#193 出張みたま家事サービス前、なんか重いギャル
翌日。
「じゃあ、行ってきます!」
「「いってらっしゃーい!」」
「気を付けてね、椎菜」
「うん!」
今日は久しぶりの出張みたま家事サービスの配信をする日です。
相手は杏実お姉ちゃん。
13時頃に始めようと思ってるので、今日は11時頃にお家を出ることに。
今は、みまちゃんとみおちゃん、それとお母さんの三人に見送られてるところです。
そう言えば、最近はあんまり玄関先で二人が駄々をこねることがなくなったような……?
成長は喜ばしいことだけど、ちょっと寂しいような、そうでもないような……。
「二人とも、いい娘でお留守番するんだよ?」
「「はーい!」」
「うふふ、すっかりお母さんね」
「実際に母親だからね」
そんなやり取りをしてから、僕はお家を出発。
先にお買い物をしたいので、一度商店街によってから電車を利用して浜波市へ。
浜波駅前に到着したので、荷物を自分の横に下ろしてからベンチに座って杏実お姉ちゃんが来るのを待つ。
「ちょっと多かったかな? うーん……まあ、大丈夫かな。うん」
お買い物袋(自作)の中に入ってる食材を見ながら、そんな心配事を零したものの、すぐに問題ないと判断。
僕が作るお料理、なぜかすごい勢いでなくなるからね。
もちろん、ちゃんと食べきれるようにはしてるつもりだし、多くとも一食か二食分程度しか余らないはずだし。
「それはそれとして……ちょっと早すぎちゃったかなぁ」
「うん、ちょっち早いねぇ」
「そっかぁ……って、杏実お姉ちゃん!?」
来るのが早すぎたかなという言葉を呟いた直後に、すぐ後ろからそれに同意するような声が聞こえて来て、そちらを振り返るとそこには杏実お姉ちゃんがにこにことした顔で立っていました。
「やっはろー、椎菜っち! 相変わらず早いねぇ!」
「ご、ごめんね? もう少し遅い方がよかったかな……?」
「んーや? むしろ、相手を思って早く来ることはいいことっしょ。社会に出ると、十分前、五分前行動は当たり前だしね。ただまぁ、あんまり早すぎても、相手が申し訳ない気持ちになる場合もあるから、そこは場合によりけりってとこ?」
「なるほど……たしかに、待ち合わせしてた人が早い時間来て、待ってたらちょっと申し訳ない気持ちになるかも……」
「そそ。善意って、時として申し訳なさを植え付けることになるからねぇ。まあ、今はまだまだ学生だからいいとは思うけど、大人になったらもうちょっち遅くてもいいと思う」
「ふむふむ……ありがとう、杏実お姉ちゃん! あらかじめそういうことを教えてもらえるのはすごくありがたいです!」
「ま、あーしは今はフリーだけど元は会社勤めだったし、これくらいはね。あと、椎菜っちも高校生とはいえ、一応会社に勤めてるようなもんだし、そこはねー。こーゆーのはね、あらかじめ先輩が教えるのが当然!」
「カッコいいね! 杏実お姉ちゃん!」
そう言う杏実お姉ちゃんがかっこよくて、笑顔でそんなことを杏実お姉ちゃんに伝える。
杏実お姉ちゃんってすごく天真爛漫な感じがあるけど、こういう考え方はすごくしっかりしててカッコいいと思います。
というより、らいばーほーむの社会人の人たちは、みんなお仕事に対してはすごく真面目だから尊敬してます。
「お、そうそう? いやぁ、椎菜っちに純粋な尊敬の眼差しに向けられるの、めっちゃ気持ちがいいっしょ!」
「僕、みなさんのことは尊敬してるので!」
「それ聞いたら、千鶴っちとか憤死しそう」
「なんで!?」
「ま、そんなことはよくて……椎菜っち、それ食材?」
「あ、うん。今日使うものです! お昼と夜分!」
「やた! んじゃ、ささーっとウチ行こ! 早く冷蔵庫に入れないとっしょ!」
「うん!」
お話もそこそこに、杏実お姉ちゃんのお家へ向かいました。
