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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
第三章 薬国での出会い

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国の境界線

 そんな良い物があるのなら最初から使ってくれたらいいのにって思う。

だってさ、奇跡って言うけど、簡単に綺麗に出来ちゃうなら今まで洗濯とかする手間とかいらなくない?いらないよね、そうだよね。

むしろ私の苦労を返してって感じで、考えれば考える程言いたい事が増えて来る。


「……カー君、どうしてそんな便利な物があるのに今まで使ってくれなかったの?」

「それは使えるように練習していたからね」

「練習?」

「うん、奇跡って言うこの世界にある傷とかを癒したり出来る特別な力らしいけど……思ったよりも簡単だったね」


 奇跡って言う名前からして、凄い難しそうな響きがあるのに……そんなに簡単なのかな。

もしそうだったら、私にも出来るかも?ほら、私達には回復役がいないじゃない?だから私がそれになれたら役に立てそうだし。

うん、そうと決めたら今度カー君に使い方を教えて貰おう。


「奇跡ってあれだろ?教会とかって言う組織に属してる奴等が使う、傷や病を癒す特殊な術とかっていう」

「……特殊?俺からしたら、感覚的には魔法とは変わらないから、これは同じものだと思うけど?」


 その言葉を聞いた瞬間、ゼンさんが困ったような……でも何処か、カー君に対して心配したようなような表情を浮かべたかと思うと……


「カーティス、おまえ……その事、奇跡を使う奴らの前で言うなよ?」

「ゼン、それはなんでだい?」

「教会所属の奴らが奇跡というのを、神々から授かった特別な物だと考えてるからな……、同じものだって事になったら、神以外にも教会の奴らに追われるようにもなっちまう、さすがにそんな面倒事は勘弁して欲しいわ」

「確かに……必要以上に敵を作る必要はないかもしれないね」

「だろ?だから、、絶対に言うなよ?もし口を滑らせるような事があったら、俺とシャルネはお前を置いて行くからな?」


 あぁ、確かに何か聞いてて思うけど凄いめんどくさそう。

だって、同じ魔力を扱うものなのに別物だって言い張ってるって事でしょ?、カー君が言ってる事を教会所属?の人達が聞いたら、不必要に敵を作りそうで、ゼンさんが心配をするのも分かる気がする。

けど、そもそも教会って言うのが何か分からないから、聞いた方がいいかも?ほら、私が転生する前の世界だと、宗教関係の施設だったけどこの世界だと違うかもしれないし。


「ゼンさん、教会って何?」

「ん?あぁ……、そうかシャルネは知らないよな、この世界にある宗教団体だよ……まぁ、俺達が特に関わるような集団じゃないから気にしなくて良いと思うぞ?」

「なんだかフラグを感じる気がする」


 教会が以前の世界と然程変わらない事が分かったけど、関わるような集団じゃないってところに、どうしてもフラグじみたものを感じる。

こういうのって言葉にすると、必ずフラグを回収したりしちゃうし……これは聞かなかった方が良かったかも、でももう聞いちゃったし、こういう時ってどうすればいいのかな。


「フラグ?フラグって何だい?」

「えっと、そう言う事を言うと本当に関わる事になったりとか、例えば俺に任せて先に行けとか言うと、その人が死ぬぅとか色々?」

「つまり戦場のジンクスみたいなものか、んーまぁ、なんだ?そんな難しく考えなくて良いと思うぞ?」

「俺もそう思うかな、あんまりそう言う事ばっかり考えてると、動かないといけない時に動けなくなってしまいそうじゃない?」

「んー、そうかな?そうかも?」


 確かにゼンさんやカー君の言うように、考え過ぎて大事な時に動けないって言うのは良くないかも。

けど、考えちゃうものは考えちゃうし……、結構考えないって難しい気がする。


「ん?お、シャルネ、そんな会話よりもあれを見てみろ!見えて来たぞ?」

「見えて来たって……、何が?」

「何がってメイディがだよ」

「何処にも国何て見えて──」


 ゼンさんが指を指す先を見ると、周囲の景色がまるで途中から切り取られて、その場に置かれたかのような、例えるならそう。

パソコンで画像をコピーして、貼り付けたかのような凄い違和感がそこにあって気持ちが悪い。

だって……私達の周囲には草原しかなかったのに、いきなり半分に切れたり、途中から無くなっているかのように見える、歪な形をした樹がどんっ!と壁のように生えていて……


「なにこれ……」

「初めて見るとそう思うよな……、これが国と国の境界線だよ」

「境界線って、これはもう……まるで」

「うん、切り取られたみたいだよね、世界の一部を直接別の場所に移したかのような異質な感じが気持ち悪いと俺も思うよ」

「……こんな事をしちゃうのが、私達が戦う事になる相手なんだ」


……何処かで、旅の目的である神々の討伐が私達なら楽に出来るかもって思ってた。

けど、実際に目の前に見えている光景は、そんな事は無いと理解できるのには充分で、世界そのものを切り取って世界そのものを別の世界に持ち込んでしまう。

そんな理解が追い付かない事をする存在に、どうすれば勝てばいいのか、そう思ったら無意識に身体が後ずさってしまうのだった。

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