閑話#43 色々会議、主にみたまとかみたまとかみたま関連とか
まあ、そこまで濃くないからね! 普通の会議回だからね!
みたまによる、久しぶりの個人配信があった翌日の事務所内の会議室にて。
「では、会議を始めよう」
らいばーほーむの社長、雲切桔梗がそう切り出した。
時刻は十四時。
昼食を摂ってから一時間~二時間ほどなので、それはもう眠くなってくる時間だが、この場にいる者たちの表情は眠そう、などということはなく、むしろシャキっとしていた。
「今回の会議の議題はずばり。うちの看板娘の地位をほしいままにしている、神薙みたま……というか、まあ、みたまとリリス二人による二百万人突破記念配信の中身についてだ」
そう、今回の議題はまさにこれである。
イベントを終えたあの日からほどなくして、みたまは登録者数二百万人を達成。
それに続くような形で、リリスも二百万人を達成していた。
基本的に、VTuberというものは、特定の登録者数を超えると記念配信をやるものである(まあ、それ以外の投稿者たちもやるにはやるが)。
当然それはらいばーほーむも例外ではないのだが、三期生が入ってからというもの、全員おかしな伸びを見せたために、記念配信をやるタイミングがなかなかめぐってこなかったのである。
本来であれば、百万人突破記念などもやらなければならないはずなのだが、なんか気が付いたら核兵器のチャンネル登録者数が光の速さでカッ飛んでいたため、あっさりと二百万人を達成してしまったのである。
しかも、みたまは高校生であるために、少々時間がとりにくいところがあった。
それもあって、五万人記念くらいしかしてなかったのだが……ある程度落ち着いた時期だったこともあり、二百万人記念はやろうとなったのである。
そして、リリスの方も達成し、二人はロリピュアというユニットでもあるのでなら一緒に記念配信した方がいいだろう、という理由から二人での記念配信になった、という経緯でもある。
「あと、初の外部コラボをどこの事務所とやるか、というのもある。おそらく、そこそこ長い会議になると思うので、今日は出前を取るつもりだ。あ、ピザでいいかい? 私のポケットマネー出すから」
「社長、私は照り焼きチキンがいいです」
「私は魚介系のクオーターで!」
「私は肉が多いのを」
「私、トマト系!」
ピザを注文すると告げた瞬間、一期生~四期生のマネージャーたちからの要望が出た。
照り焼きチキンを頼んだのは一期生マネージャーの間宮。
魚介系のクオーターを頼んだのは二期生のマネージャー葛城。
肉が多いのをというふわっとした注文をしたのは、三期生のマネージャー廿楽。
そして、トマト系を頼んだのは、四期生のマネージャーとなった(押し付けられたともいう)高橋である。
一応、マネージャー以外のスタッフたちもいるのだが、常日頃からどぎつい仕事をしているマネージャーたちの注文を優先させた。
まあ、ピザならなんでもいいよね! というのが大体の気持ちである。
「了解だ。ではその方向で注文しておこう。ま、まだ先だがね。……では、どちらの議題を先に片付けるか……まぁ、すぐに決まるであろう、二百万人記念でプレイしてもらうゲームを決めた方が早いか。あと、サプライズも欲しいね」
「たしか、ホラーゲームでしたよね?」
「あぁ。リリスがホラーゲームを所望し、みたまを口説いたことで成立した」
「みたまちゃんが苦手な物なのに、よくひかりさんが許可出しましたね、それ」
「今は同居中だからね。怖がるみたまちゃんと一緒に寝られるぜヒャッハァァァァァ! というのが本音らしい。だから問題はないそうだ」
「なんといいますか、さすがですね……」
「そうは言いますけど廿楽先輩。先輩もわりと邪神さんと関わってません?」
「間接的にはね。それで、社長。いったい何をプレイさせるんですか?」
「そこだよそこ。おそらく記念配信の枠は、三時間になる可能性が高い。なので、雑談や電凸なども含めて考えても、ゲームは一時間半程度で終わるものがいいと思っているんだ」
『『『なるほど……』』』
そう言って、全員が考え込む。
みたまとリリスは、らいばーほーむ内でもトップの怖がりである。
みたまはあの記念配信の時に気絶してしまったし、リリスもホラーゲームは何度かやったことがあるのだが、大抵泣いてしまうという事態に陥っている。
そんな二人が、自分からホラーゲームをやる! と言ったのである。
となると、問題は二人がちゃんと最後まで気絶しないでプレイできて、尚且つ一時間半程度で終わるゲームだということである。
条件が割と狭いので、全員うーんと唸る。
「ちなみになんですけど、あの二人ってゲームが上手いかどうか未知数じゃないですか。それなら、誰でもクリアできるゲームの方がいいでしょうか?」
