#125 旅行前日のなんてことない、そんな母娘のやりとり
それからスマホの目覚ましで目を覚ますと、帰って来た時に比べて疲れが飛んでいました。
「んっ、んん~~~~~~~~~! はふぅ……んっ、よく寝た!」
「んぅ、おかーしゃん……」
「……おきる、でしゅ……?」
「うん、もうお昼だからね。二人とも、起きて下に行こ?」
「「ふぁ~い……」」
まだおねむらしい二人は、もぞもぞと眠たげな顔で起き上がる。
ただ、なかなか眠気が抜けないのか、ぽわぽわとしており、今にも眠っちゃいそう。
けど、僕がベッドから降りると、二人が一緒にベッドから降りてきて、そのまま僕の両腕に抱き着いて来ました。
お家の中ので、耳と尻尾は出しっぱなしになっていて、ふりふりと尻尾が揺れているのが可愛いです。
ぽわぽわなみまちゃんとみおちゃんの二人を連れてリビングへ。
「おはよう、椎菜、みまちゃん、みおちゃん」
「起きたのね。おはよう、三人とも」
「うん、改めておはよ~。お昼はなぁに?」
「オムライスよ~」
「「オムライスっ!」」
お昼がオムライスだと言われると、ぽわぽわ状態だった二人の目が爛々としだました。
「うふふ、もうすぐできるから座っててね~」
「「はーいっ!」」
「ぐふっ……うちの孫たち、可愛すぎん……?」
「あなた、ちゃんと吐血した血は拭いてくださいね」
「なんかお前、耐性持ってない……?」
「深い愛で受け止めれば、許容限界を超えることはないのよ~」
「そう言う問題……?」
「あ、そう言えばお姉ちゃんは?」
「あぁ、愛菜なら部屋に戻って準備とかしていたらしいが、気が付いたら爆睡していたよ。二日間の疲れが出たんだろう。イベント中はかなり頑張っていたからな」
「あ、なるほど。たしかにお姉ちゃん、一日でも動いてたし、二日目もすごかったもんね」
一日目はステージライブをしていたし、二日目は……僕に関するお話をしていたけど、実はお姉ちゃんってイベントの裏でかなり動いてたみたいだからね。
なんでも、イベントが問題なく行えるようにスタッフさんたちを手伝ったり、他にもトラブルを解決したりと、本当に色々してたみたいで……本当にすごいと思います。
それなら、疲れて寝ちゃうのも当然と言うものです。
「だから、とりあえず寝かせておきましょう」
「うん」
「椎菜たちは明日から一泊二日で旅行だったか」
「そうだよ! らいばーほーむのみんなで行くの!」
「そうかそうか。VTuberになってから、椎菜はかなり頑張っていたからなぁ。ゆっくり疲れを取って来るといい」
「うんっ! 美味しい物もあるみたいだし、楽しみ!」
「うふふ、本当に楽しみそうね。みまちゃんとみおちゃんは初めての旅行だからもっとかしら~?」
「そうだなぁ。一応、宿泊と言う意味ではイベントでしていたが、旅行と言う形では初だなぁ。生まれたばかりだが」
「あはははは……」
生まれたばかりで色々経験しているのはある意味すごい、のかも?
なんて思いながら、隣に座って鼻歌交じりにオムライスを待っている二人を見る。
うん、可愛い。
尻尾が揺れてるし、耳もぴこぴこ動いてるしね。
こういうところは動物の特性が出てるのかなぁ。
僕も神薙みたまの姿になった時は、感情がわかりやすくなっちゃうからね……。
あれ、ちょっと恥ずかしいんだよね。
「はい、出来たわよ~」
そう言って、お母さんがテーブルにオムライスが載ったお皿を持って来て、それぞれの場所に。
「「んぅ……?」」
お母さんが作ったオムライスを見て、二人はこてんと首をかしげていました。
「おかーさん、これ、オムライス?」
「……オムレツ……」
二人はチキンライスの上にオムレツが載っているという状態に、思ったものと違う者が出て来た状況に困惑気味。
知らないとそう言う反応になるよね。
「これはオムライスよ~。これを、こうするとね?」
そんな二人の様子を見たお母さんがにこにこ笑顔で二人のところへ来ると、持って来たナイフでオムレツの真ん中辺りに刃を入れると、花が開くように半熟状になった卵がチキンライスを覆いました。
「「わぁ~~~~!!」」
そんな光景を見た二人はキラキラとした目でその光景を見ていました。
さっき以上に尻尾がぶんぶんしていて、すごく可愛い。
「おばーちゃん、すごーい!」
「……んっ、すごい、ですっ」
「うふふ、こういうの、作れるようになりたかったからね~。さ、冷めないうちに食べちゃいましょ」
「「「「「いただきます」」」」」
「はむっ……んんっ、おいひぃ!」
「……はむはむ……おいしぃ、です!」
「あ、二人とも、そんなに急いで食べるとのどに詰まらせちゃうよ? あぁ、ほら、口の周りが汚れちゃってる。落ち着いて食べようね?」
「「はーい」」
美味しそうに食べているけど、ちょっと急いで食べてるのが心配になったので、注意をしつつ汚れてしまった口の周りを拭う。
「そう言う姿を見ていると、本当に母親だなぁ、椎菜は」
「お父さん、鼻血出てるよ……?」
「これはケチャップだ、気にしないでくれ」
「仮にそれが本当にケチャップだったとしても、逆流しちゃってるよ!?」
「命に別条があるわけでもないから大丈夫だ。気にしないでくれ」
「椎菜、この人ならただちょっと母娘の微笑ましいやり取りを見たせいでケチャップ(鼻血)が出ただけだから気にしなくていいわ」
「そ、そう、なんだ……」
色々心配になるなぁ……。
お母さんは出なくなった、のかな?
