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 カタログから取得した物は多岐にわたる。

 まず服、下着類。

 体を洗ったりするとき用の水を入れたりするなど様々なことに使えそうな桶。ルー君とロウ君用にも小さな小桶を2つ。

 大小のタオルを数枚と石鹸。残念ながらシャンプーやリンスはなかった。

 これからの事も考えて食器類を数点。

 ルー君の硬皮のコートの裂けた部分を直す為にソーイングセット。

 その他諸々を取得して魔法の鞄に入れてみたけど、全部入らなかったので『空間容量増加+10』を2つほど追加で取得。


 『空間容量増加+10』は幾何学模様の描かれた四角い箱でした。

 これをどうしたらいいのだろうと思ったけれど、ルー君が魔法の鞄を前足でぽんぽん、と叩いていたので箱と鞄を接触させてみたら……。


「えぇ……」


 鞄が箱を食べちゃった。

 別に鞄が口を開いて箱を食べたわけじゃない。鞄に箱が吸収されてしまったのだ。

 もしかしてと中に入ってないかと調べて見たけど入っておらず中身が広くなっていた。どうやら拡張はこうやって行うらしい。

 もう1つも食べさせて中がもっと広くなったのを確認して残っていた取得物を入れる。


 全部入るのを確認してもう少し余裕を持たせておこうともう1つ取得して食べさせた。

 全部入れたのは確認のためで、私用の桶やルー君達用の小桶やタオルや石鹸なんかは出しておく。あと食器も。


「さて今日こそ水浴びをします!」

「きゅー!」

「ホォ!」


 実のところルー君とロウ君は泉の水で勝手に水浴びしていたりするが軽く浴びる程度だ。

 本格的に石鹸を使って今まで溜まった垢を全部落とすのだ!


 皮のローブと大き目のタオルを枝にかけて目隠しを作ってから水浴びをする。ルー君とロウ君は男の子だからね。ちゃんとしないといけません。

 かるーく汚れを落としてから石鹸を使って泡を目いっぱい立ててごしごし、と洗っていく。

 数日間はお風呂に入っていないし、水浴びしたのも本当に水浴び程度のものでしかない。

 きっと垢が溜まっているだろうと思っていたけど別にそんなことはなかった。

 トイレが必要ない体になったからだろうか老廃物もあまり出ていないのだろう。

 ごしごし洗ってもあまり汚れないタオルで、それでも全身を隅々まで洗ってみればやっぱりさっぱりする。

 あーお風呂入りたい。


「さぁ、ルー君ロウ君! 洗い終わったかな!?」

「きゅ?」

「ホォ!」

「……なんで泥だらけなの?」


 私が隅々まで自分の体を洗っている間になんとルー君とロウ君は泥んこ遊びをしておりました。

 まぁ彼らは男の子ですし、なんとなく泥があったらやりたくなってしまうんだろう。うん、きっとそう。

 だからそんな円らな瞳で小首を傾げたり、ころころ首を回したりしてもだめ!


「もう! ちゃんと綺麗にしないとだめでしょ!」

「きゅ、きゅぅ~」

「ホォ~」


 その後は2人をとっ捕まえて隅々まで綺麗にしてあげました。


 最初は石鹸を嫌がったけど、次第に慣れていって最後は気持ちよさそうにしていたので次からは何の抵抗もない事でしょう。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 さっぱりしたあとはご飯です。

 さっそく取得した食器類に油揚げを載せてあげて完成。なんとも味気ない……。


「うーん……。やっぱりお鍋やコンロがほしいね」


 油揚げをおいしそうに食べている2人には悪いけれどやっぱり私的には油揚げそのままというのは微妙だ。

 せめてもうちょっと何か作りたい。

 でも色々取得したせいで残りの『魔力総量』は995しかない。

 お布団セットも欲しいし、鍋やコンロ、フライパンや菜ばしやお玉なんかを取得するともうほとんど残らなくなってしまう。

 あぁ……またお布団セットが遠のく……。


 あ、ルー君が飛び出した。


「お疲れ様、ルー君」

「きゅ!」


 『敵』がなんだったのかはわからないけど戻ってきたルー君は残りの油揚げを美味しそうに食べ始める。

 今ので20増えたから一応1000は超えたけど……。

 うーん。とりあえず『敵』を倒して魔力を溜めないとだめかな。

 ここを拠点として歩いて回って少しずつでも先を確かめて戻ってくる。

 歩き回れば『敵』に遭遇する確率は飛躍的に高まるし、待っているよりは早く魔力も溜まる。


 でも長時間の探索はしないで戻ってきたら少し運動をしようと思う。

 長い長い通路を歩いて思った事だけど、私は運動不足気味……とまではいかないけどもうちょっと運動した方がいい。

 いや決して体を洗った時にちょっと思うところがあったとかじゃないよ!?


