イベント#エピローグ:上 イベントが終わり、打ち上げへ
シークレットステージが終わってからほどなくして、閉場のアナウンスが入ると、来場者たちが会場を出て帰って行った。
その時からイベントの部隊などの撤去が始まると、らいばーほーむメンバーたちは四期生を伴って会場内の撤去の邪魔にならない場所で軽く雑談をしていた。
「柊君、来てたんだね! 僕、すっごくびっくりしちゃったよぉ」
なんて言うのはみたまもとい、椎菜である。
椎菜は知らない間にここに柊が来ていたことに驚きつつ、嬉しそうに笑う。
「社長に、ここにいることは絶対にらいばーほーむメンバーには内緒にしろって言われててな」
「そうだったんだ。それに……えっと、なんというか、小夜お姉ちゃんはともかくとして、お二人は、んと、お久しぶりです、になるのかな?」
柊と軽く会話をしてから、椎菜は双葉と美鈴の二人に少し自信がなさそうに、久しぶりと声をかけた。
「あらあら、憶えていてくださったのですね」
「はい。お姉さん、すごく綺麗な人だったので、そう忘れられないと思います!」
「うふふ、それは嬉しいですね」
「あの、わ、わたくしのこと、知っているのですか!?」
「はい! その、あの後大丈夫だったのかなぁって思って……病院に運んだまでは良かったんですけど、実は心配で……」
「病院……ま、まさか、あの時のみたま様は、椎菜様本人なのですね!?」
「じ、実はそうです……」
照れくさそうに、というよりは恥ずかしそうに椎菜は双葉の言葉にそう返す。
「で、ですが、今はみたま様のお姿ではないような……?」
「実は僕、変身できるんです」
「変身!? な、なるほど、その力でわたくしの命を救ってくださったのですね!」
「ま、まあ、そうです、ね」
「そのようなことが……!」
「あー、椎菜ちゃん? もしかしてそこの二人と知り合いなのかい?」
と、普通に話していた椎菜に、皐月が椎菜にそう尋ねていた。
見た感じ、間違いなく初対面ではない雰囲気だし、特に双葉に関しては明らかに何かあった感じであ。
「あ、うん。美鈴お姉ちゃんはほら、体育祭の時の仮装リレーの時に見かけて、その後にらいばーほーむのマンションですれ違って、その時にちょっとだけお話を」
「あぁ! あの時のお姉さん! やー、椎菜ちゃんのことをべた褒めだったから、私も憶えてるよ! なんという偶然!」
「うふふ、これからよろしくお願いいたします」
「おうよ!」
「あぁ、やっぱりあの時の人なのか……」
「んで、椎菜っち、そっちの双葉っちとは?」
「あ、一ヶ月前だったかな……? その、車に轢かれてたのを見つけて、それで神薙みたまの姿になって助けたことがあって……」
『『『なんかとんでもないことしてた!?』』』
まさかの行動をしていたと知り、らいばーほーむメンバーのほぼ全員(シスコン以外)が驚きの声を上げた。
「ふあ!? あ、え、えとっ、い、命が危なかったので、あ、慌てて……!」
「いやいやいや!? え、そんなことしてたの!? 椎菜さん!? むしろ、何をどうしたら!?」
「お、おおぅ、椎菜ちゃん物語の主人公みたいなことしてたぞ……」
「こりゃあ、ステージ中にやたら椎菜ちゃんを崇拝してた理由がよくわからな! そりゃあ、ああなるわな」
「そうですねー。命を救われたらああなりますよねー」
「その時、みたま様のお姿をした椎菜様を見て、みたま様を探したんですの! それで、らいばーほーむを発見し視聴して大ファンになり、こうしてらいばーほーむに入ったんですの!」
簡潔にではあるが、嬉々としてその時のことを話す双葉は、それはもう熱意がすごかった。
念願のらいばーほーむ入りを果たしたのだから、テンションが高いのは当然と言えるかもしれない。
