#149 新技能を持ってる双子、フラグ回収する椎菜
僕たちが参拝した瞬間から突然光りだした本殿は、それはもう注目されていたし、なにより大勢の人が集まっていました。
ただでさえ人が多かったのに、この場にいる人たちのほとんどが、今も光っている本殿の方に集まって、写真や動画を撮ったりしていました。
そして、ある意味原因かもしれない僕たちの方についても、かなり注目が……。
「おいやばくね? 神社光ってんだけど」
「なんかのイベントなんかな?」
「わからねぇ……」
「あれ、超すごくない?」
「どうやって光ってるのかな?」
「中に何か光源装置があったりとかじゃない?」
などなど、色々な憶測が飛んでいました。
それ以外だと、単純にすごいというような感想かなぁ……。
「で、椎菜。お前あれ、何かわかるか?」
そして、列から離れた僕たちはと言えば、これ以上注目されたくなかったので、少し離れた人気の少ないところにいました。
「ぼ、僕もよくわからないけど……」
「やっぱり神社なんだし、椎菜ちゃん……というより、みまちゃんとみおちゃんの二人が原因なんじゃないかな? ほら、二人とも神様だし」
「まあ、それが一番可能性が高いよな……二人とも、何かあれに心当たりはあるか?」
「んっとね、おかーさんがおしえてくれたとーりにしたら、かみさまがはなしかけてきたの~」
「……たのしそー、でした。すごくよろこんでた、です」
「おかーさんや、みまとみおちゃんのふたりがきてうれしー、って」
「……にんきもの、です」
「「「……」」」
原因判明。
二人と僕でした……。
やっぱり、あれって神様が原因だったんだね……というか、二人って神様間で人気なの!?
さすがだよっ!
やっぱり二人ともすごく可愛いもんね。
その辺りの美的感覚とかは案外人間と同じなのかも。
まあでも、お姉ちゃんたちがよく言ってるけど、可愛いに言葉の壁はないとかなんとか……。
ある意味人と神様も変わらないのかも。
……じゃあ、天使さんも変わらなかったり?
二回くらいしか会ったことはないからわからないけど、そんな気がします。
「原因はわかったが、あれ、どうするんだろうな……?」
「ここは神社だし、やっぱりこう、神様のおかげでーす! とか言うんじゃない?」
「色々と胡散臭くなるような……」
「まあ、俺たちはそういう超常的な物を知ってるからな……主に、椎菜関係で」
「あ、あははは……」
「椎菜ちゃんすごいよねぇ。だって、神様な子供に、天使さんに、変身できるアイテム二つだもんね。椎菜ちゃんってすっごく好かれてるのかな? 超常存在に」
「ど、どうだろう?」
あんまり好かれてるって感じはしな…………い、よ? うん、しない……。
思い返してみれば、神薙みたまの姿になれる組み紐をもらったのって、たしか神様だったし、その時一緒にもらった手紙の中にもなぜか『我が神子』とか書いてあったし……。
神子の意味はあんまりよくわかってないけど、多分神様からすると何か大きなこととか、重要なこと……なのかも?
「いやある意味好かれてるだろ。そうでなきゃ、椎菜が神様や天使から贈り物なんてもらわないし、さっきみたいなことにもならないだろう」
「あー、たしかに。というか、椎菜ちゃんってやたら運がいいし、なんだか神様とか関係してそうじゃない? ほら、加護的な物とか!」
「さすがにそれはない……と思う、けど……」
現実にそういうものがあるかわからない…………いやでも、ある意味僕がもらったものってある意味それな気が……。
き、気のせいだよね?
「まあ、別に悪いことってわけでもないんだし、気にしなくてもいいんじゃないか?」
「それもそう、だね。うん。気にしないでおきます……」
「じゃあ、これからどうする? お参りにもしたし、福引引いて、お守り買って帰る?」
「あ、僕美月神社に行きたいんだけど……」
「美月神社……あぁ、たしか椎菜が気に入ってるっていう、山の中にある神社か。いいぞ。せっかくだし、俺たちも行くか、朝霧」
「行く!」
「あ、でも、山の中だし、階段だから多分足に負担が……」
「それくらいへーきへーき! でも、みまちゃんとみおちゃんの二人は対策と化した方がいいかも? 神様と言えど子供だし」
「そうだね。二人とも、この後僕が好きな神社にもお参りに行くんだけど、行く?」
「「いくー!」」
「ふふっ、そっかそっか。じゃあ、一緒に行こうね。まあ、その前に着替えた方がいいんだけど」
「んぅ? おきがえ、するの?」
「……ひつよー、あるです?」
「ふぇ? それは必要だよ。だって、動きにくいし、何より靴も普段と違うからね」
「だいじょーぶだよ?」
「……もんだいなし、です」
「それってどういう……」
靴を変えた方がいい理由を話すと、二人はきょとんとした顔をしてから、大丈夫と行ってきました。
一体どういうことだろうと僕たちが顔を見合わせていると、突然みまちゃんとみおちゃんの二人が光りました。
「「「え!?」」」
え、ちょっ、いきなり光っちゃったんだけど!?
