イベント2日目#3 館内ボイスというか、ただの雑談ボイス
初手噛み芸×2とかいう、外道行為に手を染めてきた運営の手によって、かなりの数の人死にが出たものの、問題なく蘇生された。
大体レバニラ食っとけばなんとかなる、と言う頭のおかしい状況ではあるが。
《あ、改めまして……みなさん、こんにちはっ! らいばーほーむ三期生の、神薙みたまですっ!》
《らいばーほーむ一期生の魔乃闇リリスじゃ! とんだ醜態を見せてしまったようで、申し訳ないのじゃ》
《ごめんなさいっ》
大量殺戮兵器な幼女二人は、噛んでしまったことを謝罪。
姿は見えないが、なんとなくマイクの前でぺこりと頭を下げているであろう光景が目に浮かんで来て、来場者たちはなんとなくほっこりとした気持ちになる。
だが忘れてはいけないのは、そのほっこりさせて来る存在は、ふとした拍子に死を振りまく存在であると言う事。
《それじゃあ、えっと、この館内ボイスについて説明するねっ! ……でもこれ、本当にわたしでいいの? お姉ちゃんとか、たつなおねぇたまとか、刀おにぃたまでもいいような……?》
《いいのじゃいいのじゃ! 社長曰く、『最初に殺戮しておいた方が、耐性が付くから!』とのことらしいぞ!》
《どういうこと!?》
『『『ぶふっ』』』
流れてくる会話と、社長のまさかのセリフに、来場者たちは思わず噴き出す。
やっぱ頭らいばーほーむだろ、あの人、とでも言わんばかりだ。
《と、ともあれ説明だね! 実は今こうして流れているわたしたちの声は、事前に取り下ろしたものじゃなくて、今この瞬間に喋っている物になります!》
《つまり、リアルタイムじゃな!》
『『『何ぃぃぃぃぃ!?』』』
まさかのリアルタイムボイスと言うこともあり、会場内のあちらこちらからそ驚愕の声が上がる。
中には泣き出す人もいた。
そこまでなのか。
「あー、なるほど……あの呟きはそういう事か……」
「さすがらいばーほーむだなぁ……まさか、一日目とは違うボイスを流すのかと思ったら、殺戮兵器のボイスを流してくるとはな……」
「汚い! さすがらいばーほーむ汚い! でも好きです! その精神!」
「どこ目線なんだ、朝霧……」
「ファン目線!」
「まあ、それはそうだよな……」
《このボイスは、二人一組で行われるぞ! どのようなペアで来るかは秘密じゃ! そして、そのトップバッターに選ばれたのが、儂らロリピュア組じゃな!》
《トップバッターが恥ずかしくて、さっきは噛んじゃったけどね……》
《……ぬぐぅ、我もまさか噛むとは思わんかったのじゃ……》
《で、でも、その、いつもはわたし一人で噛んじゃうから、その、二人だったからちょっぴり嬉しかったり……》
《そ、そうか? かくいう我も、思い出が出来て嬉しいのじゃ!》
《えへへ、じゃあ、お揃いの思い出だね!》
《そうじゃな!》
『『『ロリピュアてぇてぇ……』』』
館内ボイスでまさかの百合の花が咲いた。
それを聞いていた来場者たちは、それはもういい笑顔を浮かべていた。
実際のところ、ロリピュアがらいばーほーむにおける一番の癒しでもあるので、当然と言えば当然なのかもしれない。
《ちなみにじゃが、この館内ボイスには台本と言う者は存在してはいないので、我らの自由な館内ボイスがひたすら流れることになるので、そこは注意じゃな!》
《え、えと、不快な思いをさせちゃったら、ごめんなさいっ……!》
《まあ、それをしそうなのはひかりとふゆりくらいじゃがな》
みたまの後に発したリリスの言葉に、会場内にいる来場者たちは戦慄した。
二人一組でやるなら、絶対シスコンヤバいのと組むじゃん……と。
というか、絶対ヤバいことしか言わなさそうだろ、あの邪神とも思われている。
《なので、ここでの館内ボイスは我とみたまが、会場内のことについて話して行こうと思うのじゃ!》
《でも、何を話せばいいのかな?》
