#142 冬コミは終わり、次の日は大晦日
殺戮兵器による殺戮兵器が始まってから、コスプレ広場はそれはもう大盛り上がりであった。
「「えへっ☆」」
『『『ごふぁぁぁっ……!』』』
にぱっ! と眩しく、そして可愛らしい笑みを浮かべながら、ミリスとみおりの二人はお互いの右手と左手でハートを形作る。
ロリロリな二人による愛らしく、尊いポーズと笑みにより、写真を撮る人たちは軒並み吐血をする。
既に広場の地面は真っ赤である。
「やはり、素晴らしい火力! なんかもう、間近で参加できてるのが最高ですねぇ」
「関りがあってよかったっ……!」
そんな二人を至近距離で見るママ二人は、とても嬉しそうである。
お互い、大好きで大事な娘ということもあって、最早感情は上振れどころの騒ぎではなく、限界突破をしている状態だ。
尚、鼻血は出る。
「やべぇよ……マジで、あの二人の可愛さが尋常じゃねぇ……」
「俺、貧血だわ……」
「貧血……ハッ!? そうかっ、献血が来ているのならば、ここで血を失っても問題ない・・…!?」
「それは問題があると思うのじゃ!?」
「迷惑はかけちゃめっ! だよ?」
『『『ぐぶふっ』』』
「何しても吐血させるのは才能以外ねぇですよね」
「なるべくしてなった! という感じかにゃー?」
「にしても………なんか、あれだね。ローアングラーいねぇですね」
「だにゃー。あれじゃないかな? ほら、あの二人、その身から強大なピュアオーラを放ってるから、さすがの変態もあの二人はダメだー! ってな感じになってるんじゃないかにゃー?」
事実である。
コミケ、それもコスプレ広場では、ローアングラーと呼ばれる人種が存在する。
地面すれすれの位置からスカートの中などを撮影するという、まあ、変態である。
この四人が着ている衣装自体、普通にスカート系なため、普通に湧きそうなものなのだが、普通に湧かなかった。
そして、その理由は二人が言った通り。
というか……見た目どう見ても小学生でしかないコスプレイヤーのローアングルな写真とか、一発で逮捕案件だし事案である。
さすがに目の前のピュアなオーラをこれでもか! と放っている二人相手に、さすがにローアングル写真はストップがかかったのだろう。
しかし、結果的に言えばそれは正解であった。
なんせ、最凶のバケモノが目を光らせていたから。
仮にもし、二人相手にそんなことをしようものならば、シャッターボタンを押す直前に縮地で現れ、そのまま目にも止まらぬ速さで連行し、結果、O☆HA☆NA☆SHI☆ になっていたのは明白である。
中には心のストッパーを外して撮ろうとした者もいたのだが、なんか寒気がしたのでやめた、というのもあったりする。
恐るべし、邪神。
「たもちゃん、リルちゃん! ポーズお願いしますっ!」
「「はいはーい!」」
ママ二人の方もノリッノリである。
下手したら、娘二人以上にノリノリかもしれないくらいには。
『ぐふっ……ま、まずい、れ、レバニラバーを食べなければぁ~……!』
『どんどんお食べ。そうして、人は強靭な肉体になり、そして人を辞め……んんっ! 生物として強くなっていくんだよ、千鶴ちゃん』
『弟愛妹先生、そのレバニラバー、本当に食べて大丈夫なんですかね?』
『大丈夫大丈夫。ちょっと一服盛ってるだけだから』
『それは大丈夫じゃない』
やっぱり裏の方が大惨事だった。
◇
そんなこんなで、殺戮兵器たちの殺戮兵器的撮影会は、大盛り上がりとなり、気が付けばそろそろいい時間に。
というか、さすがに疲労が出た。
「んっと、そろそろ時間になったので、解散でもいいじゃろうか……?」
なので、ここいらで解散してもいいかどうか、ミリスが周囲に尋ねると、
『『『ありがとうございましたっ!!!』』』
参加者たちはそれはもういい笑顔でお礼を言った後、お開きとなった。
無駄に統率が取れ、尚且ついなくなったのには理由がある。
まあ、大した理由でもないのでドストレートに行くと……四人による被害が甚大すぎて、全員レバニラの亡者と化したからである。
つまるところ、退場時間まで居座ることができず、レバニラを求めて早々に退散していった、悲しき存在たちということだ。
「はふぅ……すぐに解散になってよかったのじゃぁ」
「そうだね! いい人ばかりだったね!」
「やー、やっぱピュアで可愛いロリは偉大ってことですねぇ」
「だにゃぁ」
平和に解散できたことは、四人にとって大きなことであった。
