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外伝 39歳主婦/26歳無職

――39歳主婦――



 お昼はいつも面倒だからインスタントで済ませていた。

 朝と夜はきちんとバランスを考えて作っているけれど、お昼は私だけだから気にする必要もない。

 キッチンの棚から選んだチリトマトのカップラーメンにお湯を入れて2分半に合わせてあるタイマーのスイッチを押した……と思ったらここに居た。


 目の前には光り輝く文字で書かれた『ルール一覧』?

 ……疲れているわね、わたし。

 いつの間にかに眠ってしまっていたのね。きっとこれは夢。

 そう、明らかに宙に浮かんでいる石版のようなそうでないようなよくわからない材質で出来た『ルール一覧』が夢だと物語っている。


「ふぅ……」


 癖になった溜め息と一緒に最近凝りが酷くなっている肩をトントン叩く。

 『ルール一覧』にはバカらしいことが書いてある。

 でも確かにカタログ? は足元に落ちている。

 拾って開いて見ればゲームによくあるようなスキルが書かれている。

 これが便利なスキル? バカバカしい。


 わたしならこんな『消費魔力』の設定はしないわ。これじゃ完全にクソゲーじゃない。

 いやだからこそわたしの夢なのか。

 わたしはクソゲーが大好きだ。たけしの挑○状やドラゴン○レア、スペラ○カーに星をみ○ひとetcetc。全部完全攻略している。

 だって職場結婚して主婦になって、子育ても終わって子供ももう14歳になって手を離れてる。つまりは……暇だったんだもの。


 もう1度言おう、わたしはクソゲーが大好きだ!

 クソゲーはいい。クソゲーはクソゲー足る所以がある。だからこそわたしはクソゲーを愛する。

 この夢はわたしの夢だからクソゲーだ。

 決まってる。まずクソゲーだ。


「クソゲーならやる事は1つよね」


 わたしは今きっと獰猛な笑みを浮かべている事だろう。

 主人にも子供にも絶対見せないわたしだけのわたし。


 さぁ、クソゲーの時間だ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「しいいいいいねえええええええええッ!」


 真っ赤な血は出ない。緑の血も出ない。

 緑の肌して何の血も出ないのは笑える。さすがクソゲー。愛すべきクソゲーだ。


「アハハハハッ! 弱い! 弱すぎ!」


 ゴブリンを壁に投げ捨てて光の粒子になるのを見届けてカタログを開く。

 まだ魔力は足りないわね。次は『肉体活性』が欲しいのに。

 銅の短剣は血ではなく油でそれなりに汚れている。血がでないのになぜ油が? まぁ考えるだけ無駄。だってクソゲーだもの。そういうもの。


 ゴブリンを倒すたびにエプロンで油を拭っているからエプロンが酷いことになってる。

 近所の佐藤さんがお奨めしてくれた花柄のくそエプロンが酷いことになっている。ざまぁみろ。


 油がなくなったら次の獲物を探すために通路を走る。

 足が速くなって走ってる間はなかなか疲れなくなるスキル――『疾走』があるから次の獲物はすぐに見つかる。

 ハイドアンドキルなんて無理。だってクソゲーだもの。

 『疾走』でつけた勢いをそのままに脳天に短剣を叩き込んで、すぐさま膝蹴りをかまして勢いそのままに刃を引き抜く。

 獲物が倒れる前に回し蹴りを食らわせて壁に叩きつければ終了だ。やっぱりクソゲー。


 さぁ次の獲物よ、え・も・の!







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 このクソゲーが始まってから2日目。

 取得したスキルは『短剣術Lv2』、『疾走Lv1』、『肉体活性Lv2』、『短剣知識Lv1』、『棒術Lv1』、『棒知識Lv1』。

 Lv1も『消費魔力』がそこそこ高かったけど、Lv2はLv1が笑えるくらい必要だった。さすがクソゲー、バランスなんてくそ喰らえね。

 一体ゴブリンとコボルトの脳天に何回短剣突き立てたと思ってるのかしら。

 おかげで銅の短剣は今使ってるので3代目。青銅の短剣を取得するくらいなら壊す前提で銅の短剣の方がいいに決まってる。

 銅の短剣の2倍の『消費魔力』でも耐久値が2倍あるとは思えないわ。だってクソゲーだもの。


 ただ『棒術Lv1』を取ってからは『樫の棒』で殴り殺してるから短剣の出番は減りつつある。短剣のリーチの短さは反撃を許してしまうと、防具を取得していないわたしには面倒くさい。

 この夢はクソゲーの癖に『ルール一覧』に書かれていたように痛いのよ。

 軟膏を塗っておけばすぐ治るけど痛いのよ、このクソゲー。

 だからリーチを取った。防具? 何ソレ、クソゲーにいるの?


