配信#26-2 らいばーほーむのみんなで、温泉配信だよっ!:2
【《温泉コラボ》らいばーほーむの温泉配信! 安心安全な方だよー】
詩与太暁/Shiyota Akatsuki
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#オフコラボ #らいばーほーむ #温泉配信 #男組
女風呂がいろんな意味でアレになっている一方で、男風呂の方もそれはもう、アレなことになっていた。
『はいはい、ウチら金持ち組は置いといて! 温泉配信なのに、現状男がいないと思ったそこの君たち! 実は、男風呂の様子は暁っちの配信で垂れ流し中! まあ、そっちは宣伝用でもあるんだけど』
今回の配信に当たり、男風呂と女風呂で会話内容をある程度共有するべく、物理的には壁越しで話すと言うことをしていたのだが、それはそれで大変では、ということでうさぎが財力でどうにかした。
とは言っても、単純に防水加工の投影機を設置して、そこにお互いの配信を流すだけなのだが。
さすがに温泉は流さない。
うるさくなるので。
『じゃ、男組! そろそろ映像ヨロ!』
「お、俺たちの出番みたいだぜ、暁」
「ですねー。じゃあ、これを被って、と……」
二人は一応配信を既に始めている状態だが、今は音声も映像も切っている状態だ。
その間、二人は温泉に浸かっていたが、委員長スキーギャルのマイクパスが飛んで来たので、持ち込んでいた被り物をし、配信を始めた。
「おーっす! 今日もギラギラ刃紋見せてるか? 俺はいつも通りってもんよ! 宮剣刀だ!」
「画面の前のお兄ちゃんお姉ちゃんたち、今日も来てくれてありがとー。詩与太暁だよー」
『『『ぶふっ!?』』』
【!?】
【!?】
【!?】
【ちょいちょいちょいちょいちょい!?】
【馬鹿野郎www】
【おい噴き出した酒返せwww】
【なんだぁお前らぁ!?】
「おいおい、何を笑ってんだお前ら。どこもおかしいことなんてないだろう?」
「うんうん。いつも通りのボクと、刀先輩しか映ってないと思うんだけどなー」
刀と暁が登場した瞬間、隣の女風呂では噴き出すような声が聞こえたし、コメ欄もそれはもう笑いやら困惑やら怒号(?)やらが飛び交う状況となっていた。
なぜそうなったか。
そんなのは簡単である。
「なぁ、暁、俺らなんか変なとこあるか?」
「いやー。ボクが刀先輩の顔を完璧再現したマスクを被って、刀先輩がボクの顔を完璧再現したマスクを被ってるくらいじゃないですかねー?」
そう、二人はなぜか、お互いのVtuberモデルの顔を完璧に再現したマスクを、なぜか逆で被っていたのだ!
『ちょっ、そんなマスクあるって聞いてないんだが!?』
『何そのマスク!? いつの間に作ったのよ!?』
『ん、びっくり』
『いやアレは笑うぞ』
【マジで何してんだよwww】
【いやほんと、今ツンデレちゃんが言ってたけど、ほんとにいつ作ったんだよww】
【えぇぇぇぇ……(困惑)】
【これは酷い】
【草しか生えねぇww】
【ってか、なんでこっちだけ実写ァ!?】
「いやぁ、はっはっは! 実は今回の温泉配信、旅館側からのお願いがあってな! それってのが、温泉を紹介してほしいってもんでな!」
「さすがに、女性陣の方の映像を流すわけにはいかないよねー、ってことで、ボクたち男組なら別に上裸出しても問題ないんじゃない? ってなって、こうなりましたー。Youtube君、鼻血ブー、しちゃうからねー」
【どういう配慮ぉ!?】
【お前ら体張り過ぎだろ!?】
【しれっと、顔以外を映す気か? 映す気なのか!?】
¥50,000
【刀君と暁きゅんの裸体画見られると聞いてェ!】
