イベント1日目#4 おしゃべりコーナーが終わり、昼食へ
久しぶりの三人の視点!
本当に長いおしゃべりコーナーというある意味地獄のような企画から離れて、おしゃべりコーナーのエリアから少し離れた所にて。
「あ、来た来た。星歌さーん!」
「ん、なんだ、私が最後だったか」
「そうですね」
それぞれおしゃべりコーナーの相手との話を終えて(全員普通にリアルで知り合い)、合流を果たしていた。
「よーし、お前ら、飯食いに行くぞ、飯。正直、お腹空いたし」
「わかります! あたしももうペコペコですよ~」
「早めに来たとはいえ、一人十分で、且つ四人終わるごとに休憩が挟まるからな。俺も結構空腹だ」
「だろう? というわけだから、フードエリアに行くぞ」
「はーい!」
「了解です」
星歌の提案で、三人はフードエリアへ行き、少し遅い昼食を摂ることに。
人混みを上手く避けつつ、フードエリアへやって来ると、朝来た時よりもかなりの大賑わいを見せていた。
列もそれなりに並んでいるようだ。
「ふむ、一時間待ちか」
「でも、イベント系ならまだ早い方だと思いますよ?」
「そうだな。じゃ、並ぶか。その間にメニューも決められるしな」
「そうですね」
三人はそのまま並ぶことに決めて、早速料理を注文するための列に並ぶ。
「こちら、イベントメニューでーす! よろしければどうぞ!」
三人が並び始めてからほんの少しして、スタッフの人がやってくるなり、手に持った大量のチラシを三人それぞれに手渡して来た。
「お、どうやらメニュー表のようだな」
「おー! これ結構凝ってますね!」
「そうだな……というか、これ一枚の製作費も結構かかってそうじゃないか……?」
手渡されたメニュー表を見て、柊は苦笑い交じりにそう呟く。
麗奈が言った通り、手渡されたメニュー表はかなり凝っている。
一枚の紙で収まって入るものの、見開きページが存在しており、その中にはそれぞれのライバーのママなどが描いたであろうイラスト共に料理が載せられており、裏面にはそれぞれがそれぞれの料理を美味しそうに食べるという一枚絵が描かれていた。
こんなところにも金をかけているのか……と柊は思ったし、これを貰った来場者たちも似たようなことを思っている。
まあそれはそれとして、こんな会場限定のチラシとか、最高過ぎるだろ! っていうのが大多数の本心だが。
そのためか、その辺にポイ捨てされているなどと言うことはない。
そもそもの話……みたまが写っている物をポイ捨てしようものなら、怖い邪神が来るのでは? と恐れられてるから、と言うのもあるのだが。
どんだけ怖がられてるんだ、あのシスコン。
「そう言えばらいばーほーむのライバーのデザインを担当したイラストレーターたちが全員で集まってチラシを作った、なんて話がトワッターに上がってたな……」
「なにそれすごい」
「らいばーほーむに関わってる人は全員おかしいのか……」
「高宮君、それ高宮君にもブーメランになっちゃわない?」
「……俺はおかしくない、はずだぞ?」
柊の発言に、例のことを知っている麗奈はブーメランだと指摘し、された方の柊は苦い顔で否定。
まあ、現時点でわかっている柊(ファンたちからすると、みたまへの完全耐性持ちの男幼馴染)の情報から言われているが、絶対にヤバい奴、らしい。
みたまちゃん耐性を持ってる奴がヤバくないわけないだろ!?