 また1匹側頭部を殴りつけて壁に叩きつける。止めはねじ込むようにして叩きつける棒の先端。

 光の粒子になって消える獲物を見ずに部屋から伸びる通路を睨み付ける。


 コレ絶対ボスよね!


 ゴブリンやコボルトじゃ歯ごたえが全然なくてつまらなかったのよ。クソゲーならもっと歯ごたえがなきゃね。


 粘りつくようなナニカにアドレナリンがドバドバ出てるのがわかる。歯ごたえは期待できそう。

 さぁクソゲーなんだからクソゲーらしく……わたしに攻略されなさいッ!




 プレイヤーNo,479 39歳主婦


 取得スキル

 短剣術Lv2 疾走Lv1 肉体活性Lv2 短剣知識Lv1 棒術Lv1 棒知識Lv1


 取得装備

 銅の短剣 樫の棒




 第1階層攻略完了








○●□■○●□■○●□■○●□■







 ――26歳無職――



「キタアアアァァァァアアアッ!」


 目の前に浮かぶ輝く『ルール一覧』。

 明らかに明らかな石造りの部屋。

 オレは間違いなく夢にもみた状況に遭遇しているッ!

 間違いない! 間違いなさ過ぎて、頬をつねるのも忘れて雄叫びをあげた!

 オレは今この日この時生まれ変わったと言えるだろう!


 高校を中退して10年の引きこもりニートはもういない!

 これからオレはチートを引っさげてこのダンジョンを攻略して富と名声を得て奴隷でハーレムだ!


 ……と思っていた時期がオレにもありました。

 カタログ開いたら『魔力総量』が600しかなかった。

 この魔力量では取得できるスキルも限られている。オレのチートどこいった?


「むむむむぅぅ……」


 腹が空かないのをいい事に1日悩みまくった。

 結局取得したのは『短剣術Lv1』、『銅の短剣』。

 もう魔力がほとんどねーや。2つでなくなるって終わってね?

 でも逆に考えれば『敵』から魔力をガンガン集めろってことだろ? ならとりあえずはこの2つで十分だろ。

 引きニートだったオレが『短剣術Lv1』を取得しただけで短剣の扱い方が嘘みたいにわかっちまってるんだ。どうやって振ったら斬りやすいか。どうやって振ったら突きやすいか。

 短剣ってこんな使える武器だったんだな。見くびってたぜ。すまんかった、短剣!


「ッシャアアアアッァア! 行くぜオラァアァ! 待ってろオレの銀髪巨乳犬耳っ娘!

 待ってろオレのスレンダーツンデレ猫耳っ娘!

 待ってろオレの――」







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 第1ダンジョン人発見!


 こちらスネ○ク、これよりミッションを始める!

 第1ダンジョン人は見るからにゴブリンだ。

 あの腰布の下にはきっと女ならどんな種族でもばっちこいな危険で繁殖力旺盛なヤツが居るんだ!

 だが負けねぇよ!

 オレの奴隷っ娘達の為にも光の彼方にきえてなくなれえええぇぇ!







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 いだいだいだいいだいだいいあぁぁぁぁあ……。

 うそだうそだうそだうそだウソダうソダ……。


 なんでゴブリンがこんなに強いんだよ……。お、オレの腕が……。あぁやめろ……それはオレの……オレの……。



 あぁ……なんでオレはゴブリンに無用心に近寄ったんだ。

 あぁ……なんでオレは喧嘩1つしたこともなく、引きニートで体力もないのにダンジョンで戦えるなんて思ったんだ。

 あぁ……なんで……なんで……。



 あ、そうか……短剣じゃなくて……魔法にすれば……よかった……のか。



 プレイヤーNo,597 26歳無職


 取得スキル

 短剣術Lv1


 取得装備

 銅の短剣




 第1階層通路A-1:魔性(妖精種)との戦闘により死亡。



他プレイヤー視点です。

ダンジョン構造及び出現する敵は本編と同様の物となります。

ただし敵の配置や宝箱の配置、中身などは違います。


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『濁った瞳のリリアンヌ』完結済み
お暇でしたらお読みください

『幼女と執事が異世界で』完結済み
お暇でしたらお読みください

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