◇
それからお昼ご飯を食べて、今日は一日お家でのんびり。
お姉ちゃんは一向に起きる気配がなくて、様子を見にお部屋へ行ったらベッドに上半身だけを投げ出した状態で気持ちよさそうに眠っていました。
お姉ちゃんなら、あの状態でも体が痛くなったり、体を壊したりはしないとは思うけど、それでも心配なのでお姉ちゃんを軽く持ち上げて、ベッドに寝かせてお布団をかけました。
旅行前日に体調を崩すなんてことになったら目も当てられないからね……多分、お姉ちゃんは泣いちゃうと思うので……。
「うへへへぇ……椎菜ちゃぁん……そこは、私の聖域ぃ……」
「どういう夢を見てるんだろう……」
あと、すっごくだらしない表情な気が……ま、まあでも、それくらいぐっすりってこと、だよね。うん。
そんなこんなで、お姉ちゃんのお部屋から出て僕は自分のお部屋に。
「冬休みの宿題、終わらせちゃわないと」
イベント関係で7割までしか終わってなかったので、できれば今日中に終わらせたいので。
極力宿題は早く終わらせるのが僕のやり方。
貰った日から進めちゃうからね。
「んっと、残ってるのは……現代文だけ、かな?」
基本的に重い数学と英語はもう終わらせてあります。
時間がかかるからね。
「…………………」
「「……(じー)」」
「…………あ、間違えちゃった。んっと、ここがこう……」
「「……(じーーーー)」」
「……え、えーっと、二人ともどうしたの?」
宿題を始めて1時間ほど。
集中して宿題を勧めていると、両サイドからみまちゃんとみおちゃんの二人に見られていることに気付き、苦笑いを浮かべながら二人に声をかけました。
なんだか落ち着かないので……。
「おかーさん、おべんきょー?」
「うん、そうだよ~。学校の宿題」
「……むずかしー、です?」
「ううん、これは二学期の授業のおさらいだから、ちゃんと毎日予習復習をしていれば難しくないよ~」
「そーなんだ」
「……みまおねーちゃん、わたしたちもしゅくだい……」
「二人も宿題がちゃんとあるんだね」
「うん、あるよー!」
「……こくごとさんすうのしゅくだいがある、です」
「そっかそっか。それなら一緒にやろっか?」
「やるー!」
「……もってくる、です!」
宿題があるのなら、一緒にやった方がいいと思って、二人に一緒にやるかどうか尋ねると、二人は嬉しそうにやると言って、宿題を取りに自分たちのお部屋に行って宿題と筆記用具を持ってきました。
「じゃあ、ちょっとテーブルを出しちゃおっか」
三人で宿題をやるのなら、大きいテーブルがあった方がいいということで、僕のお部屋に置いてある机を出す。
勉強机でやっていた宿題を置くと、みまちゃんとみおちゃんの二人も宿題をテーブルの上に広げました。
「二人は……硬筆とプリントかな?」
「うんっ!」
「二人にとって難しい?」
「……だいじょーぶ、です」
「ふふっ、そっかそっか。それじゃあ、頑張って進めようね。わからないことがあったら、いつでも僕に訊いてくれていいからね」
「「はーい!」」
うんうん、元気いっぱいでよろしい!
早速宿題を始めると、二人は集中して宿題に取り組む。
そう言えば、普段の授業も真剣に受けてるってお母さんから聞いたっけ。
二人が真面目そうでよかったです。
それに、二人とも頭がいいのか、すらすらと問題を解いて行ってるみたいだしね。
僕も宿題をささっと終わらせちゃわないとね。
◇
それからところどころで休憩を挟みながら宿題をしていると、もう外が真っ暗になっていました。
「んっ~~~はぁ……なんとか終わったぁ」
「みまも終わったー」
「……みおもおわった、です」
「え、本当に? ……あ、ほんとだ。二人とも早いね!」
「えへへぇ」
「……こ、これくらい、とーぜん、ですっ」
「そっかそっか。それじゃあ、おかたししよっか。明日は旅行もあるからね。今日は早く寝るよ~」
「「はーい!」」
というわけで、テーブル等を片付けて宿題もちゃんと片付ける。
「んー……先にお風呂に入っちゃおっか。時間もちょうどいいし」
「「おふろー!」」
僕のお家は幸いと言うか、お風呂は広い方です。
……まあ、僕が小さいし、みまちゃんみおちゃんも同年代に比べると比較的背が低い方なので、それもあって三人で入っても問題がないんだけどね。
それに、二人は僕と一緒にお風呂に入るのが好き……というより、僕と一緒に何かをするのが好きって感じなのかな?
