イベント2日目#Sー3 シークレットステージ前の四名。
時間は少し遡り、ロリピュアたちが未曽有の大災害を起こした後の会場内にて。
「いやぁ、レバニラが美味しいなぁ……」
「朝霧、五人前も食えるのか?」
「星歌さん、あれほどに血を失うと、これくらい必要なんです!」
はむはむと、五人前もの量を誇るレバニラ炒めをひたすらに口に詰め込んでいく麗奈。
見た目美少女な麗奈だが、そんな美少女がレバニラ炒めを口いっぱいに頬張る姿と言うのは、とてもシュールである。
とはいえ、それは麗奈だけに言えた話ではなく、周囲にもたくさんの人々がレバニラ炒めを食べていた。
それほどまでに、ロリピュアライブは凄まじかったのである。
「というか、星歌さんはよく無事でしたね! 高宮君もだけど!」
「ま、教え子だしなー。片方は違うが」
「俺はまあ……慣れだな。他の人よりも接する時間が多いからな。それもある」
「くっ、やはりあたしもまだまだということかっ……! 個人的にはやっぱり、高宮君や星歌さんレベルで耐性が欲しい!」
「とかなんとか言うが、朝霧も生きてるだけで十分すぎるくらい耐性があると思うんだがな」
「いやいや、まだまだ!」
「私は別に何とも思わないが、朝霧はなぜ耐性を欲しがるんだ?」
「ん~、耐性があったら、らいばーほーむに入れるかなって」
「朝霧は、ライバーになりたいのか?」
「あ、ううん! そうじゃなくて、あたしは裏方の方! ほら、なんか楽しそうでしょ? だからいいなぁって思って!」
「なるほどな。まあ、いいんじゃないか? 教師として将来の目標があるのは歓迎すべきことだしな」
「まあ、大学は出るつもりだけどね!」
「それがいいだろう。学歴はあるに越したことはない」
「そうですよね! 一応、椎菜ちゃんと高宮君も進学だもんね」
「まあな。行けるなら言っておいた方がいいだろう。学べることもあるだろうしな」
「本当、真面目だな、高宮は」
と、三人は将来の話をする。
一応教師と生徒と言う関係性であるため、それを考えるとごくごく普通の会話と言えよう。
だがしかし、いろんな意味で既に有名になっている三人である。
割と視線が集まっていた。
特に星歌と柊の二人に。
二人はなぜ見られているのかわからず、心の内で首をかしげているが。
「そう言えば高宮。お前、この後用事があるとか言ってなかったか?」
「あぁ、はい。もうすぐ行くつもりです」
「そうか。ま、深く聞くつもりはないが……まあ、頑張れよ」
「……田崎さん、もしかして気付いてます?」
「なんのことだ?」
明らかに気付いているようなそぶりを見せる星歌に、柊が恐る恐ると言った様子で気付いているかどうか尋ねると、星歌は涼しい顔をしながら、けれどどこか楽しそうに笑いながら白々しくそう答えた。
それを見て、間違いなく気付いているだろうなぁと悟った柊は苦笑いを浮かべる。
「……さて。それじゃあ、俺はもう行きます」
「はいはーい。気を付けてね~」
「ま、無茶はするなよ」
「……ガンバリマス」
片言でそう返し、柊は二人元から離れて行動を開始。
目指すは会場の裏側である。
一度会場を出て、外へ。
残るはシークレットステージのみとなっている状況だからか、外へ出る人たちはかなり少なく、これから外へ出ようとしている柊は割と奇異な目で見られていた。
そんなことを気にせず、柊は会場から出ると、そのまま会場の裏口を目指して歩く。
