#106 体育祭当日、仮装リレーに不安を覚える椎菜
そんなこんなで、体育祭の前日に。
今日はお姉ちゃん、らいばーほーむのイベント告知配信に出なきゃいけないっていうことで、今はらいばーほーむの事務所の方に行っています。
大変だなぁ、なんて思うけど、来年、僕も似たようなことをやるのかも、なんて思うと、あまり他人事じゃない気が……なぜか、僕の登録者数が一番多いみたいだし……。
で、でも、まだVTuberとしてはまだまだだからね! 多分ないよね!
うん、大丈夫……!
「おかーさん、なにしてるの?」
「……ん、ごはん、たべました、よ?」
「これ? これは明日のお弁当の仕込み。ほら、体育祭だからね、明日は」
「「たいーくさい?」
「うん、体育祭。学校のみんなで、運動をするんだよー。二人だと、来年かな? 運動会って言うんだけど」
「「おー」」
「それで、明日はみんな来るから、そのためのお弁当作り。朝は僕早く行っちゃうし、折角みんなも来るし、みまちゃんにみおちゃんも来るんだから、美味しい物を作ってあげたいなって」
「たのしみ……!」
「……たのしみ、ですっ」
「ふふ、でも、これは明日だからね~。つまみ食いはダメだよ~?」
「「むぅ……」」
つまみ食いはダメと言うと、二人はちょっと残念そうにしました。
うんうん、子供っぽくていいと思います。
「まあ、明日のお昼になれば食べられるからね? ね?」
「「……はーい」」
「うんうん、二人はいい子だね~。そんな二人にはご褒美があります」
「「(ぴょこんっ!)」」
しゅんとする二人に、ご褒美があると言うと、二人は耳と尻尾を立てて、期待した目を僕に向けてきました。
みおちゃんが来てから、みまちゃんとみおちゃんは、お家の中では耳と尻尾を出したままにするようになりました。
なので、感情表現がわかりやすくなってます。
嬉しいと、尻尾がぶんぶんしたり、耳がぴょこぴょこするからね。
あと、すごく可愛いです。
……僕も耳と尻尾はあるけど、あれは毎回変身しなくちゃいけないからね。
「というわけで、はい、デザートのプリンです」
僕は冷蔵庫の中からあらかじめ作っておいたプリンを二人の前に出しました。
「ぷりんっ!」
「……(ぶんぶん)」
あ、すっごく見てる。
僕と同じで甘いものが苦手だけど、一部は好きみたいだしね。
僕もプリンは大好きです。焼きプリンは苦手だけど……表面の部分が苦手……。
「僕は仕込みをしてるから、二人は向こうで食べててね~」
「「はーいっ」」
僕がそう言うと、二人は可愛らしくお返事をしてから、とてててっ! と両手でプリンが乗ったお皿を持ってテーブルの方へ行きました。
いそいそと並んで座って二人は美味しそうにプリンを食べ始めました。
「「おいひぃ~~……」」
「「ごふっ……!」」
二人が幸せそうな表情を浮かべると、お父さんとお母さんがなぜか倒れたけど……た、多分大丈夫、だよね? うん、大丈夫のはず。
「さて、僕は仕込みを終わらせちゃおっと」
プリンに夢中になってる内に、僕は鼻歌交じりにお弁当の仕込みを終わらせました。
◇
それから翌日。
朝の五時に起きて、お弁当を完成させる頃には、六時に。
同時に朝ご飯も作って、先に僕はお家を出ました。
「それじゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい。お母さんたちは、九時ごろに行くからね」
「「いってらっしゃいっ」」
「うん、行ってきます。二人は、お母さんたちの言うことをよく聞くようにしてね?」
「「はーいっ」」
「二人をお願いね、お母さん」
「もちろん! 大事な孫だもの。椎菜も気を付けてね」
「うんっ」
そんな風に言葉を交わしてから、僕はお家を出ました。
今日は体育祭ということもあって、制服じゃなくて体操着での登校が許されていて、ちらほらとジャージ姿で登校する人が。
僕も今日は制服じゃなくてジャージで登校しています。
楽だし、スカートはだいぶ慣れて来たとは言っても、それでもまだその、恥ずかしいなぁ、って思う時もあるので。
やっぱり、ズボンの方が気分的に落ち着きます。
あと、僕のジャージの上はだぼっとするくらいに大きいのだったり。
元々、少し大き目の服が好きだったと言うのもあるけど、今の体だと胸が大きくて視線がすごいので……。
でも、大きい服を着れば、わからないから気にしなくて済みます。
そう言えば、そろそろ冬服も買わないとかなぁ……。
最近の十一月は暑いとはいえ、やっぱり十二月になると寒くもなるしね。
暑いのよりも寒いのが得意とは言っても、まだこの体がどれくらい寒さに強いのかわからないもん。
あ、どうせならお姉ちゃんと一緒に買いに行こう。
一緒にお洋服を買いに行こうって約束したけど、まだ行けてないし、配信の時にも一緒にお出かけしようって言ったし……うん、それがいいかも!
