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627.本当の記憶

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 光が静かに溶けていく。


 気づけばウェルは、ぽつりと取り残されたように立ち尽くしていた。


 白い天井。

 消毒液の匂い。

 壁に貼られた子どもたちの絵。


 ——児童保護施設。


 記憶の中の場所。

 もう何年も前の、触れることのできない過去。


「……ここ…は…知っている…」


 呟いた声は虚空に吸い込まれた。


 その瞬間——


 別の小さな足音が、廊下の奥から近づいてくる。


 今のウェルではない。

 背も低く、あどけない表情。

 怯えたように廊下の隅へむかう、小さなウェル…いや《幼い川端誠一》だ。


 ガリガリに痩せて、制服は肌に擦れて痛そうで、髪は伸び放題、目の下には濃いクマ。

 何より……怯えきった顔。


「…………」


 今の俺には、その小さな俺の姿が胸に刺さる。

 でも、この世界では俺はただの観察者。触れることも、声をかけることもできない。


 幼い俺の前には、一人の女性がしゃがんでいた。

 白衣を着た、優しい目をした先生。

 ──あの人は確か。


「誠一くん、今日もおはよう」


 柔らかい声。

 誠一は、ビクッと肩をすくめる。


「……お、おはよ……ございましゅ……」


 噛んだ。

 それでも先生はクスッと笑い、頭を撫でた。


「あせらなくていいの。ここは安全な場所よ。怖いことは、もう起きないから」


 誠一は、しばらく黙ってから小さく口を開いた。


「……ほんとに……?」


「ええ、本当よ」


 その確信に満ちた声に、幼い俺の肩から力が抜けていくのが分かった。




 ある日のこと。


 ——、泣きじゃくるもっと小さな子どもが近づいてきた。


「ひっく……おねがい……

 ママに、ひどいこと言われた……」


 幼い誠一は顔を上げ、戸惑いながらも立ち上がる。


 観察者である俺は、その動きを見て心が締めつけられた。


(……ああ……こんなこと、あったな……)


 今でも鮮明に思い出せないほど、心の奥に押し込んでいた記憶。


 誠一はぎこちなく、泣いている子の頭をポン、と叩くように撫でた。


「……大丈夫……ここにいる間は……もう、怖いことはないから……」


 幼い声は震えていた。


(……そうだ……俺は……)


 守られたかったのに、本当は誰より傷だらけだったのに、それでも——誰かの涙を見たら放っておけなかった。


 その瞬間、背後の扉が開くと、白衣を羽織った先生が再び現れた。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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