イベント2日目#ステージ『うさぎ×はつきによる、クソゲーRTA』:中 好きなことになると途端に生き生きとしだすうさぎ。
百合の花が咲くと言う、予想だにしていないことが発生しつつも、二人のステージのメインである、ゲームの準備が整ったようだ。
「おっ! 準備が終わったみたいだぞ!」
「です、ねっ」
準備が整ったとわかると、うさぎは途端に嬉しそうな反応を見せた。
生粋のゲーマーなので、やはり好きなことができるとわかると、嬉しくなるのだろう。
「さて! それじゃあ、今回のステージについて説明するぞ! 興味ない! って人は、まあ、はつきの可愛い声でも聴いて開始を待つか、うさぎ先輩の可愛いおどおどした様子を見てるといいぞ!」
【自分で可愛いって言うのは草】
【まあでも、はつきっちの声は可愛い寄りではある】
【んだんだ。まあ、らいばーほーむには、絶対に勝てない天然ロリボの持ち主が二人いるわけですが】
【あの二人はちょっと反則なので……】
【あの二人に張り合える人類とかいないだろぉ!?】
【双子ちゃん……】
【あの二人も確かに死ぬほど可愛い】
「んじゃ! 説明! 行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
謎の注意喚起? のようなことを言った直後、はつきはDJか何か? と言わんばかりに声を張り上げた。
圧倒的にうるさい。
【そしてうるせぇ】
【うん、うるさい】
【でも、はつきっちのうるささはこう、癖になるんだよぉ……】
【はぁ、はぁ……もっとくれよぉ……いい騒音、持ってるんだろぉ……? それがないと、やべぇんだよぉ……】
【薬物かな?】
【はつきっちの騒音は癖になるからしゃーない。麻薬みたいなもん】
【どっちかと言えば、みたまちゃんの母性とかがそうな気が……】
【あれは劇物】
【劇物は草】
【ストレスで死にまくってる人に与えないでください。おぎゃります。みたいな?】
【それ、VTuberに対する評価なんだよね?】
「はい、というわけで、説明だぞ」
【急に落ち着くんじゃねぇww】
【はつきっちってなんでこう、いつも叫んだあとに、スンッ――ってなるんだろうか】
【騒音と謎の落ち着きがセットだからね、仕方ないね】
「このイベントでは、主にうさぎ先輩がプレイを担当して、はつきは実況を担当するぞ」
「が、がんばり、ますっ」
【実況www】
【まあでも、はつきっちって普通に実況面白いし、案外いいかも?】
【うさぎちゃん、集中できんのかな?】
【うさぎちゃんの特技知ってるか? 仮に隣の部屋が爆音工事してようが、普通に集中できるんだぞ】
【草】
【それはやべぇwww】
「そして、今日やるクソゲーはこちら、天使の指輪だぞ!」
そう言って映し出されたのは、名前に反してやけにおどろおどろしい画面であった。
というか、どう見てもジャンルがホラーっぽい。
【何のゲーム???】
【天使の指輪なのに、某バイオでハザードな感じのタイトル画面なんですがそれは】
【つーか、うさぎちゃんが四徹したゲームだよな? これって】
【一秒縮める技を習得するのに四徹……あれ? 結構ヤバい?】
「というわけで、このゲームについてはうさぎ先輩がやりながら、はつきが解説していくぞ! うさぎ先輩、準備おっけー?」
「いつでもっ」
「頼もしいぞ! それじゃあ、早速行ってみよー! あ、解説席はすぐ横なのではつきはそこに座るぞ」
「じゃ、じゃあ、わたしはここ、で……!」
そう言って、二人は横並びに座る。
モニターには、実況席のような机に横並びに座るうさぎとはつきの姿が。
よく見れば、はつきの前には、『実況者:猫夜はつき』と書かれたプレートのようなものが置かれ、うさぎの所には『走者:御月美うさぎ』と書かれたプレートが置かれていた。
無駄に芸が細かい。
【マジの実況席で草】
【なんかこれ、あれだな。ゲームセンターな実況のアレ】
【課長かな?】
【ある意味、ゲーム実況の先駆けみたいな番組だったよなー、あれ】
【あれ面白くて好き】
「じゃ! うさぎ先輩の準備が整ったので、早速始めて行くぞー! じゃあ、うさぎ先輩は開始するぞ!」
「バッチコイ、です!」
「OK! それじゃあ、うさぎ先輩によるRTA……イクゾー! デッデッデデデデ。カーン」
