#134 冬コミ前日、召集されたロリ×2
「えー、というわけで集まってもらったのは他でもありません。明日の冬コミについてです」
「え、えーっと……?」
「あー……愛菜。なんでうちが呼ばれたん……?」
旅行から帰って来た翌日。
お姉ちゃんのお部屋には、僕だけじゃなくて、お姉ちゃんに呼ばれた栞お姉ちゃんが一緒にいました。
のんびり家事をしつつ、お家で過ごしていたら、突然インターホンが鳴って、僕が出ると栞お姉ちゃんがそこにいました。
それを見計らってか、お姉ちゃんが栞お姉ちゃんを出迎えると、僕と栞お姉ちゃんの手を引いて、お姉ちゃんのお部屋に連れて行って、そのままベッドに並んで座らされました。
なにがなんだかわからず、僕と栞お姉ちゃんの二人はちょっと困惑気味。
「え? 今言ったじゃん。明日の冬コミについてって」
「そら言うたけど……」
「冬コミはわかるけど、どうして僕だけじゃなくて栞お姉ちゃんも呼ばれてるの?」
「ん~、結論から言えば……えー、二人に売り子をしてほしいなと」
「「売り子?」」
こてんと、声を揃えて聞き返しつつ首を傾げる。
すると、お姉ちゃんがうぐぅっ! と強く胸元を握りしめました。
心臓が痛いのかな……?
「くっ、やはり一つ一つの仕草の破壊力が半端ない……んんっ! ともあれ。まずは売り子がどういうものか、だけど……簡単に言えば、サークルで同人誌などを頒布する際に、お金のやり取りなどをする人のことを指します」
「つまり、店員のようなもんかいな?」
「んまあ、平たく言えばね。この売り子なんだけど、結構サークル的には重要な物なんだよね」
「そうなの?」
「うむ。そうだねぇ……例えば、ものすごく可愛いコスプレイヤーの人が売り子をしているサークルと、そういう売り子がいなくてサークルの主だけのサークル。どっちに人が集まりそう? と考えるとどう?」
「そらぁ、前者やなぁ」
「んっと、面白いかどうかで判断はしないの?」
「それもあるにはあるけどね。でも、やっぱりそういう見ていて楽しい人がいる場所っていうのは大きいんだよ。むしろ、いた方が大きな売り上げになるし」
「なるほど……ちゅうことは、愛菜はうちらに売り子をしてもろうて、売上に貢献してほしい、ちゅうこと?」
「そゆこと!」
なるほど……。
今の説明で色々と納得しました。
たしかに、そう言う人がいた方がいっぱい売れそうだもんね。
「でも、僕たちで売れるのかなぁ……」
「そやなぁ。こう言うてはなんやけど、うちらちんちくりんやん? お客さんが来るかわからへんよ?」
「いやいや何を言うの二人とも」
「「??」」
「小さくて可愛い女の子二人がコスプレしてそこに立ってるだけで……いくらでも金を落とす人が集まって来るに決まってるじゃん?」
「それはどうかと思うよ!?」
「言い方が悪いわぁ」
「何を言うか! 二人が一緒に出た時のコメ欄を思い返してみてよ! スパチャの量! 真っ赤も真っ赤! しかも、限度額投げまくってる人ばかり! つまり、ものすごく可愛い二人が売り子をしているだけで、世のお兄さんお姉さんたちは満面の笑みでお金を落とす! そして、私の懐が潤う! これぞ、win‐win!」
最後はともかくとしても、思い返してみれば、たしかに僕と栞お姉ちゃんが一緒に映ると、すごくスパチャが来ていたような……。
「まあ、ぶっちゃけ金銭は割とどうでもいいんだけどね。ネット通販とか、ダウンロード版での販売もしてるし。それに、普通に仕事してるし」
「そ、そうか」
「でもお姉ちゃん。冬コミで売り子さんって言うことは、私服でやるわけじゃない、よね?」
「そりゃあもう。二日前の夜に、コスプレ衣装を発注したじゃん? それが今朝届いたんですね」
「「もう届いたの!?」」
「え? でも言ってたじゃん? 明後日に届くよーって」
「いや言うとったけど! でも、ほんまとは思わへんやん!?」
「あ、その衣装がこちらの箱に入っております」
「スルー!?」
「こっちが椎菜ちゃん用、こっちが栞ちゃん用ね」
栞ちゃんお姉ちゃんのツッコミをスルーしつつ、お姉ちゃんは自分の後ろに置いてあった箱を二つをそれぞれ僕と栞お姉ちゃんの前に置きました。
大きさはそうでもないかな?
