イベント1日目#おしゃべりコーナー:7 いるかの場合:上
普通に普通な普通の話!
みたまのママと、みたまをガチ崇拝してる人と、みたまにある物をぶん投げた人(?)の話は一度切り上げ、再びおしゃべりコーナーの後半戦。
次に出て来るのは……
「ん、こんるか。深海いるか。よろしく」
女版山寺〇一とか、人力ボイスチェンジャーとか、実はお労しい人、とかいろいろ言われてる、三期生のミステリアス系(笑)で元社畜系VTuberの深海いるかである。
『は、初めましてっ! あ、あの、いつも見てます!』
「ん、それは嬉しい。今日は楽しんでくといい」
『は、はいっ!』
そんないるかの最初の客は女性……などではなく、どう見てもショタであった。
「まずは名前を聞かせてほしい」
『南祐樹っていいますっ! えと、中学二年生ですっ!』
「ん、中学生……え、中学生? 中学生が、私の配信?」
『はいっ!』
「なるほど。純粋な目は照れる……」
どこか緊張しつつも、元気いっぱいな少年のキラキラとした眼差しに、いるかは頬を少し赤くさせる。
少年はどうやら中学二年生のようだが、身長的にはどう見積もっても小学六年生程度に見える。
年上受けするような、そんな可愛らしい少年だ。
「でも、本当に運がいい。まさか当たるなんて。けど、チケットもいい値段がしたはず。どうしたの?」
『えっと、お父さんやお母さんが、もし当たったら、お金を出してあげるって言われて……あ、二学期の期末テストでいい点が取れたので、えと、ご褒美にって』
「ん、それはすごい。どれくらいだった?」
『えっと……学年で10以内に入れましたっ』
「なるほど、それはすごい。ん、祐樹は頑張ってる。とても偉い」
10位以内に入ったと聞き、いるかは素直に関心し、同時に小さく笑みを浮かべながら少年を褒めた。
褒められた少年の方は推しから名前を呼ばれて、顔を真っ赤にしていたが。
『ふへ!?』
「ん、どうしたの?」
『あ、い、いえっ、その、お、推してる人から、名前で呼ばれて、びっくりしちゃって……』
「ダメだった?」
『だ、大丈夫でふっ!』
「ならいい。けど、私が推しなのは意外。正直、中学生くらいだと、私よりも、ふゆりかはつき辺りが人気そうなのに。みたまは……万人受けだから除外するけど」
などと言っているが、あながち間違いではない。
はつきはあの天真爛漫なノリと、やたらうるさいのと、クソゲー実況が普通に面白いので、割と中学生に受けている。
あと、なぜか小学生にも受けてる。
おそらく、割と思考が単純だからだろう。
ふゆりの方に関しては、あれである。
単純にエロいから。
ASMR配信自体が普通にエッチな感じが強いため、思春期で、尚且つ親に隠れてエロ動画を見始める年頃の中学生にドンピシャなのである。
というか、学校でふゆりが好き、と言うと、変態~、とからかわれるので、表立って言うようなメンタルを持った男子生徒は少ないが……。
まあ、そのふゆり自身は、普段の言動がアレ過ぎると言うことで、シスコンと並んで、子供に見せたくないVTuberとか言われてるが。
尚、みたまに関しては、あれは存在が反則であり、そもそも年代関係なく愛されるとか言う、前世でどんだけ徳積んだの案件なので、スルーである。
『え、えっと、人生の先輩的な……』
「私が、人生の先輩……? 何かの間違いでは?」
人生の先輩と言われたいるかだが、素直に喜ぶのではなく、普通に、え、私が先輩で大丈夫? という心配が出て来る。
今でこそ、歌配信とか雑談配信、モデリング配信などをしているいるかだが、最初の頃はブラック企業(元勤め先)に対する呪詛の念が籠った配信をしていたわけで。
『で、でも、社会の厳しさを教えてくれましたし……』
「……あっ、ブラック企業」
『は、はい、そうです!』
「なるほど」
『あの、ブラック企業の回避方法ってありますか?』
「中学生の質問が割と現実的……!」
『学生時代はあっという間って聞くので……』
「ん、確かにそれはそう。なら……ん、私からアドバイス」
少年の気持ちを汲み取り、いるかはアドバイスを切り出して……
「とりあえず、アットホームな職場、と書いているところは止めた方がいい。大抵ブラック。そうでなくとも、人間関係が良好じゃない。むしろ良くない」
