」 



 呆れ半分、戸惑い半分で直接訊いてみたはいいが、同士から返って来た答えは残念ながら私たちが理解できる言語じゃなかった件について。

 肩を掴まれてめちゃくちゃガクガク揺らされているから、同士がわりとガチ目に取り乱しているらしい、ということはわかったけど……肝心の理由がわからないんじゃどうしようもない。

 私の隣にいたノラさんも、同士の謎の言語に戸惑いながら『なんかいつも以上におかしいぞコイツ……』って感じでわりと、いやだいぶ引いているっぽいし、同士お前ほんとそろそろ落ち着かないとノラさんの中での株が落ちるから冷静になれ??



「? 言ってないが」

「っとと、風君ありが………………言ってない?」



 それまでずっと黙って私たちの話を聞いていた風君はと言えば、私の肩を掴んで揺らす同士の手を不愉快そうにはたき落とすと、不思議そうな顔をしながら会話に口を挟んできた。

 さらりと、もといしれっと挟まれたその発言を飲み込むまでにかかったロードタイムはおよそ数秒。

 同士から解放された際、よろめいた身体を支えてもらったお礼を言いかけて――数秒前の発言の意味を理解した私は、感謝の言葉もそこそこにギョッとした目を風君に向ける。



「言ってないの?」

「ああ。ヴィルが王都に行くらしい、という話はしたが……そういえば、ノラの話はしなかった」

「……言われてなかったの?」



 たいして気にしていなさそうな風君の答えを受け、改めて問いかけると、同士はブンブンと激しく何度も首を縦に振った。

 ガチムチのおっさんの涙目とか誰得だよ……と素直な感想が浮かぶけれど、それもいったん横に置いといて。

 これは確かに同士が取り乱すのも、人間の言語をなくしちゃうのも納得だなぁと思わず哀れみの目を向けてしまった。


 だってさ、要するに今の同士の状況って、なんの前情報もなくいきなりガチ恋してる推しから肩を叩かれて『来ちゃった★』されてるようなものってことじゃん?

 想像しただけでもあまりにも心臓に悪いし、気の毒すぎるんだよなぁ……。


 推しにガチ恋って感覚はわからないから、本当の意味では同士の気持ちをわかってあげられないんだろうけど。

 それでも、ほら、遊んでるソシャゲの公式生放送とかでなんの前触れもなく推しの新情報……新衣装とか新しいスチルとか出たら、オタクって軽率に死ぬじゃん?

 たぶん今の同士ってそれに近い感覚なんだろうなってことは理解できたから、両手で顔を覆ってしくしく泣いてるガチムチのおっさんをちゃんと慰めてあげようと思います。


 ……。

 ……、……。


 ……風君にはのちほど同士(オタク)の取り扱いについて話をするとして。

 それはそれとして、今の絵面もなかなかにやばそうだなぁ……。

ラッセルには今回採用した驚愕パターンのほかに絹を裂くような甲高い悲鳴を上げさせようか迷ったんですけど(女子かな?)、衆目のある場所でそれは可哀想かと思って驚きすぎて声が出ない方にしました。

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