#117 時間が過ぎて、抽選発表
いやもう、11月はやることがなかったのでクッソすっ飛ばしてます!
体育祭が終わって、平穏な日常が訪れました。
らいばーほーむのライバーとしても活動しているけど、最近はなんてことないごくごく普通で、穏やかな配信をして、気が付くと11月も終わりに。
本当は途中で藍華お姉ちゃんと配信をしようと思ってたんだけど、思いの外タイミングが合わなくて……それで、ようやくタイミングが合う日が出て来て、それが12月2日。
出張みたま家事サービスをする予定です!
色々と準備はできていて、事前に食べたい物も訊いたし、クイズも出してあるからね。
ちなみに正解でした。
「おはよー」
その日はいつも通りに朝起きて、いつも通りに学園への通学路を歩いて、いつも通りに教室に登校してきたんだけど……。
「神よぉぉぉぉ! 御身の力を我が身ィィィィ!」
「頼む! 俺はここで一生分の運を使い果たしてもいい! だから頼んだぞ、幸運の女神よォォォォ!」
「ハァ、ハァ……当たれば天国、外れれば地獄ぅ……私は絶対に天国へたどり着くぅぅぅ!」
「もしも自分以外に当たった人がいたら……何をするかわからないっ……!」
教室内はすっごく殺気立っていました。
え、えーっと……なんだろう、スマホを見てすっごくお祈りしている人がいっぱい……。
神様に頼むほどのことって何があるんだろう?
何かあったっけ?
「あ、椎菜ちゃん、おっはよう!」
「桜木ぃ! おはよう!」
「あ、うん、おはよー。えと、みんなどうしたの?」
僕に気が付いた人が僕に挨拶して来たので、挨拶を返しつつ、何があったのか尋ねていました。
だって、血走った目でぶつぶつと手を握ってる人もいるもん……ちょっと怖い。
「おはよう」
「おっはよー!」
「あ、柊君に麗奈ちゃん、おはよう!」
「あぁ……って、なんだ、この異様な光景は? いつからうちの教室は教会になったんだ?」
「お、おおぅ、すっごいお祈りしてる人がいっぱい。うちってミッション系の学校だったっけ?」
「いや違う! だが、今日ばかりは祈らなければならぬぅ……!」
「おうよ……今日勝つか負けるかが、今後の俺たちの人生を左右すると言っても過言ではない……」
「……未成年の賭け事は違法だぞ?」
『『『ちげぇよ!?』』』
「だが、勝つか負けるかで人生が左右されるんだろ? なら、ギャンブルくらいしかないと思うんだが……」
「柊君、さすがにそれはどうなんだろう……?」
少なくとも、それ以外にもあると思うけど……。
僕たちはまだ二年生だから、受験っていうわけでもないし……うーん?
「あー、そっか。二人はこっち側には関係ないもんねぇ」
「ん? 朝霧は何かわかるのか?」
「僕もよくわからないんだけど……」
「椎菜ちゃん、高宮君。今日はほら、らいばーほーむのイベントの当選発表の日だよ」
「「……あぁっ!」」
麗奈ちゃんに答えを言われて、僕と柊君はすっごく納得しました。
あ、そう言えば、当選発表って今日だったっけ。
言われてみれば、今日が近づく度にみんなすっごく真剣だったと気がするかも。
「規約で複垢での応募は禁止だったからな……まあ、そりゃそうだが。故に、一発勝負……!」
「宝くじで一等を当てるよりかは現実的だ……つまり、勝てる!」
「倍率、えらいことになってるからなぁ……」
「相当数いるって話は聞くよね」
「桜木、その辺どうなん?」
「ふぇ? んーっと……去年の十倍以上らしいけど……」
『『『もうだめだぁ……おしまいだぁ……!』』』
「なんでぇ!?」
なぜかみんなが四つん這いに項垂れちゃいました。
この世の終わりみたいな反応だけど、なんでそうなるの!?
