イベント1日目#おしゃべりコーナー:8 いくまの場合:上
休むと言ったな、あれは嘘だ。
人力ボイスチェンジャーないるかから一度離れて次の人物へ。
次は……
「ハロハロー! 今日は来てくれてありがとね! 狼神いくまだよ! きゃぴきゃぴっ!」
委員長スキーギャルの狼神いくまだった。
『神田健斗っです! 会えてメッチャ嬉しいです! いつも推してます! っていうか、最推しです!』
そんないくまの最初の相手は、高校生くらいの男性ファンであった。
見るかに緊張している。
「おっ! それはどもどもー! やー、二期生ってウチ以外メッチャキャラ濃いからさー、そう言ってもらえると、メッチャ嬉しいっしょ! ありがとね!」
『いえいえ! っていうか、いくまっちで薄い……?』
「やー、ウチは薄いよ? だってほら、他の三人とか強くなーい? コミュ障でゲーマードMだし、なんか全力してるし、一人完全におぎゃりの世界に旅立っちゃったしー? ウチはほら、ただの委員長スキーだし?」
『その薄い人、ギャルゲー配信で委員長キャラが出た瞬間に限界オタク化してるんですがそれは』
「委員長キャラはああなって当然っしょ!」
などと言っているが、実際にいくまのギャルゲー配信は結構アレである。
状況的には、
『○○何してるの? ほら、宿題を早く出しなさい。……はぁ? 忘れてた? 仕方ないわね。ほら、教えてあげるから。え? 優しい? な、何言ってんのっ? 単純に、まとめて出さないのも、先生に悪いってだけだからっ! ほら、口じゃなくて手を動かす! って、はぁ? 何が可愛いよ。私みたいな女子、どこが可愛いのよ……え、全部? ~~~っ! ほ、ほらっ、早くちゃっちゃとやるっ!』
みたいな若干ツンデレが入った委員長なヒロインを前にした時で一例をば。
「は? こんな露骨に主人公に気がありますよみたいな反応して来ながら、自分は可愛くないとか言うの可愛くね? そんなことあるわけないじゃん!? むしろ、そういうツンデレ込みの委員長はすこです! 超すこです! はぁ~~、マジでこういうちょっとツンツン堅物系眼鏡委員長とか最高すぎっしょ! やっばっ! ふと見せる頬赤らめ+微笑はすこすこのすこなんよー! 委員長! やっぱり委員長がヒロインとして最強……! 異論は認め……いや、認めないっしょ! 委員長サイコーーーーーー!」
と言うような感じになるし、普通に早口になる。
好きなことには早口になっちゃう系の人なので。
『前々から気になってたんですけど、なんで委員長キャラがあんなに好きなんですか?』
「んー? その話? あれ? ウチ、したことなかったっけ? 配信で」
『ないです』
「ふーん? じゃああれかなー。理由は二つあるけど……ん~、一つは恩人。一つは……あー、まあ……贖罪?」
委員長好きギャルないくまは、基本的に明るい。
似たようなタイプとして、はつきがいるが、はつきは天真爛漫な元気っ娘なタイプで、こっちは陽の気が強い明るさと言えよう。
違うのは、騒ぐか、騒がないけどなんかテンションが高いか、と言う部分。
そんないくまは、基本的に明るいし、その声音もいつも明るく楽しそうであることが多い。
そんないくまの贖罪という単語には、妙な重さがあった。
『あ、なんか重そうなのでスルーでいいっすか……?』
「もっちろん! ってゆーか、ここで話すようなことじゃないしー。ほら、ウチってば、シリアスとか似合わないじゃーん? ならば、ウチは委員長をすこるし、ダンスをする! ってか、それが基本的なウチだし!」
そんな妙な重さを察したファンは、あ、これ地雷、と思ってスルーすることに。
それを受けたいくまは、正解! と言わんばかりのいつものテンションを維持。
まあ、特になんとも思ってはいないが、いくま的にも、ここで言うのは楽しみがゴリゴリ減っちゃうっしょー、とか思ってたりする。
当然と言えば当然である。
「んじゃ、普通に話しよ! 話! んでんで? 健斗っちは何か話題ないの? 話題!」
『健斗っち……』
「うん! ほら、うちって基本的に、名前+っちって付けるしー? あ、嫌だったら止めるけどー」
