65.悪役令嬢VS聖女 クライマックス
第4部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
「面白い勝負をしておるのう」
重く湿った空気が漂っていた。負傷兵たちの呻き声が遠くで響き、焔の明かりが石壁を赤く照らす。
その中央で、50人の兵士をより多く、そして早く治療した方が勝ち――という奇妙な勝負が繰り広げられていた。
片や金髪を揺らしながら中級魔法を正確に唱えるエリスお嬢様。
片や緑髪の少女リーズは、霊力と魔力を融合させて独自の回復魔法を放っている。
その光は淡い金と青が混じり、互いにぶつかり合うように照らしていた。
そして、俺の横では、杖を突いた御老人が腕を組み、戦況を興味深そうに見つめていた。
「どう思います?」
俺は魔法の専門ではない。ただの観察者として、その戦いを見届けていたが、御老人の眼差しは鋭かった。
こんなに魔法理論に精通している人物なら、きっと有意義な解説が聞けるだろうと思ったのだ。
「そうじゃのう…。金髪のお嬢ちゃんは中級魔法のみを使っておるな。実に丁寧で正確に…そして素早く詠唱をしておる。そして聖女のお嬢ちゃんは珍しく魔力と霊力を組み合わせておるのか」
御老人はただ一瞥しただけで、戦況をすべて見抜いていた。
その口調には余裕と確信が滲んでいる。
「どちらも引けを取らない感じですがどうみます?」
俺の目には互角にしか見えなかった。だが、御老人はゆっくりと首を横に振る。
「そうじゃのう…。小さい方のお嬢ちゃんが使っておる中級魔法は初級魔法に比べて詠唱の時間が長い代わりに効力が高い。対する聖女のお嬢ちゃんは初級魔法なので詠唱時間は短い代わりに効力が低い。じゃが、精霊の力を借りることで中級魔法レベルの効力を発揮するようじゃ」
その声が石壁に反響し、緊張した空気がさらに張り詰める。
御老人はさらに分析を重ねた。
「じゃが精霊を媒介としてる分ロスがあるし、金髪のお嬢ちゃんは詠唱が長い。それを総合すると、0.6秒ほど聖女のお嬢ちゃんが有利じゃな」
俺は思わず息を呑んだ。
その的確な洞察に、まるで戦場の実況を聞いているような気分になった。
「す、凄く詳しいですね…!」
俺はただ驚くしかなかった。俺の場合、魔法はラーニングによる無詠唱。理論など知らずとも使えてしまうため、こうした分析には到底及ばない。
「ふぉっふぉっふぉ。霊力と魔力を組み合わせるのは初めてみるから正確な分析とは言えんがのう。ほれ、ちゃんと見ておれ」
御老人の目が光る。
リーズの指先から溢れた光が負傷兵の胸を包み、蒼白な肌に血色を取り戻させる。
一方のエリスお嬢様もまた、正確無比な詠唱で中級魔法を紡ぎ、次々と兵を癒していく。
だが――
御老人の言葉通り、徐々にリーズが1人分抜きん出た。
最初こそ精霊召喚のロスで遅れていたが、流れを掴んだ瞬間から一変したのだ。
焦るエリスお嬢様。額の汗を拭う間もなく詠唱を続ける。
だが、終盤に差し掛かるとリーズの呼吸が荒くなってきた。
「はぁ…はぁ…」
霊力と魔力を同時に制御するのは、肉体にも相当な負担を強いる。
一方で、エリスお嬢様もまた中級魔法を連発しており、魔力の枯渇が見え始めていた。
勝負は拮抗。
互いに残り一人。
「こっちは最後の一人じゃあ!!!」
エリスお嬢様が声を張り上げる。
「わたくしも最後ですわ!!!」
リーズも譲らない。
治療人数はともに24。最後の兵士を癒した方が勝者となる。
光が交錯する。
魔力と霊力が空気を震わせる。
「我が名において来たれ光の精霊――生命の雫となる聖なる加護を、汝の光、手中に集い、癒しを捧げよ。光魔法【エクストラヒール】!!」
エリスお嬢様の詠唱が響き渡る。
続いてリーズも負けじと声を上げた。
「最後ですわよ!【ディア】!聖なる加護を、汝の光、癒しを捧げよ。光魔法【ディアヒール】!!」
しかし、魔力の枯渇でその光は弱々しく揺れていた。
互いに息を荒げ、歯を食いしばる。
「グギギギギ!!」
「はぁ…はぁ…!!」
その瞬間――
バターン!!!
バターン!!!
2人同時に床に倒れ込んだ。
石床に反響した音が静寂を切り裂く。
「はぁ…はぁ…お…終わったのじゃ…」
「はぁ…はぁ…こ…こちらの方が…先ですわ…」
「な…何を言っておる…小娘…妾の方が…先じゃ!」
「いいえ!…わたくしの方が…さ…先ですわ!」
俺とテンテンが顔を見合わせ、同時に呟く。
「…同時アルな…」
「…同時だね…」
勝敗を決められない。
しかし――御老人がゆっくりと口を開いた。
「ふぉっふぉっふぉ。0.3秒ほど金髪のお嬢ちゃんが早かったのう」
その一言に場がどよめく。
「しかし、何人か擦り傷のある者がおるし、対する聖女のお嬢ちゃんは完治じゃ。甲乙付け難いわい」
確かに、エリスお嬢様の治療した兵士の中には、わずかに傷跡が残っている者もいた。
焦りが正確さを奪ったのだ。
「はぁ…はぁ…だ…誰かは知らぬが…これは【どちらがより多くの人数を治療できるか】の勝負じゃ!だから妾の勝ちじゃ!!」
「いいえ!ちゃんと正確に治療できていなければ不正ですわ!!わたくしの勝ちですわ!!!」
お嬢様たちの言い争いは続く。
だが、そこへ――
ガチャッ!
重い扉が開き、砂塵が舞い上がった。
「おーい!!頼む!こいつも治療してくれ!!」
新たな負傷兵を抱えた兵士が2人、駆け込んでくる。
その姿に、御老人が口の端を吊り上げた。
「…こ…これが最後の勝負じゃ…!!」
まだ決着はついていない――
2人の戦いは、今まさに新たな局面を迎えようとしていた。
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