「お二人が、それぞれ反対の衣装を着たいとのご所望だったので、用意させました。椎菜ちゃんにはリリスちゃんの衣装を。栞ちゃんにはみたまちゃんの衣装となっています」
「え、本当に逆で作ってくれたの!?」
「すごいなぁ……」
「服部さんマジですごい人だからねぇ。あ、一応サイズ確認したいので、着替えてもらっていい? これで当日着れねぇ! ってなっても困るし」
「あ、うん。じゃあ僕は自分のお部屋で着替えて来るね」
「はいはーい。栞ちゃんはこっちでいい?」
「ええよぉ」
「おっけー。はいじゃあ、着替えて着替えて!」
お姉ちゃんに言われて、僕たちはそれぞれ試着することに。
僕は段ボールの中から衣装だけを取り出して僕は自分のお部屋へ。
「わぁ、すごくクオリティが高い……!」
衣装を着る前に、一度ベッドの上で広げてみると、かなりクオリティが高いことに驚かされました。
なんというか、コスプレ衣装ってどこか材質がその、ぺらぺらというか、薄いような、そんなイメージがあったんだけど、これはそんなことがなくて、すごくしっかりとした材質でした。
肌触りもすごくいい……!
リリスおねぇたまの衣装ってすごく可愛いよね。
色としては、黒と紫がメインだけど。
「ゴスロリ系って言うのかな? ともあれ、早速着てみよう」
というわけで、早速衣装を着てみる。
難しいかなぁ、なんて思っていたけど、そんなに難しくはなくて、すんなりと着ることができました。
「んーっと……うん、変な所はないかな?」
その場でくるっと回って、変な所がないか確認。
鏡の前でも一応。
「こういうのは初めて来たけど……結構いいかも……?」
これで外出するのはすごく恥ずかしいけど、コスプレとして冬コミに行くならかなりいいかも……。
「うん、問題はないし、お姉ちゃんのお部屋に戻ろう」
お着替えを終え、僕はお姉ちゃんのお部屋へ。
「お姉ちゃん、入っても大丈夫?」
「おっけー」
一応ドアをノックして、入ってもいいかどうか訊いてから中へ。
ガチャリ、とドアを開けて中に入ると……
「あ、来たなぁ。って、おぉ……なんや、えらい似合うなぁ」
そこには、神薙みたまの衣装を着た栞お姉ちゃんが。
「栞お姉ちゃんもすごく似合ってて可愛いよ!」
「ふふ、そう言うてくれると嬉しいわぁ。椎菜はんも可愛いなぁ」
「えへへ、僕もそう言ってくれて嬉しいよ!」
なんて、二人でお互いを褒め合う。
でも、本当に栞お姉ちゃん可愛い。
小さな巫女さんだし、もしも神社にいたらすごく人気が出そうなイメージ。
「……ゴスロリ椎菜ちゃん……イイッ!」
「あ、お姉ちゃん、どうかな? 似合ってる?」
「最高オブ最高。というかそれ以外の言葉が見つからないくらい可愛いですしできれば今後もゴスロリ系を着てほしいなぁと思う所存でございますげはぁっ!」
「愛菜が血ぃ吐いたぁ!?」
「だ、大丈夫!?」
「へ、へへ……なんかもう、我が妹ながら、恐ろしいなぁと……」
何を言ってるんだろう……。
「んまあ、それはいいとして……二人とも、着心地はどう? きつい所とかない?」
「ううん、ないよ! むしろ動きやすいくらい!」
「うちもやぁ」
「ならばヨシ! じゃあ、二人は明日はそれを着るということで」
「うん!」
「了解やぁ。うちもこれ気に入ったしなぁ」
「僕も!」
「そう言ってもらえたのならば、服部さんも喜ぶってもんです」
そう言えば、この衣装二着って実質昨日作ったようなものなんだよね?