「いい発言だ、間宮。昨日の配信で、みたまは音ゲーが得意であることは発覚したが、それ以外は未知数だ。そもそも、今までにしたゲーム配信は、廃とデスクラだけだからね。まあ、廃をリベンジする、っていうのでもいいんだけどね」
「廃のリベンジ……あ、そう言えば、廃ってなんか追加コンテンツが来てませんでした?」
「……ほほう? 続けたまえ」
廃のタイトルを聞いた葛城が追加コンテンツについて口にし、桔梗の目が光る。
そして、その中身についての話をするように促す。
「えーっと、あの時プレイしたのは墓地と病院でしたけど、今回は廃ホテルらしいんですよね。しかも、墓地と病院に負けず劣らずの怖さらしいです!」
「なるほど? それは……ふふ、いいね。なら、リベンジマッチと行こうか。あの時は一人暮らしで、且つ一人での配信だったから気絶もしてしまったが、今回は二人だ。……よし、決まりだ。次の記念配信では、廃の追加コンテンツをプレイしてもらおうか! あ、サプライズにしたいので、当日までプレイするゲームは秘密、という形を取らせてほしい。なので、全員うっかり情報を漏らさないように」
『『『了解!』』』
案外あっさりとプレイするゲームが決まった。
とはいえ、まだ記念配信で決めることもある。
「では、プレイするゲームが決まったというところで、この配信ではサプライズを行いたい。何か案はあるかい?」
「社長、サプライズって言ってもどういう系で行くんです?」
「そうだね……ここはやはり、特別ゲストじゃないかい? ただ、らいばーほーむメンバーは特別でも何でもないので、それ以外から、ということになるが」
「そういう方向性ですか」
「誰かいい人いますかね?」
「思い浮かばない……」
「あの二人もらいばーほーむだから、生半可な人選はできないですよねぇ」
うーん、と再び唸る。
せっかくの二百万。
できればインパクトが強い人をサプライズ登場させたい、というのが社長の本音だ。
しかし、あの二人とてらいばーほーむなので、下手な者を登場させても存在を食われるだけだ。
その上、別の問題もあった。
「そもそも、あの二人と一緒ってなると、耐性が必須だと思いますよ」
そう、耐性である。
あの二人はその可愛さ、尊さ、そして百合百合しさから、一度組んで配信を行えば、数多の視聴者たちを可愛いの核爆弾で薙ぎ払い、尊さで心臓を打ち抜き、そして百合百合で口と鼻から出血させるという、一種の生物兵器だ。
ダメージは負いつつも死なない程度の耐性を持っている者ですら少数なのだが、完全耐性持ちともなると圧倒的に人数が少ない。というかほぼいない。
現状確認されているのは、四期生に新しく入った可変式TS病になった柊くらいだ。
それ以外では、イベント会場で柊と一緒にいた星歌もそうだが、あっちに関しては面識がないので今回はパスとなる。
それ以外に誰かいないか、と思案していると、間宮が手を挙げる。
「そう言えば――」
そう切り出し、間宮はとある人物の名前を挙げ、その人をサプライズゲストとして登場させたらどうか、という提案を行った。
それを聞いた桔梗は、
「面白い! なるほど、その手があったか! では、そちらとコンタクトを取ってくれ。まあ、ダメもとで頼むから、別に断られてもいい。その時は、まぁ、色々と考えればいいさ。なので、間宮、頼んだよ」
「わかりました。おそらく受けてくれるとは思いますが」
「それはわかる。結構お茶目だったからね。面白くなりそうだ」
そう言う桔梗の表情は、それはもういい笑顔である。
「さて、案外あっさりと決まってしまったが……ある意味では、こちらが本題と言っていいだろう。記念すべき最初の外部コラボを誰とやるか、だ」
「ちなみに、条件等は?」
「条件……そうだな。少なくとも、運営がしっかりしているところだね。つまり、クリーンな所だ」
「となると、過去に炎上がない事務所、ということですかね?」
「そうなる。まぁ、VTuberはなんか知らんけど炎上する、みたいなこともあるから、炎上したことがあっても、明らか不可抗力な場合は全然候補に入れていい。ウチに飛び火してもまぁ……全員メンタルおかしいし、そもそもうちはクリーンな事務所だ。炎上するとしたら……まあ、ひかり関連か、もしくはふゆりの本職が表に出た時くらいだと思うけどね」
『『『あぁ……』』』
桔梗の言葉に、この場にいる者たちは苦笑い交じりに納得した声を出した。
邪神はともかく、ふゆりの方の本職については本当にアレなので……。
「他に条件を付けるとすれば……やはり、らいばーほーむが好きであること、だね」
「それはそうですね」
「むしろ、嫌いな人とコラボはちょっと……」
「っていうか、最初に誰をコラボさせるんです?」
「みたま」
