イベント2日目#7 たつなにとって最後の休息ポイント
基本的なステージが全て終わり、残すところシークレットのみとなったらいばーほーむイベント二日目。
それが終われば長くも短いイベントが幕を下ろすのだが……それよりも早く、先にゴールインを迎えようとしているものがあった。
『やぁ、会場内にいるらいばーほーむファン、並びに配信で聴いているであろうリスナーのみんな、春風たつなだ』
『会場内のお兄ちゃん、お姉ちゃんたち、こんにちはー。今度は本物の詩与太暁だよー』
そう、館内ボイスである。
社長の意向により、二日目は二人一組による生館内ボイスとかいう、頭のおかしいことが開始されたが、それもこの二人で終わりである。
核兵器が初手殺戮の限りを尽くしてきたりしたものの、なんとかここまでやって来ることができた。
もっとも、その間に行われたステージイベントのほとんどでとんでもないことが発生していたりするが、それはそれ。
『普通は、今度は本物、なんて言うことはないとは思うんだけどね』
『やー、ほら、ボクの真似をしたいるかさんがいたしねー』
『ああ、うん。あれ、私たち自身も相手が決まってるのを知ってたからあれだけど、本当に違和感なく声を出すんだよね、彼女……』
『あれで思ったことと言えば、今後いるかさんを含めたコラボ配信をした時、いるかさんになり変わられている可能性があるってことだよねー』
『……たしかに』
暁の指摘に、たつなだけでなく、暁の発言を聴いていた者たち全員がたしかにと頷く。
あの変声術はかなり脅威である。
これが顔出しもしている普通の配信者とか、動画投稿者であれば、そう問題でもないとは思うのだが、VTuberのように基本的に誰でもガワが使えると言う状況であれば、いるかのあの特技はそれはもう凶悪な性能を誇る。
仮にいるかが、はつきの声を真似て、さらにはつきのガワを使用すれば、それはもうはつきと同じになるというわけでもあるので。
『まあでも、それはそれで面白そうですけどねー。こう、疑心暗鬼に! みたいな』
『そうだね。しかも、無駄に演技力もあるからね。そう言う意味では、人狼ゲームのような遊びはかなり適性がありそうだ』
『むしろ、無双しませんかねー』
『……そうかもしれない』
少なくとも、騙す系の物は間違いなくいるかの独壇場になるだろう。
人の話し方を完璧に模倣できる以上、変声がなくとも嘘が得意そうなので。
『それはそうと、ボクたちが最後ですねー。館内ボイス』
『そうだね。私としても、暁君と二人と言うのはとても新鮮だけどね』
『ですねー。ボクはてっきり、刀先輩と組むのかなー、なんて思ってたら、社長がたまには男女混合で組もう! なんて言いだしましたからねー』
『あの社長、かなりの自由人だからね……まあ、それでいて腕は確かなんだから、本当にすごいと思うが……』
『あの人って一応、元は営業職のはずなんですけどねー』
『いや、ある意味営業職だからこそ上手く行ったと言う可能性も……いや、それはそれで、おかしな点が多いか……』
『あの人も十分、ひかり先輩と同類ですからねー。邪神の様な邪神とか』
『それはもう邪神じゃないかい?』
『そうとも言いますねー』
暁とたつなのコンビは、割と平穏であった。
たつなはらいばーほーむ一の常識人(当社比)だし、暁の方も基本愉快犯ではあるが、それはそれとしてまだマシな方(というか、らいばーほーむの男性組は基本的にマシ)。
そう言う理由もあり、意外とこの二人は普通である。
『しかし、私たちの前に館内ボイスをしていたデレーナ君とふゆり君の二人も言っていたが、こう、終盤になると話すことが無くなるね……』
『まー、出来ることと言えば、今までのステージを振り返るとか、この後のシークレットを考えることとかですかねー?』
『まあ、そうなるか……なら、私たち自身も気になっているシークレットでも話すとしようか?』
『ん~、そうですねー。ボクも気になってますし。あ、ちなみにネットでは今日の物販のオンライン通販販売をするんじゃないかー、とか、CDとか出すんじゃないかー、とか、そんな感じかなー?』
『まあ、妥当な所だね。ただ……私たちが言うのもなんだけど、らいばーほーむがそれだけで終わらせるかと言えば……』
『まー、微妙ですねよねー』
『あぁ。正直、それ以上にぶっ飛んだことをするんじゃないか、とは思っている。なんせ、あの社長だからね……』
『少なくとも、二日目に入って、レバニラ炒めの屋台とか立売を追加する上に、館内ボイスをやらせる人ですからねー。しかもあれ、全員参加じゃないですか?』
『そうだね。まさか、全員参加とは思わなかったけどね』
『わちゃわちゃしそうですよねー』
『既にしてるんだよなぁ……』
暁の言葉に、たつなは今までのステージ上でのことを思い返し、そう零す。
少なくとも、シスコンとロリコンの二人は暴走してたし(みたまも暴走した)、その後の男組も間違いなく暴れたし、その次の自分を含めた声真似Yes or Noではどこかの声帯お化けが腹筋をバッキバキにして来たしで、本当に酷かったし、その後のうさぎとはつきのコンビはまあ……マシだったが、その後のロリピュア組は殺戮兵器をしていた。
少なくとも、そこまで暴れていないと言えるのは、うさぎとはつきのクソゲーRTAだろうか。
あれはあれで酷かったが。主にゲームの中身的に。
『ちなみに、たつな先輩はなんだと思いますか?』
『私かい? そうだね……正直、予想が難しすぎるんだよね……少なくとも、あの社長が予想の範疇の物を出すとは思えないし……何より、私たちも驚くような何からしいからね……まあでも、物販とかはあるんじゃないかい?』
『ですねー。あんなにクオリティーが高いのに、イベント会場限定っていうのももったいないですしねー。特に、個別のグッズとかもあのレベルなわけですしねー』
『そうだね。みたまちゃんの膝枕クッションとかやたら欲しがる人が多いからね』
『そう言えばあれ、たつな先輩たちは買えたんですかー?』
『まあ。なんとかね。というか、全員買っていたはずだよ。リリスは……まあ、身バレの危険性があると言うことで、代わりにふゆり君が買っていたね』
『へぇ~~』
『二人は買わなかったのかい?』
『ボクたちが買ったら、それはそれでアレじゃないですかー』
『まあ……後輩の女子高生の膝枕を模したクッションを買う成人男性、と言うのもあれだからね……』
たつなのその言葉は、会場内で膝枕クッションを買った成人以上の男性の心にぐっさりと突き刺さったァ!
