イベント1日目#ライブステージ:5 シスコンは平常運転、たつなは頑張った
まあ、いつも通りだよね!
四期生の常識人が投げたましゅまろにより、たつなのHPが大きく回復し、たつなの精神状態もかなりいいものになったところで、その後も前座的ライブステージは続いていく。
たつなの歌を皮切りに、他のライバーたちの歌にも移り、刀が歌えば女性ファンからの歓声(というか悲鳴)がやたらと響き、いくまがキレッキレの踊りと共に歌えば、合いの手が入り、いるかが歌えば(声帯模倣なし)純粋な歌唱力で聞き惚れる者が現れたりなどなど、かなりステージは盛り上がる。
尚、ひかりについて言えることは一つ、とりあえず歌詞が全部どこかのお狐ロリへの愛と言うか、信仰と言うか……まあ、つまるところみたまへの歌みたいなものだった。
無駄に歌唱力が高い上に、無駄にいい曲だったので、酷さが余計に際立っていたが、まあ、シスコンなので、というあれこれで最終的には全員楽しんでいたのだが。
ちなみに、その歌を送られている側とも言えるみたまの方は、よくわかってなかったのか純粋に楽しんでいたりする。
「いやー、歌ったねぇ!」
「確かに歌ったかもしれないが、それ以前にトークの割合の方が多かった気がするんだが……」
「まあいいじゃねぇか! 実際、4:6って言ってあったんだしよ!」
「ん、問題なし」
「そーそー! あ、たつなパイセン。実はもうそろそろこのステージライブも終わりらしいんよ」
「え、あ、ほんとだ!?」
【早いなぁ】
【まあ、こういう時間と言うのは、得てして早く終わってしまうものだからねぇ】
【わかるー】
【まあでもこれ、まだ前座なんですけどね】
「なんだかあっという間だったね☆」
「ん、すごく楽しかった。明日はこれ以上だとは思うけど」
「ねー! ウチも明日がめっちゃ楽しみだし!」
「もちろん今日もすっげえ楽しかったが、やっぱ明日が本番! って感じはあるよな」
「否定はできないところだね。私はいるか君といくま君の両名とは明日も一緒のステージになるが」
などなど、もうすぐ時間になると言うことで、感想を言い合い始める五名。
その五名に共通している事と言えば、明日のステージが楽しみだと言うことである。
当然それはらいばーほーむの面々だけではなく、会場にいるファンたちや今日は当選していない、もしくは金銭的な事情や、仕事などの理由で来ることが出来なかったものの、二日目は当選している者たちからすると、それはもう楽しみなのである。
今日はおしゃべりコーナーがある意味一番の目玉と言われているが、それは当選した者か、抽選段階の時のことであり、実質的な目玉はこっちのライブステージ。
それが前座扱いされているのだから、公式は本当に頭らいばーほーむである。
「やー、ウチ、明日のいるかっちのクイズがメッチャ楽しみなんよ! ってゆーか、ウチらのステージは
基本的にリハーサルもへったくれもないし!」
「ん、問題を知っているのは私と公式のみ。故に、三人は問題を知らない。全力で騙す」
「正直、いるか君の声真似はすごすぎて嘘か本当かわからなくなるんだよね……」
「長いこと一緒にいる俺たちですら、一期生の真似をされたらわからねぇしな!」
「私はみたまちゃんしかわからないんだよねぇ」
「「「それはそれでおかしい」」」
「ん、みたまの真似をすると指導が入るから基本的にしてない」
【草】
【指導www】
【指導が入るってなんだww】
【ってか、みたまちゃんの声真似ってどんな感じなんだろう?】
【んね。すっごい気になる】
「ふむふむ、いるかっちのみたまっちの真似が気になってる人が多いねぇ」
「ん、でも、ひかりさんの前でやるのはちょっと……」
「ひかり、今日くらいはいいんじゃないかい?」
「ん~、ま、それもそだね! いるかちゃん、やってみていいよ!」
「ん、了解。じゃあ、少しだけ」
「おっ、今日は聞くことができるのか! 楽しみだぜ!」
まさかのいるかによるみたまの声真似が披露されると言うことで、会場が一気に静かになる。
いるかは軽く深呼吸をしてから、
「――みたまの民のみんなっ、こんたまぁ~~! 神薙みたまだよっ!」
配信冒頭の挨拶を口にした。
いつもの無表情のまま。
「「「!?」」」
