#137 最終確認、親同士娘同士の仲の良さ
「んで、まあ、コスプレをしてもらったわけですが……ミリスちゃんとみおりちゃんや。折角なので、今日はその衣装通りの話し方をしてみない?」
四人集まったということで、この後の動きなどについて確認をしたところで、お姉ちゃんが口を開いてそう提案して来ました。
「衣装通りって言うと……リリスおねぇたまみたいな?」
「うちは、みたまさんいうことやな?」
「そゆこと。その方が面白そうだし? あ、そちらのお二人は、お好きなように! 素でもいいし、二人みたいに演じてもいい! どちらでもOK!」
「うちはこのままで」
「ワタシも同じくぅ~」
「おっけー。んで、どうだい? 二人は」
「面白そうなのでやるー!」
「せやなぁ。たしかに面白そうや」
たしかに、折角リリスおねぇたまの衣装を着てるのなら、やっぱりそっちでやりたくなるよね!
お姉ちゃんの提案は、僕とみおりお姉ちゃんの二人ともノリノリでやることに。
「んっと、リリスおねぇたまだから……こんな話かのう?」
たしか、こんな感じだったはず……。
「あっとるよ~。なら、うちは……こんな感じかな? どうかな?」
「大丈夫!」
「うんうん。じゃあ、これでいくね!」
「みおりお姉ちゃんって、結構演技得意だよね……って、あ、じゃなくて、えと……じゃよね?」
「職業的にね!」
ロールプレイが上手だし、あれかな、何かを演じることが得意なのかも?
職業的にっていうことは……演技に関すること?
でもみおりお姉ちゃんって大学生さんだよね?
もしかして、別の名義で何か活動してるのかも。
「そうなん……じゃな」
「難しいかな? やっぱり。わたしの口調って」
「だ、大丈夫なのじゃ!」
「無理しないでいいからね?」
「う、うんっ! あ、じゃなくて、うむっ!」
むむぅ、普段しない口調だから難しい……。
「たもさんや、たもさんや。ワタシ、不慣れなのじゃろりという存在に、胸の動機が止まらないにゃぁ」
「リルさんや、リルさんや。うちは、手慣れた感じでやる、魔王が巫女服着たロリっ子の元気っ娘口調に動機が止まれねぇですよ」
「やはり、ロリはいいっ……! そして、お宅の娘さんも可愛すぎってもんですぜ……!」
「いやいや、そちらのお家の娘さんも、可愛すぎるにゃ~」
「「これが、家族ぐるみかっ……!」」
「なんかカオスだな~。んまあ、私のサークルなんて、カオスで十分ってもんか! はい、というわけで、全員話聞いてね~」
「「「「はーい」」」」
「ごふっ……レバニラバーレバニラバー…………」
あれ、お姉ちゃんまたレバニラバー食べてる……?
というより、あれって何本あるんだろう。
「さてと。えー、少し前にも流れは説明したけど改めて。四人にはコミケ開始後、そのまま売り子をしてもらいます。まあ、売り子って言っても、普通に代金を貰って、同人誌を渡すだけなんで、そんなに気負う必要はないです。ぶっちゃけ、そう言うレジ打ち的な仕事をしたことがない人なんてごまんといるしね」
「「「「ふむふむ」」」」
「いや可愛いかよ。んんっ! えー、それで、四人は絶賛コスプレ中でございます。既に、方々のサークル参加者やら巡回中のスタッフや警備員的な人とか既にちらっちら見られてますが、気にしないで下さい。むしろ笑顔を振りまいてください。その分だけ、私のサークルの自由時間が増えます」
「「「「なるほど~」」」」
「レバニラバー……。それから、確率は低いとは思うけど、多分やべぇ参加者が来る可能性があります。具体的にはこう、きもい感じの……」
「「「「というと?」」」」
「あの、なんで四人とも声を揃えてんですかねぇ。いや可愛いんでいいんですが」
なぜかそうなっちゃうだけなんだけど……。
あれかな、お揃いみたいな感じになってるから、気持ちが合ってるのかも?
