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伯爵家のメイド 17


3人で屋敷に戻ると、大広間には縛り上げられた男たちがごろごろ転がっていた。

中にはガマガエルとヴァルターもいる。


広間の中央に立っているあの男が能天気に声をかけてくる。


「よお、ごくろうだったな、エレイン。こっちはすっかり片付いたぞ。今、警吏を呼びに行かせたから、こいつらを引き取ってもらう」


「…」


思わずひきつった顔で男を見やる。


「なんだよ。殺してないぜ。全員気絶させただけだ」

ガマガエル親子を含めても、大広間には10数人の男が転がっている。

これを全部倒したのか…。馬鹿みたいに強い。


思わず顔がひきつったのは、剣を肩にかついでふんぞり返っている姿が、まるで山賊の頭みたいだったからだ。とても貴族には見えない。


「エレイン、すまないが、母上を寝室にお連れするから手伝ってくれ」

「は、はい!」

奥さまは緊張の糸が切れたのか、アレンさまの胸の中で気を失うように眠り込まれてしまっていた。

私は、アレンさまに抱き上げられた奥さまに付き添って、寝室へとご案内した。




寝室で奥さまの様子をしばらく見た後、大広間にもどったら、すべて片付いていた。


あの男の姿は、屋敷から消えていた。


やってきた役人に事情を説明していたらしいアレンさまは、私の姿をみると、微笑みながら「預かりものだよ。返してほしいと頼まれた」と、ウサギのぬいぐるみを手渡してくれた。


みると、ウサギのぬいぐるみには黄薔薇の蕾一輪と、手紙がリボンでくくりつけられている。


手紙をみると、



いつか必ずあのキスの続きをしよう。



と、一言だけ書かれていた。

(…馬鹿…)

いつもなら鼻で笑うところだが、あのデカイ男がウサギのぬいぐるみにリボンを結びつけている姿を想像するとおかしくなった。



そんな私の様子を見守っていたアレンさまが言った。


「これから伯爵家は、眼が回るほど忙しくなる。エレイン、手伝ってくれるかい?」

「はい!」

私は、新たな主人に仕えることの喜びと決意を込めて、しっかりと返事をした。




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