いるかの声帯模倣のレベルの高さは知っていたが、本当に本物そっくりというか、まんま本物の声がいるかの口から飛び出したことで、らいばーほーむのメンバーはそれはもう驚愕の表情を浮かべる。
会場内にいるファンの方はと言えば、いつもと変わらぬ無表情ないるかの口から、癒しになるような可愛いロリボイスが流れて来て、びっくりはしたが笑いが起こる。
【くっそwww】
【ええぇぇ?】
【みたまちゃんの声って、結構特徴的と言うか、そうそうないタイプのロリボイスだよね? なんで完全再現できるん?】
【やっぱいるかちゃんの声帯おかしいやろwww】
【いるかちゃんってモノマネ系の番組に出たら、この技術だけで普通に優勝できそうだよね】
【わかるwww】
【むしろ、誰も勝てんやろこんなん!】
コメ欄の方は、こんな風に驚きもありつつ、笑いもありつつといった感じである。
総じているかの声帯はおかしい、になるのだが。
「ん~、80点!」
そんな中、シスコンだけはなぜか80点と言っていた。
なんなんだろうか、このシスコンは。
「何をもって80点なんだい!?」
「すっげえそっくりだったぜ?」
「なんでなんで?」
「え? 声は確かに似ているけど……そもそも、魂が違う」
『『『???』』』
【【【???】】】
シスコンの発言は、短いにもかかわらず、人類が理解するにはあまりに何回であった。
端的に言えば、何言ってんだこいつ状態。
「あ、あー、ひかり? すまない、私たちからすると君の言っていることは全く理解できないと言うか……過去一わけわからないこと言ってる自覚、ある?」
人間理解不能な出来事が起こると、とりあえずそうして相手に正常なのかどうかを尋ねてしまうのだろうか。
そんなたつなのセリフを受けたひかりはと言うと、真面目な顔(?)で口を開く。
「あはは、何言ってるのたつなちゃん! まあでも、そうだねぇ……まず最初に言うけど、みたまちゃんの声は常に我々の精神だけでなく肉体すらも癒します。それらはみたまちゃんの声帯から出ているというよりはみたまちゃんの魂から出ていると言ってもいいと思うの。そもそもの話、みたまちゃんという完璧で、唯一無二な天使であり祭神な存在を模倣すること自体が間違いじゃないかな。あと、いるかちゃんの場合はたしかにみたまちゃんの声そっくりです。そこは私が太鼓判を押すけど……まず一つして、声のテンポが0.03秒速いし、声のトーン自体もほんの僅かに低い。楽器で使うチューナーってわかる? あれの一メモリ分くらいは低いね。それから声に甘さが足りないし、みたまちゃん特有の癒しとなる根幹的魂が足りていない。それら諸々を込みで見積もると80点くらいが妥当かな。みたまちゃんのあの声はあの可愛らしい喉と声帯だけから出ているのではなく、魂から発される、純白で純粋で透き通ったとても綺麗な色が混ざり合うことで発生し、それらが私たちを癒すわけです。おっとこれは最初の方でも言ったっけ。つまりだよ? みたまちゃんはあの愛らしい外見と性格だけでなく、生まれ持った魂から既にパーフェクトな完全無欠な最強の天使でありお狐様なのです。それらは神々が直接手を加えたのではないかと思うほどに美しい。いやそもそも、あれは神々ですら不可能な領域なはず……つまるところ、みたまちゃんという存在は、神々が手を加える必要のないくらいに最初からパーフェクトな魂、パーフェクトな肉体、パーフェクトな幸運を持って生まれて来たと言っても過言ではないはず。故にこそ、みたまちゃんを模倣すると言うことは、ある意味神への冒涜と言っても過言ではない行為。おっと話が逸れてしまったかもしれないね☆ まあでも、いるかちゃんの模倣はたしかに素晴らしい……個人的には、是非ともその声で私のリクエストするボイスを録音してもらいたいので宿泊場所に戻ったらそれをしてもらいたいね☆ まあでも、だからといってそうホイホイとみたまちゃんの声帯模倣はあんまりしないでほしいというのが私の率直な感想かな。だって、みたまちゃんの声はやっぱりあの最高に可愛いみたまちゃんの喉と声帯から出ていることが一番なわけで、それを別の人物が模倣するなど……くっ! 私にそんな技術があれば、言ってほしいみたまちゃんのセリフをセルフで出来ると言うのに実に残念です。しかしそう考えると、みたまちゃんの声は本当に唯一無二のボイスと言っても過言ではないよね。だって、聞くだけで癒されるんだよ? それを考えると、みたまちゃん以外の人類……いや、人類だけじゃなくて、神様とか天使とか、悪魔とか、そう言った存在も完璧な模倣をすることはできないのでは? やはり、みたまちゃんが最強と言うことが証明されてしまったね! ヒーリング効果があるボイスに、見ていて癒される仕草の数々、そしてそれらをさらに盤石たらしめるあの愛らしい容姿と笑顔……それらが合わさることで、どのような病気も治るということだよね! 実際、本当に病気が治りました! みたいな報告もあるしね。なので、この世で最強の生物は何かと訊かれたら、真っ先にみたまちゃんという答えが出るのが人類にとっての当然だよね!」