ハッ!? また、いっぱい視線が!?
「し、柊君、麗奈ちゃん! 壁になってっ!」
「了解だ!」
「おっけー!」
これ以上目立つのはよくないと思って、とっさに二人に壁になってほしいと頼むと、二人はすぐに動いてくれて、小さい二人の体を自分たちの体で隠しました。
完璧に隠すのは難しいかもしれないけど、何もしないよりはマシ……!
騒ぎにならないで、と僕がお願いしていると、光が収まって……。
「こーだよ!」
「……うごきやすい、です」
「「「……あ、あー」」」
にぱっ! とした笑みを浮かべる二人の服装は、さっきまで着ていた振袖……ではなく、どこか魔法少女然とした……というかそれ、イベントの時に出した神薙みたまの新衣装な気が……。
ただ、みまちゃんの方は神薙みたまの物と同じだけど、みおちゃんの方は色が違っていて、カラーリングがみおちゃんの物になってました。
え、これなに!?
「あ、あの、二人とも、その姿……というか、今のは?」
「んっとね、えっとね、できるようになったの!」
「……なった、です」
「い、いつから?」
「ん~……りょこーのとき?」
「……たすけたら、こーなった、です」
「そ、そう、なんだ」
なんで旅行の時……?
それに、助けたって何のことなんだろう……。
「ねね、みまちゃん、みおちゃん。助けたって何を助けたの?」
あ、麗奈ちゃんナイスだよ!
「んっと、きえそーになってたかみさま!」
「……宇迦之御魂大神様をよんで、たすけてもらった」
「「「えぇぇぇ……」」」
あの、僕の娘二人がすごいことしてた……。
探検して来る、って言って出て行った後、そんなことになってたなんて思わなかったよ……なにをどうしたらそうなるんだろう。
「なんというか、しれっと裏でとんでもないことをしているのは椎菜の娘って感じがするな……」
「うん、それは本当にそう思う」
「なんで!?」
僕、そんなにとんでもないことしてないよ!?
た、たしかにVTuberにはなったし、神様や天使さんから贈り物を貰ったりはしたけど……。
「まあまあ、これなら問題なしということで、あたしたちは福引引きに行こ! お守りも買わないとなんだからね!」
「あ、う、うん。じゃあ、とりあえず行こっか」
「そうだな。個人的には椎菜が色々と面白いことをしそうだと思ってるがな」
「あ、あははは、さすがにないよ……?」
柊君の言葉に、僕は苦笑い交じりにそう答えて……
◇
「おめでとうございます! 一等、室内レジャープール施設の招待券と、二等、商店街で使える商品券1万円分! 三等御神刀のレプリカだ!」
「……えぇぇぇ」
一等から三等までを当てていました。
さすがの事態に、僕も嬉しさよりも困惑というか、恐怖の感情が先に来ました。
「まあ、椎菜だからなぁ……」
「だ、ね……」
「おかーさん、すごいですっ!」
「……すごい」
「いやぁ、ここまで幸運な娘を見たことがないよ。やはり、神様からの加護があるのかな?」
「ふぇ?」
「ともあれ、これ貰って行ってくれ。あぁ、レプリカについては、ちゃんと刃がないものだから大丈夫だ。ちゃんと、銃刀法に抵触しないものだからね。なんだったら、おもちゃみたいなもんだ」
「そ、そう、なんですね」
どう反応すればいいんだろうなぁ……なんて思いながら、僕は招待券、商品券、レプリカを貰って……そこでふと、受け取ったレプリカから不思議な何かを感じ取りました。
「ん、どうしたのかな?」
「あ、いえ、なんでもないです」
……このレプリカ、本当にレプリカ、なんだよね……?