『全然! ってか、めっちゃ感無量!』
「ならばよーし! んじゃ、健斗っちがしたい話!」
『そうっすね……あ、委員長スキーないくまっちに相談が……!』
「ほほう! 眼鏡委員長という存在をこよなく愛するウチに相談とは、目の付け所がいいっしょ! んでー? 相談って?」
『はい……実は自分のクラスに、眼鏡委員長がいまして』
「なん、だとっ……!?」
『あと、あまり洒落っ気がないので、侮られがちですが、普通に素材がよくて、まあ可愛いんすよ』
「なにその理想!? マ? そんな委員長が身近に? 羨まっ!」
『んでまあ、その、自分結構不真面目系で、提出物の催促をされるんです』
「何そのギャルゲー主人公!? さては健斗っち、ギャルゲーの主人公だね?」
『いくまっち、言葉が変っす』
「気のせいっしょ! ってゆーか、健斗っちの話だって! もしかしてもしかしてぇ、恋愛相談!?」
『あ、まあ、近い?』
らいばーほーむ相手に対する恋愛系の話が多いのはなんなんだろうか。
うさぎでも発生しているし、暁の所でも発生している。
どう考えても、恋愛に強くないだろ、みたいな頭らいばーほーむの集まりなのに、この状況である。
「恋愛! いいねいいね! 学生の恋愛はいいんよー! ってゆーか、委員長系ヒロインが身近にいるとか、それなんてエロゲ?」
これを言うのが、男性ライバーのあいつらではなく、女性ライバーないくまであるという事実。
だてにギャルゲー(エロゲ)配信をしていない。
『どちらかと言えば、ラブコメマンガな気が……』
「気にしなーいの! ほらほらー、ウチはリアルギャルゲー展開をご所望! ちゃっちゃと、吐いていいよー!」
『あ、はい。それで、えっと……なんか、めっちゃ小言を言われるんですよね……こう、ちゃんとやりなさいよー、とか、頑張ればもっとできるでしょー、とかそんな感じで……これって、嫌われてるんですかね? 好かれてるんですかね?』
「ふむ……うん、めっちゃ好かれてるよね、それ」
『そうですかね?』
「そりゃね! エロゲで培ったウチの委員長キャラに対する造詣の深さは相当なもんよー!」
エロゲで培ったことを堂々とリアルで語る辺り、色々と残念である。
「ってゆーか、あれっしょ。健斗っちって、普段あんまりやる気なくて、授業とかで寝てるタイプ?」
『え、なんでわかったんですか?』
「お約束だから」
『お、お約束ですか……?』
「そそ! お約束! だってほら。委員長キャラが好きになるのって、大体そう言うキャラだと思うんよ。本当は頑張ればできるのに、周囲にバカにされてるのが嫌だ、とか、そんな心理状態だと思うんだよね、ウチ」
『なる、ほど?』
「それにさー、やっぱ自分が好きな人がやる気出してないのって嫌だなー、って思うじゃーん? あの人はもっとすごい、カッコいんだー! みたいなね! んで、そう言うのが耐えられなくて、ついついツンツンして小言を言っちゃうわけでね!」
『……あの、なんかやけに具体的じゃないですかね?』
妙に具体的な中身に、本当にエロゲで培ったのか疑問を覚えた男子高校生ファンは、首を傾げながらそれについて指摘。
「気のせー、気のせー! さっきも言ったじゃん? エロゲで培った知識だって!」
『んまあ……そんなもんですかね』
「そんなもんそんなもん! 細かいことを気にしてたら、折角のカッコいい顔が台無しっしょ」
『俺、カッコいいんですかね?』
「平均はよゆーで超えてね? ウチはそう思うよ? 普通にカッコいいし」
『マジっすか』
「マジっすよー」
『なんか照れますね……』
推しにカッコいいと褒められ、後頭部に手を当てながら照れる男子高校生ファン。
いくまの発言は嘘でもお世辞でもなんでもなく普通に本心からの言葉である。
『それで、俺はどうすればいいですかね?』
「そだねー……とりあえず、何でもいいから頑張って見るといいんじゃね?」
『なんでも?』
「そそ! 何でもいい! 勉強でも部活でも、バイトでも! とりあえず、頑張ってる姿を見せればいいんでない?」
