イベント2日目#4 割と地雷がある二人の館内ボイス
ステージのメイン二人が死亡して終わると言う、そうはなんやろ案件で本当にステージが終わり、次のステージまで間が空く。
狂気を振りまいた挙句、色々なやらかしで死亡した後の二人はそのままスタッフたちに救急搬送され、みたまの膝枕で目を覚ました後にまた死亡した。
ともあれ、次は会場内。
《はいはーい! 来場者のみんな! おはつきぃぃぃぃ! らいばーほーむ三期生の、猫夜はつきだぞ!》
《ハロハロー! らいばーほーむ二期生の、狼神いくまだよー! きゃぴきゃぴ!》
ステージが終わってから数分してから、突如として館内ボイスが流れ出した。
その面子は、いくま&はつきという、なかなかに珍しい組み合わせである。
《というわけで、第二陣はウチとはつきっちの二人でお送りしていくっしょ!》
《いやー、遂に二日目ですね、いくま先輩!》
《うんうん! 昨日までは本当に前座! 今日が実質本番! それを有言実行したかのような、さっきのステージ! リスナーのみんなは、どう思ったかな? ウチは、腹抱えて笑ったんよ!》
《はつきは、オフみたまちゃんが知れて嬉しかったぞ! やっぱり、同期だし!》
《やー、ウチら一期生二期生のほぼ全員が思ってるけど、みたまっちと同期ってだけで羨ましいし!》
《ふふん! はつきたちは超幸運! まー、その割にはコラボが少なかったりしますけどね!》
《……はつきっち、知ってる? らいばーほーむ内で、全員コラボ以外で未だにみたまっちとコラボってないの、ウチだけなんよ……》
《あっ……》
はつき、痛恨のミス!
みたまと唯一全員コラボ以外でコラボ配信していないいくまの地雷を踏み抜き、なんとも言えない空気が流れる!
この事態に、来場者たちもものすごく微妙な表情になった。
あと、いくま推しのファンたちとかものすごく同情していた。
《あの、なんか、すみません……》
《大丈夫! ウチもみたまっちとコラボの約束したから!》
《え、マジですか!》
《マジっしょ! もうウチが我慢できないから言うけど、実はみたまっちとリリスパイセンの二人がダンスレッスンしてる時にウチがそこにアドバイスしに行って、その時のコラボの約束を取り付けたんよ! なんで、一月中にはコラボするつもり! 楽しみにしててね!》
《おー! その時は絶対見ます! 楽しみだぞ!》
どこか重い空気だったが、いくまのコラボをやる発言により、一気に空気が明るくなる。
いくま推しの人たちは、嬉しそうにしていたり、中にはちょっと泣いたりしている人もいるほどだ。
《いやー、それにしてもあれですね、いざ館内ボイスを生で! って言われても、思いの外何喋ればいいのかわからなくなるぞ》
《わかるー! ウチもやる前は楽勝っしょ! とか思ってたけど、実際はめっちゃ大変! てゆーか、これが楽にできるのは、ひかりパイセンとか、ふゆりっちじゃないかな? あと、みたまっちとリリスっちのペア! 実際あの二人、普通によかったし!》
《そうそう! はつきはらいばーほーむ内でキャラが薄いから結構大変だぞ》
《あー、それウチも! なんてゆーか、みーんな濃いじゃん? デレーナっちとか、常識人で比較的ウチ寄りだと思ってたら、みたまっちでおぎゃっちゃったし》
《うんうん。はつきも、気が付いたら声真似とかモデリング技術を持ってたっていう、つよつよ個性持ちのいるかさんがいたからね……。それに、ふゆりさんはすっごくロリコンだし、みたまちゃんは個性の塊と言うか、個性が服を着て歩いてると言うか、そんな感じで……あれ? はつき、薄くない? 大丈夫? らいばーほーむ内で浮いてない? って正直思っちゃってるぞ》
《結構赤裸々だね!》
いくまの闇(?)が解決したかと思えば、今度ははつきの地雷が勝手に爆発した。
言われてみれば、この二人ってらいばーほーむ内で比較的マシな方、とか思われているのは事実なので……。
片や、騒音猫、片や、(闇深系)委員長スキーギャル。
だがしかし、忘れてはいけないのは、あくまでもらいばーほーむ内で薄目なだけであって、仮にこの二人が別の事務所にいた場合は、それはそれで大暴れする上に、ちゃんとエースみたいにはなってるのだが。
……まあ、それ以前にらいばーほーむに入れてる時点で、薄いわけがないのだが。
