56.公爵家のお嬢様とお友達になった
第3部完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
目覚めたリンジーの姿に向かって、ロッドフォード家の当主イーニアス・ロッドフォードと次期当主ジョーディ・ロッドフォードが、涙と鼻水まみれの顔でハグをしようとジャンプした。
しかし――リンジーの回し蹴りが、二人の顔面にクリーンヒット。
ぶっ飛ばされ、床に転がる二人。
理由は明白だった。いくら心配とはいえ、リンジーの部屋の扉を飛び蹴りで破壊して侵入してきたのだから。
「まぁ、誰でも怒るよなぁ…」
と思う俺。淑女かどうか以前に、部屋の扉を壊されていたのだから当然だ。
「……お見苦しいところをお見せしてしまいました。わたくしはリンジー・ロッドフォード。ロッドフォード家の長女で聖女をしておりますわ。以後お見知り置きを」
スカートを両手で持ち、いかにも優雅な礼をするリンジー。
聖女――主に回復や治療系の魔法を使い、多くの人を助ける女性たちを指す言葉だ。
この世界では、最も大きな教会【大教会デウス】に参加して活動する者、独自に教会を構え活動する者、どこにも所属せずに活動する者、ボランティアで活動する者など多様なスタイルが存在する。
リンジーは公爵家の令嬢でありながら、ボランティアとして活動する珍しいタイプの聖女だった。
「…私はA級冒険者のウェル・ベルクと申します!」
俺も改めて、背筋を伸ばして挨拶する。
貴族のエリスお嬢様に慣れているつもりだったが、それでも緊張する。
「ウェル様がわたくしを病から救って下さったのですか?」
「はい、そうです」
俺は即答した。
「やはりそうなのですね! 本当にありがとうございます」
丁寧にお礼を言うリンジー。
「いえ! イーニアス様の依頼を冒険者として果たしたまでのことです。私にはもったいないお言葉です」
互いに会釈し合う二人の姿を見て、アルデンとレッティは「しっかりした子どもで将来が楽しみだ」と目を細める。
「…コホン…私からも説明しよう」
イーニアス様がリンジーの回し蹴りから復活し、改めて威厳を放つが、すでに手遅れ感は否めなかった。
「…お願いしますわ、お父様」
リンジーは静かに頷き、父に説明を促す。
イーニアス様は落ち着いた声で告げた。
リンジーがかかったのは病ではなく、固有魔法【ポイズンカース】による魔法であり、半年もの間眠っていたこと。
つまり、意図的に誰かによって仕組まれたものだった。
犯人は執事のコボルトであったが、既に死去。
変装していたベルモット――暗殺専門の闇ギルドのメンバー――を、俺が一瞬で倒したということ。
全て、リンジーに話すための説明だった。
「…そのようなことが…じいや…」
コボルトはリンジーが赤ん坊の頃から共に過ごした人物。その存在がもうこの世にない――悲しみに沈むリンジー。
「…皆の者…私とリンジーとジョーディだけにしてくれるか…?」
親子水入らずの時間を望むイーニアス。
その意向を理解し、
「かしこまりました」
とレッティさん、アルデンさん、そして俺は部屋を静かに立ち去った。
部屋を出る際、リンジー様を少し心配そうに振り返ったが、すぐに二人に続いた。
おそらく、執事のコボルトさんを失った悲しみを抱える時間が必要なのだろう。
その悲しみは、リンジー様だけでなく、幼少期から共に育ったジョーディ様、そしてイーニアス様にも共通するものだった。
俺は、三人の泣き声や嗚咽が届く前に客室へ向かう。
「たった1秒しか【魔導気】を使っていないのに、結構疲れるなぁ。俺もまだまだだなぁ」
そう呟き、【魔力】と【気】の回復のため、ベッドで一休みすることにした。
――6時間後。
「ウェル様…起きてくださいませ」
「むにゃ?」
女の子の声。
聞き覚えがある。
パチッ
目を開けると、目の前に凛とした整った顔立ちのリンジー様が立っていた。
「う! うわ!? リンジー様!?!?!?」
驚きで飛び起きる俺。
「あら、ウェル様?
淑女が殿方を起こしに来たのに『うわ!』という反応は傷ついてしまいますわ」
上目遣いで罪悪感を促すリンジー様。
「え…えっと…もう大丈夫なのですか?」
混乱しながらも質問する俺。
「えぇ…お陰様でもう大丈夫ですわ。
ディナーの準備ができましたので呼びに来たのですわ」
なるほど、そういうことか。
「あ、ありがとうございます。では参りましょう!」
俺はベッドから下りる。
「はい、参りましょう」
笑顔で答えるリンジー様。
大食堂へ向かう途中、会話は続く。
「それにしてもよくお一人で私を呼びに行くことをお許しになられましたね」
過保護な父イーニアス様と兄ジョーディ様を思い浮かべる。
この二人が、恩人とはいえ単身で男の元へ行くなど許すはずがない。
「わたくしが説得しましたわ。
行かせてくれないと『二度と口を聞かない』と言いましたので」
リンジー様…それは説得ではなく脅迫だ。
あの二人にとって、「二度と口を聞かない」は致命的な一言だったのだろう。
「それにしてもウェル様? わたくしに遠慮せず、普段の喋り方で話してくださいませんか? わたくし、ウェル様とお友達になりたいですわ!」
公爵家の令嬢とお友達――!? すごい展開になった。
「あ、はい…いえ、わかった!
それなら…ウェル様って呼ぶのもやめてもらえるかな?
なんか…くすぐったい」
前世でもこの世界でも、~様と呼ばれたことがなく慣れないのだ。
「そうですわね…。
では、ウェルでよろしくて?」
「うん! 俺のほうこそよろしく! リンジー!」
こうして、俺とリンジーは打ち解けた。
だが、このことをイーニアス様とジョーディ様に知られたら――発狂されて国外追放されるかもしれない。
絶対に秘密にせねば――!!
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