#194 外部コラボの連絡と、いつも通りの昼休み
『今週の土曜日になりました』
日曜日の夜。
杏実お姉ちゃんとのコラボ配信を終えた次の日の夜、らいばーほーむ用のスマホにマネージャーさんから電話がかかってきました。
「えーっと、その口ぶりからして、コラボですか?」
『はい。さすがに慣れましたね』
「あ、あはは、何度かこういう感じで言われてるので……」
さすがに慣れました。
突然記念コラボのことを言われたり、ゲームの声優のお仕事をしたり。
「それで、今回は誰とコラボになったんですか?」
『外部コラボです』
「……ふぇ?」
『ですから、外部コラボです』
「外部コラボっていうことは……前にお話ししてた……?」
『はい。あの話題が出た時のすぐ後に会議がありまして。その時にどこの事務所とコラボをするか、ということを話し合いました。で、ちょっと前に決まって、向こう側の都合のいい日程が送られてきましたから。あ、今週の土曜日、何か予定があれば全然移動できますので。遠慮なくおっしゃってください』
「あ、いえ、特に用事もないので大丈夫です」
『それならよかったです。それで、今回の配信なんですが、桜木さんが相手の事務所に赴いてのオフコラボとなりました』
「初めてなのに大丈夫なんですか!?」
そう言うのって、最初は普通にオンラインでのコラボじゃないの!?
え!?
『さらに言えば、相手の事務所は普通に大手ですし、コラボ相手自体も登録者数的には100万人くらいです』
「ふえぇぇ!? い、いきなりハードル高くないですか!?」
『いえ、むしろ向こう側のライバーさんが神薙みたまとコラボするということでものすごい震えてるらしいです。死亡という意味で』
「僕の扱い、他の事務所からどう見えてるんですか!?」
『まあ……見る者を魅了し、強制瀉血で見事に失血死させてくる核兵器、ですかね』
「核兵器扱いなのは同じなんですね……」
本当に、神薙みたま……というより、栞お姉ちゃんの方もおかしいもんね……。
『ちなみにですが、相手の事務所が東京にあるので、東京に行ってください。あ、交通費は支給しますのでご安心を』
「あ、それはいいですけど……えーっと、ちなみに場所って……」
『三田ですね』
「三田……」
『えーっと、港区ですね。正確には港区三田です』
「結構遠いですね!?」
『ちなみに、桜木さんの自宅的に、浅草駅で降りて、都営線の方の浅草駅に乗り換えるのが一番早いです』
「あ、なるほど、わかりました」
『後日事務所への地図と入館証を事務所用のスマホに送りますので、間違って消さないようにしてくださいね』
「わかりました。えーっと、ちなみに相手は……」
『ぷりしんぐという事務所に所属している、鈴芽るいさんですね』
「それってたしか、結構大きな事務所……でしたよね?」
『結構というか、ライバー数と規模感、年数で言えば、まあ、ウチ以上ですね』
「えぇ!? そ、そんなすごいところとコラボするんですか!?」
予想外過ぎる相手とのコラボに、僕は思わず声を上げた。
あっさりと言われる名前にしては、その、すごいような気がするよぉ!?
「てっきり、らいばーほーむと同じくらいの規模の場所とやるのかと……」
『今回に関しては、他の事務所からの打診で決まりましたからね。選考基準としましては、炎上が少なかったところですね。VTuberは大なり小なり炎上があるものですが、相手は少ない方でしたので。まあ、らいばーほーむは炎上がなぜかないんですが……』
「なぜかって……」
でも、たしかにらいばーほーむが炎上してるのは見たことないかも?
僕だって、何か炎上するかも、って思ってたのにそんなことはないし……うーん?