 ……とにかく、これからはここを拠点に少し探索しつつ魔力を溜めて、戻ってきて運動をする!


「――というのはどうかな、2人とも?」

「きゅーい!」

「ホォ? ホホォ」

「え? 別に太ってない? あ、ありがとう……」


 なんだかちょっと慰めのお言葉をいただきました。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








「ぎゅぅぅ……きゅ!」

「……うぅいったーい!」

「ホォ!」


 方針を決めて動き出したのはいいのだけど……。

 新たに出てくるようになった『敵』が辛いです。


「きゅぅ~」

「ルー君、お疲れ様……。はぁ……あれどうにかならないかなぁ」

「ホホォ」

「ロウ君はいいよねー。足輪がバリア張ってくれるなんてずるいー」

「ホホホォ!」


 そう、ロウ君の足輪はなんと『敵』の攻撃に対してバリアを張れるのだ。

 でもそれは『敵』の攻撃がロウ君にまで届いているということ。

 つまりは私の肩の上にいるロウ君に届くという事は私にも届いているということで……。


 相手は大きなコウモリ。

 このコウモリはルー君の射程外から超音波のような攻撃をしてくるみたいで、それがとても痛い。特に耳が。ていうか耳が。そういえば耳しか痛くない。

 ルー君の射程に入ってしまえば一撃で燃やせるんだけど、その間にどうしても1回は攻撃を受けてしまう。

 あまりルー君から離れすぎるのも考え物なのでどうしても攻撃を私も受けてしまう。

 もちろん私だけじゃなくて、接近しているルー君も攻撃を受けている。

 でも今のところはすぐに痛みもなくなるし、ルー君も元気そうだから大丈夫かな? それでも痛いのには変わらないので嫌なものは嫌だけど。


「うぅ……私もバリア欲しい……」

「きゅぅ~」

「ホホホホォ!」


 1人上機嫌のロウ君にじと目を向けてちょっとむくれるがクールなロウ君はどこ吹く風だ。

 すでに巨大コウモリとの遭遇は5回目。

 こいつはウサギやネズミよりも少しだけ魔力が多いようで、コボルトと同じ25入手する事ができるみたい。

 でも無傷とはいかないのでコボルトの方が楽だったかも。

 今更上の階層に戻るのも大変だし、進むとどうしても巨大コウモリは出てくるみたいなので仕方ない。


 今は拠点としている安全地帯への通路の先を探索中だ。

 コウモリは意外と短い間隔で天井に留まっていたので、それほど進んでいないのに何度も戦闘になっている。

 このペースだと魔力は溜まるけど痛みでどうにかなっちゃいそう。


 『気配探知』に引っかかるまでもなくまた巨大コウモリを発見。

 ルー君もすぐ気づいたので3本の尻尾を逆立てて警戒態勢だ。

 でも巨大コウモリは今のところこちらが近づくまで何もしてこない。他の『敵』と違って発見即突撃的な事がない。でも射程に入れば攻撃してくる。


「きゅ!」


 何度も巨大コウモリと戦ってわかっているけど、ルー君の射程外からの灯火はあっさりと避けられる。

 結構な速さでとんでいく灯火なのにあのコウモリは避けてしまうのだ。

 だから仕方なく巨大コウモリの射程内とわかっていても近づいて灯火を撃たなくてはいけない。

 射程内に入れば攻撃してくるので避けられない音波攻撃をどうしてももらってしまう。

 1度放たれた音波攻撃は私達にも届いてしまう。

 多分余波だと思うんだけどそれでもかなり痛い。もっと近くで受けているルー君はもっと痛いんだと思う。だから私が音を上げてはいけない。


 何度も戦ってわかったことは他にもある。

 巨大コウモリはルー君の有効射程外の灯火は避けられるが、射程内なら避けられない。

 ルー君の射程が上がればもしかしたら攻撃を受けることなく倒せるのではないだろうか。

 でもどうやったら射程をあげられるのかがわからない。


「ぎゅうぅぅ!」

「いたっ」


 痛みと引き換えに巨大コウモリが燃え尽きて粒子となる。

 うぅ……痛い。


「……ルー君、ご苦労様……。大丈夫?」

「……きゅぅ~」

「今日はこの辺にして戻ろうか……。あっち側ならコウモリも出ないんじゃないかな?」


 近くで何度も攻撃を受けているルー君は私達よりも辛そうだ。

 すぐに元気になるけど、やっぱりルー君が傷つくのは見たくない。

 今は無理せずコウモリが出ない方を探索するべきだろう。でももう1つの直線の通路にもコウモリがいたらどうしたらいいんだろうか。被弾覚悟で突き進むか、ルー君の射程を上げる方法を見つけるか。


 ……絶対後者かな。


 安全地帯はすぐそこだけど、帰り道で巨大ネズミを1匹倒してから戻った。



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