その途中、警備員に一度止められたが、関係者ようの許可証を見せるとすんなりと通され、そのまま裏口から舞台裏へ。
「おい、準備急げ! 時間はあんまりないぞ!」
「あれ、ここにあった機材知らないか?」
「それならもう持ってたぞ!」
「やばいやばい! 急がないと!」
舞台裏では、イベントスタッフたちが忙しなく最後のシークレットステージの準備で動き回っており、表の方とは違う意味で騒がしかった。
「これはすごいな……」
かなりの人がイベントのために動き回っていると言う状況を見た柊の口から零れたのは、そんな感嘆の言葉であった。
元々らいばーほーむがかなり人気のある事務所だと言うことは知っていたし、イベント自体もかなり大掛かりだと言うことも知っていて、きっと裏もすごく忙しいのだろうと思っていたが、いざその光景を目の当たりにすると、感心すると言うものである。
柊自身も初めて見るイベントの準備の光景を、思わずじっと見つめてしまっていた。
「あれ? 君、どこから来たの? スタッフ?」
と、裏口の入り口付近で立っている柊を見つけた一人のスタッフが、柊に話しかけて来た。
「あ、いえ、なんて言えばいいか……とりあえず、これを見せればいいって言われたんですが……」
そう言って柊が見せたのは、先ほども警備員に見せた許可証。
どこぞの社長からは、これを見せれば問題なく案内してくれると言われていたので、それを実行しているところである。
そんな許可証を見たスタッフは、驚いたように目を見開くと、思わず柊の顔を二度見した。
「え、あ、君がそうなの!?」
「えっと……?」
「あっと、驚いてる場合じゃなかった。えっと、ついて来てください! 既に、他の三名は来ていますので!」
「あ、了解です」
付いてくるように言われ、柊はスタッフの後を追う。
その途中、らいばーほーむのメンバーに鉢合わせしかけると言う事態があったが、なんとか近くにあった段ボールに隠れると言う行為で何とか回避。
ただその時、愛菜がその段ボールをじっと見つめ、ぐっとサムズアップをしていたが、きっと気のせいだろう、柊はそう思うことにした。
そうこうしている内に、何とか無事に目的の部屋へ到着し、中に入ると……。
「「「あ」」」
「え」
そこには、昨日今日とホテルでばったり出くわした三人の女性がいた。
三人は入って来た柊を見ると、全く同じタイミングで声を漏らし、柊の方も驚きの声を上げた。
「あなたはたしか……ホテルで同じフロアに宿泊されていた方、ですわね? なぜここに?」
「いえ、間違いなく私たちと同じ理由かと思われますが」
「だねぇ。っていうか、うちたちもさっき驚いたばっかだしねぇ」
「それもそうですわね。では、自己紹介と行きましょうか」
「あ、はい」
「わたくしは、不知火双葉と申します。らいばーほーむ四期生、夜久嬢かざりとして活動しますの。よろしくお願いしますわ」
「私は雨寺美鈴と申します。これから同じ四期生として、どうぞよろしくお願い致します」
「初めまして! みたまちゃんのママの、わたもちです! 本名は四月一日小夜! 四期生では、神薙いなりとして活動するので、よろしくね!」
「高宮柊です。凪神司として活動します。よろしくお願いします」
双葉が先導する形で、それぞれが柊に自己紹介を行い、柊の方も簡素ではあるが自己紹介をした。
そんな柊の内面はと言えば……
(き、気まずい……!)
