#79 帰宅後、家族団欒
家族団欒でほのぼの。
配信を終えて、うさぎおねぇたまに見送られながらお家へ帰宅。
外は暗くなっていたから、かなり心配されたけど、いざとなったら本気で逃げるので大丈夫です!
もちろん、何もなかったわけだけど。
電車に乗って、美月市に戻って来て、お家まで歩く。
なんてことないけど、平日のこの時間に出歩くのって、かなり不思議。
学園での一日が終わった後って、お買い物をしてから帰って、そのまま家事だからね。
こうしてそう言う目的もなく外にいることがすごく新鮮で不思議な気分。
なんて、そう思いながら歩いていると、お家に到着。
ガチャ、と扉を開けて中へ入ってから鍵を閉める。
「おかーさん、おかえりなさい!」
僕が中に入ると、みまちゃんがとてとて! と走って来て、小さく微笑みながら僕に抱き着いて来ました。
「ただいま、みまちゃん。いい娘にしてた?」
「うん、みま、いいこにしてた」
「そっか。偉いね~」
「えへぇ……」
抱き着いたままのみまちゃんの頭を撫でると、みまちゃんは嬉しそうに破顔しました。
表情自体はまだまだ薄いけど、それでも笑顔がわかるくらいには笑ってくれるので、見ていて安心。
表情が変わらないのって、結構心配になっちゃうもん。
みまちゃんの場合、神様だし、生まれたばかりだしで、かなり特殊だからね。
生活していく内に、もっと表情豊かになるといいなぁ。
「お姉ちゃんたちは?」
「んーと……ねてる?」
「寝てるの? どうしたんだろう。体調でも悪いのかなぁ」
そう言えばお姉ちゃん、なぜかコメントが打てないような事態になったみたいだし、何かあったのかも。
ぎゅっと抱き着いたまま離れないみまちゃんに自然と笑みを零しながら、リビングへ行くと……。
「「「( ˘ω˘)スヤァ」」」
そこには、血だまりに倒れ込み、すごく安らかな顔で倒れている、お姉ちゃんたちの姿が……って!
「な、なにがあったの!?」
すごく安らかなんだけど! すごく血がいっぱいなんだけど! すごく死んじゃってるんだけど!?
「へ、へへっ……お、おか、えり……し、椎菜ちゃん……み、みまちゃんは、い、いい娘、だったぜ……ぐふっ」
「大丈夫!? というか、本当に何があったの!?」
「……か、可愛い、が、わ、私をな、亡き者にしよう……と……ガクッ」
「お姉ちゃん!? 本当に大丈夫!?」
「……れ、レバニラを……」
「え、夜ご飯食べてないの!?」
「……へ、へへ、み、みんな、し、死んだ、から、ね……へへへっ……」
「な、なるほど。え、待って……? みまちゃん、ご飯は食べた?」
「んーん、たべてないよ?」
「えぇ!? い、急いで作るね!?」
まさかのみんな夜ご飯を食べてないと言う事実に、僕は大慌てでご飯を作りに行きました。
あ、お掃除もしないと!
◇
「はむ、はむっ……おかーさんのごはん、おいしー」
「ふふ、そう言ってくれると嬉しいよ」
「おかーさん、おかわり」
「うん、ちょっと待っててね」
しばらくして夜ご飯が出来上がり、テーブルでは僕以外のみんなが夜ご飯を食べていました。
「いやぁ、助かったよー、椎菜ちゃん。お姉ちゃん復活!」
「やっぱり、椎菜の料理はほっとするわ。あと、レバニラが染みる」
「そうだなぁ。お父さん、料理上手な娘を持って嬉しいぞ」
と、三人はパクパクとレバニラ炒めをご飯と一緒に食べていきます。
いい食べっぷりだけど……。
「てっきり、お母さんが作るのかと思ってたんだけど……どうしたの?」
「椎菜の配信を見ていたみまちゃんが可愛すぎて、ちょっと幸福が溢れだして失血を……」
「お父さん、死ぬかと思ったよ。可愛すぎて」
「やっぱり、みまちゃんは最高に可愛いよ椎菜ちゃん!」
「そ、そうなんだ。でも、みまちゃんは幼いんだから、せめてご飯を用意してほしかったかなぁ……まあ、僕もお家にいなかったことも問題と言えば問題なんだけど」
「はむ、はむ……んっ。おかーさん、どーしたの?」
「あ、ううん、何でもないよ~。いっぱい食べてね」
「うん!」
あぁ、みまちゃんの笑顔、すごく癒されます……。
小さい子供が、美味しそうにご飯を食べる光景はすごくいいと思います。
これが、癒し……!
