一周年記念特別編#椎菜(♀)→椎菜(♂)に戻るだけのIF:2
「椎菜お前、男に戻ったのか」
「うんっ! 見ての通りだよ!」
「はぁ~~、本当に椎菜ちゃんの男の娘姿とか久しぶりに見たよ。夏休み前だよね、最後に見たのって」
「八月だったからね、変化したの」
なぜかクラス内が阿鼻叫喚になるという事態に陥りつつも、柊君と麗奈ちゃんの二人に関してはいつも通りの様子で、僕の所へやってきました。
二人は変わらないから落ち着くなぁ。
「見ての通り、男に戻ったからね! もう女の子じゃないからね! できれば可愛いってあんまり言わないでほしいです!」
(((既にその姿で可愛いんですがそれは。あと声も)))
「いや本当になんか懐かしい気分だな……」
「えへへ、そうだね。僕もそこまで柊君を見上げる必要がないのが懐かしいよ。あと、ズボン」
「そう言えば椎菜ちゃん……じゃなくて、椎菜君かな? 椎菜君って、何気にずっとスカートだったもんね」
「主にお姉ちゃんとお母さんが原因でね……」
「あーまあ、あの二人ならたしかに、スカートを勧めるだろうなぁ……」
「大変だねぇ」
「でも、今後は普通に男物のお洋服が着られるので問題なしです! 男子制服だし、男に戻ったから、まごうことなき男だよね!」
(((いや、どう見ても美少女にしか見えない……)))
あぁ、やっぱり男子制服っていいなぁ……。
「そう言えば、男に戻って男子制服に戻ったから改めて思うけど、やっぱり冬場は男子制服の方がいいね」
「そうなのか」
「うん。だって、スカートってすーすーするし、すごく寒いもん」
『『『あぁ~~~』』』
僕の言葉に、クラスの女の子たちが共感したような、そんな声を漏らしました。
「なんか、女子がやたら共感してるな……」
「高宮君はスカートを穿いたことがないからわからないと思うけどね、冬場は色々と大変なんだよ。スカートって足が剥き出しになってるわけだからね。だから、色々な方法で対処したり、おしゃれのために我慢したりと、結構女の子は苦労しているのです」
「なるほどな。そう言えば、椎菜も冬場は割と対策していたな……」
「うん。タイツとかで。裏起毛のタイツとかあってね、それが結構温かいんだぁ」
「そうか。……というか、しれっとそう言う話題に乗れる辺り、椎菜は割と馴染んでるな。女子の方に」
「ま、まあ、五ヶ月も女の子での生活だったからね……」
今にして思えば、長いような短いようなって感じだったけど、ある意味貴重な経験でした。
でも、もう僕は男に戻ったからね!
大丈夫!
「でも、椎菜君」
「どうしたの? 麗奈ちゃん」
「んーっと、男の娘に戻ったのは全然いいとは思うんだけど……Vtuberの方って大丈夫なの?」
「あ」
麗奈ちゃんに言われて、僕は小さく声を漏らしました。
そ、そう言えば……。
「あぁ、そう言えば神薙みたまはロリキャラだからな……そう言う意味では、たしかに大丈夫かどうかわからないな」
「そ、そう言えばそうだよね!? ど、どうすればいいんだろう!?」
男に戻ったっていうことは、中身とガワが合ってない状況になってるのでは……?
だって、あっちは小さい女の子なわけで、今の僕は女の子じゃなくて男……どうあがいても合わないよね!?
