イベント2日目#5 珍しい組み合わせの館内ボイス。片方は捧げもの(?)
野郎共による、想像以上の腹筋へのダメージが発生したステージが終わったほんの少し後。
《はいはーい☆ らいばーほーむのイベント二日目に来ている来場者のみんな! こんひかぁ☆ らいばーほーむ一期生、邪神だよ☆》
邪神の声が流れて来た。
その瞬間、会場内にいた人たちはそれはもう、頭を抱えた。
あいつの出番、早すぎるだろ、と。
それと同時に、一体誰と組んでるんだ? とも。
わかりやすい所で行けば、シスコンかたつな辺りがペアになってそう、と予想するものが多数。
だがしかし、その予想は外れることとなる。
シスコンと一緒に出て来たのは……。
《あれ? 私の相方が来ないねぇ。あっ、こらこら、そこで縮こまっちゃだめだよ☆ はい、こっち来てこっち来てー》
《ひぃぃぃ!? わ、わわっ、わたしが、ひ、ひかりさん、と、い、一緒とか……ば、罰ゲームです、よぉ~~~っ……!》
《おっと、本人の前で堂々と罰ゲームと言えるとは、コミュ障うさぎと言われつつも、妙な所で度胸があるね☆》
《ひぃぃ!? ご、ごごご、ごめんなさいぃぃぃ~~~~っ!》
コミュ障うさぎであった。
まったくもって想定していなかった組み合わせに、これを聞いている者たちはそれはもう驚く。
らいばーほーむで一番ヤバいのと、らいばーほーむで一番のびびりを組ませるとか、らいばーほーむは外道か!? という、ツッコミが各所で上がったし、トワッターでもかなり言われている。
《とりあえず、挨拶挨拶☆ それくらいはちゃんとしないとダメだよ☆》
《ら、らいばーほーむ二期生の、お、御月美うさぎ、ですぅっ……! あ、あの、えと、ひ、ひかりさんと二人きりで、今にも、し、死にそう、ですっ……!》
《安心して、死にそうになったら私が蘇生するから☆》
《絶対、ま、まともな蘇生じゃ、ない、ですぅっ……!?》
《知ってる? うさぎちゃん。とりあえず、あの世の方々をぶん殴っておけば、普通に現世に帰って来られるんだよ?》
《そ、そそそそ、そう、なんですかぁ……!?》
《当然☆ 私も何度もそれをしてるしね☆》
『『『どういうこと……?』』』
シスコンの発言を聞いた者たち全員がそう思った。
なんであの世の方々殴っちゃってるのあの邪神……そう思う者たちは多かった。
だが、あの世の存在を疑っている者は少ない。
なぜなら、来場者たちのほとんどが(どっかの二人は除く)核兵器によって殺害され、現世に戻ってきているからだ。
つまり、お手軽臨死体験を経験済み。
尚、お手軽臨死体験を経験した者たちが見るあの世の方はみんな、目の下に隈を作って、ガンギマリな目で仕事をする鬼やらなんやらであった。
あと、めちゃくちゃ混んでたらしい。
さらに言えば、核兵器に殺された者たち専用の列が作られ、そこで待機! と書かれた看板があったとか。
しばらくすると、本当に現世に戻って来られたとか。
この世界は色々とおかしい。
《と、とに、かく、えと、か、館内ボイスって、な、何をすれば……?》
《私にもわからん☆》
《はぇ!?》
《いやだって、これ社長の思い付きだし? 別に私たちが提案したわけじゃないからね☆ ほら、台本無いって言ったじゃん? つまり! 私たちは自由に好き勝手話せばいいと言うことだよ☆》
《こ、コミュ障には、む、むむ、無理ですぅ~~~!?》
《頑張れば行ける!》
《ひぃぃ~~!? こ、根性論は、こ、怖いですぅ~~~~~!?》
この二人の組み合わせ、明らかにミスだろ……そんな思いがこれを聞いている者たちの頭に浮かぶ。
《まあ、それはいいとして。館内ボイスなんだし、イベントについて話そっか☆》
《そ、それ、なら……はぃ》
《んじゃ、そういうことで! まず、昨日のことについて話す? 私はねー……まあ、あれよ。みたまちゃんの可愛い所が見たかったよね》
《で、でも、み、みたまさんは、き、昨日はステージに、あ、上がってない、です、し……》
《まあねー。あれ、みたまちゃんがあまりにも強すぎるからねー。初日で死体の山を築きまくるのはまずいと思った社長やスタッフが止めたからねぇ。断腸の思いだったらしいけど》
