第16.5話 正妃と側妃
詳しい解説は後書きにて‼︎
その日、わたくしは宰相カエサルからリヴィット様の退位が決まったことを告げられた。
退位の理由はリヴィット様の政策により、この国が滅びかけてしまったため。
確かに……それは退位に値するわね。
て、その程度で済むなんて……とっても優しい処分だわ。
本来なら、処刑でもおかしくないのに。
「そう。分かったわ」
「………あっさりと、認められるのですね」
「元々、退位する予感はしていたのよ」
リオンの件を知ってから、退位するのはそう遅くないだろうと思っていた。
流石にこんなに早いとは思っていなかったけれど。
「側妃はなんて?」
「………あの方は……リヴィット様が隠しておられるので」
「あぁ、そうだったわね」
側妃は大事に大事に仕舞われている。
だから誰も手を出せないし、何も知らない。
「わたくしとリヴィット様達の住む場所は離して下さるんでしょうね?」
「勿論です。どうせ、リヴィット様は狭い世界でお二人でいたいでしょうし」
「…………なんでもいいわ。わたくしは、わたくしの人生を生きるだけよ」
もう正妃という重荷を背負わなくていいなら、静かな別荘で静かに暮らしたいわ。
日々を穏やかに、ゆっくりと。
花を愛で、刺繍をし、詩を読む。
そんな日々。
大人になったあの子達の子を、愛でるような老婆になるのも良いかもしれないわね。
「ヴィーナ様?」
「…………準備が出来次第、わたくしはお兄様の領地の別荘に参ります。良いわね?」
「………畏まりました」
全てを失くすことになるけれど、わたくしの心はとても軽やかだったわ。
*****
ワタシは、こんなところにいたい訳じゃないーー。
アタシの名前はリシャラ。
竜皇リヴィット様の側妃であり、番だ。
だけど、今のアタシは閉じ込められた鳥みたいで。
リヴィット様に愛されるのは、嬉しい。
強い雄の番になることは、獣人の雌達の誉れだから。
でも、自由がない。
大きな部屋。
この部屋だけで生活はできるけど、つまらない。
鍵は開かないし、リヴィット様には敵わないから結局出られない。
息子のリオンには小さい頃、離れてから会ってない。
約十五年?
あの子はマトモな大人になったのだろうか。
「リシャラ」
「リヴィット様」
部屋に入ってきたリヴィット様は、呆然としながらワタシを抱き締める。
どうしたんだろう?
「どうしたの?」
「退位することに、なった」
「そうなのか?」
ということは、リヴィット様は竜皇じゃなくなる?
なら……。
「リオンとも暮らせるようになるのか?」
「それは……」
リオンと離されたのは政治的な理由だと聞かされていた。
だから、皇帝じゃなくなればリオンと暮らせるようになるはず。
ワタシは嬉しくなってリヴィット様に抱きついた。
「嬉しいぞ‼︎」
「…………すまない、リシャラ……」
「……………リヴィット様?」
「リオンとは、暮らせない」
ワタシはそれを聞いて固まってしまった。
どういうことだ?
「わたしは、監禁されることになる。リシャラも共に、だ」
「………どうして?」
「どうしてもだ。それに、リオンはもう皇族でなくなった。だから、一緒に暮らせない」
「リオンが、皇族じゃ……なくなった?」
つまり、リオンには会えない?
なんで?なんで?
「君はわたしの番だ。だから、離れられない。離れたらわたしは狂う。ゆえに君はわたしと共にいてくれなきゃいけない」
「………どうして……なんで?」
「仕方ないんだ。どうか、わたしと共にきてくれ……でないとわたしは……」
弱々しく震えるリヴィット様。
ワタシは、そんな彼を見てほぼ無意識に抱き締めてしまう。
強い雄なのに、弱いリヴィット様。
弱いのは嫌なのに、どうしてか慰めてあげなきゃいけないという気分になる。
「リシャラ……リシャラ……」
「大丈夫だ、リヴィット様。ワタシが共にいる」
そうだ、リヴィット様がこんなになるなんて珍しい。
あぁ……いつだったか、バァ様に〝雄だって生きているから弱ることがある。それを支えるのが妻の仕事だ〟って聞いた気がする。
なら、ワタシはリヴィット様を支えなきゃ。
「大丈夫だぞ、リヴィット様」
ワタシは彼の背中を撫でる。
あれ……そういえば、誰のことを考えてたんだっけ?
まぁ、いっか。
今大事なのはリヴィット様なんだから………。
(お前が知能が低いタイプの獣人で良かったよ、リシャラ)
リシャラは獣人として、獣よりで……知能や記憶力が著しい代わりに身体能力が高いタイプです。
なので、外に出さず自分だけのモノにしたいリヴィットに、上手く丸め込まれて監禁(リシャラはそんなに深く考えられないから、時間が経てば気にならなくなる)されてます。
まぁ、歪な夫婦ってことですね‼︎
……あれ?監禁って……リヴィットがヤンデレか?