【草】
【草】
【草】
【そこも人力なのねww】
【RTAの名物は草】
「お、既にうさぎ先輩が動き出してたぞ! スタートボタンを押して、最初に表示されるのは……クソゲー名物! なんかやたら長い世界観説明を兼ねたあらすじ! しかも、なぜかスター○ォーズ風!」
【いやたしかに名物だけども!】
【なんでクソゲーって専門用語出しまくるんだろうな】
【あれだよ。物語を作るのが下手な人ほど、無駄に設定を凝りまくって、で、難しい専門用語作れる俺カッケー! ってなりたいんだよ】
【火の玉ストレートで草】
【まあ、うん……否定できねぇ……】
【こう、バトル物というか、異世界物とか現代ファンタジーでありがちな奴……オリジナルの造語(横文字系)が多すぎて、こう、痛々しい厨二病にしか見えないって言うアレ……】
【やめろぉぉぉぉ! 俺の古傷を抉るなァァァァァ!】
【厨二病、自作小説……うっ、頭がっ……】
「なんか、コメント欄が阿鼻叫喚になってるけど、ともあれ実況! 走者のうさぎさん、今はどんな状況でしょうか?」
「そうですね。まずこのゲームのオープニングは一切スキップができない仕様となっているので、このゲームを走る走者はここで精神統一を行います」
「ほほう、それはなぜでしょうか?」
「このゲームは理不尽な死にポイントが数多く存在しています。このゲームがクソゲーRTA界隈で有名になった死因もありますが……そこは該当ポイントに入った瞬間に説明をしたいと思います」
「いいですねぇ、そういう初見さんにも優しい所! これぞ、ゲーム系配信者の鑑!」
「恐縮です」
【ちょっと待って、なんかうさぎちゃんのキャラがさっきまでと違い過ぎません!?】
【誰だこの美女!?】
【お、お前らうさぎちゃんのシリアスモードは初見か?】
【うさぎちゃんはな、RTAや鬼畜ゲー攻略とかになると、途端におどおどが外れて普通にしゃべれるようになるんだ】
【しかも無駄に解説が上手いのが本当に面白いタイプの奴】
【マジかよw】
【うさぎちゃん、そんな生態してたんだ……】
うさぎの生態。
普段はものすごくおどおどしているコミュ障でも、なぜかゲームの攻略やRTAとなると、おどおどしなくなり、普通に話し出す。
はきはき、というわけではないが、聞き取りやすい不思議な声で話すので結構人気。
だが、やっぱりうさぎはコミュ障の方がいい! とか言われるてるので、基本はおどおどしてほしい、とか言われているのだが。
「……にしても、本当に長いぞ、これ」
「そうですね。シナリオライターの人が頑張っちゃったんだと思います。ただ、頑張るべきだったのは、執筆量ではなく、無駄な贅肉をそぎ落としてコンパクトにまとめて、話を綺麗にまとめることかと。これでは、何の目的もなく好きな物を食べて食べて食べまくる、ただお腹の肥えた肥満体型な人になってしまいます」
「おおぅ、かなりの毒舌だぞ」
【厳しいけど、言ってることは正しいんだよなぁ……】
【そうか、創作は体型で例えられるのか……】
【めちゃくちゃとっ散らかってる話はデブで、綺麗にまとまってる話は細マッチョということか……】
【言い方ァ!】
「おっと、この時間も有限! というわけで、走者のうさぎさん、このゲームについての解説をお願いしても?」
「任せてください。三徹して準備しましたので」
はつきの言葉に三徹したと返すうさぎに、会場内からはえぇぇぇ……と困惑するような声がちらほら上がった。
【三徹www】
【どこに本気出してるんだよww】
【おどおどしなくなっても、コミュ障であることに変わりはないわけか】
「まず、本作のタイトルからして、おそらく恋愛ゲーム、もしくはRPGを想像したかと思いますが、本作は違います。本作のジャンルは……おそらく、アクションアドベンチャーゲームになるかと」
「へぇ、アクションなんだ!」
「はい。いかにも天使が関わって来そうなタイトルをしていますが……本作で一番関わって来るのは天使ではなく、悪魔ですね。あ、ちょうど画面に流れた、イヴィルデビルですね。頭痛が痛いに近いようなネーミングセンスです。もうちょっと捻ってほしいですね」
【ボロクソで草】
【たしかに名前がダセェww】
【なんかカッコいいからって理由で作った中学生の造語みたい】
