配信#27-4 らいばーほーむのみなさんと、大晦日配信だよっ!:4
「さてと、そろそろいい感じに胃袋の調子が出たところで、本日のメインイベント! 闇鍋を開始しよーう!」
『『『YEAHHHHHHHHHH!!!』』』
僕が誤爆してからなぜか騒がしくなったけど、なんだかんだありつつ普通にご飯を食べていたら、お姉ちゃんが闇鍋の開始を宣言しました。
それと同時に、ほかのみなさんも手を挙げて楽しそうに叫ぶ。
闇鍋……去年は色々とすごかったけど、今年は………………うん、すごいことになってるよね……。
カニとエビ……。
【ついに来たか……】
【これを待ってたんだ!】
【去年は去年でカオスだったけど、すでに闇鍋前からカオスってる今年の方がなんかやばそうだよな】
【それはそう】
【やっぱ、年末は闇鍋だよなぁ!?】
「というわけで、たつなちゃん、進行よろ」
「はいはい。……えー、では皆様闇鍋材料は持っていますね? さすがに食べられるもののみを持ってきているとは思うが、これからこの部屋の電気を消します。尚、不正がないようにするため、メンバーによる消灯は行わない。その辺りはスタッフが行うのでね」
なるほど。
僕、闇鍋はしたことがないから、楽しみだったんだよね。
それと一緒に、ちょっぴり怖さも感じてはいるんだけど……。
「それじゃ、みたまちゃん、鍋の準備してもらってもいいかい?」
「はーい! すぐに持ってくるね!」
【可愛い】
【返事可愛い】
【やっぱりみたまちゃんは可愛い】
【可愛くないところが一つもないんだよなぁ……】
たつなおねぇたまに言われて、僕はキッチンの方から闇鍋用に作ったスープを持ってきました。
「えーっと、これだよっ! 味付けに関しては、シンプルに鶏ガラで出汁を取って、味は醬油ベースにしてます!」
「ナチュラルに鶏ガラで出汁取ってるよね、みたまっち」
「大人は不思議じゃないけど、学生でやるってのはやっぱすげぇってか……まあ、珍しいよな」
「ですねー。しかも、ちゃんといい匂いがしますし、これは楽しみですねー」
【鶏ガラで出汁取ってるんかいwww】
【もう何でもありやん】
【鶏ガラなぁ……あれって、結構めんどくさいんよね】
【たしか、流水で血合いやら内臓なんかを取って、湯引きして、まだ流水で……っていうような下処理をするんだっけか】
「そうですよ~。そのあとは、玉ねぎとニンニク、ネギの青い部分を入れて強火で煮込んで、沸騰したら灰汁を取って、そこからは弱火でって感じですね」
「何をどうしたら、鶏ガラから出汁を取ろう! ってなるのか、はつきはわからないぞ」
「んっと、ラーメンを作りたくなったことがあったので……」
【草】
【ラーメンを作りたい→鶏ガラから出汁を取ろう! とはならんやろww】
【やってる方が画面の中にいるんですけどね】
【なんかもう、そのうち豚骨スープも作り始めそう】
「豚骨スープはいつか作ってみたいんだけど、あれって室内でやるとすごくその……ラーメン屋さんみたいな匂いになっちゃうとかで、それでできないんだよね……」
「みたいですよねぇ~。やる時は、しっかり換気をするように、みたいな注意書きを見かけますよねぇ~」
「あたしの知り合いにそれをやった人がいるけど、苦情が来たらしいわ。アパートだったからすごかったらしいのよね……」
「そ、それは大変だね……」
本当にそうなっちゃうんだ。
でも、アパートで作るのは色々とだめじゃないかなぁ……。
それだけ作りたかったっていうことなんだろうけど、アパートである以上いろんな人がそこで暮らしてるわけだし、何より換気扇を回しても辺りに匂いが分散しちゃうもんね……。
「まあ、あれだよ、みたまちゃん。庭でやるとかならいいのでは?」
