75.ショタワンコの子供が産まれる!?
第5章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
ブレイブハートでの換金は予想以上に時間がかかると言われた。
何しろ、あれだけの数の魔物だ。査定には一晩どころか、丸一日かかるらしい。
だから俺は、明日また訪れることにした。
「さて、俺はどこで寝ようか」
夕陽が沈みきり、街の灯がぼんやりと揺れる。
人のざわめきと馬車の音が遠くで混ざり合い、どこか心地いい疲労を誘う。
俺は宿を探すか、それとも城に戻るかで悩んでいた。
「宿で寝るのもありだけど、無防備に寝ている女性たちだけを城に預けるのは、ちょっとな…。
とはいえ、男が同じ部屋で寝るのも違う気がするし……いや、二人っきりじゃないからセーフか?」
考えれば考えるほど、どっちが正解かわからなくなる。
けれど、疲れがそれを上回った。
「もう疲れたから早く寝たい…。宿探すのも面倒だし、いっか。城だし、他にも部屋あるだろう」
そう結論を出した俺は、夜の石畳を歩き、城へと戻った。
月光に照らされた白壁が静かに輝き、城門の衛兵が槍を構えて立っている。
「すまないが、部屋はすでに埋まっているんだ」
門の前で出会った兵士が、申し訳なさそうに言った。
彼の肩には包帯が巻かれている。
「魔物との戦闘で負傷した兵士が多くてね。治療は済んだが、まだ体力が戻っていない者ばかりなんだ」
なるほど。
魔物の襲撃で城も大変だったのだ。
「君たちの部屋にソファーを用意するから、それで我慢してくれ」
兵士の誠意ある言葉に、俺は素直に頭を下げた。
「ありがとうございます!」
寝る場所を確保してもらえるだけで十分だ。
だって、城に泊めてもらうなんて本来、厚かましいお願いなのだから。
エリスお嬢様たちが寝ている部屋には、ベッドが二つ。
エリスお嬢様とリーズがそれぞれ使用し、テンちゃんは床に敷いた毛布で寝ているらしい。
兵士と一緒にソファーを運びながら、俺はそっと部屋の扉を開けた。
夜更けの部屋は薄暗く、蝋燭の炎がほのかに揺れている。
「起きないように…そーっと」
俺は忍び足で室内に入り、静かにソファーを設置する。
「ふぅ…ここでいいかな?」
「はい、ありがとうございます」
「では、私はこれで…」
兵士が小さく頭を下げて部屋を出ていった。
扉が閉じる音が、やけに大きく感じる。
「さて……やっぱり女の子を床で寝かせるわけにはいかないな。テンちゃんにソファーを譲ろう」
俺は童貞だが、ジェントルマンの心得はある。
そっとテンちゃんを抱き上げ、ソファーまで運ぶ。
「やましいことはないぞ……やましいことは……」
胸の鼓動を抑えながら、自分に言い聞かせるように呟く。
「これでよし」
テンちゃんをソファーに寝かせると、ふわりと小さな寝息が聞こえた。
安心したその瞬間——
「むにゃむにゃ……」
寝言?
「アタシのお金取るなアルーーー!!!」
ゲシッ!!!!
「ゲロバフ!?!?!?」
思いっきり腹に蹴りが入った。
寝言と反射神経がセットのタイプかよ!?
「むにゃむにゃ……アタシのお金アル……」
……夢の中でも金を守るとは、さすがテンちゃん。
「い、良い蹴りだぜ……テンちゃん……ガクッ」
疲労と蹴りのダメージで、もうどうでもよくなった俺は、そのまま床に倒れて眠りに落ちた。
そして朝。
窓の隙間から差し込む陽光がまぶしい。
「む、朝か……」
目を擦りながら体を起こすと、リーズがこっちを凝視していた。
「きゃあああああああああぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「ふぇ!?!?!?!?」
突然の悲鳴に、俺の心臓が飛び跳ねる。
「…なんじゃ、騒がしい…」
「どどどうしたアルか!?!?」
エリスお嬢様とテンちゃんも飛び起きる。
「ウウウウウウェ、ウェル……わたくしと…寝たのですか!?!?」
いや、その言い方やめて!?!?!?
「ほぅ……妾が寝ている間にそんなことが……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
エリスお嬢様超怖い!!!
背後に黒いオーラが見える気がする!!
「まままままって! 待って!! エリスお嬢様!! 俺は何もしていない! 床で寝てただけ!! ノータッチ!!!」
俺は全力で弁明した。
「い、いえ……わたくしこそ取り乱して申し訳ないですわ……。
しかし、こうなった以上! わたくしは覚悟して子供を産みますわ!!」
…………え???
「いや、待って!?!?!?!?!? 何もしてない!! ほんと!! 童貞!! 新品!! 未経験!!!」
本当に何もしてないんだって!!
「去勢が必要かのう……」
ゴゴゴゴゴゴ……
エリスお嬢様超怖い!!!!(part2)
やめて!!!!
まだ童貞!!!
「いえ、エリス。わたくしは大丈夫ですわ。ウェルは知らなかっただけかもしれません」
いやいや、この空気! 完全に俺が悪者みたいになってるんだけど!?!?
「【殿方と同じ部屋で寝ているだけ子供ができる】なんて……」
……え? 【寝ているだけ】?
「えっと……リーズ? もう一回言って?」
「ウェルと同じ部屋で寝てしまったから、ウェルの子供が産まれてしまいますわ!」
「いや、産まれないからね!?!?!?」
全力でツッコんだ。
「リーズ! 違うアル!」
テンちゃんが口を挟む。
よし! 正しい知識を教えてやってくれ!
「子供はコウノトリが持ってくるアル」
「いや、それも違うからね!?!?!?」
朝から二段ツッコミ!?
「そうですの?」
目をまんまるにして首を傾げるリーズ。
箱入り娘にもほどがある!
「じゃあ、子供はどうやってできますの? エリスは知っております?」
まさかのキラーパス!!!
「ふぇ!?!? と、ととと、ととと……おおお……」
顔真っ赤!! 声ガタガタ!!
……これは知ってるな。
「め、メシベと……お、オシベが……のう……」
めちゃくちゃカタコト!!!! しかもお花の説明!?!?!?
「ってえええええい!!! お主らにはまだ早いのじゃあああああ!!!!」
逆ギレ!?!?!?
「まぁ、子供にはまだ早いなぁ」
俺がボソッとつぶやいた瞬間——
「教えてくださってもいいではありませんこと!?!?!」
「ウェルの方が年下アル!!!」
二人の怒りが爆発。
結局、朝っぱらから騒がしいことこの上ない。
俺は心の中で小さくため息をつきながら思った。
(俺、童貞だけど三十六歳なんだよなぁ……)
——その事実は、今日も胸の奥にそっとしまっておくことにした。
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