78.ウェルパーティー重要任務
第5章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
ブルガンリルム王国で行われる冒険者武道会――【ギルドバトル】。
参加するのは、王国内外から集まった八つのギルド。
ルールは実にシンプル。
――五人による勝ち抜き戦。最後まで立っていたギルドが勝利を掴む。
そして、冒険者ギルド【ルミネスゲート】から選ばれた五人の代表がこちらだ。
元おっさん美少年ワンコ【ウェル・ベルク】。
元公爵家の令嬢であり聖女【リーズ・アクィルス】。
異国シンの武闘家【リン・テンテン】。
かつてウェルを追放した剣士【ビリー】。
そして、鋼のような肉体を誇る拳闘士【ユルゲン】。
――その戦いを見守るのは、元悪役令嬢でありヒーラーのエリス・グランベル。
彼女は今回は観戦役にまわることとなった。
一週間後に控えた大会へ向けて、それぞれが準備を進めていた。
剣を研ぐ音、魔力を整える呼吸、拳を打ち込む衝撃音が、街のあちこちから聞こえてくる。
冒険者たちの熱気が、空気を震わせるようだった。
翌朝。
宿屋の一室に集まった俺のパーティー――エリスお嬢様、テンちゃん、リーズ。
俺はテーブルの前で腕を組み、真剣な顔で切り出した。
「マイホームを購入しよう」
三人が同時に瞬きをした。
マイホーム。
それは、冒険者なら誰もが一度は夢見る言葉だ。
だが実際にそれを手に入れる者は少ない。
冒険は常に死と隣り合わせ。安定した収入などない。家を持つなど贅沢の極み――それが常識だった。
「何を言い出すかと思えば……まだ早いのではないか?」
エリスお嬢様は紅茶のカップを口に運びながら、優雅に首をかしげる。
S級冒険者になれば貴族に列せられ、屋敷が与えられるという。
だからこそ、わざわざ今の段階で家を買う必要はない――エリスの言い分もわかる。
だが俺には、もっと切実な理由があった。
「これからの戦いで、癒しの場が欲しいんだ。帰ってきたときに疲れを取れる……そう、風呂が欲しい!」
思わず身を乗り出す。
異世界に来てから、風呂なんてまともに入ったことがない。
せいぜい水浴び程度。
ぬるい風や夜露に震えながら、肩の痛みと泥を流すだけ。
そんな生活を続けていたら、心まで錆びついてしまう。
「確かにお風呂は欲しいですわね。冬になると風邪を引いてしまいますわ!」
リーズが両手を合わせてうなずく。
「風呂ってそんなに良いものアルか?」
テンちゃんは首をかしげる。
彼女が育った異国【シン】では、湯に浸かる文化があまりないらしい。
「素晴らしいものですわ! 淑女たるもの、湯で身を清めるのは嗜みですのよ!」
リーズは勢いよく立ち上がり、拳を握る。どうやら昨日の冷水シャワーがよほど堪えたらしい。
「妾はどちらでも構わんが……。S級になれば屋敷がもらえるであろう? 今買うのは、少々もったいない気もするのじゃ」
エリスお嬢様は頬杖をつきながら、呆れ半分といった様子。
「確かにそうですが……S級になれるのはいつになるかわかりませんし、S級になってもすぐ貴族になれるとは限らない。それに――家ごと【エクストラテレポート】で移動できる」
ラプラスの使者、暗殺ギルド【ナハト】、そして貴族の令嬢たちが持つ【アリストクラキー】。
この世界は平穏など一瞬で崩れる。
命を賭ける日々の中で、安らげる場所が欲しい。
「【ラプラス】の件や、他の危険が片付くまでは気が抜けません。せめて風呂くらい、心を休める場所を持ちたいんです!」
俺の声に、テンちゃんとリーズが顔を見合わせる。その目に浮かんだのは、同意の色だった。
「お金ならたくさんある。今までの報酬の半分で、良い家が買えるはずだ!」
思い返せば、これまでの冒険で得た報酬は膨大だった。
リザード千体討伐。
オークロードの群れ。
危険度Sランクのヒュドラ討伐。
そしてジェネラルベヒーモス撃破。
さらにリーズの病を治した公爵家からの礼金も加わる。
「そういえば、わたくしの治療報酬はいくら頂いたのです?」
リーズが不思議そうに尋ねた。
「実は――白金貨千枚だ!」
「白金貨千枚!?!?」
宿屋が一瞬で静まり返った。
テンちゃんの目が丸くなり、エリスお嬢様が紅茶を吹き出しかける。
白金貨千枚。
日本円にしておよそ一億円。
「まぁ、そんなに頂いてしまったのですね」
「そんなにって金額じゃないアル!!!」
それは命の恩人に対する、ロッドフォード家の心からの感謝。
そして娘の護衛と旅立ちのための資金でもあるのだろう。
「そういえば、リーズって結局……何者アルか?」
テンちゃんが首をかしげる。俺はエリスとの勝負や騒動で、彼女を正式に紹介していなかった。
「えーっと…リーズは…」
本来は極秘。なので、打ち明けない方針だったが、リーズは静かに微笑んで口を開く。
「ウェル、わたくしから話しますわ」
その声音には、信頼の色があった。
――リーズはリンジー・ロッドフォード。
ロッドフォード公爵家の娘であり、暗殺ギルド【ナハト】に狙われた令嬢のひとり。
そして、【アリストクラキー】を継ぐ者のひとりでもある。
その告白に、テンちゃんとエリスは言葉を失った。
「……なんか、すごい話を聞いたアル」
「まさか、公爵家とはのう……」
エリスお嬢様の緑の瞳が揺れる。
「妾の中にもカギがあるということじゃな?」
「はい。そうなりますわ」
――この場に、二つの【アリストクラキー】が集っている。
残る五人の令嬢たちは、いったいどこにいるのか。
「そうと決まれば、前衛としてもっと頑張るアル!」
テンちゃんの拳がメキリと鳴る。その気迫に、思わず笑みがこぼれた。
「妾も意地でも生き残ってやるのじゃ。リーズ、お主も死なせぬ!」
「もちろんですわ! わたくしも戦える身ですもの!」
三人の声が重なり、宿の空気が少し熱を帯びる。
戦う理由が、確かにここにあった。
守りたいもの。繋ぎたい想い。
それが、俺たちを強くする。
「よし! それじゃあこの一週間で――」
「マイホーム購入!!!」
「そして風呂に入る!!!!!」
全員で叫ぶと、宿屋の天井がビリビリ震えた。
この4人でのウェルパーティー最初の任務、マイホーム購入作戦が決まったのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。