《み、みたまさん、です、から、ね。見たくも、な、なっちゃいます、よね……!》
《そうその通り! だって、みたまちゃんぞ? いつでもどこでも、可愛いみたまちゃんの姿を見ることが出来てこそじゃん!? まあ、社長の言いたいこともわかってたしねぇ。みたまちゃんがひとたびステージに上がれば、秒で死人を大量生産しちゃうし》
色々と間違っているはずの発言なのに、実際にはそこまで間違っていないのが本当に酷い。
らいばーほーむにおいては、理不尽でファンタジーなことが起こっても、まあ、らいばーほーむだしで、済ませることが可能なのだから仕方ない。
尚、一番のファンタジーはロリ×2。
《そ、そう言えば、ひ、ひかりさん、に、聞きたいことが、ある、んです、けど……》
《ほほう、なんだい? うさぎちゃん。何でも聞いてくれたまへ!》
《え、えと、フードエリアにある、ひ、ひかりさんの、唐揚げ定食って……ほ、本当に、みたまさんが作った、物を、再現した、んです、か……?》
その質問は、来場者たち全員が思っていた疑問であった。
フードエリアにある、シスコンのメニューが、明らかにヤバい何かだということは知れ渡っていたが、それ以前にあれって本当にみたまちゃんレシピ再現したん? という疑問が来場者たちの頭にはあった。
美味しかったのは事実だし、ほっとするような家庭の味、みたいなそんな味だったので大変好評だが……それはそれとして、本当にレシピを再現してるんだったらヤバくない? と。
《え? 当然だよね? 私が人生で初めて食べた、みたまちゃんの最初の手料理だよ? ならば、それを出すのが筋ってものだよね?》
《ど、どの辺りが、筋、なんです、か……?》
《私はみたまちゃんのお姉ちゃんです。そして、常日頃からみたまちゃんの手料理を食べる機会に恵まれております。ならば、みたまちゃんの手料理を食べることができない者たちにも、私が再現したファースト手料理の味を再現して提供すればいいじゃない、と思いまして☆》
《そ、そう、なんです…………ね?》
シスコンが何か自分たちとは別の言語を喋っているのではないかとうさぎは思ったが、ツッコミは恐れ多かったのでそのまま流すことにした。
これを聞いている者たちは、こいつ何言ってんだ状態である。
《あと私、みたまちゃんが調理実習で作ったお菓子をもらったんだけど、それは一枚だけ食べて、あとは全部真空パックに入れてみたまちゃんのプレゼント専用、業務用冷凍庫の中に大切に仕舞いこんでるからね。そっちのクッキーの味も再現済みだし、食感等も完璧再現! 私の手にかかれば、みたまちゃんの料理を完璧に複製することなど容易い……!!》
こわ……。
それがシスコンの狂気を聴いた者たちの感想であった。
なんでこいつは流れるように狂気を振りまけるのだろうか。
それが解明される日は多分来ないだろう。
《まあ、それはいいとして。そう言えばうさぎちゃんのフードメニューって、加工肉ばかりだったよねぇ。やっぱり好きなの?》
《あ、は、はいぃ。その、そ、ソーセージとか、ハム、ベーコンが大好き、でして……》
《わかる。美味しいよねぇ。朝食に出て来るとテンション上がるくらいには》
《わ、わたしの場合は、よ、夜ご飯、です、けど……れ、冷蔵庫の、中は、ほとんどそれです、けどね……夜ご飯が、そうなので……》
《うさぎちゃんって、地味に栄養バランスが終わってない?》
《す、すすす、すみませぇぇんっ……! そ、そう、ですよね……栄養バランスが終わってる、わ、わたし、なんて……死んだ方がいい、です、よね……》
《少なくとも、みたまちゃんが怒るよ?》
《ひぃぃ!?》
みたまに怒られると言われた瞬間、うさぎがガチの悲鳴を零した。
うさぎにとって、みたまの家事サービスはすごく幸せな物ではあったが、それ以上にちょっと怖かったので。
あの時は、食生活がバレなかったが、後のいるかの家事サービス配信を見て、かなり恐怖を覚えたとか。
これでもしみたまにバレようものなら、間違いなく雷が落ちる、うさぎはそれがわかっていた。
