106.豹変したウェルの行方
第6章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
ルビーを斬り伏せたウェルの瞳には、もはや理性の光は残っていなかった。
黒く染まった闇の魔力が全身を包み、空気が軋むほどの圧を放つ。彼の視線は次なる標的――ウォーカーへと向けられる。
その時。
「それ以上行ってはならぬ!戻れなくなるぞ!!」
鋭くも必死な声が響いた。エリスが駆けつける。
彼女はあの謎の少年に眠らされた直後、自ら状態異常回復の魔法で目を覚ましたのだ。しかし、小族ゆえに短い足でここまで追いつくのに時間がかかっていた。
エリスの瞳には、今のウェルが闇に呑まれつつあることがはっきり見えていた。
「……」
ウェルは足を止める。しかし、エリスの方を振り向こうとはしない。
その瞬間――
ガバッ!!
「止まるアル!!!」
「元に戻って下さいませ!!」
声を上げながらウェルに飛びついたのは、テンテンとリーズ。
二人は【ウィークネス】によって倒れていたが、わずかに残った力で彼の暴走を止めようとしていた。
「正気に戻るアル!!!」
「行ってはダメですわ!!」
その叫びは、切実だった。
だが、ウェルは振り払うように無言で立ち尽くす。彼の身体から溢れ出す魔力は、もはや大地を震わせるほど禍々しい。
空気が黒い波となって押し寄せ、砂塵を巻き上げた。
エリスは見た。
――このままでは、本当にウェルが人間ではなくなってしまう。
「……」
しかし次の瞬間、その暴力的な魔力がわずかに収まるのを感じた。
「バカもの!!!! 主の言うことを聞くのじゃ!!!」
エリスはウェルの肩をよじ登り、頭の上で小さな拳を振り上げて怒鳴った。
「ウェル!!!!!!!!!!!」
テンテン、リーズ、エリス――三人が同時に彼の名を呼ぶ。
その声は光となって、闇に沈みかけたウェルの心へと届いた。
「…エリス…お嬢様…テン…ちゃん…リーズ…」
掠れた声で名前を返すウェル。
すると――
ズァーーーーー!!!!
身体を包んでいた黒い魔力が、まるで吸い込まれるように内側へと戻っていった。
黒に染まっていた髪は元の茶色へと戻り、瞳も穏やかな光を取り戻す。
「……俺…は…いったい…」
意識が途切れていたのだろう。何も覚えていない。混乱したままのウェルは一歩、二歩とふらつき――
バターン!
倒れた。
「ウェル!!!」
「しっかりするアル!」
「しっかりしてくださいませ!!」
テンテンとリーズが駆け寄り、エリスは小さな体で必死に指示を飛ばす。
「とにかく治療室じゃ!急いで運ぶのじゃ!」
二人は力を振り絞ってウェルを担ぎ上げる。
だが、まだ満身創痍の彼女たちでは思うように足が進まない。
その様子を、控え室からじっと見つめている影があった。ウォーカーと、彼に剣を向けていたココだ。
パチパチパチパチ――。
「いやいや見事な見世物でしたよ」
ウォーカーがゆっくりと拍手をした。口元には薄く笑みが浮かんでいる。
「しかし残念なことをしますね。あの力があれば私に勝てたであろうに。形勢逆転だ」
確かに、ウェルの暴走を止めてしまった今、再び戦えばこの場の者は誰もウォーカーに勝てない。
だが――ウェルをあのまま戦わせていたら、彼自身が壊れていた。
「キサマ!!!」
怒声を上げるココ。剣を構え、震える腕で一歩前に出る。
「では、改めて殺し合いを始めましょうか?」
「ぐっ!」
ウォーカーの冷たい声に、空気が凍りつく。
再び訪れた絶体絶命の瞬間――。
コツ
コツ
コツ……。
足音が響いた。
ゾクッ!!!
次の瞬間、全員の背筋を悪寒が駆け抜けた。
「……何者だ?」
ウォーカーも、ココも、倒れたギルドマスターたちでさえも、その存在に凍りついた。
それは、闇そのもののような少年。
――ウェルを豹変させた、あの少年だった。
「まぁ待ちなよ。それ以上殺るなら僕が相手になるよ」
影の中から現れたその顔を見て、ウォーカーは血の気を失った。
「…ま…まさか…【深淵の闇】…!? な、なるほど…あの少年に【深淵の闇魔法】を与えたのはあなたか。あの少年を見た時にすぐ考えるべきだった!」
ウォーカーの声が震える。
【深淵の闇】とはなんなのか。
「どうする? 僕と戦うかい?」
静かな声とともに、場の空気が歪んだ。
ゴゴゴゴゴゴ……!!
異様な圧力。空気が潰される。
ココとゲルドは、息を呑んだ。
「な、なんだこの魔力は…!?」
「闇属性…いやそれよりも深く…黒い…!?」
まるで底なしの闇を覗き込んでいるような錯覚。理性が飲み込まれそうだった。
しばし、沈黙。
「…辞めだ…私ではあなたの足元にすら遠く及ばないでしょうから」
ウォーカーがゆっくりと降伏の意思を示す。
先程までギルドマスター全員を圧倒した男が、戦う前に敗北を認めた。
「それはよかった! まだ目立つわけにはいかないからね!」
【深淵の闇】は子供のように笑い、禍々しい魔力を一瞬で消し去った。
「それなら私は帰らせていただきますか…」
ウォーカーは黒い空間を開き、そこへ姿を消した。
「いったい…なんだったんだ…」
「!?あの少年は!?」
気づけば、【深淵の闇】の姿も消えていた。
――その直後。
ひょこ。
キョロキョロ。
「みなさん!! やりました!!!! 我々の冒険者たちが闇ギルドを倒しました!!」
実況者ロムが顔を出し、震える声でマイクを通して叫んだ。
「うぉおおおぉぉおおおお!!!!!!!」
会場に残っていた観客たちは声を上げ、涙を流した。
闇ギルドを倒した――その事実に、国全体が歓喜した。
「すげええぇぇぇ!!!」
「お前たちは俺たちの誇りだ!!」
崩れ落ちた瓦礫の隙間から、光が差し込む。
――だがその光の裏で、もう一つの闇が静かに動き始めていた。
場面は変わり、人気のない暗い空間。
「うーん?ここはどこだろ?」
【深淵の闇】が首をかしげながら歩いている。
「ふぉっふぉっふぉ。また迷子ですかな?」
その声の主は、ブルガンリルム王国の国王にして大魔導――【ヴィヴィアン】。
「やぁ、久しぶりだね!」
まるで旧友に再会したかのように、少年は微笑んだ。
――この二人、すでに過去に何かしらの関係があるようだ。
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