ああも人数が多いとごねる人もいるかな? なんて思っていただけに、すぐに解散となったのはそれはもう幸いであった。
「でも……はぁ、疲れたぁ……」
「うちも……」
「同じく」
「ワタシも疲れたにゃあ……」
そんな四人だがさすがに水分補給をしながらだったとはいえ、ほぼぶっ通しでポーズを取っていたのは疲れたようで、四人仲良く背中を預けてレジャーシートに座り込んだ。
『『『ごふっ……』』』
それを見てしまった参加者たちは死んだが、まあ、問題なしである。
「そう言えば、先生はどこに行ったんじゃろ?」
「椎菜さん、さすがにそろそろ話し方を戻してもええんとちゃう?」
「あ、たしかに。じゃあ、戻そっかな」
「慣れとるけど、そらそれとして疲れたわぁ」
「うちとリルちゃんは素の対応だったけど、二人は演じてもいたからねぇ。やっぱ疲れるよねぇ」
「にゃは! いいものを見させてもらったにゃ! まあ、ワタシもへとへとだけどねぇ!」
「僕も」
「うちもや」
「同じく~」
「「「「はふぅ~~~……」」」」
「―――」
「あぁ! また死んだぁ!? というか、もう出し過ぎて全身真っ青通り越して、蒼白!?」
「最早顔面だけですらない」
「あー、やっぱり四人は刺激が強かったか。なまじ、他の参加者たちがいなくなったのもでかい」
四人仲良く大きく息を吐いたら、四人の近くからそんなやり取りが聞こえて来た。
なんだろうと思って、四人が声がした方に視線を向ければ、そこには弟愛妹、寧々、藍華の三名と、安らかな顔で鼻と口、耳から血を垂れ流しながら、とても……それはもうとてもいい笑顔で血溜まりに死ずむロリコンの姿があった。
最早見慣れたものである。
「あれ、先生たち?」
「やぁやぁ、ミリスちゃんたち。撮影会お疲れ様!」
ドズンッ!
「ハッ!? 桃源郷はここ!? 私はロリコン!?」
「……あ、あの、先生? 今、その、千鶴お姉ちゃんの胸を……」
「え? 何か言った?」
「え、でも……」
「何か言った?」
「あの……」
「何もないよ? ちょっと止まってただけだから。蚊が」
「そ、そっか……」
ミリスはそれ以上何も言わなかった。
いつもの笑顔でお疲れと言いながら、千鶴の胸を思いっきり拳で打ち抜いていたような気がしたが、大好きな姉が気のせいと言い張って来たので、気のせいだと思うことにしたのだ。
一緒にいる三人も何も見なかったことにした。
ついでに、それで目が覚めたロリコンについては触れなかった。
「さて、四人ともお疲れだとは思うけど、そろそろ片付けして帰宅ぅ! するので、元の服に着替えて来てねー」
「「「「あ、はーい」」」」
「秘技! 超速耳塞ぎ!」
「ひあ!? な、なんですかぁ~!? 何も聞こえないですよぉ~!?」
「ん、ナイス寧々」
「おー、いい動き! おかげで死なずに済んでるね!」
四人が口を揃えて返事をしようとしたのを察知した瞬間、寧々が目にも止まらぬ速さで動き、四人の声が入らないようにロリコンの耳を塞いだ。
結果、耳を塞いだ際の音と塞がれたことによって、四人の声がロリコンの耳に入ることはなく死亡は免れた。
これには、藍華と弟愛妹はにっこり。
「んっと……?」
「あぁ、気にしなくていいから、行って行ってー」
「あ、う、うん。じゃあ、行こ!」
気にしなくてもいいと言われたので、四人は更衣室へ向かった。
◇
それから更衣室内で着替えを行い、サークルの場所へ。
ちなみに、更衣室内でサインください! と言ってくる参加者たちがいて、ミリスとみおりは照れつつ、たもとリルの二人はまんざらでもないような反応をしながら、サインを書いた。大騒ぎになった。
「先生、戻ったよ~」
「おかえり~。まあ、もうやることないので、そのまま帰るんだけどねー」
「あ、そうなの?」
「おう。なんだかんだ、もう閉場時間になるし。なので、いつでも帰れるようにってね。あ、たもちゃんとリルちゃんはこのまま帰るの? それとも、宿泊?」
「あぁ、うちとリルちゃんはあれです。折角の縁だからー、ということで、うちがリルちゃんの家にお邪魔して、大晦日を一緒に過ごすつもりです」
「明日の配信を見るにゃあ!」
「なるほどなるほど。……そう言えば明日は配信だったねぇ」
「先生忘れとったん?」
「いやほら、ちょっとみんな可愛すぎて」
「でも、たしかに早く帰った方がいいね。明日もやることはいっぱいだもん」
「うんうん。千鶴ちゃんなんて、血を失い過ぎて寧々ちゃんと藍華ちゃんの二人に肩を貸してもらいながら帰ってったしね」
「あははは……」