尚、これが生放送であり、バッチリみたまにもこの話が聞こえているのだが……。
《あ、みたまちゃんから連絡が。……あっ》
《ど、どうしたん、ですか……?》
《うさぎちゃん……みたまちゃんが後でお説教、だって》
《……ひぃ!?》
不意にシスコンのスマホにみたまからの連絡があり、メッセージを見てみれば、そこにはお説教があるとのみたまの短いメッセージが書かれていた。
尚、メッセージ内容は『後でお説教です♪』である。
いつもは♪を付けないみたまが♪を付けているので、割とキレてそうである。
《これって館内ボイスだからねぇ。バッチリ聞こえてたみたいで、しかも塩分がそれはもう多い三種を好んでよく食べてるの相まって、結構怒ってるっぽい》
《さ、さよなら、わたしの人生っ……!》
《骨は拾うよ☆》
《で、できれば、海に流していただけると……》
《本当に死ぬつもりのセリフだね☆ まあでも、うさぎちゃんの体を思ってのお説教だから、ちゃんと怒られるように☆ というか、みたまちゃんにお説教されること自体、ものすごく羨ましい……!》
お説教が羨ましいと言っている時点で、こいつも大概である。
なんだったら、みたま限定でドMなんじゃないか疑惑が出たが……これ以上こいつに変な属性が付こうものなら、いよいよもってバケモンになるということで、何も聞かなかったことにした。
《あ、そうだ、みんなはみたまちゃんのミニゲームはやったかな? 最高評価を得ると、みたまちゃんボイスが手に入るので、みんなもやってみようね! あと、単純にお寿司を食べるみたまちゃんが可愛すぎて死ぬけど、大丈夫! どうせ蘇る☆》
《死って、身近になりました、よね……》
《まあ、みたまちゃんが最強すぎるからねぇ。最近はそこに、リリスちゃんも混じって、手が付けられなくなっちゃってるしね☆ 見事見事! あ、やばい、思い出し鼻血が……》
《あの、思い出し鼻血、って……?》
《私のようなみたまちゃん上級者になると、可愛いみたまちゃんの姿を思い出して鼻血が出るようになるんだよ》
《真顔で、すごいこと、言われて、ます……》
《私は思い出し型だけど、ふゆりちゃんは派生形の想像型だね》
《派生形……!?》
よくわからん単語が飛び出してきて、うさぎは驚くし、これを聞いている者たちは宇宙猫になる。
そもそも、みたまちゃん上級者が意味不明であった。
《ほら、ゲームでもよくある、分岐進化みたいな》
《なる、ほど……! 分岐進化ごとで強さが変わるあれ、ですね!》
《おう、その通り! っていうか、うさぎちゃんってゲーム系の話題になると、結構大きな声出るよね!》
《はぅっ!? す、すす、すみませぇぇんっ……わ、わたし如きが、お、大きな声、なんて、お、おこがましい、です、よね……》
《大丈夫! うさぎちゃんはそれがいいんだから☆ 普段はコミュ障でも、ゲーム配信をしてる時は、かなり饒舌だもんね! あれ、私は好きだよ☆》
《あ、ありがとう、ごじゃいます……》
《うさぎちゃんって、やっぱり普通に可愛いよね》
《はひゅっ!?》
《二期生で一番可愛いのはうさぎちゃんだと思ってるしね! まあ、らいばーほーむ一可愛いのはみたまちゃんだけどねぇ! あ、でも、最近はみたまちゃんとリリスちゃんのセットがトップだと思ってるし……まいっか! 私、基本的にらいばーほーむのみんな大好きだしね☆ うさぎちゃんは、自分を誇ろうね☆》
《あ、ありがとうございます……?》
たまにいいことを言うシスコンに対して、大体の者たちは思った。
『普段からそれならいいのに……』
と。
まあ、邪神してないシスコンはシスコンじゃない、との意見もあるので、結局は今のままがいいと望む者の方が多いのだが。
そんなこんなで、邪神とコミュ障の話は次のステージまで続く。
割と珍しい組み合わせの二人だったかと思います。
残る面子は、男二人、いるか、デレーナ、たつな、ふゆり! まあ、ぶっちゃけると、男は男で組んでますけどね。あいつらは基本的にセットで動かしてぇ……いや、女キャラと組ませるのもありか……?