《そうじゃなぁ……あ、そう言えばあれじゃ! 全ての者たちに知られているわけではないが、実は我とみたまのフードメニューには当たりがあったりるすのじゃ!》
リリスから放たれたまさかの情報に、会場内は騒然とする。
中には知っていたとばかりに頷く者たちもいたが、大多数は驚きの表情である。
《それ言っちゃっていいのかな?》
《別に問題ないとは思うぞ?》
《うーん……それもそっか! あ、当たりについてだけど、わたしの場合はわたしが作ったハンバーグが混じっていて、当たりだとお皿にわたしのデフォルメされたイラストが描かれてるよっ! イラストはわたもちおかぁたまが描いてますっ!》
《我の方は我が漬け込んだ漬物じゃな! 我も同様、我の母上である、のじゃろりママが描いておるぞ!》
『え、なにそれメッチャ欲しいんだけど!?』
『お皿に書かれていると言うことは、持ち帰り可……!?』
『欲しい! グッズもそうだけど、そういうのはメッチャ欲しいィィィィ!』
『っていうか、他のメンバーのはないんかな?』
「当たりなんてあったのか……」
「なんというか、購買意欲を刺激してくるねぇ」
「時たま聞こえていた叫びはそれか……」
「みたいですね」
実は昨日の段階で、時々フードエリアで謎の叫びがあったのである。
最初は何事かわからなかったが、今この瞬間の情報により、その理由が判明。
どうやら、当たった人物が叫んでいたようである。
《我らは放送室のような場所で話しておるが、外からかなりの歓声が聞こえるのう。もちろん、味も良いので、是非食べてほしいのじゃ! ちなみに、一部メニューはそれぞれのライバーがレシピを作っておるので、実はそのライバーの味になっておったり! みたまはそうじゃな!》
《えへへ、わたしの場合はハンバーグだけじゃなくて、レバニラ炒めもなんだけどね》
「なんっ、だとっ……!?」
「朝霧、なんかすごい顔してるが、大丈夫か? この世の者じゃない何かを見たような反応だが……」
「だ、だって、みたまちゃんのレシピで作られたレバニラ炒めだよ!? ということは、あたしがいっぱい食べたレバニラ炒めは、実質みたまちゃんが作ったと言うことに……!」
「いや、そうはならんだろ」
「朝霧も大概壊れて来てるな……むしろ、思考回路が桜木姉になって来てはいないか?」
「……やめてください、星歌さん。俺の胃が死んでしまいます」
「なんだ、一期生の常識人みたいなことを言うんだな?」
「……」
どこかニマニマとした星歌の返しに、柊はなんて返せばいいのかわからず、何とも言えない顔を浮かべた。
一期生の常識人みたいな、とは言うが、その内四期生の常識人になるからではあるが。
《うむ、みたまの料理は美味しいからのう! 我も好きじゃぞ!》
《えへへ、そう言われると照れちゃうね……》
《我としては、早く出張みたま家事サービスが来てほしいと思っておるしな! たつな、うさぎ、いるかが羨ましいのじゃ》
《そこは運なので、お楽しみに! でも、その時になったら、いっぱいお世話するからね!》
《うむっ! 楽しみじゃ!》
館内ボイスなのに、ただの雑談を化しているが、誰も嫌そうな顔はせず、むしろとても微笑ましそうな表情である。
らいばーほーむとは思えないほのぼの~とした館内ボイスである。
もっとも、これを館内ボイスと言っていいのかはあれだが……。
《そう言えば、リリスおねぇたまは会場内を見て回ったの?》
《うむ! 折角じゃからな! みたまはどうなのじゃ?》
《わたしは……実は見れてなかったり》
《そうなのか?》
《うん……その、初めてのイベントで疲れちゃって、裏で三期生のみんなとぐでぐで~ってしてたから。それにその……わたしって目立つので……》
《そう言えば、みたまはリアルがこうなんじゃないか~、みたいな情報が出ておったなぁ。まあ、それを言えば我もなんじゃが……》