「う、うーん、それはそれで問題じゃないかなぁ……近所迷惑になりそう……」
「それもそっか」
「まあでも、大人になってどこか土地を買うのもありかなぁ」
「土地……ハッ! そういえば、私が普段鍛錬に使ってる山があるから、そこならどうよ! みたまちゃんがやる時になるまでの間に、いい感じのツリーハウスかログハウス建てとくから!」
「え、いいの!?」
「おうよ! というか、もともとツリーハウスのようなものを建てる予定はあったしね! ならばちょうどよし! 冬休みの間に、一気に進めるとしよう!」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「みたまちゃんからのありがとうと笑顔、いただきましたッッ!!!」
「なんかもう、なんでもありじゃな、ひかりは」
「うん、そうだね……」
【普通に山を持ってるのもおかしいし、鍛錬をしてるのもおかしいし、ツリーハウスかログハウスを建てようとしてることもおかしいんだよなぁ……】
【あれ、シスコンって23歳のデザイナー女性じゃなかったっけ? ツリーハウス、ログハウスの建築……???】
【えっと、ほら、ね? シスコンって、暴力団とかヤーさんのような組織を一人で潰して回ってたって話だし? ね?】
【その話が出る度に、絶対に生まれる世界を間違えただろって思っちゃうよね】
【シスコンぞ?】
「えー、話が脱線したが……それじゃあ、これから闇鍋を開始しようか。スタッフさん、消灯をお願いします」
スタッフさんの一人がお寿司をもぐもぐさせながら、ぐっとサムズアップをしてパチッ! と電気が消えました。
わ、真っ暗。
「おー、鍋の火しか見えないぞ」
「これが、闇鍋」
「ウチらは一年ぶりっしょ」
「こ、怖い、です、よね」
「……まあ、三人が持って来た物が高級食材というのも怖いが、他に何を入れるかわからない人たちがいるのもヤバいが……まあ、それも醍醐味か。はい、全員入れてー」
『『『あーい』』』
【さぁ、どんな魔境鍋ができるのか……】
【少なくとも、伊勢海老とカニが飛び出てる鍋じゃないかな】
【漁港の店とかでしか見ねぇだろそれww】
【どっちかと言えば北海道で見れそう】
【たしかにwww】
そうして、お鍋の中に食材が入れられる音がするんだけど……。
ドボン……。
ポチャ……。
とぽとぽ……。
さぁー……。
……あの、明らかに食材じゃない音が聞こえたような……。
だ、大丈夫だよね? ちゃんと食べられる物だよね?
ど、ドキドキして来たぁ……。
一応、カニと海老が入っていることがわかっているので、一度蓋を閉めて……
「……あの、海老とカニが大きすぎて蓋、閉まらないんだが」
閉まりませんでした。
大きい、もんね……。
結局、完璧に蓋を閉めるのは諦めて、少し空いた状態で煮込むことに。
「……暗い部屋の中で、12人の男女が鍋を囲んでる光景って……なんか、黒魔術の儀式みたいだぞ」
「闇鍋なんてそんなものよ。っていうか、これが楽しいわけでね。あ、ネタにします」
「で、デレーナさん、って、普通に、らいばーほーむの人を、ネタにして、ます、よね?」
「ラノベ作家は常にネタに飢えてるのよ。だからこそ、らいばーほーむなんていうネタの宝庫みたいな場所は作家にとっての最高の宝物庫というわけよ」
「それを言ったデレーナの表情、ぜってぇ血走った目してんだろうな」
「あ、正解っしょ」
「ん、本当なんだ」
「あらあらぁ~、やはり大変なお仕事なんですねぇ~」
「主に締め切りと己との戦いよね」
そう言うデレーナおねぇたまの言葉には、なんとも言い表しにくい感情が混じっている気がしました。
本当に、大変なんだね……。
そろそろ、出張みたま家事サービスの方もしないと……!