「なんというか、久しぶりに家に帰ったら、随分と華やかになったなぁ……」
「そうねぇ。椎菜がすごく可愛らしい女の子になった挙句、こんなにも可愛い孫が出来ちゃったもの。うんうん、食事時が華やかで、お母さん嬉しい」
「私は椎菜ちゃんだけでも最高だったけど、みまちゃんもいいよね! お姉ちゃん、可愛い姪が出来て最高ってもんです!」
三人とも、すっかりみまちゃんを気に入ったみたいです。
それにしても、お父さんとお母さん、僕が女の子になっても、すぐに受け入れちゃったけど、本当にすごいと思う。
普通は困惑すると思うんだけどなぁ……。
あ、でも、電話で報告をした時は困惑され……てなかったね。どちらかと言えば、すごくこう、テンションが高くなってた気が。
「あ、そう言えば二人って、しばらく休みじゃん? その後はどうするの? また海外?」
「いいえ、元々今回の仕事はもう終わったから、もう海外には行かないわ」
「そうだな。やることはやったし、あとは向こうでどうとでもなるくらいにはなったから大丈夫だ。……というか、こんなに可愛い娘と孫が出来て、今更海外に行くとか無理! お父さん、寂しくて死ぬッ!」
「そうそう! お母さんも愛する椎菜や、孫のみまちゃんと会えなくなるとか耐えられないっ! それに、家族だもの。元々、二人には……特に、椎菜には迷惑をかけたもの。これからは、一緒よ」
「お母さん……うん、僕も嬉しいです!」
僕が高校に進学する頃に二人は海外に行っちゃったからね……。
だから、かれこれ一年半以上直接会ってなかったわけで。
でも、今後は一緒に暮らせるみたいですごく嬉しいです!
やっぱり、家族で一緒にいるのが一番だよね!
「そっか。それで、いつまで休み?」
「そうねぇ……少なくとも、年内中は家でゆっくりするつもりよ。あぁ、お金の心配はしないでいいわ。今回の海外出張でかなりいい成果を出せたから、その分の追加ボーナスがあるからね」
「そうだぞ。お父さん、家族の為に頑張ったからな!」
「お父さんすごいね!」
「そうだろうそうだろう! いやぁ、椎菜に褒められると言うのは、やはり気持ちがいい物だな!」
「それ、私が褒めたら気持ちよくないってこと?」
「愛菜は……ほら、もう大人だからな。というか、下手をしたら俺より稼いでるよね、愛菜」
「えー、そうでもないけど?」
「いいや、稼いでるね。全く、愛菜はどうしてこうも才能の塊みたいな存在になったんだか」
「突然変異じゃない?」
「愛菜、それはそれでどうかと思うわよ?」
「でも、それ以外言いようないよね?」
「「それはそう」」
「でしょ?」
「あははっ」
うん、こういうやり取りも本当に久しぶり……。
お父さんとお姉ちゃんが変な言い争い(?)をして、そこにお母さんが混ざる、そんな感じの光景。
僕はいつもにこにこと笑顔を浮かべながらその光景を見るのが好きでした。
今度からは、この光景にみまちゃんも入ると思うと、胸がぽかぽかと温かくなります。
……なんだろう。
この体になってから、いつも普通じゃないことばかりだったから、久しぶりにこうしてなんてことのない家族団欒になると、すごく沁みます……。
「ごちそうさまでした」
「あ、お粗末様です」
「おかーさん、おふろ……」
ご飯を食べ終えるなり、みまちゃんがくいくいと僕の服の袖を引っ張りながら、お風呂に入りたいと言って来ました。
「あ、やっぱり一緒に入るんだね……」
「みま、おかーさんといっしょがいい、から」
「……そっか。うん、じゃあ、一緒に入ろっか」
「うん!」
みまちゃんは幼いし、一人で入らせるのもすごく心配だしね。
それに、僕がお母さんであることは間違いないみたいだし……大人になるまでは、ちゃんと育てないとね。
……そもそも神様に、大人になるってあるの……?
(((うちの娘(妹)と孫(姪)可愛すぎない……?)))
