#148 初詣、突然起こる超常現象
「ところで、愛菜さんは来なかったのか?」
「うん。お姉ちゃんはその……ログハウスとツリーハウスを作るって言って、山にこもっちゃったので……」
「あれマジだったのか……」
「一人、なんだね」
「……うん」
ある意味、お姉ちゃんだから、で納得しちゃうよね……。
「ともあれ、あたしたちもお参りしよ! お参り!」
「あ、うん。そうだね」
麗奈ちゃんに言われ、僕たちの方もお参りをするために本殿前の行列に並ぶ。
天海神社の元日は、かなりの人が来るので、すごく賑わいます。
それこそ、美月市内の人たちだけじゃなくて、隣町の来咲市や浜波市、あとは陽野市もそうだったかな?
あっちに住んでる人が知り合いにいないからあんまり行かないけど、結構こっちに来るとかなんとか……。
「にしても、相変わらずここは人が多いな」
「そうだね」
「まあ、この辺りではそこそこ規模の大きい神社だもんねぇ」
「だな。あとはお守り何かも買わなきゃか? 椎菜は何か欲しいお守りはあるのか?」
「僕? うーん、やっぱり……家内安全とか学業成就、あとは商売繫盛とか?」
「たしかに椎菜ちゃんはそれが必要そうだよね」
「ある意味仕事してるからな」
「うん。みまちゃんとみおちゃんの二人は、学業成績と無病息災とかかなぁ」
「んぅ?」
「……なん、です?」
「あ、お守りだよ、お守り。それを付けて、こういう悪いことが起こりませんように、なんていうことをするためのものだよ。二人の分は後で買ってあげるね」
「「わーい!」」
微笑みながらお守りを買ってあげるというと、二人は嬉しそうな声を上げました。
うんうん、二人は素直で純粋だから可愛いよね……。
「ぐふっ……」
「朝霧、早速鼻血出てるぞ」
「いやぁ、へへ……やっぱあの二人が可愛すぎるからね……」
「難儀だな……」
横では、麗奈ちゃんがなぜか鼻血を流してたけど。
大丈夫なのかな?
「そう言えば、あとちょっとで二年生も終わりだね。もうすぐ三年生かぁ……」
「あんまりのんびりしてると、色々と地獄を見そうだな。まあ、普段から勉強もしてるし、問題ないとは思うんだがな。朝霧は卒業後は就職……でいいのか?」
「そうだねぇ。まあ、一応進学も考えてるけどね~」
「ま、その方がいいだろ。学歴社会ってわけでもないが、大卒以上じゃないと受け付けてない企業なんかもあるしな」
たしかに。
前にちょっとした興味で色々な求人を見たことがあるけど、高卒で入れる企業もいっぱいあったけど、同時に大卒や短大卒が条件の企業も結構あったっけ。
「柊君は将来の夢ってあるの?」
「俺か? 俺は……今はないなぁ……どうなるかわからないが、一応椎菜と同じ職業ではあるからな……」
「あ、そっか」
「ま、色々さがすよ。……っと、あぁそうだ。朝霧、これ。求人のチラシ」
「おっ、ありがとう、高宮君! ほうほう、求人はこんな感じなんだ。……うわー、本当に書いてある、耐性持ち……」
お話している途中で、柊君が何かを思い出したように、カバンの中から一枚のチラシを取り出して、それを麗奈ちゃんに渡していました。
麗奈ちゃんの方はその紙をどこか嬉しそうに受け取って、そこに視線を落とすとなんとも言えない表情になってたけど……。
「麗奈ちゃん、それは?」
「これ? これはあれ、らいばーほーむの求人」
「求人……あ、そう言えば麗奈ちゃんって将来らいばーほーむに入社したいんだっけ?」
「そうそう。だから、今の内に求人を見ておきたいなーって。あとはほら、どういうスキルを求められるのかなーとか。あ、椎菜ちゃん見る?」
「ちょっと気になるかも……」
「じゃあはい!」
なんだかんだ、自分が所属している事務所の求人が気になったので、僕は麗奈ちゃんから求人を受け取ってそれを見ると……。
『らいばーほーむの内勤スタッフ募集! 仕事内容、頭のおかしいライバーたちのマネジメント業務。動画編集。電話・来客対応など。最初は簡単な書類業務から! ちょっと狂った内容なので、楽しくお仕事できます! 最高に狂っていて、最高に楽しいらいばーほーむで一緒にお仕事をしてみませんか! 応募資格:『神薙みたま、及び魔乃闇リリスなどのロリへの耐性の所持』 高卒以上 らいばーほーむは人生! 推しへの愛なら誰にも負けない! コミュニケーションが得意! などなども大歓迎! 動画編集ができる方も大大大歓迎! もちろん、これから覚えるという方でもOK! 雇用形態:正社員 想定給与:未経験:27万円 経験者:35万円 勤務時間:9時~18時 14時~22時 21時~6時 勤務地:本社 浜波市 休日休暇:週休二日制 年末年始休暇 夏季休暇 冬期休暇 慶弔休暇 産育休暇制度 福利厚生:昇給年1回 賞与年2回 マネージャー手当 社会保険料完備 交通費全額支給 社宅あり 入社祝い金10万円 推し活手当』
……なんだろうこの、ところどころから感じる普通じゃない求人感は……。
普通、求人に狂ってる、とか書かないような気がするんだけど……さすがらいばーほーむと言えばいいのかなぁ……これ……。
あと、僕と栞お姉ちゃんへの耐性って何!?