◇
「そう言えば、恋雪お姉ちゃんと藍華お姉ちゃんの二人と配信した時に、杏実お姉ちゃんも途中で来たよね」
「あの時はマジ嬉しかったし。ってゆーか、椎菜っちのお手製鍋美味しかったし!」
「えへへ、それはよかった」
たまたま杏実お姉ちゃんが一緒のマンションだったし、ちょうどよかったしね。
結局、綺麗に食べきれたしね。
あと、いっぱい食べてくれるのってすごくありがたいし、すごく嬉しい。
「そう言えば、ここに来る他の人たちはそれぞれのお家にいるのかな?」
「恋雪っちは寧々っちと一緒にゲームしてて、藍華っちはゲーム制作の方するって。男子メンバーは……あぁ、そう言えばゲームのテストプレイするって言ってたかな」
「ゲーム……あ、もしかしてあれ?」
「そそ! ちな、恋雪っちと寧々っちも多分それ。もうすぐDLC以外は完成するんよ。だから、近いうちに全員で集まって、最終制作! ってなってるよ」
「なるほど。そう言えば、前に恋雪お姉ちゃんと千鶴お姉ちゃんの二人が、ゲーム制作用のお部屋を買ったって言ってたような……?」
「あぁ、あれねぇ。制作メンバーは普通に使ってたり」
「あ、そうなんだ」
「いやぁ、かなりいい環境でさー。なんでも、にこにこ現金一括払いで買ったらしいんよね」
「そうだったんだ。……なんだか申し訳ないような……」
「ん、なにが?」
お話を聞いていると、ちょっと申し訳ない気持ちになりました。
しゅんとした僕を見てか、杏実お姉ちゃんが疑問符を浮かべながら、そう訊き返す。
「あ、えっと、前に応援するねって言って、、実際にあんまりできてないので……」
「あー、そゆこと? 別に気にしなくていーし! ってゆーか、後日全員集まるんだし、そん時でいいから!」
「ほんと?」
「ほんとほんと! あと、椎菜っちは後日声の収録しなきゃだかんね」
「あ、そう言えば……」
「椎菜っちは最悪後回しでも大丈夫……ってゆーか、最後の方が何かと都合がいいから! なーんて理由で椎菜っちと栞パイセンの二人は止まってんよ」
「なんで!?」
「ぶっちゃけ、テストプレイ時に可愛さで殺されまくって、デバッグが進まないから」
「えぇぇぇ……」
なんという、おかしな理由だったんだけど……。
いやでも、なぜかいつも血を吐いたり、鼻血を流したりしてるし……やっぱり本気、なのかも?
「ま、その辺りも配信で話そ話そ!」
「うん!」
「と、ゆーわけで……はいとうちゃーく! えーっと、鍵鍵~……お、あったあった。ほい御開帳! さ、入って入って!」
「お邪魔します!」
そうこうしているうちに、杏実お姉ちゃんのお部屋に到着。
そのまま、テンションが高い杏実お姉ちゃんに言われるまま、お部屋に入ると……
「ここが杏実お姉ちゃんのお部屋……!」
「一応、椎菜っちに怒られない程度は保ってるつもりだけど、どうよ?」
「うん、全然大丈夫! というより、前回前々回と比べるのもおこがましいというか……」
「んまー、あれは誰が見ても呆れるんよ」
「……恋雪お姉ちゃんと藍華お姉ちゃん、ちゃんとしてるのかな?」
「さぁ?」
なんだか怖いし、近々抜き打ちチェックに行こう。
なんてことを思いつつ、お部屋の中を見て回る。
基本的になお部屋の構造なんかは恋雪お姉ちゃんと藍華お姉ちゃんと同じだけど、置かれてる物なんかは全然別物。
だけど……
「なんだか物が少ないね?」
思った以上に、杏実お姉ちゃんのお家は、あまり物がありませんでした。
「んー、まー、ミニマリストに近いからね、あーし」
「そうなの? なんだか意外……。てっきり、ゲームが多いのかな? って思ってたんだけど」
杏実お姉ちゃんってよくゲームに関する配信をしてるから、お家の中はゲームが多いのかなー、なんて思っていたんだけど、そうじゃなくてびっくり。