「鬼ですか」
「初手で核兵器を送り込むとか、完全に戦争をご所望と思われてもおかしくないですよ?」
「そこは普通、春風たつなとかじゃないんですか?」
「それも考えたんだが……ぶっちゃけ彼女だと、インパクトとしては薄いと思ってね。だったらもういっそのこと、うちのリーサルウェポンをぶっこんだ方がいいかなと。あとはまぁ……新規ファンの獲得とかね。それに、今回はうちのチャンネルでやるんじゃなくて、向こうにお邪魔して配信をしようと考えているんだよ」
割ととんでもないことを言っている桔梗だが、その中で配信方法について触れられた。
その内容というのが、コラボ先のチャンネルで配信を行う、というものだ。
「それはまた、どうしてですか?」
「なに、らいばーほーむは少々目立ち過ぎた。競合他社からすれば、目の上のたん瘤とまではいかないだろうが、あまりいい気分じゃないだろうね。特にほら、イベントの時に発表された例のゲーム機の件もあるし」
「あー、そういうことですか。……で、本音は?」
「ぶっちゃけ、らいばーほーむ側で配信したら、相手のライバーが可哀そうだよねって。だってほら……例の邪神とか、ロリコンとか、おぎゃリストとか、まあ、色々と厄介ファンみたいなのがいるしね。あと、らいばーほーむはこう言っちゃなんだが、ライバーも狂ってるけど、ファンも狂ってるんだよ。みたま警察とかみたま教がその最たる例だろう」
本音を尋ねられ、桔梗はそう答えた。
先ほど語ったこともある程度は本心なのだが、それ以上にこちらの方が100%の本心だ。
そもそも、他の事務所から見たらいばーほーむの印象は魔境の二文字なのだ。
実質的に、何かしらで狂っていないとらいばーほーむには入れない。
というか、個性がないと生き残れないのがらいばーほーむという魔境。
外部のライバーたちでさえ、下手な者は普通に食われてしまうわけだ。
そして、そんならいばーほーむメンバーの配信にお邪魔しようものなら、ライバーだけでなく、視聴者たちからの洗礼を受けることにもなる。
結果、相手のライバーが色んな意味で死にかねない、というわけだ。
あと、みたま警察とみたま教がちょっとアレすぎる。
「あの、どっちもうちのみたまなんですけど」
「仕方がないだろう? らいばーほーむで一番影響力があるのはみたまなんだからね。というか、無自覚にやらかしてるのがみたまというライバーだろう?」
『『『否定できない……!』』』
「ま、そういうことだ。うちでやったらコラボ先がまずいのでね。なので、今回の外部コラボは所謂出張という形を取るつもりだ。というわけで、どことコラボをするかという話に戻って来る」
「了解です」
「それで、社長的にはこの会社なら大丈夫、みたいなところはリストアップされてるんですか?」
「もちろんだとも。現状外部からコラボの打診が来ていて、尚且つ先ほどの条件に当てはまるのは、ぷりしんぐ、アニらび、たそがれ学園、あとはVドリームの四つかな」
「アイドル系、わちゃわちゃ系、学生系、あとは幻想系ですかね?」
「そうだな。候補はこの四つの事務所。ちなみに、らいばーほーむが好きという条件に当てはまった理由として、単純にイベントの時に会場を訪れて、それはもう楽しみまくった呟きが数多く散見されたからだ。あと、行けなくて泣きの呟きをしていた人もいる」
『『『ならばよし』』』
らいばーほーむが好きという条件を達成した理由を聞いて、全員納得した上にOKをだした。
やはり、自社のライバーたちが好かれてなければいけないのだ。
「そして、炎上についても特にない。あってもまぁ……ファンが暴走したあれこれって感じだね」
「じゃあ問題なしですね」
「では、この中のどこにするか、ですね」
「あぁ。では、みんなで考えよう」
◇
そこからはあーでもない、こーでもない、とそれはもうなが~~~~~~~~~い会議となった。
なんだったら、会議が白熱しすぎて途中で宣言通りピザを注文した挙句、それでも終わる気配がなく、気が付いた時には朝になっている、というアホみたいな状況になった。
だが、長い時間をかけただけあり、無事にコラボ先も決定となった。
尚、会議が終わった直後、全員その場で死んだように眠りだしたのは言うまでもない。
というわけで、裏話的な話でした!
主に、みたま関連だけどね! 知らんうちに、みたまが鉄砲玉になっていますが。まあ、みたまは鉄砲玉じゃなくて、核弾頭なんですけどね。
余談ですが、新規に登場した他事務所の名称の中にいた、『ぷりしんぐ』は実はイベント編の掲示板回でチラッと触れられています。他は完全新規だけどね!
さぁ、ゲストは誰なのか、ついでに、コラボ先はどこになるのか! お楽しみにィ!
……年内に外部コラボ行けるといいなぁ……。