『まあそれはいいとしまして。今回のコラボ配信ですが、今回は相手の配信にお邪魔する形になります。あと、普通にサプライズになってます』
「サプライズ、ですか?」
『はい。現状、コラボを知ってるのは向こうの運営と鈴芽るいさん本人、あとはらいばーほーむのスタッフと今知った桜木さんくらいです』
「ということは、配信日まで秘密にする、っていうことですか?」
『まあそうですね。とはいえ、桜木さんの場合は何かこう、ぽろっと言っちゃいそうな雰囲気があるので、四期生の例の人とか、御友人相手にはある程度言っておいた方がいいかもしれません。手助けしてくれるかもしれませんし』
「そ、そうですね……」
僕に対する信用がその、低いような気が……。
でも、たしかにマネージャーの言う通り、柊君と麗奈ちゃんには言っておいた方がいいかも。
間違えて僕が言っちゃいそうになるかもしれないし。
『あ、もちろん他言無用ですので、そこはご注意を』
「はい。……ところで、時間については?」
『予定では16時となっております。配信時間は大体二時間くらいですね』
「なるほど……」
『というわけですので、細かいことについては詳細について書かれたメールに記載しておきますので、そちらを確認してください。それでもわからない場合は、こちらに連絡していただければと思います』
「わかりました」
『では、私はこれで失礼します』
「はい、ありがとうございました」
『いえいえ。では』
というわけで、通話終了。
「……外部コラボかぁ……」
通話が終わってから、ぽつりと零す。
僕自身、VTuberのことはあまり詳しいわけじゃないし、見てたのはらいばーほーむくらいだったり……。
ほかの事務所も、ちらっと見たことがあるくらいだったっけ。
その前に色々と知っておかないとかな。
◇
「というわけで、コラボすることになったんだけど……」
「「そう来たか……」」
翌日、お昼休みにいつも通りのメンバーでご飯を食べながら、昨日の夜にあったことを二人にお話しすると、二人は苦笑いを浮かべました。
あ、今日は柊君です。
「なのでその、今週一週間、僕が口を滑らせないようにしてほしいなぁって……」
「了解だ。まあ、基本的に椎菜は人が多い場所では濁した話し方をするから問題ないが、何かふとした拍子で言う可能性があるからなぁ……」
「だねぇ。まあ、そのための私たちだもんね! おっけーおっけー!」
「ありがとう、二人とも」
よかった、二人とも協力してくれるみたいだし。
「それでなんだけど、今回のコラボ相手ってどういう人かわかる?」
「前に何度か見た程度だが……基本的にはアイドル売りに近いような事務所のライバーで、明るいタイプ且つ、テンションがやや高めな人だな」
「ふむふむ……」
「あと、歌が上手いっていうのと、何かと不憫っぽい感じのキャラクターって感じか?」
「なるほど……うん、お家に帰ったら見てみるよ」
「それがいいと思うぞ」
「コラボ相手なのに、何も知らない! っていうのは、ちょっと問題だもんね」
「うん。らいばーほーむじゃないVTuberさんとのコラボだから、ちょっと緊張してるし不安なんだけどね……」
「だろうな」
らいばーほーむでは、もともとコメントで関わってたり、そもそもお姉ちゃんもいたから不安は少なかったけど、今回は一切関りがない人だから色々と不安……。
「もしかしたら迷惑をかけちゃうかもしれないって……」
「「それはない」」
「ふぇ!?」
「椎菜の性格で誰かに迷惑をかけるはないだろう」
「うんうん。あるとしたら……椎菜ちゃんの可愛さで失血死させることくらいじゃないかな?」
「それは普通に迷惑になってないかなぁ!?」
そもそも、失血死がおかしいと思うけど!