それどころか、物がかなり少ない。
「あぁ、それはあーしの仕事部屋。あと、ダウンロード版で買うこともあるかんねー」
「あ、そういうことなんだね」
「ちな、あのテレビって、実はチューナーレステレビ」
「チューナーレステレビ?」
「あり? 椎菜っち知らない?」
「初耳!」
「そっかー。まー、あれだよあれ。テレビ番組は見れないけど、サブスクとかYoutubeなんかは見られるテレビ」
「へぇ~、そういうのがあるんだ! でも、なんで?」
「ん~……あーし、あんましテレビ見ないし、好きじゃないんだよねー。あぁ、アニメは好きだよ? でもねぇ……色々と黒い噂なんかを知る機会も多いし、何より偏向報道多いじゃん? 信用できねー、ってなって、買い替えてすっぱり解約! ってね!」
「な、なるほど……」
「ってゆーか、テレビ番組見るんなら、それもサブスクで事足りるし」
「それはたしかに」
僕のお家でも、必要だから登録してはいるしね。
実際、みまちゃんやみおちゃんはそれでアニメをたくさん見てるから、結構ありがたい。
世のお父さんやお母さんが、とりあえず困ったら見せておけばおとなしくなる、って魅せる理由がわかるくらいには。
「それにしても……リビングなのに、あるのがテレビとテレビラック、それからテーブルとソファー、時計くらいなのが……」
「これくらいで生活できるしねー。ってゆーか、実家が結構物多かったから、その反動もある感じ?」
「そう言えば、お嬢様なんだっけ」
「あんまいい思い出はないけどねー」
「そうなの?」
「学生時代にちょっち」
「そうなんだ」
杏実お姉ちゃんって、すごくこう……元気いっぱいで快活な印象があるから、てっきり学生時代もそう言う感じなのかなって思ってただけに、いい思い出がないのは意外……。
あ、でも、お金持ちだと色々と大変なことがあるのかも。
と、そこまで考えたところで、
「そう言えば、杏実お姉ちゃんの昔のお話ってあんまり聞いたことないような……?」
そんな疑問が頭に浮かんできました。
よくよく考えてみれば、らいばーほーむの人たちって、少なからず過去のことをお話したりするけど、杏実お姉ちゃんだけはそういうのがほとんどなかった気がする……。
一応、普通に働いていた時のことは話してたと思うけど、学生時代とかその前のお話はあんまりなかったような……?
「あー、それ、わざと」
「ふぇ? そうなの?」
「そそ。あーし、こう見えて人生経験がかなり豊富でさー。ま、色々あったかんねー。……ちな、聞きたい?」
「え、あ、う、うーん……聞きたくはあるけど……杏実お姉ちゃん、あんまり言いたくなさそうな雰囲気だから無理して言わなくてもいいよ! 話したい! ってなった時に言ってくれれば!」
杏実お姉ちゃんの表情が、なんだか悲しそうというか、後悔したようなような表情だったので、僕は安心させるように笑顔でそう返しました。
「……そっか。やー、さっすが椎菜っち! 気配り完璧! 優しさ満点! マジ癒し!」
「ふぇ!? と、突然抱きついてどうしたの!?」
「いやぁ、椎菜っちがモッテモテるのも納得! って思って!」
「も、モテモテって……さすがにそれはないとは思うよ?」
「そんなまさかー! なんて。さて、そろそろ配信準備と行こうか!」
「あ、うん! 時間ももうすぐだもんね! お手伝いするよ!」
「さんきゅさんきゅー! じゃ、ぱぱーっとやっちゃお!」
「うん!」
何はともあれ、久しぶりの家事サービス、頑張らないとね!
やっぱこいつ重くない???
自分で設定作っといてなんだけど、このギャルなんか重いんだけど。
こいつだけ、なんか次元違くない? なんでこんなクソテンション高いの?
あと、なんかマジでまともな大人してんな、このギャル……まあ、金遣いは荒いけど。