「おらー、席着けー、HRするぞー……って、なんだお前ら!? 桜木と高宮、朝霧以外全員なんで死にそうな顔なんだ!?」
「先生……なんかもう、勝てる気がしないので、今日は早退していいっすか……」
「……私も、もう無理……」
「今日という日を乗り越えられる気がしない……」
「……あー、高宮、説明」
「らいばーほーむのイベントの抽選発表が今日なので、全員死んでます」
「なるほど、理解した。……まったく、お前らもか」
柊君に説明するように振って、柊君が簡潔に説明をすると、先生は呆れ混じりにやれやれと肩をすくめていました。
「お前らも? せんせー、他にも死んでる人がいるんですか?」
「まあな。というか、うちの学園のほとんどがそうと言っても過言じゃない。職員室も正直雰囲気がヤバかった……誰かがチケットを当てよう物なら、殺人が起きるんじゃないか、私はそう思ったね」
「この学園、やっぱりおかしいだろ」
「少なくとも、らいばーほーむのライバーが二人出てるような学園だぞ。今更だ」
『『『否定できねぇ……』』』
遠回しに、僕がおかしいって言われてるような気が……。
き、気のせいだよね! そうだよね!
「まあ、なにはともあれ、さっさとホームルームだ。というか、抽選発表は12時だろ? まだ時間があるだろ?」
「それでも! 心の準備がッ! あるんですッッ!」
「先生だって、気になるでしょうよ!?」
「んまあ、私も気になりはするが……仕事は仕事、プライベートはプライベートだ。いいか? 仕事と私生活を切り分けられない奴は、社会に出ると苦労するぞ。それが例え、自分の推しに会えるかもしれないと言うチャンスがあったとしても、だ。とはいえ、人間には感情もある。だからまあ、それでも難しいようならもういっそ堂々としていろ。今日みたいな日は許されると思うぞ。教師によっては怒られるだろうが、そんな風にふざけられるのも学生の内だけだ。今のうちにふざけて怒られとけ。ある意味、いい思い出になるからな」
『『『先生、マジカッケェ……』』』
すごくいいことを言ってるのかもしれないけど……それはそれでどうなんだろう? 先生が言っていい言葉なのかな?
「なのでまあ、とりあえず席には付け。HRは聞き逃してもいい。それに、連絡らしい連絡もないしなー。あるとすれば……仮にチケットを当てたとしても、赤点を取ったらクリスマスは学園で補習授業になるっていう連絡だけだしな」
『『『HR、おねがいしますッッッ!!!』』』
「はは! それでこそ、学生だ。それじゃ、連絡事項を話してくぞー」
今日も平和です。
◇
HRが終わると授業になるわけだけど……。
「この時の心情が……こうなるわけだな。それで……」
「先生、チラチラ時計を見ても、時間は進みません」
「高宮、俺は正論が嫌いだ」
「教師が何を言ってるんですか!? しかも、現国の!」
現代文の授業では、担当の先生がチラチラと時計を見て、柊君がツッコミ? を入れると先生がなぜか先生とは思えない反論をしてきて、
「あー、もうなんかめんどくさい。今日の授業、自習でいい?」
「先生、さすがに俺たちの将来にも響くので普通に授業をしてもらえると」
「お前はなぜ、ノリの悪い生徒になってしまったんだ、高宮」
「俺は悪くないと思うんですが!?」
数学の先生になぜか呆れられて、
「ぶっちゃけ、今日の学校、普通に休校でよくない?」
「あの、すみません、VTuberのイベントに行けるか行けないかがわからなくて学校を休校にするのは問題があると思うんですが」
「私は仕事よりもVTuber!」
「絶対に教師が言っちゃいけないセリフだと思うんですが!?」
歴史の時間ではそんな一幕があったりして……。
そうして、四時間目。
「よーしお前ら。12時まで、まともに授業するぞ」
「先生、最後まで授業は真面目にやってください」
「うるさいぞ高宮! 世の中にはなぁ、勉強以上に大事な物があるんだよッッ!」
「少なくともVTuberのイベントの当選発表よりは大事だと思うんですが!?」
『『『高宮校舎裏な』』』
「なぜ!?」
やっぱり柊君が真面目に言うも、みんなに色々言われてました。
なんというか……らいばーほーむに所属している僕からすると、本当に人気だなぁって思う反面、みんなのことが心配になっちゃいます……。
趣味があるのはいいことだし、熱中できるものがあるのもいいことだけど、それが理由で他が疎かになっちゃったら本末転倒な気が……特に、将来に繋がる高校でのお勉強なわけだし……。
僕自身は、まだ進学するか就職するかで迷ってます。
VTuberとしての活動は続けるつもりだけど。
二年生もあと四ヶ月で終わっちゃうんだし、そろそろ本格的に決めないとなぁ……なんて、現実逃避気味に授業を受けていると……もうすぐで12時になるという時間に。
「よーしお前らー、覚悟の準備はいいな?」
『『『できてないですッッ!』』』
「バカ野郎! 覚悟準備はいつでもしてるもんだ! まあ、先生もできてないがな!」
「頼むっ……俺はこの日のために、善行を積みまくったんだ……!」
「神様仏様みたま様、私に幸運を……!」
「頼む! 幸運の女神ことみたまちゃん! 俺に力をォォォォ!」
「おねがいします! みたまちゃん!」
あの、なんでみんな僕にお祈りしてるの……?