後輩云々はともかくとして、たしかに対外から見たら、かなりアレである。
ちなみに、女性の方は特にダメージはない。
『そう言えば、個人グッズ系って完売したんですかね?』
『あぁ、それならしたみたいだよ。一応、分割で売ってはいたものの、圧倒的だったらしいね。あとは……あー、クリアファイルとか、ペンのような日常的に使えるものも早々になくなったとか』
『へぇ~、やっぱり人気なんですねー。というか、ボクたちのCDも売り切れたんですねー』
『みたいだよ。なんでも、熱狂的なファンが多かったとか、九割は女性ファンだったそうだけど、残り一割は男性だったらしいね』
『あれ、一応女性向けなんですけどねー』
『それを言ったら、女性陣は基本、男性向けだが?』
『それもそうですねー。でもほら、可愛ければいいじゃないですかー』
『それはそうだね。たしか、リリスのCDもかなり早い段階で売れたとか』
『リリス先輩はすごいですよねー。ところで、みたまちゃんは?』
『一瞬で売り切れたらしい』
『さすがらいばーほーむ一人気のあるライバーだねー』
最初に売り切れたのはみたまのクッションだが、それ以降はほぼ差がないタイミグで売り切れた。
ちゃんと全員人気があるのだ。
尚、みたまの膝枕クッションはかなり大きい為、購入者はそれはもう目立つ。
逆に一番目立たないのはおそらくいるか。
基本的にデータでのやり取りなので。
『まあ、たしかにあれは通販販売をするといいかもしれないね。こう言ってはなんだけど、多分売れると思うから』
『購入できたーー! っていう呟きをすると、怨嗟の籠ったリプが来るらしいですねー』
『だろうね』
『特に、みたまちゃんのクッション』
『まあ、うん。あれ、ちょっと体験したけど、本当にみたまちゃんの膝枕そっくりの感触だったからね……』
『へぇ~~、経験済みのたつな先輩が言うってことはそうなんでしょうねー』
『ちなみに、デレーナ君は死んだね』
『生でされたら、本当に天国から帰って来られなくなりそう』
『うん、そこは私もすごく心配してるね。というか彼女、一回されてるはずなんだけどね』
『あの時はまだおぎゃってなかったので』
『……つまり、今はダメージが倍と言う事か……』
あの時はおぎゃってるわけではなく、膝枕される過程でおぎゃってしまったのでまだダメージは少なかったが、最早二度と戻らないレベルで母性の浸食が進んでしまったデレーナは確実に次膝枕をされたら死ぬと思われている。
というか、間違いなくそうなるだろう。
『まあ、出張みたま家事サービスでは大変なことになりそうですけど、ある意味では楽しみなんですよねー』
『私は戦々恐々としているけどね……もう既に常識人としての片鱗はほとんどなくなってしまったのに、そこに追い打ちをかけるようにさらに母性の浸食がすすんでしまったら、二度と引き返せなくなりそうだからね……』
『もう既に手遅れですよー?』
『そうだけども!』
『そう考えると、本当に四期生の常識人さんには入ってきてほしいですよねー』
『私の心の安寧のためにもね……』
たつなの本気のその言葉に、これを聴いていた者たちはそれはもう、同情的であったという。
その肝心の四期生の常識人がらいばーほーむ堕ちしなければいいなぁ、とも思われているが。
そもそも、VTuberなのに心の安寧求めるという事態がおかしいと思う。
『ま、何はともあれ、何が来るかわからないですよねー、シークレット』
『そうだね。こういうサプライズは怖くもあるけど、それ以上にわくわくするよね』
『ですねー。ま、この後はボクたちの方もシークレットに出演する準備をしなきゃですし、頑張らないとですねー。特にたつな先輩は』
『それはどういう意味で?』
『一人でツッコミ!』
『私に! あいつらを!! 一人で!!! ツッコむ余裕なんて!!!! ないんだが!!!!!』
『あははー!』
たつなは、全員参加のシークレットに恐怖するのであった。
そうして、館内ボイスは早めに切り上げられ、らいばーほーむリアルイベント、最後のステージが始まろうとしていた。
やっと、やっとこのイベント編の最大の山場と言っても過言ではないシークレットに進める……!
イベント編が始まったのが、3月8日で、シークレットまでこぎつけたのは、5月24日……実に二ヶ月半以上。
いや長いよ。どんだけイベント編やってるんだよ。
他のVTuber物を書いてる人を見てみろよ、過去の私。大体が一つ分の章と言うか、大体ラノベ一冊かもしくは半分くらいで終わってるのに対して、なんで80話以上もやってるんだよ。
ロリVの三分の一くらいイベント編なんですが。こっわ……。
尚、話数的には、実は10月の話が多いと言うね。あれ、100話以上。
と言うわけで、遂に最後のステージ! このまま最後まで突っ走ります!