《なんか、この話をしてると、みーんな暗い気持ちになっちゃうかもしれないし、別の話しよ! 別の!》
《あ、そうですね! じゃー……何話しましょうかね?》
《ん~……あ、じゃあ、イベントまでの間に起こった面白い話! ってのどうどう?》
《いいですね! はつき、そういう話題だったらほんのちょっとだけあるぞ!》
《きっまりぃ! じゃ、言いだしっぺのウチから! ウチはねぇ……昨日のステージライブ組で練習してたんだけど》
《ほうほう!》
《ほら、ステージライブに出てたのが、ウチ、刀パイセン、ひかりパイセン、たつなパイセン、いるかっちじゃん? で、全員でレッスン! ってなったんよ》
《ふむふむ》
《その際に、ダンスの振り付けを一回見ただけでひかりパイセンが覚えちゃってねー。で、講師の先生が意気消沈してた》
《あはははっ! さすがひかりん先輩だぞ!》
困った時はひかりの人外エピソードを流しとけばなんとかなる!
最近のらいばーほーむの常識である。
ちなみに、普通に会場内では笑いが起こったが、同時に困惑する声も上がった。
《けど、ひかりん先輩、変な動きしてなかった?》
《あー、あれ? こっちの方が面白いよね! って理由であれにしてたんよ。マジで笑ったし!》
《おぅ、さっすがだぞ……!》
《他にあったことと言えば、あれだねー》
《あれ?》
《あのレッスンって、基本的に長かったじゃん?》
《そうですね!》
《だから、一日! ってゆーのもざらだったわけ。たまに、夜までかかるなんてこともあったんだけど……そーゆー時って、みたまっちが差し入れ持って来てくれてねー》
《はぇ~! さすがみたまちゃんだぞ!》
《美味しい手作り弁当を持って来てくれて、ウチらを甲斐甲斐しくお世話してくれたんよ》
《ふむふむ! でもそれだと、みたまちゃんが可愛いってエピソードだぞ?》
《ここからが面白いこと。差し入れを持って来てくれることを知らなかったひかりんパイセンが、感極まってその場で喜びの舞をし始めて、そのまま死んだんだよねー》
《ぶふっ》
『『『んぶふっ!』』』
笑い、再び!
まさかのシスコンの行動に、あちらこちらで噴き出す音が聞こえる。
これらの状況も配信で流れているが、普通にコメント欄では笑うようなコメントで埋め尽くされた。
というか、あのシスコンはなぜこう、一挙手一投足が全て面白いのだろうか。
それがわからない。
《あっははははっ! さ、さすが、ひかり先輩だぞ! はつきたちじゃ、絶対にしないような行動を取るところがすごいぞっ》
《んねー。それでそれで、はつきっちは何かあるー?》
《ん~……はつきがやるのはうさぎ先輩とやるRTAですよね》
《そだねぇ》
《やるゲームは全然伏せるんですけど、練習中に一秒縮めるために四徹したんだぞ、うさぎ先輩》
《すっご!? え、うさぎっちそんなことしてたん!?》
《やー、はつきは二徹が限界で、寝て起きたら、完璧にその技術を会得しててびっくりしたぞ。ただ、その時のうさぎ先輩の倒れ方が、うつ伏せで床に倒れて、左手の人差し指だけ伸ばして、その腕を上に伸ばしていたことだぞ》
《さすがうさぎっち! そういう時もネタを忘れない!》
《まあ、その直後に死んだから、止まったんですけどね!》
《落ちも忘れないのはさすがっしょ!》
何してんだあのコミュ障、それが来場者たちの感想であった。
中には、RTA走者ってそういう生き物だし……と思っている者もいたとか。
ちなみに、このはつきの暴露がきっかけで、止まるんじゃねぇぞな姿でゲームコントローラーに左手の人差し指を載せているうさぎのファンアートが増え、同時にうさぎのママが面白がってそれを描くという、公式が最大手がやらかしたとか。
《やー、裏でこういう話が出て来ると、他のメンバーのことも気になって来るねー》
《ですね! はつき的には、いるかさんたちが気になるぞ》
《めっちゃわかる! あそこのステージ、絶対面白そうじゃん!》
《はつき、いるかさんの声帯芸で腹筋壊れないように、実は腹筋を鍛えて来たぞ》
《マジ!? 何それおもしろー! 今どんなん?》
《こんな感じだぞ》
《おー! すっごー! 腹筋ちょっと割れてるじゃーん! はつきっち、めっちゃ鍛えてんねぇ!》
はつきの腹筋が割れていることが判明!