「ん、なるほど。たしかにらいばーほーむっぽいし、濃い。今後が楽しみ」
「そうやなぁ……」
「す、すごい人、です、ね……!」
「みたまちゃん好きに悪い人はいないですよねぇ~!」
「その通りですわ!」
「うふふ、そうですね」
「うんうん、やっぱわかってるってもんだぜ、千鶴さん!」
「四期生は有望だね! これで、みたま警察が盤石になると言うものよ!」
「……あれ、これもしかして、常識人が一人追加以上に、異常者三人追加というとんでもじたいになってやしないかい……?」
「……城ケ崎さん、俺、既に胃が痛いんですが」
「……柊君、もし君が壊れたら私は何をするかわからない。なので、私と一生、常識人でいてくれっ……!」
「そのセリフが出てる時点で、城ケ崎さんもらいばーほーむってると思うんですが!?」
「二人とも、もう仲良しさんだね!」
「もはや一心同体だからね」
椎菜が仲良しだと笑って言うと、皐月はにっこりといい笑顔で、そうのたまった。
とても楽しそうである。
反対に、柊の方は苦い顔だが。
「「おかーさんっ!」」
ぼふっ! とそんな声と共に、何かが椎菜に抱き着いて来た。
「っとと、みまちゃんみおちゃん! 二人とも昨日今日はごめんね? 一緒にいてあげられなくて……」
「んーんっ、だいじょーぶっ」
「……すごく、たのしかった、です!」
「んとねっ、ぴかってしてて、かわいかったの!」
「……ふわふわって、してた、ですっ」
「ふふっ、そっか。ホテルに戻ったらたくさん聞かないとね」
身振り手振りで感想を言う二人に、椎菜は抱き着く二人の頭を撫でながら、慈愛に満ちた表情でそう言った。
椎菜の外見的に、まったくもって親のようには見えないが、椎菜からあふれ出る母性がその印象を消し、母性溢れる母親に見えた。
そこだけほのぼの~とした空気があるほどだ。
「あっと、そう言えば、この後打ち上げするって社長が言ってたんだけど、参加する人ぉ!」
鼻血を流しそうになったが、すんでのところで桔梗の言葉を思い出し、それを告げることで鼻血と吐血を回避したシスコン。
そんなシスコンが打ち上げ参加者を募ったら、
『『『はい!』』』
四期生以外全員手が上がった。
「四期生の四人は行かないの?」
「え、いっていいんで?」
「わたくしたちは最後だけしか参加していないのですけれど」
「よろしいのでしょうか?」
「なんか、少し場違いかも、と」
「いやいや何言ってるの! 今日お披露目し、大勢の前に姿を現した時点で四人はらいばーほーむメンバーに他ならない! なので、遠慮など不要! そうだよね、みんな?」
遠慮がちな四人に対して、シスコンがそう言うと、らいばーほーむメンバー全員がうんうんと頷く。
「それならもちろん行くってもんですぜ!」
「わたくしもお邪魔させていただきますわ!」
「うふふ、そう言うことであれば私も」
「あー、じゃあ、俺も参加します」
こういう時は本当に真面目だし、普通にいいことを言うシスコンである。
四人は歓迎されてるとわかり、嬉しそうに笑って参加を決めた。
尚、柊は胃が痛そうである。
「んじゃ、早速行こう行こう! どのみち、私たちがここに残っていても邪魔になっちゃうだけだしね。ほい、荷物持てー荷物ー! 忘れ物はしないよーに! はい支度ぅ!」
という愛菜の音頭で全員が動き出して、打ち上げに行くべく、帰り支度を済ませて二日間派手に暴れまわった会場を後にした。
◇
それから、身バレ防止に一行は二人一組くらいで会場から出て目的の打ち上げ会場へ。
この時、柊は皐月から、
「柊君。君、この帽子を被って、マスクをして移動するように」
と言われて、マスクを付けさせられ、その後に帽子を被らされた。
なんで自分だけ? と思った柊だが、皐月が無駄なことをするはずがないと思い、変装した姿で会場へ行くことになった。