なんだか、不思議な気配があるというか、何かこう、温かいというか、優しいというか、何かがあるような…………。
「一応、しっかり祈祷もしてあるから、家のどこかに飾っておくといい。ちょっとした運気上昇効果があるはずだからね」
「そ、そう、なんですね」
……本当にちょっとなの? これ。
ちょっと持つのが怖いんだけど……。
大丈夫なのかな、このレプリカ……。
「なぁ、あの娘すごくね? 一人で三等まで当ててんぞ?」
「よく見たら、さっき光った時にお参りしてた娘だよな?」
「マジじゃん。きっと幸運なんだろうなぁ」
「そう言えば、あのちっちゃい女の子たちがおかーさん呼びしてたような……?」
「え、あの見た目で既に二児の母……!?」
「人は見かけによらないってことね……」
すごく視線を感じた僕は、そそくさと景品を貰って福引の列から離れました。
「さすがの幸運だな、椎菜」
「フラグ回収だね、椎菜ちゃん!」
「なんでだろうなぁ……」
当たらないと思ってたら、まさか一等だけじゃなくて三等まで当てるとは思わなかったよ……。
「それで、招待券はどうするんだ? 八人までなんだろう?」
「あ、うん。とりあえず、僕とみまちゃんみおちゃんで三人……残り五人……柊君と麗奈ちゃんも来る?」
「ん、いいのか?」
「あたしも?」
「もちろん。折角だし」
「行く行く!」
「なら、俺も行くとしようかな。楽しそうだしな」
「じゃあ、あと三人だね。とりあえず、お姉ちゃんは……どうしよう」
お姉ちゃんってツリーハウスとログハウスを作ってるわけだし……ここで声をかけるのは申し訳ない、かな?
「椎菜、誘った方がいいぞ」
「そ、そうかな?」
「あぁ。ここで誘わずにプールに行ったことがバレた場合……あの人は間違いなく、自害する」
「そこまでなの!?」
「あー、愛菜さん、椎菜ちゃんたち大好きだもんね。水着を見られる機会があったのに見られなかったら、血涙流しながら死んじゃいそう」
「さ、さすがにそれは……」
なんでだろう、ないとは言い切れない自分がいるよ……。
お姉ちゃん、普段が普段なんだもんね……。
「ま、まあでも、一応お姉ちゃんに訊いてみるね」
さすがに誘わないのも可哀そうだし、日ごろからお姉ちゃんは頑張ってるしね。
というわけで、スマホを取り出して早速通話をかけると、いつも通り一コール鳴り切る前にお姉ちゃんが出ました。
『もしもし椎菜ちゃんそっちはどうかなこっちは現在進行形でツリーハウスとログハウスを建設中!』
「あ、あはは、そ、そうなんだね」
『楽しみにしているといいよ! 椎菜ちゃん! ……んで、私に何かあるの?』
「あ、うん。実は神社の福引で室内プールの招待券が当たったからいっし――」
『ヤッタァァァァァァァ! 椎菜ちゃんたちの水着が見れるゥゥゥァァァァァァァ!!!』
「ひゃあ!?」
「愛菜さんのすっごい声が聞こえて来たね……」
「あの人、喜び過ぎだろう」
『いつ!? それいつの話!? その日までに我がツリーハウスとログハウスを完成させておくからァ!』
「い、一応、六日にお出かけ予定だったから、その日、かな」
『おけぃ! 六日ね! よし、あと五日ある……不眠不休で縮地を併用しまくればいけるか……? ふっ、まだまだ限界を超えられる、ということか……! じゃ、私はその日までに完成させるんで、アディオス! 椎菜ちゃん! 水着だァァァァァァァ!』
ブツッ――。
「……とりあえず、行くみたいです」
「「知ってた」」
お姉ちゃん、すごく騒いでたなぁ……(遠い目)。
「愛菜さんも来るということは、あと二人か……誰か誘うか?」
「折角だしね。でも、空いてる人っているかな……」
「とりあえず、あちらの人たちに訊いてみれば?」
「それもそうだね。ちょっと聞いてみます」
麗奈ちゃんの提案通り、僕はLINNにあるらいばーほーむのグループにプールのことを聞いてみることに。
『あけましておめでとうございます! 突然なんですけど、一月六日が空いてる人っていますか? 二名くらい暇な人を募集してるんですけど……』
『あー、悪い、俺、実家に帰省中だ』
『ボクも同じくー』
『うちも帰省しとるけど、その日は帰った次の日やなぁ。疲れて寝とると思うけど』
『まだ何とも言えないが、私は仕事はない、はずだ』
『わ、わたしは、い、いつでも、空いて、ます……!』
『あーしはちょっち忙しい』
『あたしもラノベの方でちょっと……』
『あたしは特にないぞ!』