鍛えた始めた動機が同期の笑いに耐えるためと言うのが実にらいばーほーむらしいが。
ちなみに、この発言は瞬く間に拡散されることになり、はつきと腹筋というワードがトレンド入りする事態になった。
尚、この時のトレンドが、『猫夜はつき』『腹筋』『御月美うさぎ』『止まるんじゃねぇぞ』『シスコン』『狂気』になった。
ついでに、腹筋が割れ始めていることが判明した結果、そういう層のファンが増えると言う事態に発展したが、この時のはつきは知る由もない。
薄いように見えて、知らず知らずのうちに個性が手に入っている、それがらいばーほーむである。
《あ、そうだ。はつきっちってフードエリアのご飯食べたー?》
《全然食べられてないぞ! いくま先輩は?》
《ウチは昨日のライブステージの後に! ちなみに、ウチは暁っちのパンケーキ食べたんよ!》
《あー、あの女性人気高そうなメニュー!》
《そそ! あれ、めっちゃ美味しかったし! 暁っちって実はスイーツ男子で、自作することもあって、ウチも食べたことあってね!》
《はぇ~! そうなんですね!》
《中でもパンケーキが得意で、あのパンケーキはそれを再現した物だったんよ! もうね、マージ最高! 疲れた体に糖分が染み渡るってもん! よかったら一緒にどう?》
《行く行くー! パンケーキ気になる!》
《じゃあ、決まりぃ!》
と、館内ボイスで普通に食事の約束をしている辺り、実にフリーダムである。
館内ボイスというより、完全に普段の雑談配信みたいなノリになっているが、誰一人として嫌そうにしている人はおらず、むしろ、らいばーほーむっぽくていい、となっている。
まあ、好まない人もいないことはないが、別に嫌っている、などということはない。
《とりあえず……うん! 話題が消えた! ぶっちゃけ、ここで話し過ぎると、普通にステージの方で話すことが無くなるんよねぇ》
《ですね。はつきも、なるべく温存したいぞ!》
《なので、ここからは思ったことだけで喋ればいいじゃん? って思い始めました!》
《ほほう! つまり、思ったことを口にしていって、それに対してリアクションを入れると!》
《あ、いいねそれ! 乗ったっしょ!》
話のタネを温存するために、よくわからないことをやろうとしているアホ二人。
《じゃあ、はつきから! ん~、ん~~~~……ビャルブルヴィア?》
《それはなに!?》
《頭の中に浮かんできた文字!》
《さすがはつきっち! よくわからないっしょ!》
(((本当によくわからない……!)))
笑いながら言ういくまの言葉に、これを聞いた者たちはたしかに、と頷いた。
そして、この単語を聞いた者たちは、しばらくこのわけのわからない単語が頭の中から抜けなかったそうだ。
その内、腹筋バキバキ女子になりそうだよね、はつき。
それはそれで面白そうだし、本人がどこかの太陽神を信仰しているので、割とありだと思ってる自分がいる。
ビャルブルヴィアってなんだ……?