「まあ、失血死自体は最近珍しくなくなってきたしな」
「珍しくなくなっちゃダメじゃないかな、それ……」
「まあ、らいばーほーむ……っていうか、椎菜が原因なんだけどな、それ」
「う、うぅん、僕自身はよくわからないんだけどなぁ……」
だって、僕なんかの行動で、なぜか吐血したり鼻血を出したりするわけだし……。
僕はともかく、栞お姉ちゃんならわかるんだけど。
「無自覚なのが一番質悪いと思わないか、朝霧」
「だねぇ。まあでも、それを理解して、殺しまくる椎菜ちゃんっていうのもそれはそれで解釈違いだけどねー」
「それはそうだな。僕可愛いでしょ、とか言ってくる椎菜はなんか……嫌だな」
「というより、椎菜ちゃんの性格的に、ぶりっ子が一番似合わないっていうか、かなり遠い性格な気がするよ、あたし」
「まあ……そうだな。というより、もともとが男だからな、椎菜は。遠いのも当然と言えば当然だ」
「それもそっか」
「えっと……?」
「あぁ、なんでもない。……しかし、外部コラボか……」
「やっぱり、柊君も心配かな……?」
「ある意味な。さっきも言ったが、生で椎菜と会うことになるんだろう? どう考えても相手が死ぬと思ってな」
「それこそ、高宮君や星歌先生くらいの耐性持ちじゃないときついよね」
「そ、そこまで……? らいばーほーむの人は、まあその、うん、まだわからないこともないんだけど……外部の人はそうはならない、んじゃないかな……?」
だって、僕よりも長く活動してるはずだし、当然可愛い人たちとは何度もあってるはずだもん。
なら、僕相手だとそんなことにはならないんじゃないかなぁ……。
なんてことを思っての言葉だったんだけど、二人はなぜか顔を見合わせてから、生暖かい眼差しで僕を見ながら、
「「椎菜(ちゃん)がそう思うならそうなんだよ」」
「どういう意味!?」
「まあ気にするな。……だがまあ、放送事故にならなきゃいいんだがな」
「あ、うん。そうだね。僕、失敗しないようにしないと……」
「椎菜ちゃん、高宮君が言ってる放送事故って、多分そう言うことじゃなくて、らいばーほーむ恒例、椎菜ちゃん以外全員死亡ENDっていうタイプの放送事故のことだと思う」
「……さ、さすがにないから!」
「いや、今回は初の外部コラボで、尚且つ初対面の相手……確実に椎菜が緊張して高火力且つ、広範囲攻撃をしてくるだろうな。そうなった場合……間違いなく、相手は死ぬ。いわゆる即死呪文って奴だな」
「そんな物騒な物はないよ!?」
「でも、椎菜ちゃんって最初の頃は結構緊張してたよね」
「そ、それはまあ……だって、みんな綺麗な人や可愛い人ばかりだもん……僕だって元々男だから、緊張もするよ……?」
むしろ、緊張しない人の方がすごいと思います、僕。
「だろうな。もともと、椎菜自身は目立つことを好まないタイプだったし、自分から仲良くなりに行くっていうタイプも出ないからな。……まあ、今はらいばーほーむでの活動によって、かなり改善された……っていうか、大きく成長して、目立つこと自体も問題なくなってるからな」
「言われてみれば……」
たしかに、柊君の言う通り、最初の頃よりも遥かに成長してる気がしてきた。
もちろん、恥ずかしいっていう気持ちが完全になくなったわけじゃないけど、それはそれとしても楽しいの気持ちが勝ってるおかげか、最初の頃のようにガッチガチに緊張する、なんてことはなくなったかも。
「まあ、だから多分大丈夫だろ。いつも通りで行けばいいさ」
「……うん、そうだね」
「今後、外部コラボが増えるかどうかもわからないが、参考にさせてもらうよ。俺にも回ってくる可能性はあるからな」
「うん、頑張るね!」
「おー、この疎外感。まあでも、あたしはらいばーほーむのスタッフになりたいって思ってるし、問題はなし! 色々と私も参考にするね! 将来の!」
「うん!」
まだ先のことではあるけど、二人にこう言われたら頑張れる気がした僕は、両手で握りこぶしを作って気合を入れました。
……大丈夫だよね?
正直、そのまま当日に行くか、一週間の間の話をちょこっと書くかで迷ってます。
ただ、特に何も思い浮かんでないんで、高確率で当日になるかなーって感じ。さすがにまた閑話やるわけにもいかないからね。