¥40,000
【Fooooooooooooooooo!!!!!】
¥45,000
【待って待って待ってェ!? 何その素敵配信!? 全力で脳に刻み込ませていただきます!】
¥39,000
【あぁっ、神よっ……このような幸運を与えてくださり、感謝の念に堪えません……!】
【やべぇ! 腐の者が湧いたぞ!?】
【地獄過ぎて草】
【うわぁ……】
「おっと、なんか高額スパチャがやたら来てんな。なんでこんな来てんだ?」
「さぁ?」
二人は腐の者たちのことは認知しているし、迷惑をかけなければOKとか言ってるほどに寛容なのだが、それはそれとして、目の前で起こっている大量のスパチャがよくわかっていなかった。
ただ風呂配信しただけじゃね? 的なことしか思ってない。
【気付いてなくて草】
【お前らww】
【鈍感なのはいいこと……!】
【鈍感だからこその魅力よぉ!】
「まいいや。で、俺らの役割な! 暁が言ったように、さすがに女性陣の映像を映すのは不味い! ってことで、俺らが代わりに温泉の紹介をすることになったんだよな」
「あー、安心してねー。ちゃんと腰にバスタオルは巻いてるから」
【そこじゃねぇよ!?】
【いや普通に体映す気満々じゃねぇか!?】
【ほ、本当に裸体が!? 裸体が見られると言うの!? イヤッタァァァァァァァァァァ!!!】
【はよぉ! はよぉ!】
「おーい、そっちは準備いいのかー?」
『いつもでおっけーっしょー!』
『が、がんばって、く、ください、ねぇ……!』
『ファイトだぞ!』
「だってよ、暁」
「はいはーい。じゃあ、ボクたちのお仕事と行きますかー。よいしょっと」
「よっと。おー、やっぱ露天風呂だし、温泉から出ると寒いな! はっはっは!」
「あったまってたから余計ですよねー」
二人は仕事をするために、温泉から立ち上がる。
すると、無駄なく鍛えられ、引き締まった肉体と、お前ほんとに男? と言わんばかりに女性のようにやたら華奢だし、なぜかくびれがある肉体が映し出された。
前者は刀、後者は暁である。
『え、刀パイセン筋肉すご!?』
『お、おおぅ、なんという肉体じゃ。さすが、ジムの教導者なだけあるのじゃ……!』
『これはたしかに、モテますよねぇ~』
『わ、すごい……! うぅ、僕もあんな筋肉が欲しかったなぁ……』
『みたまちゃんがムキムキとか解釈違い! 絶対に認めないっっっ!』
『みたまちゃんは可愛い系! ムキムキボディはちげぇです!』
『ってか、なんで暁あんなに華奢なのよ……!』
『あれ、特に食生活とか気を付けてないっぽいんだよね……正直、モデルとしてはかなり羨ましい』
『う、うぅ、暁さん、が、羨ましい、ですぅ……』
『はつきもジム通いしようかなぁ。筋肉着けたい』
【いやマジで筋肉すげぇな!?】
【なんか、すっげえ理想的な細マッチョしてやがる……!】
【羨ましい……】
【アッ――】
【か、刀君の、ら、裸体……筋肉……ぶはぁっ!】
【あぁぁぁ~~~~~! 待って待って待って! それは無理! あまりにも神々し過ぎて、私の目が潰れる……!】
【ここで潰れてしまっては、あの見事な二人の体を記憶に収めることはできませんよ!】
【なんと言う、刀君の見事なシックスパック……! 胸筋! 上腕二頭筋! あぁっ、大腿四頭筋も素晴らしい……! 外腹斜筋も大変良き……!】
【おい筋肉フェチがいんぞwww】
【いやでも、あれは同じ男でも憧れるわ……】
【反対に、暁きゅんはなんて綺麗な肌なの!?】
【あれが、あれが本当に男性……? どう見ても、女性のような、きめ細かで真っ白な肌……! しかも、温泉で温まったせいか、上気してるところが大変眼福です!】