聞いたことないよ! そんな資格!?
「す、すごい求人だね……」
「まあ、らいばーほーむ、だからな……」
「ふむふむ、つまりあたしはこの一年で頑張ればいいということだね……!」
「まあ、頑張れ、朝霧」
「うん! ……そう言えば、応募資格が激ムズだけど、やっぱりここで弾かれる人が多いのかな?」
「らしいな。俺もじむ……掲示板なんかで知ったが、仮に履歴書に耐性がある! とか書いても、面接の時に吐血音声を流されてそれでないことがバレるらしい」
「「えぇぇぇ……」」
そんなことしてたんだ……。
……そう言えば、ちょっと前に社長さんがこのセリフを録音したい! って頼んできたような……?
まさかそれがその面接で使われてる……のかな?
「まあでも、とりあえず動画編集を頑張ってみる!」
「いいんじゃないか? スキルはあって損はないしな。だが、どうやって練習するんだ?」
「それはやっぱりあれじゃない? 合成音声を使用した実況動画、とか?」
「たしかに、それが一番練習になるか」
「でしょでしょ? だから、あたしはそれで頑張ります!」
「頑張ってね、麗奈ちゃん」
「もちのろん! 耐性だけで胡坐をかくわけにはいかないからね」
そもそも、耐性ってなんなんだろうなぁ……。
よくわからない。
「おかーさん、まだー?」
「……進まない、です」
耐性が何なのかということを考えていると、くいくいとみまちゃんとみおちゃんの二人が僕の振袖の裾を引っ張ってきました。
どうやら、なかなか進まないのがちょっと嫌みたい。
「うーん、結構いるからなぁ……もうちょっと頑張ろう?」
「んっ!」
「……しかたない、です」
「うんうん、偉いね」
「「えへ~」」
『『『ごふっ……』』
「新年早々、鼻血+吐血だらけなのか……末恐ろしいな、椎菜たちは」
「あ、あの、麗奈ちゃん、大丈夫?」
「……な、何のこれしき……!」
いきなりなぜか吐血した麗奈ちゃんに声をかけると、麗奈ちゃんは鼻と口端から血を流しながらなぜか歯を食いしばっていました。
すっごくギリギリ言ってるけど、大丈夫なのかな、歯……。
「まあ、大丈夫そうか。……そう言えば、この神社では福引があるんじゃなかったか?」
「あ、そう言えば。引いてく?」
「いいね~。あたし、福引好きだよ!」
「まあ、ある種のギャンブルに近いしな。たしか、毎年中身が変わってたよな? 今年はなんだ?」
「んっと……あ、あれじゃないかな、ほらあそこ」
「どれどれ……あ、一等に室内レジャープール施設への招待券ってある。しかもすごいよあれ、人数。最大八人」
「いや多くないか?」
「そう言うのって、多くても五人くらいなような?」
温泉旅行のようなものだって、ペアだったり一家族くらいだと思うんだけど、八人はすごいなぁ。
でも、室内レジャープールかぁ……実は行ったことがないんだよね。
この辺りにそう言う施設がなかったし。
「室内レジャープール施設なんてこの近くにあったか?」
「そう言えば、最近できたー! って友達が言ってたなぁ。デートで行く! って言ってた」
「あぁ、最近できたのか。だが、この時期に室内とはいえ、プール施設とはな」
「僕は行ってみたいなぁ。こういう寒い時期だからこそ、って言う感じで」
「椎菜ちゃん、なんか当ててそう」
「……だな」
「さ、さすがに当たらないよ?」
昨日の大晦日で、色々と当ててはいたけど、さすがに昨日だったからだし……。
「おかーさん、しつないレジャープールってなぁに?」
「んっとね、プールが普通は夏場に入るものなんだけど、それを一年中いつでも入れるようにした場所、かな」
「……たのしー、です?」
「うん。きっと楽しいよ」
「いってみたいですっ」
「……き、きになる、だけ、です」
「あはは、二人ともすごく行きたそうにしちゃってるよ? 椎菜ちゃん」
「さすがに運だからなぁ……」
連れて行ってあげたいのはやまやまなんだけどね……。
あ、でも、お金もあるにはあるし、チケットを買えば行ける気が……?
