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66.認め合う悪役令嬢と聖女

第4部完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 治療勝負の熱気がまだ残る城内。

 その中で、エリスお嬢様とリーズが言い争っていた。二人の頬には疲労と誇りの入り混じった光が宿っている。


「わ、妾が治すのじゃ…!」


「い、いえ! わ、わたくしですわ!」


 二人はフラフラとした足取りで、最後の負傷者へと向かっていく。

 息は荒く、魔力は残り僅か。


 先に手を伸ばしたのは――リーズ。


「わたくしが治しますわ!」


 彼女の声が響いた瞬間、エリスお嬢様は思わず唇を噛む。

 その小さな肩が震え、金色の髪が微かに揺れた。


「く~! ずるいのじゃ!」


 リーズもエリスお嬢様も歩くのがやっとだが、エリスお嬢様は小族の身長、リーズは人族の身長。

 リーズが先にたどり着くのは必然であった。


「これが最後ですわよ!【ディア】! 聖なる加護を、汝の光、癒しを捧げよ。 光魔法【ディアヒール】!!」


 リーズはすぐさま両手を掲げ、光の陣を展開した。その周囲の空気が、淡い金色の粒子で満たされていく。


 眩い光が負傷者を包み、皮膚の裂傷がゆっくりと塞がるが――相手は今までの兵士よりも重症だった。

 胸の中央に深い裂傷が走り、血が止まりきらない。


 光が揺らぎ始める。


「はぁ…はぁ…」


 魔力と霊力をほとんど使い切り、リーズの肩が小刻みに震えた。

 額から冷や汗が滴る。


「あと…少し…あと少しでいいから…!」


 唇を噛みしめ、必死に光を維持する。だが光はゆっくりと弱まり、

 やがて完全に消えかけた――。


「…もう…ダメですわ…」


 意識が遠のく。

 そのとき――


「もっと踏ん張らぬか! 小娘! それではこやつは助からんぞ!!」


 エリスお嬢様がリーズと負傷者の元にたどり着いた。

 血の気の引いた頬を紅潮させ、彼女は負傷者のそばに膝をついた。


「我が名において来たれ光の精霊、生命の雫となる聖なる加護を、汝の光、手中に集い、癒しを捧げよ。

 光魔法【エクストラヒール】!!」


 眩い光がふたたび広間を満たす。

 その輝きは先ほどよりも力強く、まるで太陽のようだった。


「…手を…貸してくださるのですか?」


 リーズが掠れた声で問う。

 エリスお嬢様は眉を吊り上げ、声を荒げた。


「勝負よりも…命の方が大事じゃろうが!!!!!!!!!!!!!」


 その言葉に、リーズの唇が僅かに震える。

 口元がニヤリと歪み、目に光が戻る。


「同感ですわ!!!!!!!!」


 二人の光が重なり、広間が真昼のように明るく照らされた。

 霊力と魔力が渦を巻き、淡く輝く。


「初めて意見があったな小娘!」


「釈ですが、その通りですわ!」


 火花を散らすように笑い合う。


「はああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


 空気が震えるほどの魔力波動。

 周囲の兵士たちが思わず後ずさるほどの眩さだった。


 やがて――

 光が収束し、静寂が訪れた。


 次の瞬間、


バターン!!!!

バターン!!!!


 二人同時に床へと崩れ落ちた。

 息を荒げながらも、目だけはしっかりと開いている。


「はぁ…はぁ…」


「はぁ…はぁ…」


 動けない。

 しかし、彼女たちの視線は負傷者へと注がれていた。


 そして――兵士が微かに動く。


「う……うぅ……」


 出血多量で瀕死だった兵士が、ゆっくりと目を開いた。

 その傷も、痣も、跡形もなく消えている。


「うおおおおおおおおおおお!!!!」


 城内に歓声が響き渡る。


「あんたたち、すげぇよ!」

「これだけの人数を、丁寧に治療するなんて!」

「こんな優秀な治療師、見たことねぇ!!」


 その場にいた全員が、称賛の声を上げた。

 Aランククエスト、見事達成だ。


「これは引き分けアルな」

「そうだね」


 審査員である俺とテンちゃんは、頷き合った。

 判定――引き分け。勝負はドロー。


「ふぉっふぉっふぉ! 良いもの見せてもらったわい!」


 広間の奥から、低く響く声がした。

 そこに現れたのは、魔法に精通していた老翁。

 彼はゆっくりとフードを外す。


「こ、国王陛下!?」

「な、なぜここに!?」


 兵士たちが一斉にひざまずいた。

 そして俺は――。


「こここここここ、国王陛下ぁぁぁ!?!?!?」


 かつてないほど驚くのであった。


「ふぉっふぉっふぉ! 大切な兵士たちが傷ついておると聞いてのう。いてもたってもおれなかったのじゃ!」


 国王はそう言い、笑いながらも優しい眼差しを向ける。


 だが、エリスお嬢様とリーズは――。


「………」


 静かに倒れ、意識を失っていた。


「ふぉっふぉっふぉ! そのお嬢ちゃんたちを、ちゃんとベッドで休ませてやれ。風邪を引いてしまうわい」


「はっ! 丁重にお連れいたします!」


 兵士たちが二人をそっと抱き上げる。

 彼女たちは命の恩人だ――。

 もし二人がいなければ、何人もの命が失われていたことだろう。


 しかし、どうしてこんなにも多くの兵士が傷ついていたのか?


「それより国王陛下! かの魔物は倒したのでありますか?」


「ふぉっふぉっふぉ! もちろんじゃ!」


 ……え?

 国王陛下が魔物を倒した!?

 しかも、五十人以上を負傷させたほどの強敵を!?


 やはり、この惨状は魔物によるものだったのか。


「ふぉっふぉっふぉ! 最近は冒険者でも手が回らぬほど、魔物が活発でのう!」


 確かに、ここ最近は魔物の出現率が異常に高い。

 特に危険度Aランク以上の魔物は、【ルミネスゲート】の俺たちでなければ相手にならないほどだ。


「国王が兵士を率いて魔物を討伐するとは……驚いたのう、ウェル・ベルクよ」


「え!? 俺の名前を!? い、いえ、ご存知なのですか!?」


「君の名はよぉ〜く聞いておるぞ!【ルミネスゲート】のギルドマスター、ゲルドからのう!」


「ゲルドさんをご存知なんですか!?」


 まさか国王陛下と繋がりがあったとは……。


 その時――。


「グアアアアアアア!!!!」


 耳をつんざくような咆哮が、城の外から響き渡った。

 地面が震え、瓦礫がわずかに崩れ落ちる。

 その轟音が告げていた。


 まだ――終わっていない。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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