『な、なるほど……!』
「あと、大抵上司がクソ」
『ふむふむ……!』
「それから、給与がやたら高い所は要注意。あと、仕事内容について特に書かれてない求人も避けるべき」
『なるほど……!』
「あと、ブラック企業の求人は、明らかにこちらを騙そうとする意図が丸見えなので、頑張れば見分けがつく」
『ありがとうございますっ!』
「ん、これくらい大したことない。あとは、ネットで調べることもおすすめ。まあ、今は中学生だし、まだまだ先だとは思うけど」
『そ、そうですねっ。まずは、来年の高校受験に備えますっ!』
「ん、その意気」
自身が知る限りのことを教えつつ、少年を応援。
いるか的には、こういう風に真面目な子供を見ると、ついついまともに先へ進んでほしいと思ってしまうものである。
何せ、自分の今までが今までなので。
生まれてすぐに母親と死別し、その後は男で一つで育てられたし、頑張って高校まで通わせてもらいつつ、その間に学んだと言うか、遊びで始めたモデリングが結果的に仕事に。
給与面もいい企業に入社が決まった時は、父親に泣きながら喜ばれたが……まあ、ブラック企業だったわけで。
普通の人よりも少しだけ人生ハードモードないるかだからこそ、こうして普通に育っている子供を見ると、まともに先へ進んでほしいと思うわけで。
「でも、推しと話すのがそれでいいの?」
『大丈夫ですっ!』
「ならいいけど……まあでも、ブラック企業は精神に悪いので、避けるのは当然。殺意が湧くようになる」
『さ、殺意、ですか?』
「ん、殺意。キャバクラに行きたいがために、自分の仕事をいたいけな新人(私)に押し付けたり、厄介な案件が回って来ると、口八丁手八丁で回避して、それを部下たち(主に私)に押し付けたり、面倒くさいから自分の仕事を自分を振った部下(私)に押し付けたりなどなど、クソ上司というのは、総じて殺意が湧く存在。とりあえず、殺意が湧く上司や、先輩、同期と出会ったら、それをおくびにも出さず、頭の中で殺すとちょっとスッキリする」
『なるほど……勉強になりますっ!』
これが勉強になるとか言っちゃだめじゃない? といるかは心の中で思ったが、すごく純粋な目で見て来るので何も言わなかった。
『でも、いるかさんは、ずっとブラック企業に?』
「ん。大体、高校卒業すぐ。元々、技術だけは平均程度にあったから。けど、ブラック企業だったのでクソ。帰る時間が遅くなる」
『自分の時間は……』
「なにそれおいしいの状態だった」
『わぁ……』
「ん、でも、そのブラック企業のおかげと言えるものがいくつかある」
『そうなんですね! どんなのなんですか?』
「簡単なこと。モデリング技術が向上したことと、クソ上司はさっさと労基に訴える。あと、心の底から嫌いな人との付き合い方」
『なるほどです……!』
自身の話をなんでも素直に聞く少年に、いるかはちょっと心配になった。
自分で言うのもなんだが、これ、教育に悪いことを言っているのではないか、と。
……もっとも、らいばーほーむが教育にいいかと言えば、そんなことは一切ないので、今更ではあるし、気にするだけ無駄なのだが。
「ともあれ、ブラック企業の話をし続けると、私が暗黒面に堕ちるので、この辺りで」
『あ、はい!』
「それで、祐樹は何かしてほしいことはないの? 折角、チケットが当たったし、時間もまだあるから」
『あ、そ、そうですね……じゃあ、あの、声真似を聞きたいですっ!』
「ん、おっけー。何をやる? 何でもできる」
『それじゃあ、えと、えと……あ、セ〇』
「できるけど……チョイスがすごい」
『叫ぶシーンが面白くて……』
「まあ、わかる。それじゃあ……んんっ! ブルァァァァァァァァ!」
『んぶふっ!』
さっきまでの、ややダウナーな感じの声から一転して、どこかの人造人間なキャラクターの声を出し、それを聞いた少年は思いっきり噴き出した。
『あはっ、あはははははっ! え、ほ、本当に、にっ、似てますっ……! ど、どこからその声っ……!?』
「私の喉」
『す、すごすぎますっ……あははっ』
少年、大爆笑である。
お腹を抱えて笑っているので、いるかとしてもとても気分が良かった。
というか、ここまで笑われるとは思ってなかったので。