「まあ、特徴的な体はしてるな」
「我が幼馴染ながら、特徴的な姿になったもんだよ……」
「あそこまでわかりやすい特徴もないよね。それに、お母さんに似てるし」
「雪子さんなぁ……あの人あれで38歳なのが恐ろしいよ」
「そう言えば、桜木の母親は一児の母とは思えない若々しさだったな。私も面談の時は驚いたよ。……とても高校生の子供を持つ母親には見えなかったが」
「あの人あれで40手前ですからね……」
「あれもあれでファンタジーだよね、すっごく」
椎菜の母、ファンタジー扱いされる。
とはいえ、それも仕方ないと言えるだろう。
何せ、38歳なのに肌年齢は低いし、童顔だし、小さいし、胸が大きいし、どこか茶目っ気もあるので。
むしろ、椎菜と言う娘がいることを知らなかったら、ただの姉妹にしか見えないほどだ。
ある意味、椎菜母もファンタジーと言えよう。
《ま、まあ、我らは仕方あるまい! むしろ、身バレの危険が一番高いのは、たつなじゃからな! たつなは一応外を歩く時は変装をしておるらしいがな!》
《そ、そうだね。さすがに変装状態のことは言えないけど、変装状態でもカッコいいよねっ!》
《わかるのじゃ。我らのように小さき体を持つ者からすれば、たつなのようなカッコいい女性とは言うのは羨ましいからのう……ぐぬぅ、我も背が欲しい……》
《……わたしなんて、男の時からちっちゃくなっちゃってるよ……20センチ近く……》
《お、おおぅ、なんというか、その、きついのう……》
ほのぼのしていたと思ったら、突如として始まり、聞いている側がいたたまれなくなる話題に、来場者たちは苦い顔になった。
「元々低身長だったが、それに輪をかけて小さくなったからなぁ……」
「だねぇ……」
「まあ、特殊な病気だからな。あれは」
「椎菜の場合、それ以上に神秘をまき散らしてる気がしますけどね……」
「ファンタジーがいっぱいだよね、本当に」
「TS病以上にファンタジーを引き込むとは思ないだろ……」
「最近は驚くだけ無駄だろうがな。特に、ウチのクラスは」
「その内神になっても驚きませんよ、俺」
「あー、なんかありえそう。神様、いるし……」
《と、ところで、リリスおねぇたまは今日のステージ、どれが楽しみとかってあるの?》
《我か? 我は……そうじゃなぁ、個人的にはたつなたちが出演するクイズが楽しみじゃな! いるかは面白いからのう!》
《たしかに! いるかおねぇたまのモノマネすごいもんね! わたしも楽しみ!》
《みたまは楽しみなステージはあるのか?》
《わたしは…………みなさんが大好きなので、みなさんのステージ全部が楽しみですっ! なんちゃって……えへへ、欲張りかな?》
《そんなことはないぞ! どれも面白そうじゃからな! それに、大好きな者たちのものとなれば、猶更じゃ! うむうむ! 我も同じ気持ちじゃぞ!》
《じゃあ、そこもお揃いだねっ》
《じゃな!》
《《えへへぇ》》
『『『ごふっ……!』』』
「……高宮君っ、星歌さんっ……ざ、残機がっ……!」
「なんと言うか……とてもVTuberのイベントとは思えない惨状だなぁ……」
「……ですね」
何をしても殺戮兵器としてのポテンシャルを発揮しまくる幼馴染と未来の先輩に、柊は未来のことを思ってますます胃が痛くなるのであった。
既にキルスコアは6ケタを超えております。
そして、会場内の様子を映した配信も行われており、その配信内でもガッツリ館内ボイスが流れているため、視聴している人たちは軒並み死んでます。
中には、一日目を終えて帰宅途中の人たちもいましたが、軒並み死にました☆
あと、一日目の話数、49話だと思っていたんですが、よく見たら50話ぴったりでしたね!
二日目は……まあ、30話で終わると思います! そこは間違いない! きっとおそらく!