『ん、ちょっと用事があるから難しい』
『私もちょっと本業の方で色々ぉ~。この時期は忙しいんですよねぇ~』
見た感じ、確実に空いてるのは恋雪お姉ちゃんと寧々お姉ちゃんで、空いてるかもしれないのが皐月お姉ちゃんと、栞お姉ちゃん……と。
あ、このグループにはまだ四期生の人はいないです。
正式に活動を始めてから入ります! って四期生のみなさんが言ってたので……。
『そう言えば、椎菜さんはなんで急に連絡を? 何かあったのかしら?』
『あ、うん。実は室内レジャープール施設の招待券が手に入りまして、それが八人までなの。一応、僕とみまちゃんとみおちゃんの二人、学校のお友達二人と、お姉ちゃんが行くのは決まってるんだけど、あと二枠空いてて……それで誰か来ないかなーって』
なんて、僕がメッセージを送った直後。
『プール……プールぅぅぅぅ~~~~!? そ、それはつまり、し、椎菜ちゃんの水着姿が見られるってことですかぁ~~~~~~~~!? 私、仕事をほっぽり出してそっち行きますよぉ~!』
『ラノベ書いてる場合じゃねぇ!』
『ひぅぅ!? ぷ、プールはこ、怖いですぅ~~~~!? わ、わたしには、む、無理ですよぉ~~~!』
『おー! 面白そうだぞ!』
『むぅ、プール……楽しそうじゃなぁ……』
『え、プールマジ? うわー、あーしも用事ほっぽりだして行こっかな?』
『いやあの君たち仕事はぁ!?』
な、なんだかすごいことに……。
「椎菜ちゃん、大丈夫?」
「なぜか、プールに行くって言ったら、仕事を放って行こうとしてる人がいて……」
「「あぁ、理解した」」
二人とも、すごい……。
『え、えと、とりあえず、寧々お姉ちゃんは確定、でいい、のかな?』
『いいぞ! 楽しそう!』
『恋雪君、君、プールに行って』
『な、ななな、なんで、ですかぁ~~!?』
『ここにいるバカ共が仕事ほっぽってプールに行ったら多分、仕事の方に支障が出る』
『そ、そそ、そんなぁ~~~!?』
『大丈夫だぞ! あたしが一緒だから!』
『ね、寧々さん……』
『チクショォォォォ! なぜ、なぜこの時期は忙しいんですかぁ~~~~~~!』
『ぐぬっ、ネタ出ししろってメールが……無念……』
あ、ダメだったんだ……。
『おー、こりゃひでぇ』
『やー、メッセージでも騒がしくていいねー』
『むぅ、うちも行きたかったわぁ』
『栞パイセンは行けそうじゃん? 行かないん?』
『疲れがなぁ……』
栞お姉ちゃんは難しそう、かなぁ……ちょっと残念……もちろん、みなさんで来れたらいいんだけど。
『あ、ところで椎菜さん、学校の友達って、麗奈さんと柊君なのかしら?』
『そうだよ! 一緒に初詣に来てるの!』
『柊君もいるのか……! え、じゃあ私も行こうかな……自腹で』
『そらありなん?』
『椎菜っち、そこってなんてプール?』
『んっと、ハルノレジャーパーク、かな?』
『なるほど、行けるな……栞、一緒に行くかい?』
『…………行く!』
『皐月、お前なんか、柊がいるとわかったから行こうとしてないか?』
『プールは健康にいい。そして、運動にもなる。ダイエットにももってこいだ。腰や足への負担も少ないからね』
『もっともらしいこと言ってるけど、これ柊君に会いたいだけだねー』
『違うからね!?』
『え、えーっと、とりあえず、恋雪お姉ちゃんと寧々お姉ちゃんが招待券で、皐月お姉ちゃんと栞お姉ちゃんが自腹、なのかな?』
『大丈夫だぞ!』
『うぅ、退路がぁ……』
『それでええよ』
『あぁ、大丈夫だ』
『じゃあ、詳しい時間は後で送るね!』
『椎菜ちゃんたちの水着写真を撮ってくださいねぇ~~~~!(血涙)』
千鶴お姉ちゃん、ぶれない……。
「え、えーっと、とりあえず、寧々お姉ちゃん、恋雪お姉ちゃんが一緒になって、皐月お姉ちゃんと栞お姉ちゃんが自腹で来ることになりました」
「「何があった(の)」」
「僕もよくわからないけど……人がいっぱい来て楽しそうだね!」
楽しい日になるといいなぁ、プールの日。
なんて、僕はそんなことを思いました。
なんだかんだ出番が多い、皐月と栞……動かしやすいんだもん……。あと、恋雪はともかく、寧々は出番が三期生の中でも少ないのでね、うん。救済措置。本当は杏実も出そうと思ったけど……うん。出せばよかったっ……! ちなみに、柊の性別はルーレットで決まります。奴の運命はいかに。
ちなみに、椎菜が貰ったレプリカはレプリカのように見えて実は……なんてね!