弟愛妹の言う通り、ロリコンは二人に肩を貸してもらいながら帰宅。
最後までいようとしたようだが、さすがに血がなくなったのはアウトだったようである。
致し方無い。
「そう言うたら、皐月たちはどないしたん?」
「あぁ、あっちの方々も同様に帰宅。明日は絶対ヤバそうだし、楽しそうだから温存、だって。ちなみに、俊道君と冬夜君の二人はいろんなものを買いまくって、そのまま帰ってったよ。なので、今は私たちしかいない、ということです」
「そっか。もうちょっとお話したいなぁって思ったけど、明日会えるもんね」
「そゆことー。というわけなので、私たちも撤収! はい、帰宅帰宅ー。あ、大崎駅までタクシーで行くんだけど、二人はどうする? あの尋常じゃない人の波に乗る? タクシーで帰るんなら、もう一台呼ぶけど」
「「お願いします」」
即決だった。
「おっけー。やー、こういう時に知り合いがいるといいよねー」
なんてことを言いながら、弟愛妹は電話をかけ始めた。
「もしもし、私です。そうそう。あのさ、今からコミケ会場付近に二台来てほしいわけよ。大丈夫? あ、うんうん。おっけー。あとでそっちの家に送付しとくねー。あいよー。というわけで、二台来ます」
「たまに思うんやけど、先生の人脈どないなってるん?」
「基本趣味で得た人脈、とだけ。あとは仕事関係」
らいばーほーむにおける、最大の不思議は弟愛妹の人脈なのかもしれない。
◇
そんなこんなで、タクシーを用いて移動。
最後に弟愛妹は知り合いのサークルに顔見せに行き、夏コミにあの娘たち連れて来てくれ! とかお願いされたりもしたが、特に何事もなかった。
道中もこれと言った問題もなく、平穏無事に大崎駅に辿り着き、そこで小夜とアリスの二人と別れた。
三人は事前に愛菜がチケットを取っていた特急に乗って美月市へ。
まあ、直通というわけではなかったので、乗り換えはあったが、それでも快適に帰ることができた。
「じゃ、うちはここで。送ってくれてありがとなぁ」
「栞ちゃんみたいに可愛い女の子が夜道を一人! っていうのは危ないからね。私ならば、どんな不審者が現れても、確実に守れるって寸法よ」
「男性より安心感がすごいわぁ……」
下手な男性より強い……どころか、プロの格闘家よりも普通に強いのが愛菜なので、ある意味では世界一安全なのかもしれない。
銃撃戦想定もしているバケモンなので。
お前はどこへ向かっているんだ。
「ほな、椎菜さんもまた明日」
「うん! また明日! おやすみなさいっ!」
「おやすみぃ」
お互いに小さくを手を振ってから、愛菜と椎菜の姉妹も家路に就いた。
◇
「「ただいまー」」
「おかえりなさい、二人とも。どうだった?」
「全部捌いて来たぜ☆」
「疲れたぁ」
「ふふっ、楽しめたようで何より。さ、入って入って。今日はお鍋よ~」
「「わーい!」」
家に帰宅し、二人を出迎えたのは母である雪子だった。
二人がしっかり楽しめたことを理解した雪子は何とも母らしい笑顔を浮かべ、中に入るように促す。
晩御飯がお鍋ということがわかると、二人は目に見えて嬉しそうにし、家の中へ入って美味しい夕食を食べるのであった。
◇
これは余談だが、ミリス、みおり、たも、リルの四名はネット上でそれはもう大騒ぎになった。
冬コミに舞い降りた四人の天使という意味で。
四人は知る由もなかったのだが、トワッター上でトレンド入りするくらいには大盛り上がりになったし、なんだったら掲示板でも騒がれたほど。
あまりにも、みたまとリリスにそっくりすぎる幼女二人と、似ているわけではないが、全然違和感なく着こなしていた幼女二人という、まず見ない光景だったこともあり、それはもう盛り上がった。
ついでに言えば、コミケ会場が真っ赤だったことも騒ぎになったが……そちらはすぐに鎮火した。
理由はまあ、
『本人じゃないとはいえ、神レベルの見た目だったら、そりゃあ吐血するでしょ』
というものだったのだが。
殺戮兵器は伊達じゃない、ということである。
最後は駆け足だしあっさりでしたが、これで冬コミは終了!
次回から大晦日! 多分、10話以内かな? やるにしても、準備の話をちょっとと、配信部分なので。
……というか、この作品VTuber物なのに、最近全然配信してない気が……。
ま、まあ、しばらく配信回が増えると思うからね! 多分ね!
少なくとも、大晦日配信、宝くじ配信、みたま×いくまの配信……それと、四期生の初配信もあるから……あれ、今度は配信ラッシュ……。いつになったら、新学期に入れるのかなぁ!