あ、そう言えば藍華お姉ちゃんに、家事サービスのことを聞くの忘れてた……。
うーん、次の土日にしようかなぁ。
なんて、頭の中のことが二転三転している内に、学園に到着。
いつものように教室へ向かう……わけじゃなくて、今日はこのままグラウンドの方へ。
体育祭前日に、椅子をグラウンドに並べてあって、今日一日そこだからね。
荷物がある人は一度教室に行くけど、無い人はそのまま自分のクラスの場所へ。
「おはよ~」
「あ、椎菜ちゃんおっはよー!」
「おはよう、椎菜」
「二人とも、今日は早いんだね?」
「まあね! 楽しみだったから!」
「そうだな。全体の祭りとなると、学園祭と体育祭が一番だしな」
「そうだね」
二年一組の場所へ行くと、いつもより早く着ていた柊君と麗奈ちゃんの二人がいて、挨拶しながら僕が近づくと、二人が真っ先に挨拶を返してくれました。
「そう言えば椎菜、知ってるか?」
「突然どうしたの?」
「知らないならいいといえばいいんだが……まあ、いいか。椎菜の性格的に考えても、割とノリノリになりそうだしな……」
「????」
「あー、その、だな……椎菜って、コスプレ、興味ある、んだよな?」
「ふぇ? あ、うん。あるし、その、好きかなぁ、って感じはある、よ?」
「椎菜ちゃん、今日の仮装リレーで着る服、わかってる?」
「ううん? まだ知らないけど……」
そう言えば、採寸だけして何を着るかまだ知らないんだよね、僕。
けど、麗奈ちゃんと柊君の二人は何かを知ってるのかな? ちょっと微妙な表情、だもんね。
「え、えっと、もしかしてちょっと恥ずかしかったり……?」
「あー、いや、どうだろうな……あれは多分、ミス・ミスターコンテストを見たからってのもありそうだしな……」
「あたしたちは知らないけど、すっごくカッコいい動きをしたって話だもんね」
「あ、あははは……その、見様見真似だったけど、ちょっとだけ」
「それが出来るくらいには技術と身体能力があるってことなんだがな。というか、愛菜さんはどこまで椎菜に仕込んでるんだよ」
「でも、柊君もお姉ちゃんに教えてもらってるんだよね?」
「……俺の場合は教えてもらってると言うか、叩き込まれる(物理)だけどな」
そう言う柊君の表情は、どこか遠くを見つめていました。
お姉ちゃん、そんなに厳しくしたの……?
あと、物理って何?
「ねぇ、高宮君。椎菜ちゃんのお姉さんって、そんなにすごいの?」
「すごいと言うか……化け物?」
「化け物じゃないよ!?」
「いや、あの人は化け物だ……少なくとも、様々な武術の歩法をキメラ合成させて新しい歩法を編み出すくらいにはバケモノだ。しかもあの人、半年間しか武術を学んでないっぽいのが余計に酷い」
「ほわぁ~~、それはたしかにすごいねぇ」
「というか、何度ボコボコにされたことか……あと、椎菜が今の姿になってからは、かなり熱が入るようになったしな、愛菜さん。ただでさえなかった容赦が更になくなった気がしてなぁ……」
教えてもらってる時のことを思い出してか、柊君がさっき以上に遠い目をしていたし、その声にはどこか諦念のようなものが混じっていました。
「あの、ごめんね? 柊君……」
お姉ちゃんがそんなにしていたとは知らなかったので、お姉ちゃんの代わりに謝ると、柊君は苦笑いを浮かべました。
「いや、気にしなくていいよ。俺も別に嫌ってわけじゃないからな」
「へぇ~、きつそうなのに?」
「あぁ。俺自身も自衛が出来るようにはなったし、何より体力なんかも付いたしな。……実際、本当に自衛になった場面が何度あったことか」
「柊君、普段何があるの……?」
「あー……今は落ち着いたが、嫉妬と欲望に駆られた男子が突如として暴徒と化したことがあってな。まあ、なんとかなったが」
「あの、柊君本当に何があったの……?」
「気にするな。気にしたら負けだ」
「そ、そう、なんだ」
「高宮君も大変だねぇ」
「……ま、今は色々と晴れて、減ったけどな」
何が晴れたんだろう?