……そう考えると、その服部さんって言う人、ものすごくすごい人な気が……。
「よしよし、これで売り子は確保、と。あ、二人は私のサークルで参加することになるので、あの長蛇の列に並ぶ必要はないから安心してね!」
「あ、そうなの?」
「てっきり、うちらも並ぶんかと」
「そりゃあないよ! 多分、早めに同人誌は捌けると思うから、その後は会場内を見て回れるよ!」
「そうなんだ。じゃあ、栞お姉ちゃん、明日一緒に回ろ?」
「もちろんやぁ!」
「お姉ちゃんも一緒に行く?」
「いやぁ、行きたいのはやまやまなんだけどねぇ……私にはやることがあって」
「あ、そうなんだ……」
お姉ちゃん一緒じゃないんだ……ちょっと残念。
でも、栞お姉ちゃんと一緒に回れるのは嬉しい!
「とは言っても、二人のことは陰から見守ってるから安心してね! ……というか、二人を狙ったクソ共が間違いなく出るし、それを排除しないと、だからね」
「愛菜? 何か言うた?」
「んーん、気にしないでー。あ、そうそう。コスプレ衣装に着替える時は、専用の更衣室があるから、そっちでね。更衣室の前でコスプレに必要なリストバンドを買うことになるので、そこも忘れないように! あ、代金は私が出すから安心してね!」
「いいの?」
「なんか悪いなぁ」
「いやいや、二人には売り子をしてもらうんだし当然! それに、一人1000円だしね」
「あ、すごく安いんだね?」
てっきり、もうちょっと高いのかなぁなんて思ってたよ。
1000円はすごく安い。
「そりゃあね。あぁ、それと。売り子をしてもらうので、二人にはちゃんとバイト代を出します! 金額は……まあ、売上の4割が二人のバイト代ってことで」
「そんなにいいの?」
「もちろん! 我がサークルはホワイトなのですよ! 私一人だけのサークルだけど」
「臨時収入ちゅうわけやな。ありがたいわぁ」
「ふふふ、期待していていいからね!」
お金はそこまで欲しい! ってわけじゃないけど、でも、すごく楽しみ。
コスプレしてみたかったからね。
……まあでも、神薙みたまの姿になれるし、あれもコスプレみたいなものではあるんだけどね……。
「いやぁ、今回の冬コミは過去最高レベルにやる気が出てるぜぇ……! というわけで、明日はよろしくね!」
「うん!」
「任せてやぁ」
「あ、ちなみに朝8時半までには入場してないといけないので、朝早いです。なので……栞ちゃんは今日泊まってってね!」
「あ、そのレベルなんやな」
「そりゃあねぇ! ちなみに、寝る場所は椎菜ちゃんの部屋で」
「え!?」
「了解やぁ」
なぜか栞お姉ちゃんが今日は泊まっていくことが決まった上に、僕のお部屋で一緒に練ることになりました。
嬉しいけど、なんで!?
尚、お泊まりシーンはカットとなります。先に進まなくなるので……!
もしかすると、次回は閑話になるかもしれません。理由はまぁ……今まで名前と容姿は明かされてるけど、本編中ではたった一度しかセリフ(?)がなかったキャラを出したいからですね。あ、ちゃんと冬コミに関係あるキャラです。というか、多分登場人物は二人になるかな? そのキャラと、普通に出番があるキャラの組み合わせになります。誰が出るのか、予想してみてねぇ!
あ、それと、どこかで要望があって、水着回が欲しいと言われたので、近いうちに書こうと思います。IFにするか、本編にするかはまぁ……おいおい。