【↑的確過ぎるww】
「あと、タイトルにある天使の指輪ですが……いえ、これはプレイ中に。それで、概要ですが……まずこのゲームは、もうなんか不穏というかクソゲー特有の腐敗臭とも言うべき物が、既にあらすじから漂ってきているかと思います。ジャンル迷子です。というか、このゲームをプレイした方はわかるかと思うのですが、最初の企画段階ではタイトル通りのゲームにしようとしたんでしょうね。その名残が序盤にだけあったりします。ですが、その先は地獄です」
「地獄! これまた、タイトルに似つかわしくない感想だぞ!」
「序盤はなんてことない、ほのぼのとした現役高校生(男女)の日常が描かれ、とても甘酸っぱい青春風景が流れますが……秒で消えます」
「秒で!?」
「秒です。簡単に言えば、死にます。男女両方」
「え、死ぬの!?」
「はい。主人公だと思っていた二人は、真っ先に死にます。まあ、これは割とよくある手法なのでまだいいんですが……でも、明らかにモブではなさそうな名前を持っていたんです。先ほど解説したように、おそらく企画段階、そして最初の段階では間違いなくこのカップルが主人公だったのでしょう。ですが、シナリオライターの方が我を通しちゃったんでしょうね。結果として、別の主人公が抜擢されました。ちなみに、主人公はなぜかホームレスです」
「本当になんで!?」
ゲームの解説となると、やたら口数が多くなり、おどおどしなくなるうさぎ。
とても不思議な姿だが、これはこれで面白いと大変好評なようで、うさぎをあまり良く知らなかった人たちは、ちらほら混じる毒舌なコメントが気に入ったようである。
【ホームレスwww】
【いや本当になんで?www】
【どんなゲームなんだこれ】
「ちなみに、主人公(偽)は何に殺されたの?」
「リビンデッダーですね」
「りびん……何?」
「リビンデッダーです。有り体に言えば、ゾンビです」
「いやそれゾンビでいいと思うぞ」
ドストレートなツッコミである。
「ですが、このゲームに登場するゾンビはリビンデッダーと言う名前ですので……おそらく、リビングデッドをいじっただけの、本当になんの捻りもない名前です」
「うさぎ先輩って、結構ゲームに対しては毒舌だよね」
「何様かとも思われるかもしれませんが、ゲームとは多くの人々を楽しませることを目的とした物。製作者の自己満足であってはいけないんです。真に考えるべきは、プレイヤーたちが笑顔で、もしくは感情移入してプレイをしている光景。間違っても、独りよがりの物をリリースしていいわけではありません」
「そこは同意だぞ。まあ、クソゲーはクソゲーで面白いけどね! こう、精神が鍛えられる」
「弩級のクソゲーをクリアした後は、ありとあらゆることがらが許せるような、寛大な気持ちになれますよね」
「わかるわかる! 死ぬほど憎い人がいたとしても、なんかどうでもよくなるぞ」
【本当に相性いいなwww】
【うさぎちゃんもクソゲーはプレイするし】
【はつきっちははつきっちで、しっかりリアクションしてくれるから、うさぎちゃんも嬉しいんだろうなぁ】
「はつきさんとはいいお酒が飲めそうです」
「お、いいね! じゃあ、冬休み中にお泊まり晩酌しちゃう?」
「やりましょう!」
「やったぜ!」
【なんでイベント中にコラボが決まるんだよwww】
【さすがらいばーほーむだぁ……】
【ってか、本当に何でもあり過ぎるぞ、このイベント】
【こりゃ他の事務所も頭抱えますわ……】
「あ、そろそろオープニングが終わりますね。それでは、そろそろ操作の準備をしますね」
「よっしゃ! はつきも実況するぞ!」
【マジで長かったなwww】
【結構解説してたのに、全然終わらねぇんだもんww】
【多分、誰も中身を見てない】
【見るわけないんだよなぁ……】
【クソゲーだし……】
やばい、この二人の回を書くのめっちゃ楽しい……!
多分、イベント編に入って一番書きやすい上に、一番楽しい(暫定)な話しかも。
なんか、イベント編で一部のキャラクターが色々と立った気がします。いるかとかね。うさぎも割といい感じになってきた気もしますねぇ。あとは、いくまとか暁をもうちょっとこう、濃くできないものか……はつきはなんか、筋肉女子になりそうだけど。




