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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
第二章 修行、そして旅に出る

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帰る場所

 とりあえずやきもちを妬いてもどうしようもないから、気持ちを切り替えようとするけど、そんな私の事を見たセイラさんが何かに気付いたように頷くと


「じゃあ、私はゼンが帰って来たから帰るね」

「あ?別にいてもいいぞ?」

「いてもいいって、これから旅に出る準備をするんでしょ?それなら私がいたら邪魔じゃない、それとも……私に手伝わせる気?」

「いや……そんな事は考えてねぇよ」


 私に気を使って帰ろうとしてくれているのが分かって、性格が悪いと思うけど嬉しくなる。

けど……それと同じくらいに申し訳ない気持ちもあって少しばかり複雑な気持ち。


「でしょ?だから、二人で旅に出る準備をしなさい、んじゃ……私は帰るからね」

「おう、んじゃまぁ……なんだ?、またな」

「はいはい、またね、シャルネさんもまた会おうね」

「うん、えっと……セイラさん、ありがとう」

「ん?何が?……ふふ、頑張ってね」


 セイラさんが私の肩に手を置いて笑顔で応援をしてくれる。

そして玄関を開けて鼻歌を歌いながら、外に出ると二人きりになって、何だかちょっとだけ気まずい雰囲気になった気がするけど……、多分私の考え過ぎだろう。


「……行っちゃったね」

「まぁ、あいつはそんな奴だよ」

「そんな奴って……、あ、それよりもちょっと気になったんだけど、どうしてまたねって感じでお別れしたの?普通ならさようならとか、いってらっしゃいじゃない?」


 なのに何故、またねって言う挨拶をしたのだろうか。

もしかして、遠くに行っちゃうけどまた会おうねとかそういう流れかな、そうだったらなんて言うかいいなぁって思う。

……こう、何て言うか長い時を一緒に過ごしたからこそ、通じ合える関係というか、そういうのって本当に素敵、私達もそういう関係になれたらいいなって感じで憧れる。


「ん?あぁ……、これは俺達が分かれる時にする儀式みたいなもんだよ、マチザワ、セイラ、俺で離れる際にまたなって言う事で、何処にいようと再び再開出来るって言う想いを込めてんだ」

「へぇ……何かいいね」

「だろ?、これをセイラがやろうって言い出した時は、何てこっぱずかしい提案をするんだと戸惑いはしたけどさ、今はすっかり癖になっちまったよ」


 何処にいても再開出来るって言う意味が込められているのも何て言うか、セイラさんらしさが出てる気がする。


「そうなんだ……、あ、でも私にもまた会おうねって言ってくれたって事はもしかして」

「もしかしても何も、セイラと仲良くなったんだろ?」

「うん、けど……そういう意味が込められてるって知ってたら、私もちゃんとまた会おうねって言えばよかったかなって」

「そんな事気にしなくても大丈夫だって、俺達が勝手に決めてやってる事に付き合う必要も無いしな」


 確かにそうかもしれないけど、言いたかったのは私の気持ちで……、だからって今からセイラさんを追いかけて言うのもちょっと違う気がする。

だって、旅の準備をする為にという事で二人きりにさせてくれたのに、ここでそんな事をしたら折角の気遣いを無駄にしてしまう事になるし、……だからって気にしないって言うのも無理。

じゃあどうするのって言われたら……どうすればいいのか分からない。


「ったく、そんな顔すんなって」

「……え?」

「気になるなら旅の道中で寄れそうだったら、栄花に行くからその時にまた会おうって言えばいいんだよ」


 あっ……そうか、そうすればセイラさんとの約束も守れるし、今度は私から彼女にまた会おうねって言える。


「うん、じゃあそうする」

「ならそれでいいな?、じゃあ……旅の準備をしちまうか、けど俺の準備は終わってんだよなぁ、シャルネの方もこれと言ってないだろ?」

「無いけど、提案したい事はあるかな」

「提案?」

「うん、幽霊さんを旅に同行させる事って出来ないかなって」


 幽霊さんがいれば料理が出来る人が増える。

もし旅の道中で私が体調を崩すとかあったら、ゼンさんやカー君が作る事になるけれど……カー君はともかく、ゼンさんの場合はあんまり作って欲しくない。

だから私の変わりになる人が欲しいというか……。


「いや、あいつはいたら便利だけど、旅には連れて行けないな」

「……え?なんで?」

「何でって……、この家に憑いてるんだぞ?あの血痕が残ってる壁をくり抜いて持ち歩こうにもさすがに邪魔だし」

「でも、それならカバンの中に入れればいいんじゃ?」

「確かにグロウフェレスが作ったあれになら詰めようと思えば入るかもしれないけど、個人的にはここに残っていて欲しいんだよ」


 そう言うと何だか恥ずかし気に後頭部を掻き始める。


「ほら、俺達の旅が終わった後、帰る場所が無かった困るだろ?」

「……え?旅が終わったらってなんで?」

「何でって、旅が終わってもシャルネは俺と一緒に暮らすだろ?」

「へ?……え!?」

「何驚いてんだよ、おまえには住む場所が無いんだから一緒に暮らすしかないだろ?だから、この家を管理して守ってくれる奴がいないと困るからな、だから悪いけど幽霊に関しては諦めてくれ」


……ゼンさんはそう言葉にした後『んじゃ、カーティスの準備が出来てここに来るまで俺は休むわ、徹夜で武器の調整とかしてたからな……さすがに疲れちまったよ』と言いながら、二階へと上がって行ってしまう。

そして一人その場に残された私は、旅が終わった後もゼンさんと一緒にいられることに驚きと嬉しさの余り固まってしまうのだった。

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