「さ、さすがに、今の声だと合わないし……」
『『『え?』』』
「え?」
あれ、なんか今、クラスのみんな(柊君と麗奈ちゃん含む)が何言ってるの? みたいな反応をした気が……。
「あ、あー、椎菜。こういうのはあんまり言いたくないし、先に謝るんだが……」
「う、うん?」
「椎菜は元々声がその、なんだ……可愛い声だから合わないことはないと思うぞ」
「……ぐぶふっ」
「し、椎菜くーーーーーん!?」
柊君の言葉に、僕は血を吐いて倒れました。
か、可愛い声……そんなぁ……。
「おい、桜木が血を吐いて倒れたぞ!?」
「男として、あれはダメージデカいわー……」
「そりゃあなぁ……」
「たしか、桜木は男らしくなりたいとか考えてたもんなぁ……そりゃあ、可愛い声とか言われりゃダメージ受けるわ。吐血は予想外だけど」
「「「まあ、男の娘だからなぁ……」」」
「お前ら……」
う、うぅ……やっぱり僕、男らしくないんだ……折角男に戻れたのに……ぐすん。
「と、ところで椎菜君」
「なぁに……?」
麗奈ちゃんに声をかけられて、僕はちょっぴり涙目になりながら反応する。
「一つ疑問なんだけど……その姿でみたまちゃんの姿になる事ってできるの?」
「……あ、そう言えば」
「言われてみればそうだな……あの姿はその姿でも適用されるのか?」
「ど、どうだろう……でも、今はHR前だし、さすがに確認は――」
「お前ら急いで外から隠せ隠せ!」
「よし任せろ! なぜかここにブルーシートがあるからそれで隠すぜ!」
「あ、私が養生テープ持ってる!」
「何であるんだ!?」
「あれだよ。IFだから何でもありなんじゃないかな?」
「朝霧、お前は何を言ってるんだ……?」
「まあまあ。ほい、椎菜君いつでもバッチコイ!」
「あ、う、うん。じゃあ、えっと……転神!」
と、僕が神薙みたまになるための言葉を唱えると、ぽんっ! というどこか気の抜ける音と共に煙が現れて、僕の体を包み……。
「……あ、変身でき…………………………………………………………………………ふぇ?」
「あ、あー……なるほどなぁ……」
「う、うぅん、なるほどなるほど……これはなんて言うか……」
変身した姿を見た僕は、たっぷりの間を空けた後、呆けた声を漏らしました。
え、あの、こ、これってその……。
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
『『『お狐男の娘キターーーーーーーーーーーーーーー!!!!』』』
変身した僕の姿は、なんと言いますか……その……男のままで、神薙みたまの姿になっていました……。
具体的には、腰元まで伸びた銀髪に、蒼い目、しかも巫女服……む、胸はないけど、男でこれはなんか違うと思うよぉ!?
神様ぁ! なんで女装になっちゃってるのーーーーーーーーー!?
「待って待って待って!? 可愛すぎるぅぅ!」
「うぐっ、ううっ……な、なんて、可愛いのっ……」
「さすが、椎菜君……いつものロリ巨乳ちゃんからは得られない栄養が、今の椎菜君からは得られるぅっ……!」
「男の娘! 男の娘の巫女服! 狐耳! 尻尾ぉ! どこまで我々のツボを押さえているというの!? 恐るべし、椎菜君……!」
「うぅぅっ、なんでこんな姿に……」
なぜか、女の子が騒がしいけど、今の僕はそれどころじゃありませんでした。
てっきり、変身できないか、女の子の方で変身すると思ってたのに、胸以外はそのまま神薙みたまになるなんてぇ……。
い、一応、男ではあるけど、それでもこれはなんか違うよぉ!
「ね、ねぇ、高宮君」
「なんだ、朝霧。よだれ出てるぞ」
「あの椎菜君、可愛すぎない……? あれで付いてるってすごくない? 神秘じゃない?」
「うん、お前は何を言っているんだ。俺の幼馴染に」
「椎菜君、その、大丈夫?」
「ううぅ、麗奈ちゃぁ~~~ん…………」
僕を心配してか、大丈夫? と声をかけて来た麗奈ちゃんに、僕は涙目に上目遣いで返事をしました。
「ねぇ、誰かティッシュ持ってない? ダースで」
「ごめん、自分用で精一杯」
「涙目女装男の娘とか性癖壊れない? 大丈夫? 私はもう壊れてるけど」
「あれで男……? いや絶対嘘よ……あんなに可愛いなんて……!」
「なぁ、俺もう、桜木でいいかなって思えて来たわ……」
「おいバカ! 何言ってんだよ! 桜木は男だぞ!? 見た目どう見ても美少女だが!」
「あれは美少女ですわ」
「あんなに可愛い美少女が女なわけないだろ?」
「なぁ、俺動悸が止まらねぇよ……あの桜木を見てると、めっちゃ胸がドキドキすんだよ……」
なんで女装なんだろう……。
この変身するための髪飾りって神様から貰った物だけど、神様、なんでこうなるようにしちゃったの……?