みたいな。
「しかし、何にするか……」
「ですねぇ」
「なんか、レバニラ炒めの異質感が半端ないな……」
「「たしかに」」
柊の呟きに、他の二人も賛同。
メニュー表の中には、それぞれのライバーメニューが載せられているが、一際レバニラ炒めだけがやたらと異彩を放っていた。
例えば、みたまのハンバーグやら、はつきのオムライスなどは随分と可愛らしく描かれたライバーと共に載せられているが、別段ライバーが一緒にいるわけでもないのに、他よりもややでかく写真が載せられているのである。
そもそも名前が『萌え死に対策! 鼻血出し放題! 特製レバニラ炒め!』なのも本当に酷い。
これが、VTuberイベントのフードメニューの名前か……? と言いたくなるほどのアレである。
というか、鼻血出し放題がパワーワードすぎる。
しかも後から修正でもされたのか、『人気NO.1!!』とか書かれているのが本当に酷い。
レバニラ炒めが一番人気のメニューになるVTuberイベントとは一体……。
「ま、私と高宮は別に出血してないし、普通のメニューだな」
「そうですね。朝霧は?」
「あたしは……いやー、みたまちゃんのおしゃべりコーナーで無事に死亡したので、レバニラ炒めかな!」
「やっぱ死んだのか」
「うん、あれは無理」
「真顔で言うほどなのか……」
「しかし、そうだな…………まあ、ここは折角だし、天空ひかりのメニューにでもするか」
「俺は……あー、結構空腹なんだよな……となると、デレーナ・ツァンストラの天麩羅定食か、御月美うさぎのミックスフライ(笑)か……」
「リリスちゃんのオムライスは?」
「それもいいんだが、どっちかと言えばガッツリ食べたくてな。いろんな意味で疲れたし……」
そう話す柊の目は遠くを見つめていた。
既にらいばーほーむの男性陣と顔合わせを済ませてしまったので。
「そっかー。じゃあ、あたしはレバニラ炒めとみたまちゃんのハンバーグ!」
「二つも食べるのか?」
「もち! だって、レバニラ炒めは単品注文が可能だから!」
「そこだけ変に融通が利くのな……」
「らいばーほーむのイベントだしな。私は知らないが、他の所でも吐血がすごかったらしい」
「本当にVTuberのイベントなのか……?」
本日何度目かもわからない柊のツッコミに、麗奈と星歌はどうだろうなぁ、と苦笑いを浮かべた。
らいばーほーむで最も死者を出しているのは、間違いなく自分たちの身近な存在のあのお狐ロリなので。
結局、柊はミックスフライ(笑)を注文することに決め、その後は雑談をしながら順番が回って来るのを待つ。
それから一時間ほどで注文可能段階にやって来た。
「いらっしゃいませ! ご注文はお決まりでしょうか!」
「この『みたまちゃんメモリー定食』を一つと、レバニラ炒めの単品一つ、『ミックスフライ(笑)定食』を一つ、『みたまお手製ハンバーグ』を一つで頼む」
「みたまちゃんメモリー定食がおひとつ、レバニラ炒めの単品がおひとつ、ミックスフライ(笑)定食がおひとつ、みたまお手製ハンバーグがおひとつ、以上でよろしいですか?」
「あぁ」
「お会計、4,410円になります!」
「5千円で頼む」
「5千円、お預かりいたします! 590円のお返しになります! こちらの食券を持って、向こうへお並びください!」
星歌が注文と会計済ませて、渡し口へ移動。
「ほれ、食券だ」
「あ、先生お金」
「いやいいよ。私の奢りで」
麗奈が自分のお金を払おうとすると、星歌は笑って奢りでいいと告げた。
「さすがにそれは申し訳ないんですが」
「いいんだよ、こういう厚意はありがたく受け取っておけ。というか、私から一緒に回ることを持ち掛けたんだ。これくらいはな」
「じゃあ、ありがたくっ!」
「朝霧……」
「でも、折角ご馳走してくれるんだから、こういうのはありがたく受け取った方がいいんだよ?」
「そうだぞ、高宮。こういう善意は、受け取っておけ。どうせ、学生のうちにしかできないんだからな、こういうのは」
「……わかりました。それじゃあ、ありがたく」
「それでいい」
にっと笑って、柊に食券を手渡す星歌に、柊は苦笑いを浮かべた。