あ、先にお風呂を沸かさないと。
「二人とも、ちょっとお風呂を沸かして来るから待っててくれるかな?」
「はーい!」
「んっ!」
先にお風呂を沸かすために、僕は二人に待っているように言ってお風呂場へ行くと、既にお風呂が沸かされていました。
「あら、椎菜。お風呂なら沸かしておいたからいつでも入れるわよ~」
「ありがとう、お母さん!」
「うふふ、もうすぐ入ると思ったから」
「さすがお母さん」
「十七年近く一緒なのよ? それくらいはね~。じゃあ、私は夜ご飯を作ってるから、ゆっくり温まって来てね」
「うん!」
僕はお部屋に戻って二人を連れて再びお風呂場へ。
脱衣所に入るなり、みまちゃんとみおちゃんの二人はすぐにお洋服を脱いではやくはやくと僕を急かす。
「ふふっ、もうちょっと待ってね」
こういうところがすごく微笑ましいです。
子供は無邪気ですごく可愛い。
二人に急かされるので、僕も服を脱いで三人でお風呂中に。
「じゃあ、二人とも髪の毛を洗うからちゃんと目を閉じるんだよ~。あ、耳も忘れないでね?」
「「はーい!」」
僕の言葉に返事をすると、みまちゃんとみおちゃんはぺたんと小さな両手で耳を閉じて、ぎゅっと目を瞑る。
そうしたらお湯を二人の頭に流して、順番に髪の毛を洗っていく。
二人は僕と違って髪の毛が長いわけじゃないから、すごく洗いやすい。
長いと大変なんだよね……。
「「んぅ~~~~~」」
二人は気持ちよさそうに声を出す。
そこから髪の毛を洗い終えて、次に体を洗ってから二人はお風呂に浸かる。
その間に僕は自分の髪の毛と体を洗って、それが終わったら二人の間に入ります。
「はふぅ~~~~……」
「おかーさん、やっぱりおっきぃ」
「……んっ、おかーさん、おっきぃ」
「え、ど、どうしたの? 急に」
僕がお風呂に使った直後、二人がじっと僕の胸を見ながらおっきぃと言って来ました。
「んと、おかーさんとおばーちゃん、せがひくいのに、おっきぃのはなんで?」
「な、なんでって言われても……うーんと、い、遺伝……?」
「……みおたちも、おっきくなる?」
「う、うーん……二人は神薙みたまがモデルになってるわけだし、たしか神薙みたまっておっきかったような気がするから、二人もおっきくなると思う、かな?」
僕も多分、お母さんがその、大きいからこうなったと思うわけで……。
実際遺伝もあるとは思うし、そうなら二人は神薙みたまと同じような感じになるんじゃないかなぁ、なんて思うわけで。
「んぅ……みま、ぺったんこ……」
「……みおも」
「小学一年生なら、そうだと思う、けど……」
むしろ、一年生で大きかったらそれはそれでおかしい気がするし……。
「じゃー、どれくらいでふくらむの?」
「えっ」
「……気になる、です」
「そ、そう言うのが僕、わからないかなぁ……だって、7月末まで男だったし……」
一応保険の授業とかで、その、そういうのはあった、けど……恥ずかしかったのもあって、あんまり憶えてなくて……。
「た、多分、恋雪お姉ちゃんに訊けばわかる、かなぁ」
「こゆきおねーさんなら、わかるの?」
「……ほんと?」
「た、多分?」
だ、だって、らいばーほーむ内で一番大きいのって、恋雪お姉ちゃんらしいし……。
恋雪お姉ちゃんなら、二人の疑問に答えてくれる、かも……?
それかもしくは、千鶴お姉ちゃんとか……。
「んぅ~、じゃー、あしたきいてみる!」
「……きく、です!」
「あ、あははは……」
ご、ごめんなさい、恋雪お姉ちゃんっ……!
きっと恥ずかしがるであろう恋雪お姉ちゃんに、僕は心の中で謝罪しました。
この後はそう言うお話に進むことはなく、普通に母娘の他愛のないお話をして、髪の毛を乾かして、夜ご飯を食べて就寝となりました。
お姉ちゃんの方は起きなかったけどね……。
しれっと性能が向上している椎菜母です。
あの人は椎菜の攻撃をイベントで受けまくった結果、なんか生のが上がりました。
あれです、母の愛的なアレで覚醒したんでしょう。知らんけど。