ちなみに、一緒に移動しているのは椎菜とみま、みおの母娘とである。
なぜこうなったかと言えば、
「友人同士です! で通せそうだから」
とのこと。
一応、それなりの距離を保ちつつ、シスコンと皐月の二人がいるので、仮に危ない目に遭っても大丈夫なようになっている。
「はぁ……なんか、ようやく肩の荷が下りた気がするな……」
「やっぱり、緊張した?」
「そりゃあな。っていうか、胃が痛くなったよ、いやほんとに」
「みなさん、すっごく個性的だったからね……」
「……まあ、入ると言った以上、投げ出す気もないし、やるからにはしっかり頑張るけどな」
「何かあったら、いつでも相談に乗るからね! これでも、先輩さんなので!」
ふふん、と胸を張ってどや顔を披露する椎菜に、柊は苦笑い交じりに一言。
「いやー……椎菜に相談したら、多分とんでもない方向に進みそうなんで、その時は城ケ崎さんに頼むかな……」
「柊君酷い!?」
お礼を言うのではなく、遠慮しつつ皐月に相談すると言われた椎菜は、がーんとショックを受けたような表情を浮かべた。
「おかーさん、どーしたの?」
「……しゅーおにーさんが、いじわるした、です?」
「ち、違うよ? ただちょっと、ショックだっただけで……むぅ~~~~」
心配そうに見上げるみまとみおの二人に、椎菜は意地悪されたわけじゃないと答えた後、ぷくぅ、と頬を膨らませた。
後ろでシスコンが血を吐く音が聞こえたが気のせいだろう。
「ま、本当に困ったら頼りにするよ、先輩」
「あ、うんっ! えへへ、いつでも聞いてくれていいからねっ!」
先輩と言われたことで、むくれ顔から一転して、花が綻ぶような明るい笑顔を浮かべた。
もしここにロリコンがいたら即死だっただろう。
ついでに四期生の三名も即死するだろうことは想像に難くない。
「でも、柊君もこれから大変だね? やること増えちゃって」
「そうだなぁ……まぁ、椎菜が学業と両立で来てるんだ、俺もなんとかなるだろう。……まあ、違いがあるとすれば、椎菜はボケ側で、俺はツッコミ側、というところだが……」
「僕ボケてないよ!?」
「あーはいはい、ボケてない人はみんなそう言うなー」
「あの、柊君なんだかその、ちょっと荒れてる……?」
いつもならあまり言わなそうな言葉を言って来る柊に、椎菜はへにゃりと眉を曲げながら柊にそう尋ねる。
「……すまん。思った以上にストレスが、な……それで、椎菜の反応が面白くて、つい」
「ストレス発散だよねそれ!? 柊君本当に大丈夫!?」
「はは! まあほら、まだ初日だからな。慣れてないんだろう。というか、怒らないのな」
「それはそうだよ! 柊君との付き合いは長いからね!」
「そうか」
付き合いが長いと言われ、柊はふっと小さく笑みを浮かべた。
「おかーさん、おなかすいたー」
「……み、みおはすいてない、です」
くぅ~~~、と椎菜にくっついて歩く双子のお腹が可愛らしい音を立てた。
それを受けた椎菜は、くすりと笑うと二人の頭を撫でた。
「そうだね、おかーさんもお腹空いちゃったし、少しだけ急ごっか! 柊君、いいかな?」
「あぁ、いいぞ。俺たちはともかく、みまちゃんとみおちゃんは小さいんだしな。空腹は辛いはずだし、急ごう」
「ありがとう! じゃあ、二人とも、行こ!」
「「はーいっ!」」
四人は打ち上げの会場へ足を速めるのであった。
とりあえず、あと1,2話くらいでエピローグを終わりにします。
イベント編が終わったら何をするか決めてないですが、多分旅行の話になる、かなぁ?
それか、人気投票のIFをやるか……まあ、どちらにせよ、IFは長くなりそうなので、土日投稿に回すので、平日は普通に本編になると思います。