僕、神様じゃないよ!?
一応、みまちゃんとみおちゃんの二人が神様ではあるけど……。
で、でも、幸運は振りまいてないような……?
「よーし12時だ! お前ら、スマホ見ろスマホ!」
「普通、スマホを見るな、が正しい言葉のはずなんだがな……」
「まぁ、今日ばっかりはねぇ……」
なんて、両隣にいる柊君と麗奈ちゃんがそんなことを言い合ってました。
あ、実はつい最近席替えをしていて、今は僕の左側に柊君、柊君の左側に麗奈ちゃんが座っています。
運が良かったんです。
でも、柊君はなぜか、
『このラブコメ主人公野郎ッッ!』
って、クラスの男子のみんな言われてたけど……。
どういう意味なんだろう?
どちらかと言うと、柊君は少女マンガな気がするけど……カッコいいし。
「すぅーー……はぁーーーー……よし、見るぞッッ……!」
「これで終わってもいいっ……!」
「幸運を俺にィ!」
などなど、みんなすっごく真剣に、それでいて震える手でスマホを開く。
あの、今授業中だけど……。
と、僕が苦笑していると、教室の外……というか、学園中で阿鼻叫喚な声が響いて来ました。
というか、隣のクラスもすごいことになってる気が……。
そんなに行きたいんだ……僕もそう思っていると、こっちのクラスでは、
「ノォォォォォォ!」
「さらば、私の人生……」
「もうマジ無理ィ……死ぬしかない……」
という風に、スマホを見たほとんどの人が崩れ落ちていました。
よく見れば先生もすごく虚無みたいな顔に……。
「なんと言うか……酷いな」
「いやぁ、地獄絵図」
「あれ? 麗奈ちゃんは応募してないの?」
柊君がクラスの光景をみて苦い顔をしていると同時に、麗奈ちゃんも地獄絵図なんて感想を零していました。
ふと、麗奈ちゃんが特に一喜一憂した様子がなく、いつもの麗奈ちゃんだったので、応募してないのか訊いてみることに。
「んー? したよー」
「どうだったの?」
応募してたんだ。
「これ」
結果を尋ねると、麗奈ちゃんはスマホの画面を見せてきました。
『当サイトをご利用いただきありがとうございます。朝霧麗奈様にお申し込み頂いたチケットをご用意いたしました。お申し込み内容をご確認の上、支払期日までにお手続きください』
簡潔にではあるけど、麗奈ちゃんが見せてきたスマホの画面にはそう表示されていました。
「わっ! 麗奈ちゃんすごい!」
「運がいいな……」
「あたしもびっくり」
しかも、三期生なんだ。
ちょっと嬉しいかも。
もちろん、僕が当たるとは限らないし、寧々お姉ちゃんや藍華お姉ちゃん、千鶴お姉ちゃんかもしれないけど。
「しかし……こうして見ると、死ぬほど当たってる奴がいないと言うか……これ、まだ見てない奴もいるが、最悪の場合朝霧くらいじゃないか?」
「みたい、だねぇ。ねえこれ、あたし殺されない?」
「どうだろうな……」
「そう言えば柊君は?」
「……あー、俺はする意味がないからなぁ」
「そうなの?」
「そうなんだ。ちょっとな」
「へぇ~、ということは例の件?」
「……正直、声を大きくして言えないが、まあ、そうだな」
「そう言えば柊君、日曜日に行ったんだっけ?」
「まあなぁ……なんか、すごい歓迎されてたが」
「あの人が一番喜んでそうだよね」
「……そう、じゃなくて、実際に喜んでるみたいだぞ」
「そっかー」
なんて、僕たち三人はクラス内の阿鼻叫喚な状況をよそに、そんなことをお話していました。
考えてみれば柊君は四期生になることが決まってるわけだもんね。
もしかすると、らいばーほーむの方からチケットを貰ってるのかも。
「ヤッタァァァァァァァ! 当選してるゥゥゥゥゥゥ!」
「何ィ!? テメェ、なに当ててんだゴラァ!?」