それからほどなくしてそれぞれの料理が出来上がり、空席に案内される。
「「「いただきます」」」
席に着いたら早速食事開始だ。
星歌が注文したものは、シスコンのフードメニューである『みたまちゃんメモリー定食』である。
正式名称があるにはあるが、あまりにも長いので、大体はこれで注文される。
内容としては、見た目『は』普通の唐揚げ定食だ。
「ん、なかなかに美味いな、この唐揚げ」
「こっちのハンバーグも美味しい!」
「ミックスフライも美味いが……これはミックスフライと言っていいのか?」
麗奈が頼んだ料理については割愛。
柊が注文した物は、御月美うさぎのフードメニュー。
ミックスフライと書かれているが、実際にはハムカツ、ベーコンのフライ、ソーセージのフライである。
ものの見事に全部が加工肉である。
世間一般のミックスフライは、エビフライ、白身魚、カツなどが一般的なのに、完全にそれをガン無視した構成の定食。
しかも美味しいらしい。
名前についている(笑)は、よくある定食からかけ離れた内容だったこともあり、お酒に酔ったうさぎが付けた。
今は後悔している。
「そう言えば缶バッジがもらえたな……私は……ん、暁か」
「あたしはふゆりさんだ!」
「俺は……たつなさんだな」
「……ふぅむ、教え子が当たるのと言うのは、変な感じだな」
暁のバッジが当たった星歌は、なんとも言えない表情を浮かべる。
「そうでしょうねぇ」
「普通はないと思うんですが……」
「ま、これはこれでいいか。そう言えば高宮。お前、おしゃべりコーナーも春風たつなが当たってたな? なんだ、推しなのか?」
「推し……まあ、推しと言えば推し、になる、んですかね……?」
「なんだ、煮え切らないな?」
「……とりあえずは推し、ということにしておいてください」
「とりあえずってなんだとりあえずって。まあ、別にいいが」
柊の中でのたつながどういう存在かと言えば……今後一番頼りにすることになるであろう先輩、と言ったところだろうか。
柊はこれから、らいばーほーむ四期生の常識人として活動していくことになるので。
あの人が壊れたら、自分にそのしわ寄せがくる……なので、絶対に支えなければ、とも思っている。
実際問題、たつなが壊れたら、らいばーほーむは真の意味での魔境になってしまう。
だからこそ、たつなも柊と言う存在が欲しがっているのだ。
それがわかっているからこそ、柊自身も覚悟を決めているわけで。
明らかに企業勢の仲間入りを果たす新人がする覚悟ではないとは思うが……。
「それで、この後はどうする?」
「そうですねー。たしか、あたしたちの物販の整理番号、もう少しでしたっけ?」
「そう言えばそうだな。星歌さん、物販に行くのはどうですか?」
「構わないぞ。物販でグッズ買う頃には、ライブステージもちょうどいい時間になるだろう。というか、早く行かないといい場所が取れなさそうだからな」
「ですね! まあ、立ち見にはなっちゃいますけど」
「おしゃべりコーナーのチケットが当たったんだから、そこは仕方ないだろう。それに、会場内の随分に設置されたモニターでも見られるらしいし、人によってはスマホやタブレットなんかで配信を見るファンもいるそうだが」
「会場に来て、配信で見るのはなんか違くないか?」
「いろんな人がいるってことですよ、星歌さん」
「らいばーほーむのファンはヤバいのが多いと思うがな」
「それは……否定が出来ないですね……」
などと言っているが、今現在らいばーほーむイベントの掲示板では、星歌と柊の二人が化け物扱いされているのだが……そんなことを二人は知る由もないのである。
それと、地味に鼻血は出したけど、倒れもしなかったし吐血もしなかった麗奈も、実はちょっと話題になっていたりするが……やっぱり、当人たちは知る由もなかった。
おしゃべりコーナーでは出てたけど、すっごい久しぶりに書いた気がする……。
あ、フードメニューについては裏話で書くつもりなので、ちょっと待ってね!
おしゃべりコーナーの話しも終わったし、すっごい晴れやかだぜ……。
そろそろ、みたまたちの方の話しも描写したいし!




