63.悪役令嬢と聖女のクエスト
第4部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
初対面からして横柄な態度が気に入らない――元公爵家の令嬢、リーズ・アクィルス。
一方、自分の相方がまた女を連れてきたことが癪に障る――元悪役令嬢、エリス・グランベル。
ギルドの一角で向かい合った二人は、互いに笑みすら凍らせるような視線をぶつけ合っていた。
リーズはエリスの正体をよく知っている。世間で【タチの悪い令嬢】と囁かれる存在。
しかしエリスは、目の前の麗しい女性がかつて名門公爵家の娘だったとは露ほども知らない。
実際のところ、その悪名高き令嬢はもう存在しない。
エリス・グランベルの身体には、地球から転生してきた【雛森雫】の魂が宿っているのだから。
それを知るのは、川端誠一ことウェル・ベルクただ一人。
だが転生してなお、エリスに纏わる評判は芳しくない。命を狙われるたびに使用人を解雇し続け、ウェルと出会う頃には傍に残ったのはココ一人だけ。
理由はただひとつ――弱い者を巻き込みたくなかったから。信頼でき、強い者だけを残す。それがエリスなりの優しさだった。
けれど世間はその心情を知らず、悪名だけが独り歩きしていた。
そして今、そんな二人が睨み合う。
エリスはあからさまに不機嫌さを露わにし、リーズはにこやかに笑いながらも、まるで氷柱のような圧を漂わせる。
ギルドの空気がピリピリと張りつめ、周囲の冒険者たちは居心地悪そうに距離を取った。
俺と、隣にいた武道家リン・テンテンも「これはヤバい」と察して数歩後ろへ下がる。
その時――。
「妾とどっちがヒーラーとして優れているか、勝負するのじゃ!」
「望むところですわ!」
火花を散らすように、二人の令嬢が声を張り上げた。
周囲の空気が一層凍りつく。ヒーラー同士の勝負? 一体どうするつもりだ。
「ふっふっふ。ちょうどいい依頼があるのじゃ。これでどちらが多く成果をあげられるか、勝負としようぞ!」
エリスが取り出した依頼書を、リーズへ突き出す。
俺も覗き込むと、そこには――。
「……えーっと。Aランク依頼【魔物との戦いで負傷した騎士たちの治療】。負傷者は五十名ほど、軽傷から重傷まで幅広い。報酬は金貨二十枚……か」
偶然か必然か、絶妙な依頼が舞い込んでいた。
「おもしろそうアルね! ならアタシたちが審査員兼護衛をやるネ!」
テンちゃんが意気揚々と口を挟む。
「……アタシたち?」と俺は疑問符を浮かべるが。
「もちろん、アタシとウェルね!」
「えええええええええっ!?」
女同士の争いに、なぜか巻き込まれる!? だが、リーズを仲間に誘ったのは自分。責任を感じ、観念するしかなかった。
こうして一行は、戦場跡の現場へと馬車で向かうことになる。
その頃――ギルドに現れたゲルド・ギルドマスターが首を傾げていた。
「おや? ウェルくんはどこへ行ったのかな?」
だがすでに、彼らの姿はなかった。
馬車は石畳を走り、街の喧騒を離れていく。
空間魔法【テレポート】は既知の場所にしか行けないため、今回は使用できない。目的地まではおよそ二時間の道のり。
――しかし。
馬車の中は静寂どころか、雷鳴の前触れのような張りつめた空気に満ちていた。
バチバチバチッ。
睨み合うリーズとエリス。窓の外の景色など誰も目に入らない。
耐えられず、俺は雑談を試みる。
「え、えーっと……リーズ。霊力について聞きたいんだけど、どんなものか教えてくれる?」
「アタシも興味あるネ!」
とテンちゃんも頷く。
エリスが横にいるというのに、手の内を明かすのか――俺は内心で首を傾げたが、リーズは気にした様子もなく口を開いた。
「霊力とは、この世に漂うあらゆる魂の力を借りる技法ですわ。人も獣も、死ねば魂となり、目に見えぬまま彷徨う。その魂から力を借りることも可能ですが、基本は【精霊】と契約し、彼らの力を授かるのが主流ですわ」
精霊。
この世界には人の霊、動物の霊、霊から悪霊やアンデッドになった魔物などいるが、精霊というのはもともと魂のみの存在らしい。
その精霊はいろんな種類がいてどんな精霊と契約するかで扱える力の威力も種類もピンキリだとか。
「霊力は聖女の中でも限られた者しか扱えません。わたくしは生まれつき使えましたが、精度が低かったので魔法を学びました。その結果、魔力と霊力を融合させた【魔霊力】を扱えるようになったのです」
その才覚は、並みの聖女を凌駕する。ウェルは感嘆を隠せなかった。
だが――。
「そんな中途半端な力で妾に挑むとは、随分と鼻が高いのう」
エリスの挑発が投げかけられる。
うわあああぁぁぁぁっ!!!! エリスお嬢様あああ!!
これ以上空気を悪くしないでくれえええ!!!
「おほほ。傲慢な態度でしたら、わたくしなどエリスさんの足元にも及びませんわ。ですが――あなた相手なら未熟なわたくしでも十分ですわね」
ぎゃあああああぁぁぁぁぁっ!!!! リーズうううううう!!!!
これ以上空気を悪くしないでくれえええ!!!(Part2)
そんな中、テンちゃんが小声で囁いた。
「……ウェル……アタシ、この空気、そろそろ限界ネ……」
「テンちゃん……もうすぐ……もうすぐ着くから……」
馬車の揺れに合わせ、二人はただ祈った。
一刻も早く現場に着いて、この雷雲のような空気から解放されることを――。
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