シスコンの狂気、再び。
いつぞやの初コラボ配信の時と、100万人記念の時の配信に続き、これで三度目の狂気である。
いるかへの採点から入ったはずなのに、何故みたまへの狂愛を振りまく超長文セリフになるのだろうか。
そのせいか、またしてもシスコンの狂気に当てられた者たちの思考が止まった。
そしてそれは、らいばーほーむのイベントに来た超常存在たちからしても非常にアレだったようで……まあ、うん、思考が止まっていたのである。
特に、天使、悪魔、妖魔、精霊はヤバかった。
神々は……既に知っていたと言うのもあって、そちらほどは重症ではなかったが、それでも狂気は狂気なので、普通に思考は止まっている。
尚、本物の邪神についても、笑顔のまま固まっている。
「――ハッ!? また思考が遥か彼方に……って! ひかり!? 何らかのイベントごとでその狂気を振りまくのは本当になんなんだい!? 一度目と二度目もそうだったけど、まさかイベントでするとは思わなかったんだけど!?」
しばし沈黙が流れたが、たつなの思考が戻って来たところで、速攻ツッコミを入れる。
それを皮切りに、他の者たちの方も色々と戻って来たようである。
「え? だって、みたまちゃんへの愛だよ? あれしきで言いきれるわけないじゃん?」
「あれ以上がある、だと……!?」
「やっぱ、ひかりパイセンに勝てる気しないんよー……」
「……ん、あの狂気を平然と受けられるのは、ふゆりくらい」
【なんでこいつはいつもいつも狂気を出すんだよぉ……】
【俺、鳥肌がすごいんだけど……すごすぎて、鳥になりそう……】
【恐怖しかないんですが】
【ヒェッ……】
【もうまじでナーフした方がいいだろ……】
【実在する人間をナーフは草。……いやこれ、草生やしてる場合じゃないや……】
「あれ? なーんでみんなバケモンに会ったような顔してるの?」
『『『お前のせいだよ!?』』』
【【【あんたのせいだよっ!】】】
その瞬間、らいばーほーむのイベントを参加、見ていた者たちの考えは、見事に一致したのであった。
◇
なんとか狂気が過ぎ去ったところで、最後のトークへ移る。
「えー、はい。思わぬアクシデントがあったが……ともあれ、これで今日のイベントの催し等は終了になるね。今日は朝早くから来てくれてありがとう。明日は、全ライバーが登壇することになるから、明日会場に直接来る人は、是非とも万全な状態でイベントに臨んで欲しい」
最後のところは、常識人であり、こういう時はまともなので、MC的な立ち位置で話していく。
「それと、どうも明日のシークレットは驚きの情報が盛りだくさんらしく、その旨を社長から言われていてね。実は私たちも楽しみであり、怖くもある」
【驚きの情報かぁ……】
【一体何が発表されるんだろうか?】
【まあでも、そこまで特大の爆弾なわけが…………いや、らいばーほーむだからなぁ……】
【あらゆる可能性を想定することで、驚きを減らすつもりだけど……らいばーほーむに勝てる気がしねぇ……!】
「やー、あれ、ウチらもマージで情報が隠されてるかんねー。マージ楽しみっしょ!」
「しっかし、去年はシークレットなんてなかったからな。ま、明日になればわかるだろ!」
「ん、同感。疑問も多いけど、きっと楽しいもののはず」
「うんうん! あ、ちなみに社長曰く、『まあ、内容的にはらいばーほーむのイベントで発表するようなものじゃないかもしれないが……まあ、時代が動くって感じがしていいよね!』とか言ってたよ☆」
「待って? 本当に何が発表されるの!? それ!?」
シスコンが口にした社長の言葉に、たつなは少し嫌な予感がした。
そしてそれはたつなだけではなく、イベントに来ている参加者や、配信で見ている者たちも同様である。