「他にもあるけど、やる?」
『じゃ、じゃあ……あ、みたまちゃんの真似ってできるんですか?』
「………………できる、けど、極力やってない」
みたまの真似ができるかどうか尋ねられたいるかは、苦い顔を浮かべながらやや間を開けてからやってないと告げた。
『どうしてですか?』
「……世の中には、厄介ファンと言う者がいる。具体的には、天空ひかり」
『あっ……』
名前を出しただけで中学生に察せられるくらいに、シスコンの悪名……もとい、名声は届いているようである。
色々と酷い。
「ひかりさんに声真似を披露したら、ものすごく指導が入った。なので、いない時にやってる」
『でも、今はおしゃべりコーナー中ですよ……?』
「祐樹はわかってない。シスコンは……たとえこの距離であっても、みたまの声を聞き取っている。おそらく、この瞬間もみたまのおしゃべりコーナーに耳を傾けつつ、自身の所を訪れたファンに向かってみたま教を布教してるはず。あの人、多分脳が二つあると思う」
『ひかりさんならそうかも……?』
否定されないひかりである。
邪神シスコンは伊達じゃない、と言うことなのかもしれない。
尚、その肝心のひかりだが……まあ、うん。
「ん、なので、ひかりさんがいる状況で、みたまの真似はある意味命知らず。私が死ぬ」
『な、なるほどです……じゃあ……あ、リリスちゃんはできるんですか?』
「ん、モーマンタイ。じゃあ、リクエストはそれでいい?」
『はいっ!』
「それじゃあ……こほんっ! ――今宵も我の配信に来てくれてありがとうなのじゃっ! 我は心の底から嬉しく思っておる! ……ん、こんな感じ」
咳ばらいを一つした直後、いるかの口から、一期生のロリピュアの片割れたるリリスの声が飛び出した。
しかも本人と間違えるレベルでそっくりである。
『ふわぁ~~~!』
そんな声真似を聞いた少年は、さっきの某人造人間の時とは打って変わって、それはもうキラキラとした目をいるかに向けていた。
こう、尊敬してます! みたいな、そんな感じの目である。
「リリスは基本的に、簡単な部類」
『そうなんですね!』
簡単な部類、といるかは言っているが、リリスの声真似は実は難易度が高い。
天然の可愛い系のロリボイスで、みたまとは違ったタイプの方面だし、何より本当に子供に近いのに、普通に聞きやすいとか言う声なのだ。
実際の子供の声と言うのは、声が高めなので騒ぐと耳にちょっと来るのだが、リリスにはそれが一切ない。
あと、リリスの声帯だが、実は小学生の頃からほぼ変わっていない。
元々の声質が良かったとか言う、天然物である。
それ故に、リリスの声真似は惜しい所までは行くと言う人がいるものの、そっくりというほどの真似ができる人はいるかくらいの物である。
とまあ、そんなわけで声真似ができない存在であるため、本職の方も順調というわけだ。
いかにいるかの技術がおかしいかわかるだろう。
というより、男の声が出せる時点で色々とおかしいと思われる。
『あっ、もうすぐ時間……』
「そう言えば。ん、なかなかに早い。やはり、10分はあっという間」
『ですね……』
「祐樹は二日目のチケットは?」
『一日目しか……』
「ん、それは仕方がない。なら、明日は配信で楽しむといい。私のステージは多分面白いと思うから」
『あ、それはすっごく楽しみにしてますっ!』
「ん、ならいい。それじゃあ、今日は来てくれてありがとう」
『はい! こちらこそ、ありがとうございましたっ!』
「――バイバーイ☆」
『んふっ!?』
いつもの無表情+某シスコンの声によるバイバーイボイスにより、少年は笑いのツボを刺激され、しばらく笑ったそうな。
この後も、様々ないるかファンは、三期生の他のファンたちが来たが、もれなくいるかの人力ボイスチェンジャーの餌食になった。
7回目はいるかでしたァ! 二人くらいやろうとしたら、普通に一人で十分なくらい書けてたので、いるかは一人です。余談ですが、いるかって実は年下受けがいい。男女関係なく。
あと、微妙にリリスの本職が見え隠れしてますね! なんなんでしょうね!
さて、明日から私はユミアのアトリエに専念するんで、お休みィ! なので、次は月曜日だよ! ごめんねェ!