【あぁっ、理想の男の娘の裸体が、このような形で見られるなんて……幸福ッッ! 圧倒的幸福ッッッ!!!】
【変態しかいねぇ!】
【これ思うんだけどさ、男の変態的コメントもヤバいけど、女のコメントも普通にヤバいときあるよな……】
【わかる。直接的ではないのに、なんかこう……ね】
コメ欄は酷い有様であった。
今回の配信は、二手に分かれて行われているが、女性陣の方は男性視聴者のほうが多いのに対し、こちらでは女性視聴者……というか、腐の者たちばかりである。
あとは、まるでゴキブリの繁殖の如き情報拡散によって増えたのもある。
「いやぁ、俺たちが体を見せただけで大騒ぎだな!」
「ですねー。まあ、これはこれで楽しいからいいんじゃないですかね。ほら、お姉ちゃんたちも楽しんでるみたいだし」
「だな! 俺らは楽しませてなんぼ! これくらい許容できずして、らいばーほーむの男は名乗れねぇぜ!」
はっはっは! と笑いながら刀がそう言った直後である。
【凪神司:あの、これ今後俺もやるんですか……?】
四期生の男性ライバー兼常識人の司がコメ欄に出没した。
「おっ! 司か! 見に来てくれたんだな!」
「わー、後輩君が早速配信に絡んできてくれたのは嬉しいねー。向こうでも、かざりさんとかめいさんが絡んでるみたいだし、男子は男子で絡もうねー」
【つ、司ちゃん……!?】
【司ちゃんが来たわ! 司ちゃんよ!】
【今後は三人での配信だと思うと……ふへ】
【悲報 新人君への二人称、ちゃんだった模様】
【なぜにちゃん付けwww】
【司ちゃんは高校生。つまり未成年……ならば、ちゃん付けが妥当……!】
【高校生組、どっちもちゃん付けなのかwww】
【凪神司:慣れろ、ということか……】
「んまあ、BL本のネタにされるだけで、死ぬわけじゃないからセーフだな!」
「大丈夫! リアルで影響がなければノーダメ!」
【凪神司:ノーダメ……ノーダメ?】
【こいつらのメンタルやっぱおかしいわ】
【自分らのBLの存在を知っても、まあ、楽しんでくれてるならヨシ! で済ませるバケモンメンタルだからなぁ……】
【相手は男子高校生なんですがそれは】
【うんまあ……さすがに手加減するやろ】
「っと、あんまし話すと時間が無くなるな。じゃ、ここからは仕事だ。えー、俺たちがなんでこんなことをしたかと言えば……さっきも言ったが宣伝だな!」
「ここの旅館、実はお客さんが減ってるらしくてねー。それもあって、こうして貸し切りができたわけでね。それで、配信の許可をリリスさんが貰いに行ったら、ここの温泉を紹介してほしい! ってお願いされたんだよー」
「んで、俺らが紹介! ってわけだ! んじゃあ、早速紹介! まずは、露天風呂だよな! 見ての通り、ここは目の前が海になっていて、旅館も高い位置にあるおかげで、眺めも最高なんだぜ! 実際、俺と暁なんて、二人でのんびり温泉に浸かってたしな、開始前に!」
【たしかに眺めがいいな……】
【ってか、結構雰囲気良くない?】
【わかる。古き良き露天風呂って感じがして、結構好きかも】
【海を見ながら露天風呂とか最高過ぎん?】
二人の紹介に、視聴者たちもかなり興味を持った様子。
海の見える露天風呂というだけで、かなりポテンシャルは高いだろう。
「んで、ここのメインである露天風呂の温泉の効能な。なんでも、疲労回復、冷え性改善、肩凝り解消、腰痛緩和、あとは美肌……暁、他に何があったっけ?」
「ん~、たしか……って、あ、あそこに効能がありますねー。えーっと……浄化、厄落とし……退魔……こんな効能、温泉にありましたっけー?」
「そこに書いてあるならあるんじゃないか?」
「ん~……ま、それもそうですねー」