なんて、三人が鼻血を出しながら、微笑ましそうに見ていることに、僕は気付きませんでした。
◇
それから二人でお風呂に入って、出て来るとみまちゃんは眠そうにうつらうつらとしていました。
「みまちゃんは、髪の毛を乾かすよ~」
「んん……」
髪の毛を乾かすと言うと、みまちゃんは眠そうにしながらもすとん、とソファーに座りました。
脚を揃えて、手をお膝に乗せてるのはすごく可愛いと思います。
僕はドライヤーのスイッチを入れると、みまちゃんの髪の毛に温風を当てて、髪の毛を乾かしていきます。
「みまちゃんの髪の毛はすごく綺麗だね~」
「おかーさんも、きれー……」
「そうかな?」
「ん……みま、おかーさんのかみ、すごくすき、だよ?」
「そっか、ありがとう、みまちゃん」
「……んぅ~~」
優しく髪の毛を乾かしていると、みまちゃんが気持ちよさそうな声を漏らしながら、こっくり、こっくり、と舟をこぎ始めちゃいました。
どうやら、かなり眠くなっちゃったみたいです。
まあ、無理もないよね。
今ってもう十時前だし、みまちゃんは七歳くらいの女の子とはいえ、本当に生まれたばかりの神様だもんね。
とりあえず、早く終わらせて、ベッドに行かないと。
「うん、終わり! みまちゃん、今度は僕の髪の毛を乾かさないといけないから、お膝で寝てる?」
「ん~……ねりゅ……」
「じゃあ、おいで」
「ん~…………すぅ……すぅ……」
「ふふっ、本当に眠っちゃうのが早いなぁ……」
僕のお膝に頭を乗せるなり、すぐに眠っちゃったみまちゃんに笑みを零しながら軽く頭を撫でると、嬉しそうに小さく笑いました。
はぅ~……可愛い……。
「それじゃあ、僕も早く髪の毛を……って、お父さんお母さん!?」
「「( ˘ω˘)スヤァ」」
髪の毛を乾かそうとしたら、テーブルに突っ伏してなぜか血だまりに沈んでるお父さんとお母さんが目に入りました。
今度は何が!?
というか、お掃除したばかりなんだけど!?
「いやぁ、さっぱりした~っと……って、二人が死んでる!? 椎菜ちゃん、一体何が!?」
「な、何もしてないよ!? その、僕がみまちゃんの髪の毛を乾かしてる間にああなっちゃったみたいで――」
「なるほど理解した」
「今ので!?」
お姉ちゃんっておかしくない!?
「あと、私も二人の気持ちがわかる! あ、椎菜ちゃん、二人の方は私で何とかするから、乾かし終わったらみまちゃんを連れてすぐに寝ちゃっていいよ!」
「え、あ、いいの……?」
「もちろん! というか、この私が椎菜ちゃんとみまちゃんの仲睦まじい母娘のやり取りを邪魔するとか……死罪ぞ?」
「そんなに重いの?!」
「それくらい重いのです」
「そ、そう、なんだ……!」
「というわけだから、早く乾かして、一緒に寝てあげてねー」
「あ、う、うん! ありがとう、お姉ちゃん!」
「いいってことよ」
ここはお姉ちゃんの厚意に甘えて、ささっと髪の毛を乾かしました。
……とは言っても、僕の髪の毛って長いから、それなりに時間はかかったけど。
本当は切りたいなぁ、なんて思ってるんだけど、お姉ちゃんが、
『それはダメッ! た、確かに、椎菜ちゃんのショートカットも可愛いとは思うけど! けど! ロリにはロングッ! というか、椎菜ちゃんはロングが一番似合う! あっ、で、でもっ、黒髪ショートカットとか言う和風美幼女も捨てがたいっ……い、いやっ! 椎菜ちゃんはっ、ロングこそ至高ッ……! だから、ロングでッ、ロングでお願いしますッッッ……!』
ってすごく懇願してきたので、切らないようにしています。
お姉ちゃん……。
と、そんなことを考えている内に乾かし終えた僕は、みまちゃんをおんぶしました。
「じゃあ、僕は先に寝るね。おやすみなさい!」
「はいはい、おやすみ!」
それからお姉ちゃんにおやすみを言ってから、リビングを出て自分のお部屋に移動。
その際後ろから、
『ふっ、耐えたぜ……ごはぁぁぁっ!』
なんていう音が聞こえて来たけど、気のせいだよね!
自分のお部屋に移動した後は、ベッドにみまちゃんを寝かせてから、僕もベッドに入る。
すると、もぞもぞと動いたみまちゃんが、ぎゅっ……と、無意識ながらに抱き着いてきて、ちょっと見悶えそうになりました。
「ふふ、おやすみなさい、みまちゃん」
本当に好かれてるなぁ……そう思いながら、僕はみまちゃんの頭を撫でて、気が付くと眠りに落ちていました。
やっぱり、ロングが一番いいよね!
あとこう、TSっ娘はロングが一番好きです。というか、まあ、私のヒロインの好みが『銀髪ロング』で『低身長』なんですけどね。黒髪も好きと言えば好きですが。だが、私は銀髪、もしくは白髪好きだ。
だからみたまモードを出したみたいなところはありますけどね、これ。
みまが絡むとほのぼのとするなぁ。