『なるほど……!』
「あと、後悔しないように動いた方がなおよし! 学生だからまだ大丈夫ー、なんてのは甘えだし、何かあっても遅いんよ。故に! 健斗っちは今の学生生活を全力でエンジョイすること!」
『はい!』
「ほんと、学生時代の後悔ってのはね、大人になっても引きずるかんね! 今できることは全力でした方がいいしぃ~、その方が100倍楽しい! 学生だからできることを見つけてこなす! これが一番いい学生の過ごし方ってもんよ!」
『なるほど! 勉強になります!』
「ならばよーし!」
『ちなみに今のって体験談か何かですか?』
「…………エロゲの知識に決まってるじゃーん! だってウチだよ? こーんなクソ明るい委員長スキーギャルが、んな体験談を持ってるわけ! ほら、エロゲっていろんな主人公がいるし! 昔のギャルゲーとか、普通にバッドエンドあるし! そーゆーやつからの知識!」
『ほんとかなぁ……?』
一瞬だけ何か間があったような気がしたが、特に表情は変わらなかったし、テンションもいつも通りで話し出したが、やっぱり何かあったような気がして、男性ファンは首を傾げつつ、本当かどうか疑問に思った。
「ほんとほんと! なになに? このギャルゲーマニアギャルのウチを疑うのか~い? なっはっは! なかなかいい度胸だぜー、健斗っち!」
『あ、いつものいくまっちだ。気のせいだったみたいです!』
がしかし、いつものいくまだったので、気のせいと片付けた。
「でしょー? はいオッケー! にしても……エロゲヒロインみたいな眼鏡委員長か……くっ、めっちゃ羨ましい! ウチも会ってみたいな!」
『多分、いくまっちなら気に入りそうな感じです』
「マジ? うっわー、そう言うこと言われると、会いたくなっちゃうじゃーん。ぐぬぬ……ウチの事務所には、委員長系キャラいないしなー」
『たつな様とか、ツンデレちゃんが近いのでは?』
「いや、たつなパイセンは委員長系ってゆーか……王子様系っしょ。デレーナっちとか、ツンデレってだけで、委員長ってほど真面目じゃないと思うしー。おぎゃってるし」
『たしかに……』
「ま! らいばーほーむは全員自由人だし、基本的には委員長属性は向いてないんよね! ウチもそうだし!」
『みたまちゃんは?』
「みたまっちは…………いやあれ委員長ってゆーか……生徒会長とか? なんか似合いそうじゃね?」
『生徒会長ってより、書記とか庶務でほのぼの~ってしそうですけどね』
「あ、そっちかぁ! たしかに、庶務だったら、微笑みながらお茶とか自作したクッキーとか持って来てそー!」
『すっごいイメージ湧きますね』
「でしょー!? でもまー、あれよね。みたまっちは絶対に攻略不可」
『人気投票で1位取っちゃう系のキャラなんだろうなぁ……』
「そこまでがワンセット! ってゆーか、みたまっちに対して邪な感情を持ったら、殺されるしねー。ひかりパイセンに」
たしかに、と男子高校生ファンは苦笑い交じりに頷く。
「って、恋愛相談だっけ! ともあれ、ウチとしては頑張る姿を見せて、告白まで持っていくべし!」
『テンポ早くないっすか!?』
「学生の恋愛なんて、勢いとテンポさえよければいい! 大人でそれやったら、速攻ホテルコースだけどね!」
『男子高校生に何言ってんすか!?』
「でも、大人がメインのエロゲとかそうじゃない?」
『否定できねぇ……!』
「おっとー? 否定しないってことは……健斗っち、さてはエロゲやってるなー?」
『ハッ! 孔明の罠かっ……!』
「勝手に自爆しただけっしょー」
あはは、と快活に笑ういくまは、この後も男子高校生ファンをいじりつつ、エロゲ話に話を咲かせたそうな。
エロゲは18歳未満がやっちゃだめだよ!
学生はコンシューマー版をやろうね!
ないようなら、諦めよう!
はい、いくま編でーす! なんか、ところどころ不穏ですねぇ!
もしかすると、ここからいくまの闇深な部分が察せるかもしれませんね!
さぁ、残ってるのは、刀、シスコン、ロリコン、みたま! なんだこの面子! 刀が一番まともじゃねーか!