【黒魔術は草】
【こいつらが黒魔術の儀式なんてしたら、やべぇのが召喚されるだろこれ】
【草なんだよなぁ……】
【でも思うんだ。邪神シスコンがいる以上、あれ以上にヤバいのは来ないと】
【生身で人外やってるバケモンだからなぁ……】
【遠い将来、今の姿のままファンタジーしてたりしてwww】
【さすがにないだろww シスコンだって人として死ぬってw】
「みたまちゃん、鍋どうかな?」
「んっと……そろそろいいと思うよ?」
「やったぜ! よっし! じゃあ始めよう!」
「了解だ。だがその前に……まずは生贄を決めよう」
「い、生贄?」
「うむ。闇鍋において、最も勇気がいる瞬間は間違いなく、切り込み隊長じゃ。故に、生贄を決めなければならぬ」
「おおぅ、リリス先輩が魔王だからか、セリフに違和感がないぞ……」
「ですねぇ~! やはり、魔王系ロリは最高の属性ですよぉ~~~~!」
たしかに、違和感がない。
普段からああいう口調だからなんだろうなぁ。
「んで、どう決めますかー?」
「んー、てきとーにジャンケンでいいっしょ」
「まあ、その方が楽か。では、そうだね……ジャンケンで勝った人が、最初に食べる、ということでどうだい?」
『『『OK!!』』』
「はいじゃあ、じゃーんけーん……」
『『『ポンッ!』』』
そうして、ジャンケンによる順番決めの結果は……
「おおぅ、はつきだぞ……!」
「新人組が最初の生贄か! いいじゃねぇか!」
「ここで笑いを取れば、芸人だよ☆」
「たしかに! はつきはらいばーほーむ芸人になるべく入った面もある……すごく美味しい場面ということだぞ!」
「ん、ガンバ」
「骨は拾いますねぇ~」
「えっと、頑張ってね!」
「がんばるぞ! あ、ちなみにルールって?」
「一番最初に箸に触れた物を食べるルールじゃな」
「なるほど。ではいざ鎌倉!」
そう言って、はつきおねぇたまは勢いよく箸をお鍋の中に入れて……コツン、と何かに当たりました。
「ん、これだ。えーっと……………あの、一番最初に伊勢海老を食べる羽目になったはつきはどうすればいいと思う?」
『『『美味しく食べればいいと思うよ!』』』
「Oh,Jesus……」
おっきいから最初に当たっちゃったんだね……。
【伊勢海老は草ァ!】
【えげつねぇもん当たってて草】
【普通に嫌すぎるwww】
【これは酷いw】
【これでこそ芸人だ!】
「という、より、最初って、海老、か、カニしか当たらない、のでは……?」
「うんまあ、それはそう☆」
「まあ、よかったじゃないか、はつき君。美味しい海老が食べられるよ」
「いやこれ怖いぞ!? いきなり高級食材丸々一匹は怖いぞ!?」
「あそーれ、いっき! いっき!」
『『『いっき! いっき! いっき!』』』
【伊勢海老をいっきってなんだよwww】
【普通にコールしてんじゃないよアンタらぁ!】
【いやまあ、酒じゃなくて海老だから……】
「これをいっきは無理が――ハッ!? そ、そうかっ! これを一匹丸々食すことができれば、はつきは面白い存在になれる! そして、三期生の中で薄い存在と言われなくなるのでは!?」
「ん、元々濃い」
「ですねぇ~」
「やー、ウチに比べれば、はつきっちの方がマシっしょー」
「いくま君、なんか悲しくなる……」
「よっしゃぁァァ! 猫夜はつき! 伊勢海老、行きまーーーほああっちゃぁぁぁぁぁ!?」
『『『ぶはっ!』』』
伊勢海老を食べようと手が触れた瞬間、煮えたぎったお鍋の中から引き上げたばかりだったことを忘れていたからか、はつきおねぇたまはすごくいいリアクションをしました。
「あっつぅぅぅぁぁぁぁぁ!? 火傷ォ! 火傷するこれェ!? はつき猫舌ならぬ、猫肌ぞ!? 熱いのは死活問題海老美味しィィィィィァァァァァ!」
【うるせぇ!ww】
【こぉれは騒音猫】
【草】
【なんで飯食うだけでうるさいんだよww】
【さすがはつきっちだぁ……】
【普通に即落ち二コマだったんだよなぁww】
「でもこれいっき無理では!? そもそも、殻が食べられないッッッ!」
『『『それはそう』』』
「でもまあ、美味しいからヨシ! あ、はつきはしばらく海老と格闘するので、次どうぞ!」
「えー、まあ、もうあれだね。はつき君から時計回りで」
『『『怖いなぁ……』』』
順番が決まって、僕たちは伊勢海老という大きなものがなくなった鍋に対して、そう零すのでした。
はつきが騒音キャラだということを忘れていたのではない……騒音ポイントがなかったんや……。
実際に、はつきくらいにリアクションしてくれた方が面白いよね!
某伝統芸能なおでんとか。やっぱりリアクションはオーバーなくらいが面白い……!
というか、絶対に身を取り出す段階でクソ熱そう。