「えーっと、んで、どういう感じだっけ? ん~、なんていうかこう、イメージ的には……デュフフ、みたいな感じ」
「今時そんな露骨な笑い方はねぇですよ」
「いやそもそも、リアルではないと思うにゃー」
「「???」」
「あ、うん。だよね。まあ、あくまでイメージだからね、イメージ」
今の笑い方は確かに独特だったけど……お姉ちゃん、どんなイメージを持ってるんだろうね、本当に。
「あと、うちのファンは基本的にとても民度がいいので、よほどはないけどね」
「ちなみに、よほどがあったらどうするのにゃ?」
「ん~……まあ、校舎裏?」
「先生、ここに学校はないよ……?」
「知ってるかい? ミリスちゃん。世の中には、わけのわからないコスプレをする人もいるのだ……過去には、ピクトグラムとか、湯切りに失敗したペ○ングとか、飴とか、他にも電柱、食べ物、もう本当に何でもありなんでね」
「「そ、そうなんだ……」」
「さすがコミケ」
「だねぇ」
なんと言うか、世の中いろんな人がいるんだなぁ……なんて。
でも、そう言う人たちとか、見てるだけで楽しそう。
自由行動の時にいるかな?
「それに、私の知り合いに、校舎裏を再現した人とかいるしねぇ。あ、今日も来るそうです。ちなみに女性」
「「「「女性!?」」」」
「その人、めっちゃ美人なのに、なぜかイロモノなんだよね。まあ、面白いからいいんだけど」
「そ、そうなんだ」
「ミリスさん、喋り方が戻っちゃってるよ?」
「は!? え、あ、えと、そ、そうなんじゃなっ!」
うぅ、慣れない言葉遣いは難しいよぉ……。
「ごめん可愛すぎて死ぬごふっレバニラバーレバニラバー……」
「今、一連の流れを全て連結して……!? さすが、弟愛妹先生だぜぇ!」
「にゃはっ! もう尊敬だにゃ~」
笑顔で血を吐いたと思ったら流れるようにレバニラバーを食べてる……お姉ちゃん、本当にすごい……。
「へへっ、よせやい、照れるじゃん? あ、よかったら二人もレバニラバーいる?」
「「もらうぅ!」」
「はいどうぞ。あ、20本ずつでいい?」
「先生、どれくらい持って来たの……じゃ……?」
「持ってけるだけ持って来た」
「そ、そっか」
何本、とは具体的には言わない辺り……きっと、いっぱいあるんだろうなぁ、なんて……。
「というわけで、まあ、そう言う奴がいるぜ! って話よ。ま、仮に何かあっても案外大丈夫でしょ。私もいるし、どうせどこぞの方々も来るしね~」
どこぞの……もしかして、らいばーほーむのみなさんかな?
そう言えば、来るって言ってたもんね。
……コスプレ姿を見られるのはちょっとだけ恥ずかしいけど……。
「というわけで、以上が説明! あ、並び順的には、右から順に、リルちゃん、たもちゃん、ミリスちゃん、みおりちゃん、という順番ね。OK? あ、異論があれば遠慮なく!」
「「「「大丈夫!」」」」
「はいおーけー! っと、もうすぐ開始の時間かな。いやぁ、今年は売り子が四人も確保できて、私は安心ってもんだよ」
「去年は違う……違ったのかのう?」
「というより、私って基本的に一人サークルだからねー。誰一人として売り子とか仲間とかいないんだよね」
「意外だね?」
「いやぁ、ほら、安心できる人じゃないと、怖いじゃん? 金銭面のトラブルとか、盗み的なあれこれとかで」
「あぁ、なるほどねぇ。たしかに、うちも信頼できる友人だから代理を任せてるけど、そうじゃなかったら、別の方法だったしねぇ」
「でしょ? そういうこと。たしかに、この場にいる人たちは同志ではあるけど、案外身内の方がヤバくない? なんてこともあるってことよ」
「「なるほど~~」」
やっぱり、色々あるんだなぁ。
コミケは今年が初めてで、少なくともすごく楽しそうだなぁなんて思ってたけど、楽しいだけじゃない面もあるんだね。
まあ、僕はサークルを立ち上げる! なんてことはする気はないけど。
でも、そういうお話はなんだか面白いかも?