であった。
なんせ、目の前にいる三名のことを何も知らないのだから、いきなりこうして同じ部屋にいるのはとても困惑するし、気まずくもなる。
しかも、少なくとも三人は柊よりも年上だろうし、それもあって余計になんとも言えない気持ちになる。
どうしたものか、と思っているとガチャリ、と扉が開く。
「お、どうやら丁度良かったようだ」
入って来たのは、らいばーほーむの社長である、雲切桔梗だった。
桔梗は部屋の中に四人がいるの見ると、嬉しそうに笑った。
「見た所、自己紹介は済んでいそうだ」
「問題ありませんわ」
「ならよし。さて……まずはこの後の流れについて説明しようか。あ、ちなみにだが、呼ばれた理由を理解していない、と言う人はいるかな? 念のため確認しておきたい」
桔梗が四人にそう尋ねるが、特に理解していないという者はおらず、桔梗は満足げに頷くと説明を始める。
「大丈夫そうだね。では、説明と行こう。これから君たちがするのは、サプライズというものだ。今回のシークレットステージにて、君たち四期生のお披露目を行うつもりだ。これは、一部のスタッフと私しか知らないことで、観客や視聴者は当然のこと、らいばーほーむのメンバーも四期生お披露目については何一つ知らない。つまり、本当にここが初出となるわけだ」
「いやぁ、最初はうちだけって聞いてたんだけど、まさか結果的に四期生全員になるとは思わねぇですよ、社長さん」
「はは、それはすまないね。君はそれなりに前から入る予定ではあったし、3.5期生として入る予定だったが……まあ、最終的には四期生の枠組みになる予定だったんだ。今更だろう」
「それもそうですね!」
「そう言えば、雲切社長」
「ん、なんだい? 美鈴」
小夜と桔梗が話しているところに、美鈴が桔梗に声をかけ、ある疑問を桔梗に投げかける。
「内定枠と言う方がお二方いらっしゃるとのことでしたが、そのお二方というのは……」
「あぁ、そこの小夜と柊だね。片方はこちらでスカウトを。柊については、たつながスカウトをする形で入ってもらった。あぁ、安心してくれ。二人ともらいばーほーむたり得る資質を持っているからね」
「なるほど。それはとても楽しみです」
「らいばーほーむから直々のスカウト……わたくし、一緒に配信活動ができるのが楽しみですわ!」
二人が内定枠だと言うことを知った二人は、嫉妬などの感情を一切見せることなく、むしろかなりの期待を寄せた。
そんな二人に、桔梗は嬉しそうに笑う。
「うむ、嫉妬心なく、素直に楽しみと言えるのはいいことだ。四人は同期。今後はこのメンバーで活動することが増えるだろう。知っての通り、らいばーほーむは各人の個性を尊重するどころか、さらけ出せ、というのが基本だ。故に……柊、常識人として頑張るように」
「俺だけ名指しですか……」
「それはそうだろう。私は既に、彼女たちの特性を把握している。だからこそ思う……君の様なまともな人がなくてはならないと。実際、今のらいばーほーむはかなりの無法地帯だからね。たつなと共に、四期生のツッコミと、全員コラボ等で十四人相手のツッコミを頑張ってくれたまえ!」
「無茶すぎる!?」
「おっと。そろそろ始まる時間だ。さぁ、準備だ四人とも。晴れ舞台と行こう!」
「「「おー!」」」
「えぇぇぇ……」
しれっとスルーされた柊は、桔梗の言葉に楽しそうに反応する三名とは違って、困惑の表情を浮かべ、声を零すのであった。
尚、案の定と言うべきか、柊はお披露目であるにもかかわらず、それはもう見事なツッコミを入れまくって、たつなを歓喜させたのは言うまでもない。
もう今だから明かしますが、イベント中にあった【Sー○】のSはシークレットと言う意味だったりします。
なので、実はガッツリネタバレしてたんですね、あれ。
あれだけじゃわからないですが、多分G-1で割と察することができたのかなって思ってます。アレに関してはゴッドだからね。神だし、あの二人。
それから、ちょっと掲示板について少々。
このまま掲示板を書くと、おそらく四話くらい使いそうになっております。
さすがにイベントのメインとなる部分はすべて終了しているにも関わらず、そこまで書くのもなぁとなっている私的には、ある程度ははしょるか、と思っています。というか、一日目もよく見たら描写されてない掲示板やたら多いしね……。
なので、かなりはしょりにはしょって、二話くらいに収められたらなぁって思ってます。
おそらく、各ステージの終了後と前になるかなと。本音で言えば、全部やりたいんですが……さすがにもう約90話もイベント編に使ってると思うと……ね。さすがに長すぎるので、うん。いい加減椎菜視点の話が書きてぇのよ。あと、ごくごく普通の日常とか、旅行とか、大晦日とか、冬コミとか! 色々書きてぇのが溜まってんですよ! なので、これはもう仕方ないんです! 許してね☆