「まあ、当たらなくても買うので大丈夫!」
「そういうのが言えるって、ある意味すごいよね、椎菜ちゃん」
「二人のためなら全然痛くもないからね!」
それに、どこかのタイミングで一緒にお出かけするって決めてたから。
案外、プールはかなりありなのかも。
行くとしたら、水着を買わないといけないから、そこは行く前に買いに行かなきゃだけど。
僕の水着もないしね……。
「ん、ようやく俺たちの番だな」
「やー、結構待ったね。じゃ、早速お参りお参り!」
色々とお話している間に、僕たちの番が回って来ました。
たしか正しい作法とかがあった気がするけど、うろ覚えだったので、お賽銭を入れて(みまちゃんとみおちゃんの二人にも五円玉を渡してます)、二礼二拍手一礼をする。
みまちゃんとみおちゃんの二人の方も教えた通りにできてるようでよかった。
でも、お願いごとかぁ……うーん、僕だったら……。
(今年一年、らいばーほーむのみなさんや柊君、麗奈ちゃん、お母さんやお父さんたちと、事故も病気もなく、楽しい毎日が送れますように)
うん、こうかな。
四人は何を思うのかなぁ、なんて僕が思っていると、突然周囲がざわつきだしました。
あれ、なんだろう、何かあったのかな……?
「えっ……」
「どうなってるんだ……?」
よく聞くと、柊君と麗奈ちゃんの二人が何かに驚いたような声を上げていました。
一体何が、と周囲の様子が気になって目を開けたら……
「え……ふぇぇぇぇぇぇ!?」
なぜか目の前の本殿がすごくぴかーっ! って、ぴかーっ! って光ってました。
え、なになになに!? 何が起こったの!?
なんで光ってるの!?
「あの、あたし目がおかしくなったのかな? 目の前の神社がすごい光ってるような気がするんだけど」
「奇遇だな、朝霧。俺もだ」
「……え、えぇぇ、なにこれ……何でこんなことになってるの……?」
「「???」」
すごく眩しい光に、僕は茫然としていました。
あの、これはどう反応すればいいんだろう……。
すごく眩しい……けど、なんでだろう。すごく優しい感じがする……。
とりあえず、悪い物でもない、とは思うんだけど……。
「と、とりあえず、俺たちは離れよう。なんか、居づらい」
「「う、うん」」
「「んぅ?」」
柊君の提案に、僕と麗奈ちゃんは頷き、みまちゃんとみおちゃんの二人はこてんと可愛らしく首をかしげていたけど、提案通りに参拝の列から外れました。
天海神社の神主さんや巫女さんたちが、椎菜、みま、みおの三人を見た時の反応。
「……エッ」
「あの、あそこにいる女の子二人からすごく神聖な気配を感じるんですけど……」
「それもそうだけど、あっちの胸のおっきい女の子からも強い神様の気配がある気が……」
「待って待って? え? ウチの神社、なんかとんでもないの来てる? え?」
「お、落ち着きましょう。気のせい……ではないでしょうから、絶対に粗相のないようにしましょう」
本殿が光った時。
「あの、見間違いじゃなければ、本殿、ものすごく光ってません?」
「本殿というか、あの光の大本って中にある御神体では……?」
「あの、神社の中からも神様の気配を感じるんですが?」
「なんなの、あの娘たちっ……!」
「そう言えば、あの胸のおっきい娘、おかーさんと呼ばれていたような……」
「え、どう見ても子供なのに、二児の母……!?」
「つまり、お父さんはあちらの男の子?」
「なんという畜生……!」
「いえ、おそらく親子関係はないかと……うっすらと神様の気配を感じはしますが、違うかと」
「……では、あの女の子二人は?」
「……ガチ神様では?」
「ほ、本当にいたなんて……!」
「本物であるとすれば、神社としてこれほどうれしいことはありませんね。……色々と怖くはありますが」
なんて会話があったとかないとか。
私は水着回が書きたいです。もう夏終わったけど、まだ暑いからセーフ……! 尚、九月に間に合うかは微妙な模様。