僕って、神様からもそう言う風に見られてるのかなぁ……。
「あ、ねね、椎菜ちゃん」
「麗奈ちゃん……ちゃん付けに戻ってる……」
「その姿で君付けはちょっと難しいです」
「うぐぅ……」
「メイド服とかみたまちゃんオルタにもなれるんだよね? その姿ももしかして……」
「……男のままで変身しちゃってるから、多分、男のままだと思います……」
神薙みたまがこれなんだもん……。
間違いなく男のままだよぉ……。
「そ、そっかそっかぁ……」
「朝霧、とりあえず、変身して! とか言うのは止めておくように」
「なぜバレた!?」
「いやバレバレだ。というか、他の連中も、相手はれっきとした男の椎菜だぞ? とりあえず、色々とヤバめの視線は抑えろ。というか、下手に可愛いとか言うと……椎菜が不登校になりかねない」
「さ、さすがにそこ……まで…………は………………あるかもしれない、です……」
柊君の言う通り、前の僕ならまだ女の子だから、っていうことで納得はできたけど、男の状態で可愛いとか言われすぎると……ちょっと、不登校になっちゃうかもしれないです……一応、女の子の時に散々言われてたし、その時は嬉しくはあったんだけどね……。
「さすが高宮君……!」
「幼馴染は伊達じゃないってことね!」
「男の娘な椎菜君を理解しているのは高宮君というイケメン男子だけ……あ、妄想が止まらないわ」
「ダメよッ! 高宮君はともかくとして、椎菜君は神聖な存在ッッ! 決してこちらの世界で弄んでいい存在ではないわ!」
「ハッ! あ、危なかった……危うく、あの邪神様に殺されるところだったよ……ありがとう。命拾いした」
「いいってことよ。とりあえず、高宮君は……刀君と暁きゅんの二人とでどう?」
『『『OK』』』
「何もOKじゃないんだが!? というか、本人を前にしてそっちの話題をするなよ!?」
「あー、なんだ、高宮……ドンマイ」
「愚痴、聞くぜ?」
「とりあえず、コンポタ、飲むか? お汁粉もあるぞ」
「お前ら……………割と本気で同情してるな……」
『『『腐の者たちに好かれるのはさすがに同情する』』』
「……なんか、ありがとう」
柊君は柊君で、なぜか男子のみんなと固い握手をしていました。
何があったんだろう……。
「とりあえず、椎菜。一旦元の姿に戻った方がいいぞ。そろそろ先生が来るかもしれないし」
「あ、うん、そうだね……」
柊君に言われて、組み紐を外す。
『『『あぁぁ……』』』
そしたら、なぜか落胆の声が女の子を中心に上がりました。
なんで?
「お前らも、ブルーシートとか撤収。先生来るぞ」
『『『へーい』』』
「地味に高宮君って仕切るの上手だよね」
「……まともなのがいないんだよ」
「うんまあ、そうだねぇ。高宮君だけだもんね、まともなの」
「できれば朝霧にもそうなってほしいんだがな」
「今のあたしはほら、椎菜君とは異性になっちゃってるし? ここはもう、全力で高宮君にぶん投げる所存」
「朝霧……実は朝霧もらいばーほーむに向いてるんじゃないか?」
「いやぁ、あたしはそこまで個性があるわけじゃないので、スタッフさんかなー。目指してるし」
「……あー、うん。そうだな」
柊君、なんだか疲れた顔をしてるなぁ……。
何かあったのかなぁ。
「おーし、お前ら席着けー……って、うお!? 桜木が男に戻ってる!?」
「えっと、朝起きたら戻ってました」
「あ、あぁ、そうか。まあ、お前はずっと戻りたいとか思ってたからな。よかったな」
「はいっ!」
『『『ごふっ……!』』』
優し気に微笑む先生によかったなと言われて、僕は満面の笑顔で元気に返事をした。
なぜか、クラスのみんなが血を吐いたけど……。
なんで血を吐くんだろう……?
椎菜(♂)の声は、椎菜(♀)の時からそんなに多きかけ離れた声はしてなかったりします。
ほんの僅かに男っぽい(微々たるものでシスコンかロリコンくらいにしかわからないほどに)声ですが、その男っぽい部分を消して、肉体年齢を逆行させた結果がロリ巨乳な椎菜(♀)の声になります。
あと、折角の一周年なので、なんか裏話的な物でも。
どこかで書いたと思いますが、この小説って、最初は事務所か個人勢かで迷った挙句、事務所になったという経緯になります。この作品を思いついた段階では、姉は別にVtuberとか考えてなかったんですが、なんかああなりました。
最初は椎菜ちゃん大好きィィィ! な姉だったのに、何がどうしたら人外じみた存在になるのか、私にもわからん。
ついでに、らいばーほーむメンバーを考える上で、最初に思いついたのって、実はロリコンだったりします。私の書くTS小説の主人公は、基本的にロリ系だからね。ならば、ロリコンは必須だよなぁ!? となります。しかも、大抵がド変態という……。私の趣味趣向どうかしてんだろ。
あと、一番最後にできたのは、いくまと暁です。あいつらが薄い理由はそれ。後半のキャラって薄くなっちゃうんですよねぇ……くそぅ。私にもっと想像力があればなぁ……。
残念ながら、私は才能なんてないし、素人に毛が生えた程度のクソ雑魚ネット小説家なのでね。ありきたりなキャラ設定しか作れんのです。才能欲しい……。
はい、今回の裏話は以上!