「フハハハハハ! 負け犬の遠吠えは気持ちいいZOY!」
「あ、私も当たってるっ……! 今日は素晴らしい一日過ぎるっ……! もう死んでもいい!」
「え、じゃあチケット貰っていい?」
「コロス」
「どうやら、朝霧だけじゃないみたいだな」
「これで、殺意が分散するね!」
「麗奈ちゃん、それはそれでどうかと思うよ……?」
結局、僕のクラスでは麗奈ちゃんを含めて、三人が当たりました。
◇
「おーし、帰りのHRするぞー……って、おいおい、死人が多すぎるだろう。まあ、見る限り、当たらなかったみたいだが」
「当たらなかったですよ畜生ッッ!」
「SNS見たくねぇ! 見たくねぇよぉ……」
「絶対当選報告してる人ばかり……」
「絶対にトレンド入りしてそうだけど……うぅっ」
帰り支度をみんなすませてはいるものの、すごく悔しそうにする人ばかり。
よく見れば泣いている人もいるし、人によっては表情が抜け落ちてる人も……あの、すごく心配になるんだけど……。
「それで? 当たった奴はいるのか?」
「朝霧と田中、佐々木が当たってます」
「あぁ、ありがとう高宮。なんだ、お前は当たってないのか?」
「諸事情で応募してないんです」
「へぇ、諸事情ねぇ。……まあいいか」
「先生はどうだったんですか?」
「私か? 私はまあ……一日目と二日目両方当たった」
『『『は!?』』』
「一日目は一期生が当たって、二日目は……あー、ロリピュア?」
「んむぐっ!」
先生が当たった物を聞いて、思わず噴き出してしまいました。
「どうした、桜木」
「けほっ、こほっ……せ、先生、来るんですか……?」
「当たったからな。まあ、当日はお前の雄姿を近くで見させてもらうよ」
「ひにゃぁぁぁぁぁ!?」
どこかいたずらっぽく笑いながら言われて、僕は猫のような悲鳴を上げました。
「あぁっ! 桜木が羞恥心で猫に!?」
「考えてみれば、担任の先生にアレ見られるのって、控えめに言っても地獄では?」
「黒歴史になりかねないだろ……」
あぅぅ~~~~! イベント、行きたくないよぉ!
「あと、桜木姉のことも楽しみにしているよ。あぁ、あいつに伝えといてくれ、楽しみにしてるぞって」
「……あい」
「まあ、既にうちのクラスにはバレてるんだ、今更だろう?」
「そうかもしれないですけど……あの、おにぃたま、とか、おねぇたま、とか元男が言ってるんですよ……? それをイベントで、しかも先生に見られるなんて……」
「まあ、地獄だな」
「あぅぅぅ~~~~~っ!」
「大丈夫だ。どうせお前は可愛い。だったら、もういっそ吹っ切れた方が精神衛生上いいだろう」
「いやどう見ても先生が止めを刺してる気がするんですが」
「なかなか言うじゃないか、高宮。とはいえ、当たったは当たったし、私は25日には有給を入れるとしよう。というわけだ、お前らも腐ってないで、さっさと帰るように」
『『『はーい……』』』
「ここまで覇気のない返事は初めてだよ。特に桜木な」
「……恥ずかしいですぅ……」
ちょっぴり、イベントに行きたくなくなった僕でした。
はい、11月の後半は丸々カット。
前書きにある通り、マジで書くことがないんですよ、この辺。
それに、このままのペースだとイベントや四期生が出るのが相当先になっちゃうし、何よりネタが思いつか――ゲフンゲフン。ちょ~~~っと出すのが大変なので、もういっそ飛ばしてしまおうと。
あと、私が大分我慢できなくなってきたってのもあるし、12月とか結構やることが多いからそれもある。11月は犠牲になったのだ……。
なんて、まあ、そんな感じ。
次回から12月!
あと、多分ですがらいばーほーむの事務所側の視点を書きます。主に、抽選とかオーディション関係で。