けど、本当に僕がいない時の普段の柊君ってどんな生活してるんだろう……。
「ところで、仮装リレーのコスプレがどうかしたの?」
「ん、あぁ、それなんだが……まあ、あれだ。頑張れ」
「何が!?」
「大丈夫だよ椎菜ちゃん」
「麗奈ちゃん?」
「露出は少ないから」
「あの、不安になるよ……?」
「まあ大丈夫大丈夫! 椎菜ちゃんなら似合う!」
「本当に大丈夫なのかなぁ!?」
無理矢理押し通そうとしてる感じがあるよ!?
本当に僕の衣装ってどうなってるの!?
二人の反応を見てると、すっごく心配になるよぉ!?
「大丈夫だ。恥ずかしさの方向性が違うから」
「結局恥ずかしいの!?」
「ダメだよ、高宮君。言い方がちょっと悪いよ?」
「あぁ、たしかにそうだな。悪いな、椎菜。言い方が間違っていた」
「え、あ、じゃあ、恥ずかしくない?」
「人によっては黒歴史を抉られるかもしれないが、大丈夫だろう」
「どういうこと!?」
「主に、一定の年齢の時にそれをしていた場合は特にな」
「どういう意味!? ねぇ、本当に僕の衣装って大丈夫なの!?」
「大丈夫大丈夫!」
し、心配になってきたっ……!
仮装リレーでどういう衣装を着るのか、本当に心配になって来たよぉっ……!
「とはいえ、そう言う系の種目は基本的に後半だからな。たしか……昼休憩後じゃなかったか?」
「そのはずだねぇ。前半は主に、短距離走と普通のリレーだったかな?」
「なら、前半で出るのは俺だけか。スウェーデンリレーだしなぁ」
「そういえば柊君だけだよね。僕と麗奈ちゃんは、後半の種目しかないし」
「いやぁ、やっぱり体育祭ならイロモノ種目の方が参加してて楽しいよね!」
「ちょっとわかるかも……」
普通の短距離走とかリレーの種目よりも、僕たちが出場するような種目の方が参加してて楽しいよね。
去年の体育祭もそうだったし。
もちろん、普通の種目が楽しくないわけじゃないし、なんでも楽しいけどね。
「そう言えば、今年もやっぱり応援団衣装の人もいるんだね」
「だねぇ。ああいうのって、応援される側はすごく元気が出るよね! あたしも、応援されると嬉しいし!」
「応援は力になるからな。どうだ? 椎菜も参加するか?」
「ふぇ!? ぼ、僕なんかが応援してもあまり喜ばれないような……?」
「何を言ってるの椎菜ちゃん! 椎菜ちゃんの応援とか、最強だよ! むしろ、あたしだったら応援されるだけで普段の三倍は早く動ける自信があるよ!」
「麗奈ちゃん、僕に応援されると全身が赤くなるの?」
「そのネタ、椎菜は知ってるのか……」
「なんとなくで?」
赤いのって、三倍速く動けるイメージがあるよね。
「とはいえ、椎菜が応援したらしたで、本当にクラスメートの全員がとんでもない働きをしそうだけどな……」
「ふぇ?」
「だねぇ……リミッター的なアレが外れそう。あたしも外れると思うけど!」
「???」
「っと、もうすぐ開会式が始まりそうだな。それじゃ、そろそろ移動するか」
「あ、うん」
「はいはーい!」
ともあれ、体育祭楽しみ!
今日は目一杯楽しんで、いい思い出にしないとね!
三日ぶりです! 地獄から舞い戻ってきました!
まあ、地獄とは言っても、大して辛くもなかったし、布団の中でスマホゲーしたり動画見たり、アニメ見たりしてたんですけどね。熱も38.8が最高でしたが、なんてことなかったのでね! まあ、そんな中で書こうとして、強い眠気に襲われて断念しましたが……。
あと、休んでる間、マジで続きが書きたくて仕方なかったっ……!
ともあれ、復帰したんで、また投稿していきます!
あと、今日は15時ごろにおまけをぶん投げておきます!
内容としては、ライバーたちのプロフィール的な物でも書こうかなと。会話形式で。