【明日のシークレットが怖くなってきた件について】
【イベントで言うようなことじゃないって何……?】
【しかも、時代が動くとかとんでもないこと言ってません? 本当に何やらかす気?】
「さぁ! そんなこんなで、今日の感想と最後に一言を言って締めちゃお☆」
「……それもそうだね。正直、今日はもうツッコミを入れたくない気分だ」
「たつな、すっごいいい笑顔だな」
「やっと終わるからね」
「お疲れっしょ!」
「本当に疲れたよね」
「ん、明日も頑張ろう」
「……ガンバリマス」
明日のことを思って、たつなは血を吐きそうになったが、片言でなんとか返答することが出来た。
「んじゃ、俺から行くか! いやぁ、こういう舞台で歌うってのはやっぱいいな! 最初から最後まで楽しかったしな! それもこれも、ツッコミという大変な役回りをこなしてくれたたつなのおかげだ! ありがとな!」
「え」
「じゃあ、次はウチ! ウチも思いっきり体を動かせて楽しかった! みんなの合いの手マジで嬉しかったし! それに、トークもたつなパイセンがいい潤滑油になってくれたから、安心できたし! ありがと!」
「あ、え?」
「ん、初めてのイベントで、初めてのステージライブは緊張したけど、私以上に大変だったたつなさんが頑張ってくれたおかげで、なんとかやれた。本当にありがとう」
「う、うん?」
「本当に楽しかったよね! 私も色々言えたし、最高だったよ☆ あと、やっぱりたつなちゃんがいると、トークが楽しいよ☆ 本当にありがとうね!」
「……あ、うん。え?」
感想を言い始めた四人が、なぜか自分に感謝をして来たために、たつなは思わず面食らう。
だって、そんな素振りなかったじゃん、と。
だがしかし、今は考えるよりも、時間が差し迫っているこの状況をどうにかした方がいい、と思い直すことにして、口を開く。
「まあ、なんだ……私も今日はすごく楽しかったよ。私のライフが削られまくると言う事態も多々あったが、なんだかんだ楽しかったし、いいこともあったしね。あと、君たちからまさかお礼を言われるとは思ってなかったから、普通にじーんと来たよ」
たつなはとてもいい笑顔で、そう告げた。
ここで終わることが出来れば、きっと言い終わり方だったのだろう。
だがしかし、ここはらいばーほーむである。
当然、いい話だなー、で終わるわけがない!
「「「「というわけで、明日もたった一人の常識人として、全力で頑張ってね(れよ)!」」」」
それはもう、いい笑顔で全員がサムズアップしながらそう言って来た。
それに対したつなは……。
「えー……というわけで、これで今日のイベントは終わりになります。あと一時間ほどありますので、閉場時間までは会場内を楽しんで行ってください。私は……上げて落とす、というある種下劣な行為をしてきた愛すべき仇敵たちを締めなければいけないので。それでは、また明日会おう! バイバーーーイ!」
それはもう、とてもいい笑顔で、イベントを締めた。
これには会場内のファンたちも苦笑い!
【ちょっとぉ!?www】
【たつな様www】
【まさかのオチになったw】
【ですよね!】
【らいばーほーむが普通に終わるわけがないんだよなぁ……】
「……お前たちの血はァ……何色だァァァァァァ!!!???」
そして、画面が暗転した直後に、そんなたつなの声が響き渡ったことで、あちらこちらから噴き出すような声が飛び出て、お開きになったことで、本当に一日目のライブステージは終了となるのであった。
尚、この一連の流れは見事トレンド入りを果たし、その中の一つには『たつな様お労しい』があったとか。
当然、シスコンの狂気がトレンド入りしたのは言うまでもない。
というわけで、Word1ページの狂気再びです。まあ、最初と二回目の奴に比べれば遥かにマシだね!
そして、ようやく一日目の出し物関係が終わりました。
あとは掲示板を一、二回書いて、柊たちのことを書いて、みたま信者の三人を書いて、らいばーほーむの面々のホテルでの状況を書いて……軽い小話をまとめた物を書けば一日目は終了です。
……いや長い! 50話で終わらせるつもりでしたが、一日目で50話使ってしまいそうです。うん。まあ、仕方ないね! 過去の自分から厄介ごとが配達されてきましたが、これはもう、仕方ない!