裏話的な意味で。
「あ、ちなみに私は裏方兼ボディーガードなので、ヨロ!」
「ボディーガードって何するのかにゃ?」
「さっき言った校舎裏。あと、裏方の方については、机の上にある同人誌が無くなったら補充する、的な役割です。一応言わなくてもすべて把握してるけど、心配だったら声掛けしてもろて!」
「わかったなのじゃ!」
「ミリスさん、のじゃ、でいいんだよ?」
「ふぇ? そうなの?」
「いやいや、みおりさんや……のじゃろりは! 不慣れであっても最高に可愛いのにゃぁ! 不慣れのじゃろり最高だにゃ~~~~~~~~~!」
「名前にするくらいだから、なんて思ってたけど、いやぁ、マジでのじゃろり好きなんだねぇ。まあ、私もミリスちゃんののじゃろりは大変新鮮でよろしい! あ、今後もやってみるのはどう?」
「う、う~ん、あっちなら……?」
配信ならやるのはあり、かなぁ……。
慣れれば楽しいし、マンネリ防止にもなるかもしれないし。
「ミリスちゃんならば、マンネリ防止など考える必要はないが?」
「今、心を読まなかった……?」
「ふっ、私レベルになると、ミリスちゃんの考えていることはお見通しなのだ……」
「それはそれでどうかと思うよ、先生」
「そ、そうだ……じゃなぁ」
いつの間に、お姉ちゃんは心が読めるようになったんだろうなぁ……。
でも、お姉ちゃんならできても不思議じゃない気がします。
「初々しいのじゃろりちゃんが大変良き……」
「リルさんや、鼻血出とりますぜ」
「たもさんも出てるにゃ」
「ふっ、娘、だからね」
「娘の友人が可愛すぎる件について」
「わかるぅ」
「まあ、うちの娘も最大級に可愛いんだけどにゃぁ!」
「わっかるぅ!」
「はいそこー、我が子自慢はああとでねー。ともかく、これから我々は実質的に戦場に放り出されることになります」
「「せ、戦場……」」
「んまあ、壁サークルだし、弟愛妹先生だからねぇ……」
「そ、そう言えば、弟愛妹先生って人気なの、かのう?」
お姉ちゃんの同人作家さんとしてどれくらい人気なのか気になって、詳しそうな二人に訊いてみることに。
「そうだねぇ……少なくとも、壁サークルに指定されるレベル。しかも、SNS上だとか掲示板サイトでもとりあえず、買っとけレベルでおすすめされるし、手に入れたかったらマジで許される範囲での時間に並ぶことを推奨されるレベル?」
「そうだにゃぁ。会場で買えなかったぁぁ! ってな具合に慟哭をトワッターで垂れ流してる人はいるかにゃぁ。まあでも、ネットでも買えるんだけどにゃー」
「な、なるほど……」
ということはやっぱり、お姉ちゃんってすごく人気なんだなぁ、なんて。
「とまあ、一応それなりに人気なので、このサークルには初手から人が殺到します。中には他にも欲しい同人誌があって、急かしてくるような人もいるかもしれないけど、慌てず、丁寧にして貰えれば大丈夫。一冊500円だから勘定もしやすいしね。あとは、そうだなぁ……あー、あれ。一応裏で警護はするけど、外の広場に行く時は気を付けてね。コスプレしてるから」
「「???」」
「「あー……」」
お姉ちゃんの最後の注意について、僕とみおりお姉ちゃんはどういう意味かわからず、こてんと首を傾げました。
でも、たもお姉ちゃんとリルお姉ちゃんの二人は何か察したみたいだけど……。
「ふふふ、我が大事な売り子たちに不埒なことを考える奴らはこの手で処すのみ……っと、暗黒感情は一旦放置。さて、そろそろアナウンスが……」
なんて、お姉ちゃんが言おうとした直後に、会場内にチャイムのような音が鳴り響きました。
すると、会場内の人たちが拍手を始めました。
それには、お姉ちゃんとたもお姉ちゃん、リルお姉ちゃんの三人も混じっていたので、僕とみおりお姉ちゃんもそれにならって拍手をする。
『お待たせ致しました! ただいまより、コミックマーケットを開催します!』
「よーし! アナウンス入った! はい、四人は配置についてー!」
「「「「はーい!!」」」」
「ぐぅっ……よし耐えたぁ……! ……よし、四人ともさっきの配置に着いたね? では、この戦場を見事乗り切り、自由時間を手に入れるぞー!」
「「「「おー!」」」」
号令、それでいいのかなぁ……?
多分、次回からコミケ本番の話……のはず。場合によっては、らいばーほーむメンバーの誰かの閑話になるかも。と言っても、コミケ関係の話になりますけどね。その場合は……三期生面子になるかなぁ。
というか、進みがおせぇ!