明らかに温泉の効能として不自然な物があったが、二人は気にしなかった。
【いや待って? それはなんかおかしい!?】
【浄化、厄落とし、退魔って、明らかに温泉の効能じゃねぇだろwww】
【どんな旅館なのそれ!?】
【そんなファンタジーな効能知らねぇww】
まあ、コメ欄ではツッコミが入りまくったが。
『厄落とし……つまり、これに浸かることで、私の胃通が減る、ということかい……!?』
『たつなちゃん、それは諦めよう』
『でもでも、この温泉に浸かったからか、妙に体の調子がよくなった気がするぞ』
『ん、たしかにあるかもしれない』
【いやそれ、ただのプラシーボ効果では……?】
【けど、TS病なんていうファンタジーな病気がある以上、ファンタジーを完全否定するのは無理では?】
【マジであるのか、その謎効能……!】
「んまー、効能は以上だな! 美肌効果はどれほどかわからねぇけど、女性陣が後でトワッターに上げると思うんで、そこを待っててくれよな!」
「じゃあ、次の紹介行きましょうかー。次は中ですかねー」
「だな。えー、中は……こんな感じだ! 露天風呂がメインだからか、比較的規模は小さめだが、檜風呂があるんだぜ!」
「しかもここ、全部檜で出来てるみたいなんですよねー。だから、シャワーで体を洗ってる時とかも、檜のいい香りがするんですよー」
「やっぱ、檜の匂いっていいよな! 俺、好きだぜ」
「落ち着く匂いですよねー」
【へぇ、全部檜で出来てるのか】
【檜風呂好きだから結構行ってみたいかも……】
【らいばーほーむメンバーが行った以上、聖地巡礼として行かねば……!】
【結構設備もいいっぽいな】
【ふむふむ、刀君と暁きゅんに9割視線を持っていかれてるけど、それはそれとして、温泉は魅力的……】
【美肌効果はいいなぁ】
【私も行ってみたい!】
「お、興味を持ってもらえてるようだな! 基本的にここの檜風呂と、外の露天風呂がメインだが、サウナもあるんだぜ! まあ、機材の関係で入れないんだが……そこは、あとで写真にアップさせてもらうぞ!」
「写真でごめんねー」
「んじゃ、露天風呂に戻るかー。ここの温泉、もっと紹介したいんだが、難しいんだよなぁ」
「あー、わかりますよー。ここの気持ちよさは言葉と映像だけで説明するのは難しいですよねー」
「だなぁ。そこは、自分たちの目と体で確かめてほしい! あ、この旅館の料理についても、あとでトワッターでアップするぜ! 実は、ゆあちゃんとゆいちゃんがおやつ代わりにワカサギのから揚げを食べさせてもらったそうなんだが、やたら気に入ったらしいってんで、俺たちもすっごい楽しみなんだよな!」
「うんうん、旅館と言えば美味しいご飯ですからねー。そこはお楽しみにー」
【うぅむ、実際マジで気持ちよさそうだな、ここの温泉……】
【少なくとも、女性陣の配信枠でも全員気持ちよさそうな声出してるし……】
【気になる……】
【とりあえず、聖地巡礼として行くのは決定! 確かめてやるぅ!】
【予約しなきゃ】
「おっ、予約し始めてる奴がいるぜ? 貢献できたようで何よりだぜ!」
「いっぱいになるといいですねー」
旅館に貢献できてよかった、そう話しながら二人は露天風呂の方へ戻っていくのだった。
尚、終始マスクをかぶったままだったので、とてつもなくシュールな絵面だったのは言うまでもないし、腹筋をぶっ壊されてる者たちがいたのも言うまでもない……。
思いの外普通だなこいつら……。
実は常識人なのは、男たちなのではなかろうか。
実際、Vtuber物の作品って、大体男がツッコミやってるイメージだし。
というか、終始男メインだったのって地味に初では……?




